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パトリック・リードが2018年のマスターズ・チャンプに!クラブ契約のない選手が有力勢を抑えて初優勝

猛追する人気者達に観客も声援を送った

マスターズ最終日、1番ティーグラウンドに姿を現したパトリック・リードに観客は拍手を送りました。続いて姿を現したローリー・マキロイが登場すると、観客はリード以上の拍手と声援を送ったのです。3打差でリードを追うマキロイはマスターズさえ制覇すれば、4大メジャーのすべてを制するキャリア・グランドスラムを達成します。

英国人ながら人気のあるマキロイへの応援は、地元オーガスタ大を卒業しているアメリカ人のリードより上回ったのです。まるで観客には、マキロイが優勝してガッツポーズをする18番グリーンでの姿が見えているようでした。しかし、マキロイは早くも2番ロングでわずか1.2mのイーグルパットを外したのがきっかけとなり、そこからズルズルと崩れ、順位を下げてしまいました。

続いての刺客はジョーダン・スピースでした。首位と9打差で迎えた最終日、スピースは次々とバーディを決め16番までノーボギー、9mのバーディパットを決めて、この日9つ目のバーディを奪い、14アンダーとしてリードに並びます。最終18番でティーショットを左の樹木に当てボギー。この日は結局8アンダー、1ボギーの64と、マスターズの最少スコアに1打足りない追い上げを見せましたが、リードには2打足りませんでした。

終盤猛追したのがリッキー・ファウラーです。最終組の1組前のファウラーが18番でバーディを奪ってトータル14アンダー、リードに1打差に迫ります。18番で起こった大歓声はまるで地鳴りのように17番にいたリードにも伝わりました。この時ばかりでなくスピースが、ファウラーがバーディを奪うたびにコースのあちこちで大歓声が起こり、リードへのプレッシャーとなっていました。

そんな中、18番ミドルを迎えたリード。2打目をピン上7mにつけ、下りの速いバーディパットはピン下1.2mへ。外せばプレーオフの重圧の中、慎重にパーパットを沈め逃げ切ります。1日中プレッシャーとの戦いの中、自分のゲームプランを守り、自分のゴルフを貫き通した姿を象徴するウイニングパットでした。

なぜヒールと呼ばれるようになったのか

地元オーガスタ大にはジョージア大から転校しました。それも、ジョージア大ゴルフ部から追放された、との噂も。本人は「酒のトラブル」とかつて話したこともありますが、スコアの改ざんや仲間の道具の窃盗とも言われています。

2011年、20歳でプロ転向後、2013年からPGAツアーに参戦。2014年のWGCキャデラック選手権で早くもツアー3勝目を挙げますが、勝利インタビューが反感を呼びました。「僕はもう世界のトップ5の実力だ」と言い切ったのです。「わずか3勝の選手が言うべきことか」と、リードが不人気を買うきっかけとなったのです。

子供の頃憧れたタイガー・ウッズの真似をして、最終日には赤いシャツと黒いパンツを着用してきました。これも「タイガーの真似をする実力ではない」と反感を買うことに。マスターズでも当のタイガーと一緒に出場することになり、最終日の赤シャツ、黒パンツが丸かぶりになるところでした。リードが唯一契約しているのが、ウェアのナイキ。そのスポンサーからの意向で、リードの最終日はピンクのシャツになったのです。

プライベートでも事情がありそうです。リードはかつて彼のキャディーを務めた妻と2人の子供の家族がおり、テキサス州ヒューストンに住んでいます。しかし、両親はオーガスタからわずか数十分の場所に家がありながら、コースに姿を見せることはありませんでした。

「両親がこの場にいなくて残念か?」と、優勝後にメディアに尋ねられたリードは、「僕は勝つためだけにここにきた」と答えるのみでした。

キャプテン・アメリカと呼ばれるほど実力は折り紙付き

評判は悪いリードですが、その強さは知れ渡っていました。アメリカとヨーロッパの代表選手が2年ごとに争う団体戦、ライダーカップは米国内ではメジャー並みの盛り上がりを見せます。

2016年のライダーカップは、アメリカ側にとって亡くなったアーノルド・パーマーを追悼する特別の思いがありました。この大会に出場したリードは、コンビを組んでいたスピースを上回る成績でチームを引っ張りました。

最終日は、相手のエース、マキロイと一騎打ちに。8番ショートでマキロイが10mのロングパットを決めグリーン周りのギャラリーから大歓声を受けますが、続くリードは8mを入れ返しプレッシャーへの強さを見せつけ、結局マキロイを倒します。このシーンは今大会の名場面となりました。

