あなたは選ばれるのか? 『iBLADE』『VAULT PUTTER』は面白い/ゴルフの最前線から情報発信!
ピンは現在のゴルフクラブの常識の一部を作ってきたメーカーで、機能優先でゴルファーを導いてきました。
9月発売の“iBLADE”を見て、見た目のシンプルさに戸惑ったピンのファンがたくさんいるようです。ピンらしくないという評価は、その戸惑いが生んだものだと推測されます。しかし、実際に手に取って、試打してみるとピンらしさ満載だと安心できるものでした。
クリーンという言葉に隠された秘密
「クリーンなルックスに……」
新製品発表会でさり気なく使われた言葉です。“iBLADE”(アイブレード)という新しいアイアンのバックフェースは、まさにクリーンでシンプルです。
プレーンバックという用語がありますが、一見すると、その手のアイアンだと思ってしまいます。ピンは、ブレードアイアンとこの形状のアイアンを呼ぶようです。
トップブレードからバックフェースを覗くように見てみました。僕はピンらしいと嬉しくなってしまいました。機能優先がピンの特色です。乱暴な表現で書けば、雑なところも魅力なのです。中身が最優先で、それ以外は最小限で良いじゃないか、という潔さが良いのです。
“iBLADE”は中空アイアンのような構造なのです。えぐれた中には、余計な振動を吸収するためにエラストマーCTPが入っているのです。その大きさは、同じような構造だった“S55”の1.6倍です。
エラストマーCTPの現物を見せてもらいましたが、その大きさの違いにビックリです。
“S55”の話が出たので書きますが、今回の“iBLADE”から『S』シリーズは『i』シリーズに吸収されることになりました。クリーンなルックスは、そういう責務を担っているようにも見えてくるのです。
メッキに隠れて見えないのですが、全番手、トウ側にタングステンが埋め込まれています。重いタングステンを入れることで、左右のミスヒットにも強くする意図のようです。ロングアイアンだけトウ側にウェイトを入れているアイアンは他にもありますが、全番手というところがピンらしさです。
試打させてもらいました。まずは、構えやすいです。フェースだけを見ていれば、色々な機能が隠れていることは忘れてしまいそうです。
ピンのアイアンというと飛ぶという印象を持つ人が多いですが、“iBLADE”は伝統的なロフトを採用していて、基本的には飛ぶアイアンではありません。
試打して感じたのは、色々なことができそうなアイアンだということでした。左右の曲がりはアイアンの機能で抑えられていますが、中空アイアンにありがちな高低を打ち分けるのが難しかったり、スピン量を調整しづらいということはありませんでした。
それでいて、ミスヒットによる距離のロスは最小限で済むように工夫されています。狙ったところに正確に当てて振れば、ちゃんと意図したボールが出ます。
打感はちょっと不思議な感じでした。やや重い手応えが伝わるのですけれど、ボールはビュンと速く飛び出る感じがしました。強い反発力もありながら、手応えは逆にしっかりしているのです。打感までを機能だと考えるゴルファーは、好き嫌いが分かれるところだと思います。
今回は試打ブースにトラックマンという計測器があったので、色々と数値で確認することができました。マットの上と、芝生の上では結果が違うということもよくあるので言い切れませんが、確認できる範囲では、良い意味で予想を裏切られました。
「あなたはこのアイアンに選ばれるだろうか。」というキャッチコピーは重いです。
“iBLADE”は、使い手の技量をクリーンに剥き出しにするアイアンだといえます。
最後にもう一つ感心したことを伝えます。手触りと視覚効果です。アイアンをバッグから抜くときに、ヘッドに手をかけたゴルファーにさり気なく満足を与えるための工夫がありました。
新しく採用された『新パールクローム仕上げ』というメッキは、すべすべしているのに金属っぽくなくて気持ちが良いのです。思わず何度もスリスリしてしまいました。
そして、番手の数字はミラー仕上げなのです。あまり見たことがないので目立ちますし、視覚効果としても、高級感を感じて好印象でした。
余計なことだと馬鹿にするのは簡単ですが、こういうところにまで目が行き届いているところが、ピンのピンたる所以なのです。個人的には、この手触りと見た目だけでも、十分に使用を検討したくなりました。
“VAULT”は本気のゴルファーのためのパター
“VAULT”(ヴォルト)は、ピンの本社にある『ゴールドパタールーム』の別称です。
ピンのパターを使用して優勝したプレーヤーに、使用したのと同じパターに金メッキをしてプレゼントしているのですが(希望している契約プロなど一定条件があるみたいですけど)、そのときに作ったレプリカが全て納められている金庫のような部屋がヴォルトなのです。この部屋には、ピンパターの勝利の歴史が詰まっています。
