EXOは新しい世界を教えてくれるパターだ!
キャロウェイゴルフが2018年7月中旬に発売するオデッセイ“EXO”(エクソー)パターの“SEVEN S”と“ROSSIE S”をコースに持ち込んでテストしました。
「未知なるパター」というコピーです。外側はブラックに加工されたステンレススチール。中央部はメタリック調のレッドに加工されたアルミニウムで作られています。黒と赤を組合せた見た目が、まずは目を引きます。美しく、更に、高級です。
横から見ると、重量調整でたくさんの穴が空いています。骨組みだけのパターのようにも見えるほどです。それでいて、手にしてアドレスをすると、ズッシリと重量感があります。
見ているだけでも、グッと来るパターです。
新しいフェースインサートは完璧だ!
オデッセイ“EXO”パターの最大の特徴は『ホワイト・ホット マイクロヒンジ・インサート』という新しいフェースインサートを採用したことです。
オデッセイがトップブランドになった原動力で、現在でも使用しているプロゴルファーもいるほどタッチが出せると絶賛された『ホワイト・ホット インサート』と、ゴルフ史上最強の順回転の転がりを生む『マイクロヒンジ・ インサート』を融合させたフェースインサートです。ヒンジ部分の出っ張りの一つ一つの面積が大きくなって、数は少なくなりました。半透明な感じがする白さに黒いヒンジは、砂糖菓子のように見えて、機能の高さを予感させます。
僕は『ホワイト・ホット・インサート』を長年愛用していたので、その感触も機能もよく知っています。期待を込めて、強いて、ハードルを高く上げた状態で『ホワイト・ホット マイクロヒンジ・インサート』をテストしてみました。感触も、機能も最高でした。
『マイクロヒンジ・インサート』は特にロングパットの転がりが良くなる機能は素晴らしいものでしたが、やや弾きが弱く、下りの速いラインには機能を発揮しますが、上りのラインのショートパットなどではショートしやすいという弱点があると感じていました。重いグリーンでは、苦労するかもしれないと考えて、自らの使用パターにはしませんでした。
『ホワイト・ホット マイクロヒンジ・インサート』は、気持ち良く弾きます。そして、『マイクロヒンジ・インサート』の機能もしっかりと踏襲して、順回転で伸びるボールを何ら苦労せずに打てます。タッチが出しやすいですし、樹脂フェースであることを意識しなくとも使えます。
『ホワイト・ホット マイクロヒンジ・インサート』で最も良い点は、距離を打ち分けるときに変な癖が一切ないことです。樹脂フェースの中には、打つ距離によって感触が違ってしまうものがあります。これは慣れの領域でもあるので、最初に距離感を鍛えるときに手にしていたパターにそういう癖があれば、それが基準になってしまうこともあります。
良いパターだと評価されて、後の世に影響するようなパターには、癖がないものが圧倒的に多いのです。“EXO”パターの最新の『ホワイト・ホット マイクロヒンジ・インサート』は余裕で合格です。
フラッグシップモデルのSEVENの実力!
“EXO”パターの“SEVEN S”を打ちました。オデッセイのパターは、メインで扱っているヘッドの形状を数字で呼んでいます。『#1』はピン型、『#8』はL字のブレード型、『#9』はL字のマレット型です。オデッセイの独自な形状で最もプロツアーで成功しているパターが『#7』です。
“EXO”パターは3つのヘッド形状が(テストしませんでしたが、もう一つ、NDIANAPOLIS〈インディアナポリス〉というヘッドがあり、それぞれにネック違いがあり計6モデル)ありますが、代表となるフラッグシップモデルは“SEVEN”です。2本の角が後方に伸びたような形状は、まさにオデッセイの『#7』なのです。
“SEVEN S”の『S』は、「ショートスラントネック」の略です。“SEVEN”のネックはシャフトが曲がりながらヘッドに直接装着されているベントシャフトタイプになります。ヘッドの形状は全く同じです。
過去に『#7』のヘッド形状のパターを何度か使用したことがあります。2011年、米ツアーと欧州ツアーの両方で同年に賞金王になり、ワールドランキング1位になったルーク・ドナルドが使用していたパターに注目しないはずはありません。結果として、自分には合わないと、少ししか使いませんでした。ショートパットのときにオートマチックにヘッドが動きすぎて、ストレート以外のラインで違和感があったからです。
そういう経験から“SEVEN S”には一抹の不安がありました。パターは感性の道具です。スペックなんかを吹っ飛ばしてしまう結果が生み出されるのが珍しくない反面、機能が優れていることを理解できているのに、それを現場で全く発揮できないこともあります。
