タイガー・ウッズがオーガスタに帰ってくる!あの伝説のアイアンショットが復活するか。この瞬間を世界が待ち望んだ
- 2018.03.30
- トピック
さすがの見せ場に観客も大盛り上がり
まさにタイガー・ウッズの真骨頂です。アーノルド・パーマー招待(3月18日)最終日、7アンダー10位タイからスタートしたタイガーは15番までにスコアを5つ伸ばし、首位と1打差。全盛期を思わせるタイガー・チャージに大観衆は大喜びでした。
残念ながら16番ロングでティーショットを左のOBに入れて痛恨のボギー。17番ショートも連続ボギーとし、優勝戦線から脱落しました。
結果的には5位タイ。タイガー自身も「昨年末にはまだ何も見えていなかったが、この結果は非常に大きい。この5、6週間は非常にいい結果だ」と手応えを感じています。
バルスパー選手権(3月11日)でも、3日目まで1打差の2位につけ、2013年以来のツアーVへ観客もメディアも大きな期待を抱きました。最終日17番で13mのバーディパットを決めて再び首位に1打差に迫ると、グリーン周りの大ギャラリーが熱狂します。
18番のバーディパットは残り12m。決めればプレーオフのパットはわずかに届かず。大きなため息がもれる観客の悲喜こもごもは、まさにタイガーならではの懐かしさを感じさせる光景でした。
アーノルド・パーマー招待予選ラウンドでタイガーと一緒に回った松山英樹は「ショートゲームもアイアンもかなり仕上がっている。ティーショットがまっすぐいけば勝てないと思う。強敵というより、ただすごいなぁと思った」と半ばアキレ気味。タイガーは42歳にして、松山のドライバー平均飛距離275.1ヤードを24ヤードも引き離していました。
数字が物語る復活ストーリー
バルスパー選手権でのタイガーのスタッツを見るとショットの精度が高まっていることが現れていました。ティーショットこそドライバーの使用が少なかったので、4日間の平均距離は296.2ヤードで37位でしたが、フェアウェーキープ率59.6%は16位、パーオン率は66.7%8位と優勝者レベルに近くなっています。
逆にアーノルド・パーマー招待ではフェアウェーキープ率60.7%は66位、パーオン率は62.5%53位と予選通過77人の中で奮わなかったものの、ショートゲーム貢献度2位、パッティング貢献度8位、アプローチショット貢献度19位でした。ショートゲームに冴えを見せ、ティーショットこそ安定すれば、十分優勝できる数字でした。
さらに驚異的なのは、バルスパー選手権3日目14番ロングでタイガーが記録したドライバーのヘッドスピードでした。実に129.2マイル(秒速57.75m)。これは今大会までに記録した最高値がケビン・ツウェイの129.02マイルを上回っています。
当然のようにタイガーの復活が注目されています。バルスパー選手権は昨年11万2000人の入場者でしたが、PGAの大会本部は今年は15万人が来場したと発表しました。
スイングにも進化
今季最高のヘッドスピードを記録した事に関して、タイガー自身も驚いています。
「理由はわからないんだ。以前は43.5インチのスチールシャフトを使用していたが、今は断然軽くやや長くなったシャフトに変えたけれども、それでもこれだけ速く振れる要因は僕には分からない。これまで僕の体内はずっと痛みを抱えていたから、きっと自分でもどこかで動きを抑えていたのかもしれないね。それにしても今はそんなにハードに振らなくてもこんなにスピードが出ているのだから、自分でも本当に驚いている」。
タイガーのスイングの変化は、ゴルファーの間でも評判になっています。かつての「剛」のイメージから、クラブの重さや遠心力を重視した「柔」のスイングになったと指摘されています。ダウンスイングで頭が下がり、地面をグッと踏み込みその反動でパワーを出す上下の力を利用したスイングから、筋力に頼らず柔らかい左右の動きに変わりました。より腰に負担をかけないスイングを作り上げてきた印象です。
トップからダウンスイング、インパクト直前まで頭がボール後方で収まり、上体とクラブの引っ張り合いによる流れの中でパワーが生まれています。全身を使ったスイングから上体とクラブ中心のバランスにポイントを置いたスイングに変わってきているように感じます。
フォロースルーでも以前は飛び上がるような力感があり、それがタイガーのトレードマークでもありましたが、今は大人しいフォローになりました。
