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アイアンにおけるカーボンシャフトのイメージは?イメージとシャフトの実力のギャップを埋めよう

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上級者のゴルフバッグはとにかく重い。鉛が入っている?と思うくらいのずっしりとした重みを感じます。その大きな原因は、スチールシャフトを使用したゴルフクラブ。

カーボンシャフトに比べ重量のあるスチールシャフトは、シャフト部分だけで90~120gになります。一般的なカーボンシャフトのシャフトの重さが50~70g前後ですので、クラブ1本で約20~70gもの差が出ます。

アイアンでスチールシャフトを使用している場合、必然的にドライバーやファウェイウッド、ユーティリティも重量バランスを考えて重いものを使用していると思いますので、合計14本になるとその差は歴然。同じ14本でも、カーボンシャフトを使用したごく一般的なクラブセットとでは、最大1kg近い重量差がでてしまうのです。

このように、スチールシャフトのアイアンが入った重たいゴルフバッグは、“ゴルフが上手い人”のシンボル的アイテムではないでしょうか?

ドライバーやフェアウェイウッドに関しては、現在流通しているもののほとんどがカーボンシャフトです。しかしアイアンになると、上級者と呼ばれるようなプレーヤーは、圧倒的にスチールシャフトの使用率が高くなります。

単純に

スチールシャフト=重い=上級者向け
カーボンシャフト=軽い=初心者・中級者向け

というイメージを持っている方は多いと思います。この「イメージ」というものはなかなか覆るものではありませんが、実は現在状況は変わりつつあります。

そんなスチールシャフトとカーボンシャフトの“イメージ”と、“現状”のギャップについて考えていきたいと思います。

住み分けできていたスチールとカーボン

US Masters Tournament

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ひと昔、ふた昔前までは、スチールシャフトとカーボンシャフトには明確な差がありました。それは「重量」です。シャフトだけで100g以上あるスチール製と、せいぜい50~80gくらいまでのカーボン製では、すでにその時点で使いこなせるプレーヤーを選んでいました。

重量のあるシャフトは、ある程度のヘッドスピードがないと打ちこなすことが出来ないからです。つまり、逆に言い換えればヘッドスピードもパワーもある選手は、必然的にスチールシャフトを選ばざるを得なかったということになります。

また、プロやいわゆる上級者がスチールシャフトを選ぶメリットは、その正確性にもあります。

トルク(シャフトのねじれ)が小さい分、ゴルファーの繊細な動きをそのままシャフトを通じてボールに伝えることが出来る点は、スチールシャフトの利点でしょう。“思い通りに打つことが出来る”といった方がいいでしょうか。

飛ばす事よりも、正確な距離を刻むことが求められるアイアンのシャフトには、やはりスチール製に軍配が上がります。しかし、良い事ばかりではありません。

金属特有のボールの衝撃を直に感じる感覚は、心地よいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、衝撃吸収性が小さいため、手首や腰に負担がかかります。プロゴルファーは腰を痛めている方も多く、非常に切実な問題でした。それでも他に選択肢がないため、使い続けなければならなかったのです。

1970年代には、カーボンシャフトが現れはじめます。その画期的な軽さと扱いやすさは初中級者にとっては魅力的でしたが、プロや上級者を満足させるまでには至りませんでした。一時期、1980年代にはカーボンシャフトが人気になり、プロも使用するようになりましたが、結局はスチールシャフトに落ち着くことになります。

現在もプロゴルファーの多くはアイアンにスチールシャフトを使用していますし、クラブメーカーは新しいクラブを発売する際には、重いスチールシャフトと、アベレージゴルファー向けの軽めカーボンシャフトの2種類を取り揃えて、購入を希望する様々なレベルのゴルファーの要望に応えています。

カーボンシャフトは、スチールシャフトに比べてトルク(シャフトのねじれ)が大きく、技術にムラがあるゴルファーにとってはスイングのブレを修正し、ボールをとらえやすくするメリットがあります。また、少しでも飛距離を伸ばしたい人にとっても、可能性が広がります。

このように、今まではスチールシャフトとカーボンシャフトを使用するゴルファーは、購入したいシャフトが被ることはありませんでした。

つまり、アイアンに関して言えば、スチールシャフトとカーボンシャフトは長い間“住み分け”されていたのです。そして、それはそのままスチールシャフトとカーボンシャフトの『イメージ』の定着にもなりました。

価格の逆転現象

China Revises Consumption Tax

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スチールシャフトとカーボンシャフトの比較は、もうひとつ価格面が挙げられます。

新しいアイアンセットを購入しようとした際に、スチールシャフトとカーボンシャフトの2パターンが用意されていることが多いのは前述の通りですが、かなり価格に差があります。