“SEVEN S”は、いきなり機能をフルに発揮しました。黒と赤のヘッドが作る直線的な形状は、ストレートにテークバックしやすい効果があるようです。ボールにも集中しやすいのです。そして、ヘッドが小さく見えます。
練習グリーンで、実験的に何球か芯を外して打ちましたが、距離感への影響は最小限です。ヘッドの慣性モーメントはかなり大きいことがわかります。慣性モーメントが大きいパターが、単に易しくなるのではありません。ミスヒットに強くなる長所はありますが、ヘッドが操作しにくいという短所も発生してしまうことがあるからです。重心位置とシャフトの位置関係などの設定が悪くて、真っ直ぐに打ちにくいパターも生まれてしまうのです。
“SEVEN S”には、易しさと、敏感な操作性を上手に両立するバランスの良さを感じました。誰でも、意識せず、知識なしでも、上手くなった気にさせる動きをしてくれるパターに仕上がっています。
『ホワイト・ホット マイクロヒンジ・インサート』は良い仕事をします。ショートパットでは弾いて欲しいときにはきれいに弾きますし、打音も高音で良いです。距離の長いパットは、ヘッド全体でボールを押し出す感触がありつつ、転がりが良く、特に最後の惰性での転がりに伸びがあります。
“SEVEN S”は、“SEVEN”よりも敏感だと推測されます。“SEVEN”はベントシャフトなのでオートマチックに動かしやすい傾向があるからです。“SEVEN S”のショートスラントネックは2018年のパターのネックのトレンドですが、特徴はヘッドの操作性が敏感になることです。知らずに使ってしまうと、ヘッドの特性以前の段階で、難しいパターに感じてしまうネックでもあるのです。
“EXO”パターの場合は、ショートスラントネックを選択肢として採用しただけあって、良いバランスに仕上げてあります。慣性モーメントが大きいのに、重心が後方になり過ぎていないのです。パターの場合、重心がフェースから離れすぎると、かなり打ちにくくなりますが、“SEVEN S”は本当に上手くできています。その振り易さは、素振りの段階から明白になります。
“SEVEN S”の振り易さ、打ち易さは、抜群に優れています。全体重量から始まって、機能をパターに詰め込む際に、振り易さや打ち易さを一切犠牲にしなかったようです。“SEVEN S”は、オートマチックな『#7』ヘッドの進化系で、真っ直ぐに引いて、真っ直ぐにストロークすることが更にやりやすくなりました。そして、タッチも出しやすいパターです。振り幅に対して、均等に転がりますし、押すように下りのパットを打つことも可能です。しっかりと打てば、強く弾きます。実に素直です。
“SEVEN S”は、“EXO”の代表です。“EXO”パターが大ヒットパターになるかどうかは、“SEVEN S”次第だと個人的には思っています。広く誰にでも使える優等生な部分と、独特な個性が融合しているこのパターは大ヒットするべきだと考えました。
『#7』と同じだと考えて、“SEVEN”を打った気になるのは間違いです。単なる進化ではなく、突然変異といえるぐらいの大変身です。似ていて異なるものなのです。打つべきです。
オデッセイの伝統を集結させた最新のROSSIE
“ROSSIE S”です。最初に書きます。最高でした。あまりに良いので、実際は2ラウンドは使えたのに、1ラウンドだけでテストをやめました。「これ以上使ったら、このパターから離れられなくなり、買うことになる」と確信したからです。
“ROSSIE”は、オデッセイの礎を作ったパターです。このパターが認められて、1997年にキャロウェイは、オデッセイスポーツ社を吸収して、現在に至るのです。結果として、“2ボール”を始めとした世界中のゴルファーの半数が使用したことがあるというオデッセイのパターのラインアップは、この体制があって可能になったわけです。オデッセイのメインのパターのラインアップは、ナンバーで呼びますが、“ROSSIE”は20年以上経っても“ROSSIE”です。伝説のパターであり、伝統すら感じる名称です。
“ROSSIE S”は、まず構えたときに、あまり“ロッシー”な感じはしません。形状は確かにそのものですが、大きいですし、骨組みみたいな感じが真新しいからです。打ってみると、不思議なことに方向性が合わせやすいのです。曲面のマレットでありながら、強烈に直線を意識させるのです。黒と赤のコントラスト効果なのだと思います。
