ゴルフコースの難易度はコースレーティングよりもスロープレーティングで見極めよう!
- 2016.08.28
- 知識向上
「いつものスコアはだいたい90~95ぐらい。ベストスコアは87。最近、ほとんど100は叩かないようになってきた。」という、成長著しいゴルファーのAさんが、満を持して国内の歴史ある名門ゴルフクラブで初めてラウンドしたとします。
意気揚々とスタートしましたが、やはり噂に違わず、各ホールとも距離がたっぷりとあり、戦略性が豊か。谷や池などのハザードも満載です。そんな中でAさんは、それほど調子が悪いわけでもなかったのですが、ボギーはおろかダブルボギーもやっとという状況で、終わってみれば110の大叩きでした。
散々なスコアで打ちのめされましたが、クラブハウス内のキャディマスター室に掲げてあるJGA(日本ゴルフ協会)公認コースレート表にはなんと『75.9』との表示が!
Aさんは、「やっぱり、難しいと思ったんだよ~。いつも自分はコースレートが69から70ぐらいのコースでプレーしているから。これだけコースレートが高いんだから、大叩きでも仕方がないよね…それにしても叩きすぎたな。」と自分をなぐさめるようにつぶやいてから帰路につきました。
よくあるゴルフ場での一幕ですよね。
このようにコースレーティング(コースレート)は、そのゴルフ場の難易度を客観的に判断する指標として、よく利用されています。本来の目的としてはJGAハンディキャップ規定の基準として使用されるものであり、ハンディキャップを決める要素になっています。
ホームコースをお持ちのメンバー会員の方なら、スコアカードを定期的に提出し、ハンディキャップを取得している方がいらっしゃると思います。
※JGAの認可を受けたゴルフ倶楽部の場合
たとえば、前述のコースレーティング『75.9』のコースをハンディキャップ10のプレーヤーが86でプレーした場合、グロススコア(86)-ハンディキャップ(10)=76となり、ほぼ自分のハンディキャップ通りにプレーしたことになります。
「ハンディキャップが10のゴルファーは、いつも82(パープレー72+ハンディキャップ10)ぐらいでプレーするんじゃないの?」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、ハンディキャップはコースレーティングと相対していますので、ご注意ください。
また、こうしたハンディキャップをお持ちでない方も、パー72のコースに対して、コースレーティングが73や74というコースは、「難しいコース」という判断が容易にできますので、単純にコースの難易度を示すものとして、広く受け入れられています。
実際、コースレーティングが高いコースは難易度の高いコースとして、それをコースのウリ(特徴)として宣伝することもありますね。ですから、ゴルフコースの難易度と聞くと『コースレーティング』と思う方がほとんどではないでしょうか。
しかし、このコースレーティングとは別に『スロープレーティング』という基準があることをご存知でしょうか。
これはすでに2014年度から、JGA(日本ゴルフ協会)が「すべてのレベルのプレーヤーが公平で使いやすいハンディキャップシステムを」という観点で実施しています。施行から2年余りが経過した現在も、あまりゴルファーに浸透しているとは言い難い状況なのですが、なかなか考えられたシステムですので、知っておいて損はありません。
そこで今回は新しい難易度の指標としての、スロープレーティングについてご紹介していきたいと思います。ハンディキャップを持っている方はもちろんですが、そうでない方でも是非覚えてください。
初心者ゴルファーや、アベレージゴルファーにこそ、『コースレーティング』よりも『スロープレーティング』ですよ。
コースレーティングとは?