最高品質の削り出しパターのシリーズの名称として、なかなか良い雰囲気のあるネーミングです。
“VAULT”には5つの形状のパターが用意されています。
ピンの代表的な形状である『ANSER 2』(アンサー2)
コンパクトに見えるヘッドに王道の機能を詰め込んだ『VOSS』(ヴォス)
LPGAで投入されて、いきなりメジャー優勝に貢献した『OSLO』(オスロ)
直進性に特化した『BERGEN』(ベルゲン)※画像右
日本先行発売のミッドマレット『ARNA』(アーナ)
『ARNA』の画像を見てもわかるように、それぞれにシルバー調のプラチナム仕上げとマットブラック調のスレート仕上げがあります。5種類で10タイプのラインアップです。
更に、グリップも細いスタンダードなPP58と、太めで軟らかいPP62から選べるようになっています。
ピンらしいです。パターにゴルファーが合わせるのではなく、徹底的にユーザーの希望にパターをアジャストするのがピンの流儀なのです。
最近のピンのパターフェースはTR溝というミーリングが施されていますが、“VOULT”からそれが新しくなりました。普通のパターのミーリングは全体に同じ深さで溝が掘られていますが、新しいTR溝は中央部分が深く、周辺は浅いのです。
実際に打ってみると、この新TR溝はかなり効きます。軟らかい打感は特別なものでした。
『ANSER 2』と『VOSS』と『ARNA』の3つは、303ステンレスの削り出しのヘッドです。
『OSLO』と『BERGEN』の2つは、軟らかい6061アルミニウムで本体を作り、ソールは17-4ステンレスです。
大型マレットがミスヒットに強いことは構造上でも明かですが、構えるとボールの大きさと溝や膨らみがリンクして集中しやすいように設計されています。これも機能といっても過言ではないと考えます。
ヘッドが大きい安心感は、同時に正確な狙いをしづらい欠点になるケースがありますが、『OSLO』と『BERGEN』はその不安を感じませんでした。
『VOSS』もバックフェースの溝の幅がボールの幅とリンクします。
小ぶりのヘッドは、パットが決まりだしたら止まらなくなる予感をさせます。自分の感性とシンクロしたら…… とイメージできるパターを僕は大好きです。
打ってみると、小ぶりのパターではありがちな強く弾く感触が全くありませんでした。優しいけど、強い転がりのボールがでます。不思議でした。
パターをマットで転がしながら、時間がいくらあっても足りない感じがしました。5種類、10タイプを納得いくまで試すには、最低でも3時間ぐらいはかかりそうですし、可能であれば、自然光の下で、広いグリーンという場所でやりたいところです。
短い時間の中で、わかったことは、ピンのパターの操作性の高さです。
ヘッドには適度な重みはあるのですけど、パットを実際にすると、その重さを感じさせないほど、敏感にパターを動かせるのです。それは、勝手な動きをするのではなく、自分の意志を反映して動くという意味です。
個人的には『VOSS』のプラチナム仕上げが最も好印象でした。素振りしているような自然なストロークができるのと、方向が絞りやすかったのです。
“VOULT”はラグジュアリーなパターです。
パットに悩んでいる人が、道具のせいにできない究極の1本として手にとって、練習しまくるというストーリーや、いつかは使って見たいと憧れる1本のパターというストーリーが浮かびました。そういう想像をしてしまうパターです。
ピンの用具は面白いです。打つ前に説明を聞くだけでもワクワクしますし、打ってみても感心させられることばかりでした。
今回の“iBLADE”も、“VOULT”も本当に面白かったです。
ピンは色々なゴルファーに対応して、複数のシリーズを展開しています。今回紹介した“iBLADE”はその最上位機種となります。まさに選ばれたゴルファーのためのアイアンです。逆に、パターは最もプロとアマチュアで用具に差がない道具です。選ぶのは自分自身です。
スペック
iBLADE
★発売日 2016年9月9日
★番手/ロフト 3/20度、4/23.5度、5/27度、6/30.5度、7/34度、8/38度、9/42度、PW/46度
★シャフト DG S200、N.S.PRO 950GH、N.S.PRO MODUS³ TOUR 105、N.S.PRO MODUS³ TOUR 120
★価格 1本 ¥21,000 (税別)
★ヘッド素材 431ステンレススチール/タングステン
VAULT PUTTER
★発売日 2016年9月
★長さ 標準 34inch 31~36inchで対応可
★ライ角 標準 70度 ANSER2、VOSS、ARNAは±4度調整可能、OSLO、BERGENは±2度調整可能
★価格 1本 ¥46,000 (税別)