この印象的なシーンで、リードの勝負強さ、優勝がかかるホールや、大舞台での集中力、タフな精神力が証明されました。付いたあだ名は「キャプテン・アメリカ」でした。

感情を出す場面がありながら、論理的な思考もできる選手

リードにはケビン・カークとジョシュ・グレゴリーの2人のコーチがいます。カークがスイングの技術的なチェックをし、グレゴリーが練習メニューの組み立てやコンディショニング担当と役割が分かれていますが、実際には2人ともスイングについてアドバイスしています。さらに、もう一人、パッティングコーチと3人のコーチがいた時期もありました。

一般的に、スイングの技術コーチはそれぞれの言葉の表現の違い、重点とするポイントが異なるため、選手にとってマイナスになりかねません。ところが、リードは物事を論理的に考える選手で、すべて自分自身で納得してから取り組むタイプです。逆に2人の意見、表現の違いを自分で理解することで、さらに技術を深めることができる選手のようです。

ライダーカップ最終日は、高まる感情を前面に出して観客をあおるようなプレーをしました。これが、「キャプテン・アメリカ」と呼ばれる由縁でしたが、沈着冷静な一面も持ち合わせています。まさしくマスターズ最終日バックナインは、彼の真骨頂を見せた舞台でした。

用具契約がないのはプレーの自由度を求めたから

マスターズ優勝の一番の要因は、リードが終始自分のプレーを貫いたことでした。特に柔らかい動きで縦振りのアイアンが安定し、小さなフィニッシュは常に同じ位置で止まっていました。

100%で振るようなショットは少なく、常に80%前後の柔らかいショットは曲がらず、プレッシャーの影響も受けにくいのです。曲がることがないので、フェアウェイを外してもグリーンを狙うのにインテンショナルショットの必要がありませんでした。淡々と4日間プレーできたのが勝因でした。

クラブ契約のない選手がメジャーで優勝したのは、昨年の全米オープンのブルックス・ケプカに続いてのことです。リードはかつて長くキャロウェイと契約していましたが、昨年末にクラブ契約は更新しませんでした。

現在はナイキとウェア契約のみです。アメリカでは名前が知られたリードクラスの選手にメーカー側が契約を止めるとは考えにくく、リードがクラブセッティングを自由に選ぶのを選んだ、と見られます。

リードのマスターズでのクラブセッティングは以下です。

【ドライバー】
ピン G400 LST(10度) シャフト:アルディラ ローグシルバー125MSI70 ツアー X
【フェアウェイウッド】
3番ウッド:ナイキ VR プロ 限定モデル(15度) シャフト:アルディラ ローグシルバー80 ツアー X
【アイアン】
タイトリスト 716 T-MB(#3)シャフト:トゥルーテンパー ダイナミックゴールド 120 X100
キャロウェイ X フォージド 2013(#4)、キャロウェイ MB-1(#5-#9) シャフト:トゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアー イシュー X100
【ウェッジ】
キャロウェイ MB1(PW)
シャフト:トゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアー イシュー X100
アルチザン(51度、56 度)、タイトリスト ボーケイ SM5(61度) シャフト:トゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアー イシュー S400
【パター】
オデッセイ ホワイト ホット プロ 3 グリップ:イオミック スタンダード レッド ピストル
【ボール】
タイトリスト Pro V1

(注)プロは頻繁にクラブ調整を行うため、実際使用するギアセッティングとは異なる場合があります。

ドライバーにピンG400 LSTを使うのも、強振しない柔らかいスイングなら大きく曲がりにくい選択です。ウェッジのアルチザンは馴染みのないメーカーですが、ナイキ出身者のクラフトワーカーのようです。ガラスのグリーンと評されるオーガスタは、アプローチのタッチも繊細さが要求されるためのこだわった選択のようです。

クラブ契約をしないのは、サポートを受けられないことや契約金が得られないデメリットもありますが、自分の使いたいクラブが使える点を大きなメリットと考える人が増えてきそうです。リードもアイアンのセットはキャロウェイですが、3番だけタイトリストを入れています。日本でも宮里優作や池田勇太がやはりクラブ契約はしていません。今後の新しい傾向になるかもしれません。

マスターズ・チャンプになってリードは変わるのか

晴れてグリーンジャケットをまとったリード。熱い心vs沈着冷静、ヒールvsヒーロー。様々な面を持つマスターズ・チャンピオン、リードは今後どんなゴルファーになるのでしょう。

タイガー・ウッズのようなカリスマ、ジャック・ニクラウスのような王道を進むのか。パトリック・リードというゴルファーの今後が楽しみです。

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