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愛あるレジェンド、フィル・ミケルソンの全米オープンはどうなるのか、ファンも期待する存在

円熟味が増したフィル・ミケルソンは、今シーズン復調してきたタイガー・ウッズと共に「男子ツアーのレジェンド」的存在であり、一挙手一投足が注目されています。

出足好調な今シーズン偉大な記録が期待されるがファンの注目は別

ミケルソンは2月に入ってウェイストマネジメントフェニックスオープンで5位、翌週のAT&Tペブルビーチプロアマで2位と調子を上げています。2月18日に終了したジェネシスオープンでも3日目67、最終日68とスコアを伸ばし6位タイでした。

今年は、25年連続世界ランキング50位以内という大記録や、現在のツアー通算42勝をどこまで伸ばせるか、はたまた昨年は予想だにしない理由で欠場した全米オープンで優勝し、キャリアグランドスラムを達成するかが、かかっています。

それでも人間味溢れる欠場理由を知っているファンは、「今年もミケルソンは全米で何かをするのだろうか」と思わず微笑んでしまうのです。

全米オープン欠場、誰もがその理由を受け入れた

昨年の全米オープン初日の早朝、ミケルソンは大会主催の全米ゴルフ協会に欠場を伝えました。欠場のニュースは世界中を駆け巡りましたが、取材記者、ファンの間には心に温かいものが灯ったのです。それは、欠場の理由を知っていたからです。

ミケルソンは2月上旬のメモリアル・トーナメント3日目に、全米オープンを欠場する可能性を発表していました。その理由は、長女のアマンダさんがハイスクールの卒業式で総代としてスピーチをするのが6月15日。全米オープンの初日も6月15日。卒業式は西海岸のカリフォルニア。全米オープンは東側ウィスコンシン州のエリンヒルズなので、卒業式に同席したら間に合わない、との理由でした。

この時点ではまだ決定ではありませんでした。全米オープンが天候不順のため延期の可能性もゼロではなかったからです。それでも、この時期にミケルソンが胸の内を明かしたのは、直前にミケルソンが欠場を表明した時に全米ゴルフ協会が慌てたりしないよう、さらに補欠の選手が大会に出場できる準備の時間がとれるようにとの、思いやりだったのです。

全米オープンとミケルソンの因縁

ミケルソンがプロ転向したのは1992年。その4年後にプロとなったタイガー・ウッズと共に90年代の人気を分け合いました。タイガーが97年に早々とオーガスタでメジャー初タイトルを飾ったのに比べ、ミケルソンはなかなかメジャータイトルをつかめませんでした。

1999年の全米オープンでは妻のエイミーさんが初産を控えた中での出場でした。ミケルソンは、エイミーさんとのポケットベルをゴルフバッグに入れてプレーしました。

「たとえ最終日最終組で優勝争いをしていたとしても、もしもエイミーの身に何かあったら、ぼくは試合を棄権してすぐにエイミーの元へ駆けつける」(ミケルソン)。

この大会、まさに最終日まで激しい優勝争いを演じたミケルソンでしたが、惜しくも2位。そして、その翌日エイミーさんが生んだのが昨年ハイスクールを卒業したアマンダさんだったのです。

ミケルソンは2004年のマスターズで念願のメジャー初勝利を挙げ、全米プロ、全英オープンも優勝しました。残る全米オープンを制すればキャリアグランドスラム達成となります。

愛国心の強いミケルソンはプロ入り以来、全米オープンに勝ってアメリカのナショナルチャンピオンになる、と言い続けてきたのですが、これまで2位が6回とタイトルに届いていませんでした。

それでも欠場を選んだミケルソン。「全米オープンはぼくが一番勝ちたいメジャーだけど、娘の卒業式は人生を振り返る時、素敵なシーンとなってよみがえる。これを外すことはできない」。

まさに、アマンダさんへの愛のパットを決めたのです。

愛あふれるゴルフ界のレジェンド

ミケルソンの家族への愛は微笑ましいエピソードを残しています。2009年にエイミーさんが乳ガンの宣告を受けた時、ミケルソンはエイミーさんが回復するまで無期限の活動休止を宣言しました。幸い早期発見のガンだったので、ミケルソンは数週間でグリーンに復帰しました。

2010年のマスターズで、ミケルソンは乳ガン撲滅を訴えるピンクリボンを帽子につけてプレーし、見事3度目のマスターズ優勝を飾ります。終了後、エイミーさんを抱きしめたミケルソンが流した涙は、世界中のゴルフファンの涙腺も刺激しました。

ミケルソンのスイングはアマチュアも参考に

ミケルソンのレフティーは意外な理由で誕生しています。普段は右利きですが、ゴルフを覚えたのは、父親のスイングを正面から見たため左利きになったのです。

ドライバーの飛距離が平均300ヤード以上のミケルソンですが、アマチュアでも参考になるスイングです。腰や肩の回転量だけに頼らず、身体の柔軟性が足りなくてもヘッドを走らせる技術があります。

ミケルソン自身も「アドレスでは方向、両足とボール位置という基本しか考えていない。ボールが前足のかかと線上にあることが確認できたら、あとはフィーリングとアスレチックな部分がすべて」と言う。バックスイングで両肩はレベルにターン、さらにバックスイングで両手をできるだけ頭から遠い位置においてスイング。右足(右利きの場合、左足)のかかとはトップでもしっかり地面を踏んでいます。

一種の手打ちでもタメ一つでヘッドが走る

「長いプロ生活でひどい故障をしてこなかった理由は、自分のスイングがそこまで激しくないからだ」(ミケルソン)。バックスイングでフルターンしてダウンスイングで両腕と両手を加速させてヘッドスピードを上げています。

若手の中には腰のターンを制限し、ダウンスイングで突然スピードを上げて飛距離を伸ばすプロもいますが、ミケルソンは身体の可動域を増やしながら徐々にヘッドスピードを上げています。

ミケルソンのシーズン戦略にもヘッドスピードの増速がからんでいます。「PGAツアーのシーズンが始まると、ドライバーを積極的にスイングして、マスターズを迎えるまで徐々にスピードを上げている」(ミケルソン)。オーガスタではビッグドライブができると、難しいアプローチをショートアイアンで可能になる。

その後のメジャー、全米オープン、全英オープン、全米プロでは300ヤード付近に狭いフェアウェイ、ドッグレッグゾーンがあるため3番ウッドを多用していく。ミケルソンはドライバーの最大飛距離からアイアンやウェッジなど各クラブの正確性をチェックしていき、各コース戦略を組み立てるのです。

特にミケルソンの場合、切り返しで左ヒジを垂直に下ろしながら、テークバックよりコックが深くなる動きをします。そのため、シャフトが身体に巻きつくようになり腕とクラブが腰より下にくるまで遅く感じます。このタメがヘッドを早く走らせます。

極端に言えば、腰をあまり使わない手打ち、ですが、腕の振り一つでヘッドスピードを上げています。アマチュアで身体が効かなくなっても、タメのつくり方一つで飛距離を伸ばすヒントです。

動画を紹介します。

家族を愛し、ファンに愛されるミケルソン

マスターズは3勝、全米プロ、全英オープンそれぞれ優勝とメジャー5勝。昨シーズンこそ優勝はなかったものの、生涯獲得賞金ランキング歴代2位、PGAツアー通算42勝は歴代9位。

ミケルソンを表すのに、数字を列挙するだけでもその偉大さが伝わりますが、何より愛すべきエピソードの数々がファンが愛する由縁です。

今年の全米オープンはもちろん、マスターズからの今シーズン前半戦はミケルソンから目が離せません。

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