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さあユーティリティを使おう!飛距離と番手の複雑な関係。失敗しないUT選びとは!?

いきなりですが、あなたの好きなクラブはなんですか?

“得意なクラブ”と言い替えても良いのですが、ドライバーですか?5番ウッド?7番アイアン?たくさんの声が聞こえてきそうですね。

もちろん人によって好きなクラブは様々ですが、「5番アイアンが得意」というゴルファーも多いはず。

ゴルフ練習場でも5番アイアンの練習をしない人というのは、かなりの少数派ではないかと思います。例えば、自分のキャディバッグに5番アイアンが入っていないところって想像できませんよね?

では、そんな自分の好きなクラブを頭に思い浮かべながら、ある女子プロゴルファーの、あるトーナメントでのクラブセッティングを見てみましょう。1~14の番号は、クラブの本数を表しています。

1.ドライバー:ブリジストンゴルフ J715 B3ドライバー(9.5度)
2.3番ウッド:ブリジストンゴルフ ツアーステージ X-DRIVE701FW(15度)
3.4番ウッド:ブリジストンゴルフ ツアーステージ X-FW(21度)
4.4番ユーティリティ:ブリジストンゴルフ PHYZユーティリティ(22度)
5.5番ユーティリティ:ブリジストンゴルフ PHYZユーティリティ(25度)
6.6番ユーティリティ:ブリジストンゴルフ PHYZユーティリティ(28度)
7~11.6番アイアン~PW:ブリジストンゴルフ J15 DF アイアン
12~13.ウエッジ(52度、58度)
14.パター

もうお気づきですよね。そうです、このセットには“5番アイアン”が入っていません。

もちろん、プロのゴルファーはコースの仕様によってクラブセッティングを毎回調整するので、いつもこの組み合わせでプレーしている訳ではありません。

しかしながら、プロゴルファーのキャディバッグに5番アイアンが入っていない事があるというこの“事実”。これには、さすがに驚かされました。

このセッティングの場合、5番アイアンと同等の飛距離を得られるクラブとしては、7番ウッドか5番ユーティリティあたりが考えられます。ボールの置かれた状況によって使い分けていると思いますが、厳しい世界で戦っているプロゴルファーの、勝利への気迫を感じるセッティングだとは思いませんか?

実はこれ、皆様の中にファンの方も多いと思いますが、今や女子プロゴルファー界のトップの一人、宮里藍選手のクラブセッティングだったのです。

数年前まではプロのゴルファーにとっても、5番アイアンは最も重要なクラブの一つだったはずです。では、その5番アイアンを外してでも宮里藍選手がキャディバッグに入れたかったクラブとは、一体なんだったのでしょうか?

それが今回のテーマ“ユーティリティ”です。ここでは「ユーティリティを使いこなす為の3つのポイント」を、飛距離を軸に分かりやすくお伝えいたします。

あなたもユーティリティと仲良くなって、一つ上のステージへ行ってみませんか?

《いまさら人に聞けない!そもそもユーティリティってなに?》~まずは基本知識から~

いまから二十数年くらい前に、ゴルフショップでキャロウェイの「7番ウッド」“Heaven”を見たときの衝撃は忘れられません。

それまでは一般的なゴルファーの既成概念として、“ウッド”と言えば「ドライバー(1番W)、スプーン(3番W)、クリーク(5番W)」の3本セットが主流でした。そこに突如“ショートウッド”と呼ばれるクラブが出現したのです。

「楽に遠くに飛ばせる」という使い勝手の良さだけではなく、プロゴルファーが積極的に採用したことも後押しとなり、難しいロングアイアンに代わり、ショートウッドがゴルファーの強い味方になりました。

ところが、クラブの進化はまだまだ止まらず、ショートウッドの“向こう側”とも言える画期的なクラブが出現しました。それが“ユーティリティ”なのです。

ユーティリティ(UT)はフェアウェイウッド(FW)とアイアンの特性を合わせ持った“中間的”なクラブという位置づけで、“ハイブリッドクラブ”とか、ラフなどのトラブルショットで活躍する場面が多いことから、“レスキュークラブ”とも呼ばれています。

初めてUTと出会ったのは、やはり20年近く前になると思いますがゴルフショップで見たテーラーメイドの“レスキュー”シリーズだと記憶しています。

アイアンでもなく、ウッドでもない独特のヘッド形状は、現在のUTの半分くらいの大きさに見えました。ヘッドに多少の違和感を持ちながら試打をしてみると、深いラフから200ヤード先のグリーンに綺麗にオンするイメージが身体の中に広がっていったことを鮮明に覚えています。