打ってみた感触や『ホワイト・ホット マイクロヒンジ・インサート』の機能は、“SEVEN S”と基本的には同じです。良い打感、打音、ボールの転がりは、大満足で、文句のつけようがありません。違う点は、後方から押すような動きは“ROSSIE S”はあまりしないことです。その分、転がりすぎを心配せずにきっちり打てます。
“ROSSIE S”は、テクニックで使うパターです。大型のマレットは、見た目の印象だけではなく、敏感に動かすのが難しい傾向がありますが、歴代の“ROSSIE”の魅力はテクニックを活かせるパターだったことです。“ROSSIE S”は、テクニックに応えてくれますし、大型マレットらしさもあります。両方の良いところ取りで、お見事でした。
具体的にテクニックを活かすということですが、カップ1個とか、カップ半分というような狙いの単位を、5ミリ単位に微調整できるようなイメージです。それを生かすも殺すも使い手次第で、プラスの特徴とは言い切れませんが、個人的には感動できるレベルで、この形状のパターヘッドではあり得ないことです。まさに「未知のパター」でした。
パターは最低でも、2ラウンドか、3ラウンドぐらい使わないと、本当の地金まではわからないものです。新車効果で、最初のラウンドはバッチリなのに、それで終わってしまうパターもけっこうあるのです。慣れるためにではなく、色々なシーンで使って地金を少しでも確認できるようにするのがパターをコースでテストする自らのルールです。
今回は、先に説明したように“ROSSIE S”は、1ラウンドだけ使用して、まるで自分のために特別に作られたようなパターだと勘違いしそうだったのでプレーには使いませんでした。“SEVEN S”は3ラウンド使用しました。それぞれに練習グリーンには持っていってパットの打ち比べもしました。
練習グリーンで人が使っているパターが気になるゴルファーは少なくありませんが、“EXO”パターはかなり目立つパターです。発売まで時間があり、情報があまり出ていませんから、最新の“EXO”パターだという感じではなく、「なんだか高級な感じ」とか「易しそうだ」とか「面白そうなパターだな」という目線を感じました。(一人だけ、発売前の“EXO”パターだとわかった上で、打たせて欲しいとお願いされました)
所有欲を満たすことも、パターの重要な機能だと考えているゴルファーは多数派ではないかもしれませんが、確実に存在します。尋常ではない高額なパターや、数量限定のパターが、遠目で見てもわかる工夫があるのは、所有欲を満たす機能なのだと考えるときがあります。“EXO”パターは、そういう意味でも高性能なのです。
“SEVEN S”は、一言で書くと、ミスヒットに強い易しさと、ストレートラインが決めやすい要素に溢れたパターです。ショートスラントネックは少し敏感に挙動するので、オートマチックに小細工なしで使いたいゴルファーは“SEVEN”を選ぶと良いでしょう。
“ROSSIE S”は、ミスヒットに強い易しさと繊細なタッチを両立したテクニックを活かせるパターです。ただし、“SEVEN S”と同じようにオートマチックにパットすることも可能です。その際は、違和感がなければベントシャフトの“ROSSIE”を選択することをオススメします。
2本の“EXO”パターを徹底して使って思ったのです。「もし、このパターの上代設定が2万円台だったら、爆発的なヒットパターになるだろうなぁ」と。高額なパターを使えるのは、選ばれた一握りのゴルファーだけだからです。オデッセイのパターが世界中のゴルファーに認められた理由の中に、良いものをお手頃な値段で、という点があったと思います。それが懐かしく感じてしまいました。
優れているゴルフクラブが多くのゴルファーに使ってもらえるヒットクラブになる流れは自然で、自らが紹介したものであれば尚更嬉しくなるものです。しかし、実際にはもっと良い道具が市場にあるのに、宣伝や販売戦略に惑わされて、劣っている道具がヒットをすることもあるのです。
“EXO”パターは売れるべきパターです。たくさんのゴルファーを救うパターになることを祈るような気持ちでテストを終えたのです。
スペック
EXO SEVEN S
★発売日 2018年7月中旬
★ヘッド素材 ステンレス+アルミニウム
★長さ 33インチ/34インチ
★グリップ OD WORKS TOUR DFX
★価格 42,000円+税
EXO ROSSIE S
★発売日 2018年7月中旬
★ヘッド素材 ステンレス+アルミニウム
★長さ 33インチ/34インチ
★グリップ OD WORKS TOUR DFX
★価格 42,000円+税