それでも、スイングスピードが速くなったのは、まるで武道の達人がゆっくり手足を動かしているようで、鋭く強い手刀、蹴りになっているような印象です。
そもそもアイアンのキレが持ち味
ドライバーを目いっぱい振り切る姿がタイガーのトレードマークでしたが、タイガーのプレーの真骨頂はアイアンです。ピンをデッドに狙うショートアイアンや、バックスピンのかかったボールがスルスルとホールに近づいてくるプレーが、マスターズの名場面になっていました。
近年のドライバーはヘッドが素材の進化により、プロゴルファーはスイングの変更を余儀なくされました。タイガーの腰もこうしたスイングの変化によって負荷がかかり、2017年には4回目の手術を受けています。
タイガーにとってアイアンには以前からこだわりを持っていました。1997年のマスターズで劇的な12打差の初勝利を挙げ、世界の頂点に躍り出たタイガーが使っていたアイアンは2種類のセットをミックスさせていました。2番から5番のロングアイアンは日本のミズノの「MP-29」、ショートアイアンは「MP-14」の6番から9番、PWを使い、ロフト角の変化を自分なりに使い分けていました。
当時、2種類のアイアンセットを初めて使ったのはタイガーでした。それまでは、ほとんどのプロが1種類のアイアンをバッグに入れていました。現在もタイガーが使っているアイアンセットは、20年前のスペックとほとんど変わっていません。
そんなタイガーの完璧なアイアンショットがダウンブローです。振り下ろしたクラブがスイング最下点に入る直前のピンポイントでボールをヒットします。ミリ単位でのコントロールが必要な高度な技術です。右肘が体の近くにあるインサイド軌道はミスする確率も高いのですが、タイガーは狂いなくボールをとらえ、飛距離アップ、スピンを与えます。
インパクト後に綺麗にターフが取れているのも、タイガーのアイアンショットの特徴です。動画ではその特徴が見られます。初心者向けではありませんが、上級者にはぜひレッスンで挑戦してもらいたい技術です。
バルスパー選手権の初日から3日目まで、ティーショットが乱れても、タイガーは木の後ろから、バンカーの目玉からでもアイアンのリカバリーショットでグリーンをとらえました。まさに全盛期を彷彿させるキレが戻っています。これも、腰に負担をかけないスイングの変更がプラスになっています。
タイガー・ウッズのクラブセッティング
今年1月、タイガーはテーラーメイドとパター以外のクラブ契約を結んだ、と発表がありました。ただし、復帰したファーマーズインシュランスオープン後のキャディバッグの中のアイアンは、それまで使っていたマッスルバッグのTGRプロトタイプでした。形状がナイキ時代に使っていたVRプロブレードに近く、やはりアイアンはずっと使ってきたモデルを代え難いようです。
【ドライバー】 テーラーメイドM3 460 ロフト9.5度 シャフト:マトリックス Ozik TP6HDe
【フェアウェイウッド】3番:テーラーメイドM3 ロフト15度 シャフト:マトリックス Ozik TP8HDe
【ドライビングアイアン】 テーラーメイド ツアープリファードUDI ロフト18度 シャフト:プロジェクトX PXi7.0
【アイアン】TGRプロト(3番~PW)
【ウェッジ】ナイキ VRプロ(56度、60度)
【パター】スコッティキャメロンニューポート2
【ボール】ブリヂストン ツアーB XS
(注)プロは頻繁にクラブ調整を行うため、実際使用するギアセッティングとは異なる場合があります。
次の試合はマスターズ
タイガーはWGCデルテクノロジーズ・マッチプレー(3月21日)は出場権がなく、ヒューストンオープン(3月29日)は欠場しました。そしていよいよ4月5日に開幕するマスターズが次の試合です。
この3月の2試合、タイガーのパターは冴えてました。バルスパー選手権は4日間の平均が27.8、アーノルド・パーマー招待は、28、28、27、26と平均27.2でした。
タイガーの家の裏庭には4つのグリーンがあり、ツアー復帰にかけてタイガーは毎日アプローチとパターの練習を続けていたと言われています。まして、そのグリーンを管理しているのは、オーガスタ・ナショナルGCの元管理スタッフの一人と言います。
タイガーの腰の手術は希な例であり、今後どれだけ状態が維持できるかは分かりません。それでも、世界中のゴルフファンは2018年のマスターズを待っていました。サンデーレッドシャツをまとって、最終日最終組で18番グリーンに姿を表すタイガーを。