ワールドカップゴルフにみる盛り上がる団体戦ならではのルールとは?
2016年11月24日~27日の日程でオーストラリアの郊外に位置する「キングストン・ヒース・ゴルフクラブ」で開催されたゴルフのワールドカップ「ISPSハンダワールドカップ・オブ・ゴルフ」。各国2名×28か国の団体戦で、4日間72ホールで競う国別対抗戦です。
以前は年に1回開催されていましたが、2009年以降、隔年開催へと変更され、さらに今年は2013年から3年空いての開催と少々変則気味の大会となっています。日本勢は1957年に中村寅吉・小野光一ペア、2002年に伊沢利光・丸山茂樹ペアが優勝を果たしており、今大会は松山英樹選手と石川遼選手が日本代表として出場しました。
興味深いのはその選出方法で、各国1名は世界ランキング上位者が選ばれるのですが、もう1名は、その選ばれた選手が指名するという方式です。世界ランキングから自動選出の繰り下がり方式を採用したリオデジャネイロ・オリンピックのゴルフ競技よりも、各国とも個性のある“チーム”を感じさせる組み合わせとなりましたね。
では、今度はこの「ISPSハンダワールドカップ・オブ・ゴルフ」(※以降ワールドカップ)の競技方法をみてみましょう。
これは、初日と第3日目が“フォアサム”、第2日目と最終日が“フォアボール”となっています。これはどちらも団体戦用のルールであり、アマチュアゴルファーの方にはあまり馴染みのないルールです。個人ストロークプレーのみを採用したリオデジャネイロ・オリンピックとはここでも相違点が見られるのではないでしょうか。
個人的見解になりますが、今回のワールドカップはリオデジャネイロ・オリンピックのゴルフ競技より、国別対抗戦としての面白さがより大きかったように感じます。それはまさに団体戦用のルールがもたらしてくれた効果だと感じます。
では、この盛り上がる要因となった“フォアサム”と“フォアボール”とはどんなルールなのでしょうか。そして、このルールを採用することによって何が変わってくるのでしょうか。
今回はこの“フォアサム”と“フォアボール”についてピックアップしてみたいと思います。もしかすると新たなゴルフの魅力が見えてくるかもしれませんよ。
フォアサムとフォアボールとは?
では、早速ルールについてご説明します。大変よく似た“フォアサム”と“フォアボール”という名前ですが、混同して使用されているケースもありますので、ここで整理しておきましょう。
まず“フォアサム”とは2人のプレーヤーがペアを組み、1つの球をプレーすることです。パートナー同士は交互にティーインググラウンドからプレーし、また各ホールのプレー中も交互にプレーしなければなりません。(※ゴルフ規則第2章用語の定義23、及び第3章プレーについての規則29より)
例えば1番ホールのティーショットは松山選手のみが打ち、そのボールのセカンドショットは石川選手が打つということになります。これをカップインまで順番に繰り返します。そして今度は2番ホールのティーショットは石川選手のみが打ち、セカンドショットは松山選手が打っていきます。
このように交互に1つのボールを打っていきますので、まさに2人合わせて1人のプレーヤーのように行動していきます。チームワークが重要なことがよく分かりますね。
続いて“フォアボール”です。こちらは2人のプレーヤーがパートナーとして、それぞれ自分の球をプレーします。そして1ホールごとに2人のプレーヤーのスコアのうち、良い方のスコアをそのホールのスコアとして採用するという方式です。(※ゴルフ規則第2章用語の定義22より)
この場合、一見普段通りのストロークプレーのようにも見えますが、パートナーは同じ組でプレーしていますので、相談してどちらかがリスクを冒してバーディーやイーグルを狙いに行き、どちらかが手堅くパーを堅持するといった戦略性をもったプレーが可能です。
また一緒の組でプレーしていきますので、お互いのプレーも自分のことのように気になるのもフォアボールならではの感覚です。そういった意味では、やはり通常の個人競技とは違った緊張感があるでしょう。
プレーヤーも観客も一体感がある!
“フォアサム”と“フォアボール”それぞれのルールがお分かりいただけましたでしょうか。どちらのルールでも、2人の息があっていないと、チグハグになってしまいそうですよね。
今回、松山選手と石川選手は練習からミーティングを重ね、協力し合いながらコース戦略を行なっていたようです。普段はプロとしてお互いの手の内をさらけ出すということはないと思いますが、常に一緒に行動し、励まし合い、協力する姿はツアー競技ではなかなか見られない光景で、とても新鮮でした。
最終成績は6位タイに終わりましたが、随所に好プレーが見られ、楽しませてくれました。しかし、優勝したデンマークのケルドセン選手・オルセン選手のペアのような、不調時のパートナーをもう一人がカバーするといった部分が少し足りなかったのではないかと思います。
4日間のプレーでは必ず好不調の波が来ますので、こうした波を2人でカバーし合うのが団体戦の醍醐味です。それを最も実現できたのが、今回優勝したデンマークチームだったのでしょう。
日本ではあまり注目されないのですが、米国選抜vs欧州選抜のライダーカップが異様なほど盛り上がるのは、この辺の面白さなのではないでしょうか。団体戦ならではの“一緒に戦っている感”がプレーヤーだけでなく、応援するゴルフファンにも伝わってくるので、一体感が大きいのです。国別対抗戦などにはピッタリのルールですね。
是非、次回の東京オリンピックでは個人成績のみの試合形式ではなく、“フォアサム”や“フォアボール”を採用してほしいと思います。
おわりに
“フォアサム”は普段のラウンドで実行する場合、プレーする回数が半減してしまいますので「もったいない」と思いますが、“フォアボール”でしたら可能ではないでしょうか。
是非、今度のラウンドでやってみてはいかがでしょうか。ゴルフになかったチームプレーの面白さが感じられ、よりゴルフが面白くなるかもしれませんよ。