時松隆光は平家の血を引く武者ゴルファー、今季ラッキーな2勝目 | ゴルフ動画マガジン GOLFES
GOLFES

見つかる、楽しむ、あなたのゴルフライフ。

時松隆光は平家の血を引く武者ゴルファー、今季ラッキーな2勝目

ラッキーな2勝目

大型台風が迫る10月22日、暴風雨に見舞われた袖ヶ浦カンツリークラブではコースコンディションが回復できないため、ブリヂストンオープンゴルフトーナメントは36ホールに短縮して中止しました。その結果、2日目終了時点で2位イ・サンヒに2打差をつけていた時松隆光が優勝となったのです。

4日間72ホールの大会が半分に短縮されたのは、1973年ツアー制度施行以降7試合目でした。ラッキーとは言え、時松は2日目の雨と風の中、スコアは64の7アンダーと攻めていました。

「天気が悪くなるとわかっていたので、ショットで攻めて、パットも強めに打っていたのがハマりました」(時松)。

まさに平家の子孫らしい攻めのゴルフで勝ち取った優勝でした。

「隆光」はプロ入りする際の名前

実は、時松選手の本名は時松源蔵(ときまつ・げんぞう)と言います。時松家は先祖が平家の流れを引く武士の家系です。「源氏に勝たなければならない」と、多くの先祖が名前に「源」の文字を使ってきたと言います。

2012年にプロ入りを決めてから、父・慊蔵(けんぞう)さんが「プロになって活躍できるよう勝負運が付く名前」として「隆光(りゅうこう)」を勧めました。プロゴルファーの登録時は本名でなければならないとの規定はなく、自由に登録名を決めることができます。

初優勝はシンデレラストーリー

プロ転向後、時松はすぐにシード権を得ることはできませんでしたが、2016年JGTOチャレンジツアーのジャパンクリエイトチャレンジin福岡雷山で優勝します。さらにこの優勝によって、レギュラーツアーのダンロップ・スリクソン福島オープンの出場権を獲得します。このダンロップ・スリクソン福島で時松は本領を発揮します。

本戦大会3日目に首位に立つと、最終日には2位に3打差をつけてツアー初優勝を飾ります。この時、時松が成し遂げた「チャレンジトーナメント優勝で出場資格を得た公式ツアーで優勝」は、男子ゴルフ界で史上始めての快挙となりました。

さらにその翌週開催されたネスレインビテーショナル日本プロゴルフマッチプレー選手権レクサス杯(ツアー競技外)で、藤田寛之、谷口徹、小田孔明の賞金王3人を次々破り、見事に優勝。賞金1億円を手にします。時松はシンデレラボーイと呼ばれました。

生まれた時から病気と戦う

時松の母・たか恵さんが、医師から心臓の音に雑音が交じる、と伝えられたのは、時松が生後4ヶ月を迎えた時でした。心房中隔欠損症という、右心房と左心房の間に親指ほどの穴があく先天性の病でした。

医師には「16歳までに手術しなければ、それ以降大きく育つ保証はない」と言われており、4歳で手術を決断したそうです。当時は風邪を引いたら入院を繰り返し、手術後も学生時代まで検診は欠かさなかったといいます。

そんな時松に父・慊蔵さんは5歳の時にゴルフ練習場に連れて行きました。「少しでも身体が強くなれば。死ななければ、それでいい」との思いがあったとのこと。幼い時松は長いクラブを脇に挟んで無心にボールを打ち続けたと言います。

ゴルフに真摯に向かう

病気の後遺症に悩まされることなく育った時松は、ゴルフの名門校沖学園中学校、高校に入学します。高校1年ですでにレギュラーとなり、全国高等学校ゴルフ選手権大会で団体優勝を飾りました。

そんな時松の真摯にゴルフと向き合う姿勢は、ジュニア時代の恩師、篠塚武久コーチの教えが元になっているそうです。

「コースと友達になれ。ガッツポーズなんかをして、友達に逆らうべきではない」

実際に時松はコース、相手への敬意をどんな時でも忘れません。ダンロップ・スリクソン福島オープンで初優勝を飾った時も、最終18番でウイニングパットを決めても、ガッツポーズはなく、握手をするために同伴競技者のもとへ静かに歩み寄りました。

独特のベースボールグリップ

一般的なゴルフのグリップは、インターロッキングやオーバーラッピングです。これは左手の親指を右手で挟むグリップです。

ところが、時松はいわゆる野球のバットを握るように両手を絡ませないベースボールグリップでクラブを握ります。時松がこのスタイルでグリップするのは今でもスイングチェックをお願いしているジュニア時代からのコーチ、篠塚さんの教えを守っているからだそうです。

篠塚さんの話によると、両手を強く握ってしまう人はスイングをすればするほど、左手親指付け根を痛めてしまうことがあるそうです。篠塚さん自身も左手親指を痛めてしまい、のちにベースボールグリップに変更したゴルファーのひとりなんだそうです。

トップアマで真剣にゴルフに取り組んでいる人や、プロの中にも左手親指を痛めている人がいます。これらはグリップが原因であることが多いのですが、そもそも両手を絡めていないベースボールグリップではその心配は要りません。

時松自身、周囲のプロがまったく採用していないベースボールグリップを続けることに抵抗があったようです。それでも恩師の教えを守ることで、今でも左手親指の痛みを覚えることなく若手のトッププロとなりました。

時松隆光のクラブセッティング

昨年までナイキのクラブを使っていましたが、同社がクラブ事業撤退を発表。今後のクラブ選択に悩んでいましたが、福岡県の先輩、手嶋多一のおかげで解消できました。試合会場のロッカーがよく隣になる縁で、アイアンは手嶋が使っているミズノのMP-66、ドライバーもMP TYPE-2を紹介してもらったそうです。

ボールも以前ブリヂストンスポーツを使っていたこともありツアーB Xを投入、パッティングのフィーリングも戻ってきました。ドライバー、アイアンとの相性もよく、時松もやっと安定してきた矢先の2勝目でした。

【ドライバー】
ミズノ MP TYPE-2ドライバー (ロフト9.5度) 
シャフト:グラファイトデザイン ツアーAD MJ6 X 45.5インチ
【フェアウェイウッド】
テーラーメイド M2 フェアウェイウッド(2017)3番ロフト15度、5番ロフト18度
【ユーティリティ】
エーデザインゴルフ Aグラインド(ロフト21度、24度)
【アイアン】
ミズノMP-66 アイアン (5番からPW)
【ウェッジ】
フォーティーン RM22 ウェッジ(ロフト52度、58度)
【パター】
オデッセイ プロタイプiX #1
【ボール】
ブリヂストンスポーツ ツアーB X

(注)プロは頻繁にクラブ調整を行うため、実際使用するギアセッティングとは異なる場合があります。

成長著しい若武者

2017年シーズン、時松はブリヂストンオープンゴルフトーナメントで通算2勝目を挙げたことで賞金ランキングが上がりました。この優勝によってシーズン最終戦「日本シリーズJTカップ」の出場権を得た他、来年8月の世界選手権シリーズ「WGCブリヂストン招待」(オハイオ州ファイヤーストーンCC)出場権も獲得しました。

「1勝目は運、2勝目は実力と言いますけど、僕の場合は2勝目も運。3勝目は72ホールやって実力で勝ち取り、認めてもらいたいです」と時松。そのチャンスは思いのほか早くやってきそうです。

関連記事