スロープレーティングをご紹介する前に、まずコースレーティングについておさらいしておきましょう。
JGA/USGAコースレーティングは、“スクラッチゴルファーが通常のコンディションでプレーした場合のコースの難易度を示す尺度である”とされています。
このスクラッチゴルファーとは、レーティング査定されたすべてのコースをそのコースレーティング通りにプレーできるプレーヤーのことで、概ね平均飛距離が250ヤード、470ヤードのホールで2オン可能なプレーヤーのことです。
ちなみに女子の場合は、平均飛距離210ヤード、400ヤードのホールで2オン可能なプレーヤーとのことです。コースレーティング査定の方法は、今回割愛致しますが、つまりスクラッチゴルファーがプレーすることを基準としているということをお分かりいただければ、とりあえずOKです。
コースレーティングの問題点
コースレーティングはスクラッチゴルファー、つまり超上級者がプレーした場合を基準としていますので、そのはじき出された数値は、それ以外のごく一般的なゴルファーがプレーした場合、とてもその通りにいかないと思ったことはないでしょうか。
たとえば最初にご紹介したAさんは、まさに平均的なアベレージゴルファーですが、もし、Aさんと一緒にハンディキャップ5のシングルプレーヤーが、冒頭のコースレーティング75.9のコースで、ごく通常のコンディションでプレーしたとしたら、だいたい80前後ぐらいでプレーしているでしょう。上級者ほどコースへの適応力があり、コースの難易度があがっても、そのコースに対応した自分の実力を発揮することができるからです。
しかし、Aさんのようなアベレージゴルファーはそうはいきません。いつもはフラットで広いフェアウェイで、のびのびとドライバーショットを放っていたのに、難しいコースでは、距離は長く、狭いフェアウェイにバンカーが立ちはだかり、少しでも左右にぶれると深いラフの芝にボールが沈んでしまいます。
また、多少スライスしても山の傾斜でキックして戻ってくれていたのに、難しいコースではすぐにOB杭が迫っています。さらにグリーンは傾斜がきつく、正確なパッティングを必要とされるので、どこにも気が抜けません。そして、だんだんコースに対する恐怖感も芽生え、挑戦する意欲も失われてしまいます。
Aさんのように、「そんなに調子が悪いわけじゃなく、いつもと同じようにスイングしているのに、いつものようにはうまくいかない」のが、このレベルのゴルファーのつらいところです。
つまり難易度があがると、そのコースセッティングに実力が対応できず、いつもより極端にスコアを崩してしまうのです。
これはAさんだけがそうなのではなく、多くのアマチュアゴルファーにとって言えることです。ですから、コースレーティングが70のコースを95でプレーできるゴルファーが、コースレーティング75のコースでプレーした場合、スコアが5打分上乗せされる(多く叩く)のではなく、それ以上の難易度の上昇を感じてしまいます。
こうした問題は、コースレーティングがスクラッチゴルファー(上手い人)を基準に査定されているためです。そこでこのような問題を解消し、すべてのゴルファーが公平になるように考えられたのが『スロープレーティング』です。
ではスロープレーティングとはどういうものなのか?みてみましょう。
スロープレーティングとは?
スロープレーティングとは、スクラッチゴルファー以外のプレーヤーにとっての相対的なコースの難易度を示す尺度です。その数値は55から155まであり、標準難易度は113です。また数値が大きいほど難易度が高いということになります。
このスロープレーティングの査定方法ですが、これは、“コースレーティングとボギーレーティングの差に基づいて算出され、その差が大きいほどスロープレーティングの値が高くなる”ようになっています。
この中で、聞きなれないボギーレーティングという単語が出てきましたが、これは※ボギーゴルファーが通常のコンディションでプレーした場合のコースの難易度を示したものです。
※男子でコースハンディキャップ20を想定し、平均飛距離200ヤード、370ヤードのホールを2オン可能なゴルファーのことです。
女子の場合は、コースハンディキャップ24を想定し、平均飛距離150ヤード、280ヤードのホールを2オン可能なゴルファーとしています。
つまり、スクラッチゴルファーによってコースレーティングを査定し、ボギーゴルファーによってボギーレーティングを査定したうえで、そのスコアの差を見比べることで、その差が大きいほど、スロープレーティングは高くなるという算出方法です。これにより、「平均的なゴルファーにとって難しいコースはどこか?」という結果が導かれます。
これをさらにどのように利用するかというと、JGAハンディキャップをお持ちの方は、ハンディキャップ換算表をもとに自分のハンディキャップをスロープレーティングに照らし合わせてみます。すると、スロープレーティングに対応したそのコースでのあなたのコースハンディキャップが示されますので、それをもとに目標を見定めてプレーするという訳です。
例えばコースレーティング70.9 スロープレーティング130の恵庭カントリー倶楽部(北海道)の場合をみてみましょう。(摩周~支笏コース/レギュラーティーの場合)
ある個人のハンディキャップが20.5の場合、換算表をもとにコースハンディキャップを見てみると、恵庭カントリー倶楽部では24になっています。また、ハンディキャップが33.4の場合コースハンディキャップは38になります。
ハンディキャップの値が増える以上に、コースハンディキャップの値が大きくなっていることがお分かりになるでしょうか。このように自分の持っているハンディキャップをコースハンディキャップに調整することで、各コースでの自分のハンディキャップとして調整できるという訳です。
ちなみに恵庭カントリー倶楽部は新千歳空港から車で35分に位置する、北海道らしい雄大な景色が楽しめる美しいコースです。2016年度日本プロゴルフマッチプレー選手権レクサス杯が開催されたトーナメントコースでもあります。設計は名匠、富澤廣親氏。
まとめ
慣れ親しんでいるシステムであるコースレーティングと、新しく導入されたスロープレーティングをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
上級者でも難しいと言われるコースでも、スコアを崩さずいつも通りにプレーできる場合もあれば、距離も短いのでやさしいと言われるようなコースでも、なんとなく攻めづらくて苦労する場合もあるでしょう。
それは実はその日のゴルフの調子だけではないかもしれません。
そんな時はスロープレーティングをチェックしてみるのをオススメします。意外と答えがそこにあるかもしれませんよ。