パットが下手なのはOK=コンシードが原因なんですか?~ワンランクアップするゴルフの裏技~
ゴルフのことを少しでも勉強した人なら「OK」という用語は正式ではなく、「コンシード(concede)」というのが正しいのだと言うかもしれません。
OK=コンシードかというと……ゴルフ規則と照らし合わせれば、ちょっと違うのです。でも、勉強してコンシードだと主張したゴルファーの過半数は、そこまでは知らないようです。
コンシードは、次のストロークでホールインしたことにして免除する「OK」と同じ意味だけではなく、マッチプレーにおいて、そのマッチそのもの、またはホールをコンシードすることができるのです。
「この勝負は負けです」「このホールは負けです」という意味でも使えるのです。
OKはグリーン上以外では使いませんから、「OK=コンシード」ではないのです。
OKとは、そもそも何なのか?
OKは確かに正式な用語ではありませんが、マッチプレーでは双方が同じ認識でOKという言葉を使用しているのであれば、コンシードとして規則上成立します。だから、日本国内のマッチプレーでは、しばしば、グリーン上で「OK」が使われます。
もちろん、OKはマッチプレーでのみ有効で、一般的なストロークプレーでは違反です。ボールを拾い上げたプレーヤーは「規則20-1.」の違反で1打罰を受け、ボールを元の場所にリプレースして、改めてプレーすることになります。
とはいっても、日本だけではなくアメリカでも、一般の人がゴルフをする場合の多くで、グリーン上で短いパットを免除するOKは常習的に行われています。
仲間内のゴルフや、コンペのローカルルールで進行を早めるためにためであれば目くじらを立てることなく受け入れるのは処世術であり、大人の対応だと思います。ただし、ときには、OKなしの正式なストロークプレーをすることもセットにして欲しいと思います。
コンシードがどういう経緯で日本国内でOKになったのかは、よくわかっていません。しかし、昭和の初期には「OK」という言葉でパットの免除をしていたようです。
ちなみに、アメリカでは「OK」と同じ意味で「ギミー(gimme)」という言葉を使います。これはスラング的な英語で、元は「give me」だったと考えられています。現在では、「ゴルフで相手にコンシードしてもらいたくなるような短いパット」という意味で、辞書にも載っています。
世界マッチプレーやライダーカップなどのマッチプレーを観戦していると、コンシードという用語ではなく、アメリカの選手は「good」の一言で意志を伝えて、相手もボールを拾ったりもしています。これらのことを考慮すると、「good」が輸入されて「OK」になったのかもしれません。
ゴルフ英語の常套句として、「OK」に関連するもので知っておきたい言葉があります。「イン・ザ・レザー(in the leather)」です。意味は、「OK」と同じです。
現在では、ゴルフクラブのグリップはゴム製です。しかし20世紀の中頃までは、「革巻き」と呼ばれる、革を巻き付けたグリップが主流でした。「イン・ザ・レザー」のレザーは、この革巻きグリップのことです。つまり、「グリップの長さの内側にボールが止まったので、拾って良いですよ」という意味なのです。
革巻きのグリップは、今のグリップより長く巻いてあるものもたくさんあるので一概には言えませんが、おおよそ30センチくらいがその対象だったのだと考えられています。
OKの呪縛に捕らわれる恐怖
社用族で、会社の経費以外でゴルフをすることが滅多にない友人とプレーして驚いたことがあります。
「OKなしでゴルフをするのは初めてだから、短いパットをするのが怖い」
そう言いながら、彼は短いパットを外しまくりました。こうなると一種の病気です。
笑い事ではありません。多くのOKでゴルフすることに慣れているゴルファーは、大なり小なりこの病気の患者なのです。さらに別の病気もあります。OKする長さが、どんどん長くなってしまうものです。
イン・ザ・レザーの30センチを越えて、パター1本分、ドライバー1本分……。
自分の長めのパットをOKしてもらったので、相手のパットもOKしようと考えたりしているうちに、OKの距離は長くなっていきます。
接待ゴルフなんだからしかたがない、という言い訳も聞こえますけど、TPOを使い分けるのは悪いことではありませんので否定しません。ただ、最低でも同じだけOKなしの普通のストロークプレーのゴルフもして、リハビリをするようにしてください。これが病気の予防になります。
ハンディキャップを持っているプレーヤーは、原則としてラウンドごとにスコアを提出しなければなりません。良いスコアだけを提出したりするのはゴルフの精神に反しますし、正しいハンディキャップの算出ができないので大問題です。
こういうケースでも、OKを採用したスコアは正式なものと認められないので注意が必要です。ゴルフは自らが審判です。誰にも恥ずかしくない裁定を自分自身にするように意識しましょう。
ゴルフは残酷で、練習グリーンでも、そのゴルファーの資質を隠せないものです。いわゆる上級者で、短いパットの練習を省略している人は皆無です。
ある程度ゴルフを経験した上で賢明な判断ができる人であれば、短いパットの練習こそ必要だと知っているはずなのに、パットが上手くならない人ほど、長い距離の練習ばかりして短い距離は全くしないことがよくあるのです。これも「OKの距離だからいいや」と考えているのであれば、大きな障害となっているわけです。
原則として、短くなるほどパットは簡単になります。OKの呪縛と無関係な人は、OKありのゴルフを物足りないと感じることができます。理由は簡単です。ボールがカップインする快感は、ゴルフの醍醐味の一つだからです。
ボールがカップに沈む快感を奪われているのに、スコアが良くなったと喜ぶのはなんとも滑稽です。
OKはゴルファーを試している
「OKなしでゴルフをしよう」なんて今さら恥ずかしくて言えない、という相談を受けることがあります。カッコつけているみたいで嫌だということのようです。
周囲の人を巻き込まなくとも良いのです。自分の問題です。自分で解決しましょう。進行を理由にOKを強制されていない場合であれば、自分だけOKなしでゴルフをすることはなんら難しくありません。
例えば、長い距離なのにOKをもらったら、流石に「これはOKじゃないですよ」とマークすれば良いのです。短い距離の場合は「お先に打たせてもらいますね」と打ってしまえば解決です。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ということで、ズルズルといつまでもOKの呪縛から抜け出せない人に、ゴルフの神様は冷酷です。ますます短いパットは下手になって、いざ正式なゴルフをしようとしても楽しめなくなってしまうのです。
習慣を変えるのは大変かもしれませんが、思い切ってやってみれば、その先には苦労の何倍も大きい楽しさが待っています。自分だけ損をするのは嫌だというのは、実行していない故の無知な発想です。逆だからです。自分だけがパットを最後まで楽しめるのは、損ではなく、得です。
ストロークプレーのゴルフはホールインを18回も楽しめると考えれば、正式だとか、違反だとか、そういう理屈ではなく「OKはやむを得ないときだけ」と決められます。
短いパットは、お先にとお気楽に簡単に打って入れる。慎重になりすぎるのも病気の一つです。OKの意識を変えて、短いパットを面白くすると考えられれば、それだけでパットが上手くなるような気がします。
「ゴルフを楽しむ」という根幹は、こういうところにあるです。