さて、FWとUTの歴史を勉強したところで、UTの説明に入ります。

まず、UTがFWやアイアンと大きく違う点は、ズバリ“ヘッドの形状”と“シャフトの長さ”です。

ヘッドはFWより一回り小さくなりますが、アイアンと比べるとソールも広くボリュームがあり、低重心なのが特徴です。当然アイアンと比べてスイートスポットも広く、高弾道の軌道が出やすくなります。

また、FWと比較するとやや直線的な弾道となるので、キャリーだけではなくランも稼げる仕様となっています。つまり、ピンをデッドに狙うのではなく、手前からラインに乗せて転がしてピンに寄せることができるという点もUTの特徴となります。

次にシャフトの長さですが、こちらもFWとアイアンの中間となります。FWよりも少し短く、アイアンよりも少し長いのが特徴で、FWよりもミートしやすく、アイアンよりも遠くにボールを運ぶことができるというバランスの良さもこれまでになかったものです。

この独特のヘッド形状と、シャフトの長さで深いラフなどのトラブルショットでもヘッドが抜けやすく、しかもボールにミートしやすいので、多くのピンチからあなたを救ってくれます。UTの別名が“レスキュー”というのもうなずけますよね。

つまりUTとは“FWよりもミートがしやすく、アイアンよりも遠くに飛ばせて、いざという時に頼りになる”クラブと言えます。ソールもアイアンと比べて広いのでダフリ難く、まさに“いいとこ取り”のクラブなのです!

FWはロングアイアンの代わりとして活躍してきたクラブですが、UTはショートウッドやロングアイアン、さらには4番・5番アイアンのような“ミドルアイアン”の代わりとしても選ばれるクラブにまで成長してきているのです!

ゴルフ キャディーバッグ

《意外と多い!ユーティリティ選びの失敗》~飛距離を意識したユーティリティ選びのすすめ~

そんなに良いクラブならすぐにでも欲しい!と思ってゴルフショップに走って行こうとしているあなた、もう少しお付き合いください。

ユーティリティ(UT)はフェアウェイウッド(FW)やアイアンと違って、自分にあったクラブを選ぶのがとても難しいクラブの一つなのです。なぜかというと、UTはメーカーによってスペックが微妙に異なるためです。次のメーカー別UTのスペック比較をご覧下さい。

例1)
A社の4番UTのスペック:ロフト22度/シャフト長さ39.50インチ
B社の5番UTのスペック:ロフト23度/シャフト長さ39.50インチ

例2)
C社の5番UTのスペック:ロフト25度/シャフト長さ38.75インチ
D社の6番UTのスペック:ロフト25度/シャフト長さ39.00インチ

いかがですか、この微妙なスペックの違い。
例1)ではロフト角が1度違うだけ、例2)ではシャフトがわずか0.25インチ(約6ミリ)違うだけで、ほぼ同じスペックにも関わらず、それぞれ番手が一つ違います。

極端な話になりますが、メーカーによるスペックの違いに関する知識を持っていないと、同じキャディバッグの中にC社の5番UTとD社の6番UTが入ってしまうという事態も招きかねません。

FWでも、同じメーカーで揃えるのが好きなゴルファーと、メーカーにはこだわらず番手ごとに気に入ったクラブを選ぶゴルファーがいると思いますが、後者の方は特に注意が必要となります。アマチュアゴルファーにおける“UT選びの失敗あるある”といったところでしょうか。

また、一般的にウッドが得意な人はフェアウェイウッド(FW)を選び、アイアンが得意な人はUTを選ぶと良い結果が出やすいと言われています。

これはスペックそのものよりも、プレーへの精神的な影響が大きいようですね。構えた時の感覚、試し打ちをした時の手ごたえ、そして打ったボールの弾道のイメージなど五感をフル活用して選ぶことが大切です。

では、そんなUT選びで失敗しない方法はあるのでしょうか?その答えは実にシンプルです。

答えは「ゴルフショップの店員さんに聞くこと」なんですね。

とは言っても、ゴルフショップの店員さんも「自分に合ったUTはどれですか?」と漠然と聞かれても困ってしまいます。そこで、ゴルフショップに行く前に、今あなたが使っているゴルフクラブの情報をしっかりと把握しておきましょう。

*現在使っているセットの内訳とメーカー(ウッド、アイアンだけでOK)
*それぞれのクラブの長さ、ロフト角、飛距離(もちろんご自身の飛距離です)
*苦手なクラブ(あなたが取り替えたいクラブですね)

それでは、この情報を元に、ゴルフショップの店員さんに相談してみましょう。

UTを購入するポイントは「足し算、引き算」です。

例えば「ずっとキャディバッグに入っている2番・3番アイアン。でも全然使ってないし、たまに使ってもミスショットばかり」ということであれば、(現在のセッティング)-(2番・3番アイアン)+(UTx2本)=(新しいセッティング)となります。