例えば、不動の人気を誇るダンロップゴルフの「XXIOナイン」のアイアンセットを比較してみると、

・ゼクシオ MP900 カーボンシャフト8本セット(#5~9、PW、AW、SW) 
メーカー希望小売価格 ¥192,000+税

・N.S.PRO 890GH DST for XXIO スチールシャフト8本セット(#5~9、PW、AW、SW)
メーカー希望小売価格 ¥152,000+税

となっており、その差は何と¥40,000にもなります。これは見過ごすことのできない価格差です。

重さはカーボンシャフトで57g、スチールシャフトで91g(フレックスSの場合)ですから、おのずと使用するゴルファーを選ぶと思うのですが、スチールシャフトを使いきれないゴルファーは、こんなにお金を多く払う必要があるのです。

通常、他のスポーツなどでは、その分野を極め、道具にこだわろうとすると価格が上昇していくと思うのですが、アイアンクラブに関しては、スチールとカーボンのシャフトに“価格の逆転現象”が起きています。

ドライバーやフェアウェイウッドなどはすでにカーボンシャフトが主流ですので、この価格のギャップは起きません。あくまでも、カーボンシャフトの中での品質の価格差です。

今後カーボンシャフトのアイアンを使用するプロが増え、主流になった頃には、カーボンシャフトの価格に対するゴルファーへのギャップは埋められるのでしょうか?

住み分けから競合へ

90年代以降のシャフト性能の向上は目覚ましく、80g台の超軽量スチールシャフトや、100g台の超重量カーボンシャフトなど、既存のイメージを覆すシャフトが次々と発売されています。ゴルフ用具の中で、近年最も進化したのが“シャフト”なのではないでしょうか?

最大の住み分けポイントであった重量も、かなり範囲が重なるようになりました。特にカーボンシャフトは技術が成熟し、ほとんどの要望に応えうるシャフトの製作が可能となっています。

また、スチールシャフトも衝撃吸収材をシャフトに入れ、体への負担を軽くするなど様々な工夫がされたモデルが出ています。多くのゴルファーにとって、どちらかしか選べなかったシャフトに選択肢が広がりましたが、あくまでも現段階では主にカスタムシャフトに限られる話で、大きな転換とまでにはならないでしょう。

イメージの払しょくと向上を目指して

PGA Championship - Round One

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2年ほど前から、谷原秀人選手がアイアンにもカーボンシャフトを使用していることが話題となっています。

これは『男子プロなのに』という隠れた枕詞(まくらことば)が存在するからこそ話題になっているもので、『プロはアイアンにスチールシャフトを使うものだ』というイメージを誰もが拭いきれないのです。

谷原選手がどんなにカーボンシャフトのメリットを発信しても、どこかに『プロのくせに』という思いが捨てきれないアマチュアゴルファーは多いのではないでしょうか?こうした“イメージ”を取り除くのはなかなか困難なようです。実際に、プロの中でもこのイメージを取り払いきれない方はいらっしゃいます。

カーボンシャフトの性能が飛躍的に向上していることは間違いありませんが、プロやトップアマチュアの選手がそれを取り入れ、主流になるにはもう少し時間がかかりそうです。(※PGAツアーや欧州ツアーでは、カーボンシャフトの使用率がかなり上がっているようです。)

多くのプロがアイアンにカーボンシャフトを積極的に取り入れれば、一気に流れはカーボンシャフトへと傾くでしょう。その頃にはカーボンシャフトの“初中級者イメージ”はなくなるのかもしれません。

スチールシャフトにも頑張ってほしい

今の時点では上級者向けといわれるスチールシャフトですが、近い将来、カーボンシャフトにその地位を奪われる可能性があります。しかし、スチールシャフトの長所の一つである価格面を活かして、是非スチールシャフトにも頑張ってほしいのです。

お金を出せば良いものが買えるのは当然ですが、ゴルフを始める場合や、もっとカジュアルにゴルフを楽しみたいゴルファーにとって、低価格は大変重要です。誰もがお金に糸目を付けず、ゴルフを極めようとするわけではありません。

そういったゴルファーのためにも是非スチールシャフトにもさらなる向上を目指し、初心者やアベレージゴルファーに使いやすいモデルの製作を目指してほしいと思っています。

価格面も考えれば、まだまだスチールシャフトにもメリットはあります。どちらのシャフトにも、

今の“イメージ”からさらに進化した低価格で初・中級者でも使いこなせるスチールシャフト
どんなゴルファーのタイプにも対応する自由自在のカーボンシャフト

を期待したいと思います。

最後に

自身が初めてゴルフを始めた時にゴルフショップで購入したのは、価格の安いスチールシャフトのアイアンセットでした。硬さや重さなど自分に合うものも分かるはずもなく、『安い』ことが一番だったのです。

現在でも、価格はクラブを購入する際の大きなチェックポイントの一つになっています。同じモデルで、何万円も安いスチールシャフトはそれだけでうらやましく思います。

シャフトの性能は飛躍的に向上し、現在はスチールシャフトとカーボンシャフトを使うゴルファーの境界線は曖昧になりつつあります。あとは、イメージの払拭でしょう。

アイアンにおけるカーボンシャフトのイメージ向上とともに、スチールシャフトにもいい意味で裏切ってもらいたいと、中級ゴルファーからの願いを込めたいと思います。

 

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