この時に「2番アイアンは200ヤード、3番アイアンは190ヤード」というように、番手毎の自分の飛距離もショップの店員さんに伝えましょう。

さらに、あなたの愛用しているFWのスペック(ロフト角)の情報も伝えることをお忘れなく。これは、現在お持ちのFWのスペックとUTのスペックが重複しないようにするためのとても重要な情報となります。

なぜならロフト角が同じFWとUTであれば、FWを1グリップ短く持てば、その2本はほぼ同じスペックのクラブとなってしまうからです。次の二つのFWとUTの組み合わせを比べてみてください。

組み合わせ例(1)
5番FW(ロフト角19度)
4番UT(ロフト角22度)

組み合わせ例(2)
5番FW(ロフト角19度)
3番UT(ロフト角19度)

何となく番手表示だけを見ると(2)「5番FW&3番UT」の方がバランス良く見えますよね?ところが、ロフト角を見ると(1)「5番FW&4番UT」の方が、断然応用の範囲が広がります。

自分のカバーしたい飛距離とロフト角に十分注意して、さらに現在愛用しているFWとの組み合わせも考慮ながら、店員さんにたくさん質問してあなたにぴったりの1本を探し当ててください。

また、ゴルフショップでは最新ギア情報などもしっかりと押さえておきたいところです。思わぬクラブとの運命的な出会いが待っているかもしれませんよ。

《ユーティリティは何本持っていれば良いの?》

冒頭にご紹介いたしました宮里藍選手は、3種類のユーティリティ(UT)を入れていましたね。では我々アマチュアゴルファーにとって、UTは一体何本が適正な本数なのでしょうか?

現時点でのアマチュアゴルファーのUTの平均保有本数は、まだ1本に満たないレベルかもしれません。個人的な感覚になりますが、10人中UTを2本持っている人が2人、1本持っている人が3人、もっていない人が5人といったところでしょうか。

大きな理由の一つに、UTに興味を持っているものの、なかなか手を出せないでいる人が意外と多いことが考えられます。

最近では市販されているゴルフセットにあらかじめUTが含まれているものもあるので、若いゴルファーの方は比較的抵抗感なくUTを使用しているようです。しかし、長年アイアンとウッドでプレーをしてきたベテランのアマチュアゴルファーにとっては、まだまだハードルが高く感じられるのかもしれません。

一方、日本のプロゴルフ界において、UTはもはや必須ゴルフ用品の一つとなっています。関心レベルの話も含めると、ほぼ100%のプロゴルファーがUTに関わっているのではないでしょうか。

一打に何百万円という賞金が掛かっている多くのプロゴルファーに支持されていることから、ユーティリティが高い信頼を得ていることは間違いありません。

パターのように“絶対になくてはならないもの”ではありませんが、今あなたが使っているゴルフクラブを見直すという意味で、“もしもUTが自分のキャディバッグにあったら”といった軽い気持ちでシミュレーションだけでもしてみると結構楽しいですよ。特にベテランゴルファーの方!食わず嫌いはあなたのフェアウェイを狭くしますよ!

本数に関しては、FWとのバランスを考えながらFW2本・UT2本、またはFW3本・UT1本、場合によってはFW1本・UT3本というように、ドライバーを入れて計5本未満を目安として揃えるのがアマチュアゴルファーにとっては適当かと思います。ドライバーと3番ウッドを中心に、最適な組み合わせを考えてみてください。

アマチュアゴルフの楽しみ方は人それぞれ

宮里藍選手のように5番アイアンを外した迫力満点のセッティングにも憧れますが、あのようなセッティングはプロゴルファーがコースを攻略して優勝するために選んだ結果だということを理解しておかないといけません。

宮里藍選手は5番アイアンが苦手な訳でも、嫌いな訳でもないのです。ただ、勝負に勝つためには5番アイアンを外してでも持っていなければならない“武器”があった、ただそれだけのことなのです。

ゴルフ 飛ばし

トラブルショットの多いアマチュアゴルフにとって、5番アイアンはまだまだ使用頻度の高いクラブの一つです。個人的にはキャディバッグから抜くことはあまりおすすめできません。

しかし、アマチュアゴルフを別のアングルから眺めてみると、どうでしょう?

“憧れのプロゴルファーのクラブセッティングやプレースタイル、ファッションなどを完全コピーしてプレーをしたい!”

スコアまでは完全コピーはできなくても、これなら物理的に実現することは可能です。

なんだかワクワクしてきますよね?こんな楽しみ方ができるのも、アマチュアゴルフの特権であり醍醐味なのです。あまり型にこだわらず、自由に楽しみましょう。

でも、良いユーティリティを手に入れて打つのが楽しくなったとしても “ゴルフはたくさん打った人が勝つスポーツではない”ことはお忘れなく。

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