ゴルフコンペのルールからコンペ処世術まで。コンペの方向性をルールで探る。
ゴルフコンペと聞いて、あなたはどんなコンペを思い浮かべますか?
仲間同士の気軽なものから、いわゆる競技会まで、そのレベルや内容は様々です。
コンペに参加する全員が友人・知人という事もあれば、個人で参加し、知り合いはひとりもいない状態で、その日に初めて会う方と一緒にプレーする可能性もあるのが、ゴルフコンペです。
ここでは、今さら聞けない、よく使うゴルフコンペのルールの確認と、コンペのスタイル別に分けたルールやマナーのありかたをご紹介したいと思います。
ゴルフコンペでよく使うコンペルールの確認
まずは、そもそも“コンペルールとは何か?”という事をご説明させていただきます。
ゴルフ規則で定められた世界共通のルールのことを「ゼネラルルール」といいます。
いわゆるルールブックのルールです。
このゼネラルルールをもとに、各ゴルフコースや大きな競技会を開催する競技委員によって定められた独自のルールのことを「ローカルルール」といいます。
たいていはスコアカードの裏面に記載されていたり、キャディマスター室で提示していたりしていますので、確認してみてください。
例えば、「OBの場合、プレイング4(前進4打)を使用することができる」といったものから、「OB(アウト・オブ・バウンズ)の境界は、白杭をもって表示する」というような範囲の明確化などの内容となっています。
ローカルルールは、本来ゼネラルルールの内容・規則に矛盾しないことが前提なのですが、現在はゴルフ場側の都合(プレー進行等)で、お願いしている場合や、プレー続行が困難なプレーヤーのために救済措置として、各ゴルフ場が設定していることが多いのです。
そのため、ゴルフ場や競技会によって内容は異なりますので、ゴルフ場ごとの確認が必要です。
そして、さらに様々な条件で開催されるコンペごとに、(そのコンペの、競技に対する真剣度合に比例した)コンペの中だけで行われるルールを決めたものが「コンペルール」なのです。
ですから、コンペルールは「ローカルルール」の一種であり、「ゼネラルルール」を理解している上で成り立つルールなのです。この点を覚えておいてください。
コンペルールは通常、そのコンペを開催するイベント主催者や、小規模なものならいわゆる幹事さんが決めます。
コンペルールにはいろいろ注意点があるのですが、まずは代表的なコンペルールの確認からしていきたいと思います。
ダブルぺリアとは?
ゴルフコンペに参加し、プレーが終了するとスコアカードが回収され、マスター室などで、スコアの集計をしてくれます。この時に使用するのが、ダブルぺリア方式です。
通常、コースのメンバーさんは各自、指定されたラウンド数をこなした上でハンディキャップを取得し、それをもとにクラブコンペで競います。
しかし、クラブコンペ以外でハンディキャップを持たない人や、ハンディキャップが付けられない初心者ゴルファーでも、ハンディキャップを使って一緒に楽しむことができるように考えられたのが、ダブルぺリア方式なのです。
計算方法は、当日プレーする18ホールのうち、隠しホールを12ホール決め(事前に決まっています)、その12ホールのスコアに×1.5して、さらに-72(Par72の場合)して、最後に×0.8するというものです。
例を挙げて計算してみましょう。
ある日のコンペのスコアが以下のような結果だったとします。
黄色に色塗りされているホールが隠しホールです。9ホールごとに6ホール(Par4が4つ、Par3・Par5で1つづつ)の設定になります。
隠しホールのスコアの合計が70になりますので、まずは×1.5をします。
70×1.5=105
さらに-72なので、105-72=33
最後に×0.8ですので、33×0.8=26.4
このような計算がされたものが、あなたのその日のハンディキャップになります。
ですからグロススコア(実際に打った打数)からからハンディキャップを引いた
103-26.4=76.6
つまり、76.6がネットスコア(グロススコアからハンディキャップを引いたスコア)となり、そのコンペでのあなたの成績となるのです。
隠しホールの設定や、計算、さらにはそのハンディキャップを使用した成績発表まで、すべてゴルフ場が行ってくれます。
自分自身はスコアの提出さえ行えばOKですので、何も心配はいりません。
このような方法を用いると、ある程度実力に差があっても、誰もが優勝するチャンスが生まれます。ですから、現在コンペでは、非常によく用いられるのです。
ちなみになぜ「ダブル」なのかというと「ぺリア方式」という、隠しホールを6ホールで計算する方式が行われていた時代がありました。
しかし、設定ホールが少ないために本来の実力とかけ離れた結果が出ることが多かったのです。
これでは公平さに欠けるという意見があり、隠しホールを倍(ダブル)にすることで、より公平にハンディキャップが出るように変化していったのです。
ですから、このハンディキャップの算出方法の名称はダブルぺリア方式なのです。
また、別の言い方で「新ぺリア方式」という言い方をする方もいらっしゃいます。
つまり、ダブルぺリア=新ぺリア(シンペリ)です。
ダブルぺリア方式で有利なハンディキャップを出すのは、スコアが90~100前後で、さらにバーディーからトリプルボギーぐらいまでの成績をまんべんなく出すのがいいといわれていますが、狙って出せるものではありません。
ここでは、ダブルぺリアの意味を理解していただければと思います。
※ゴルフコンペにおいての対義語
ダブルぺリア方式 ⇔ スクラッチ競技(ハンディキャップなしでの勝負)
になります。
6インチOKとは?
6インチ=15.24cmです。もともとはスコアカードの1枚分くらいという意味らしいのですが、コースでは、だいたい手を広げた親指から人差し指までと覚えてください。
「6インチOK」は、枕詞として「オール」または「スルーザグリーン」が付きます。
意味は、「グリーン以外はどこでも自由にボールを6インチまで動かしていいよ」または、「バンカーや池やグリーン以外だったらボールを6インチまで動かしていいよ」になります。
本来ゴルフは「あるがままに」プレーするのが、正しいです。
しかしそれでは、フェアウェイなのにディボットにはまってしまったり、木の根元で止まったりしたらかわいそうだし、ミスショットしたら時間もかかるだろうからという考えから、コンペではよく使われるお情けのルールのひとつです。
※ゴルフコンペにおいての対義語
6インチOK ⇔ ノータッチ
になります。
グリーン上ワングリップOKとは?
グリーン上で、パターグリップひとつぶんぐらいの距離が残っても、きっと次は入れられるだろうから、もう打たなくてもいいよ、というものです。
同伴者のOKを貰ったら、ボールをピックアップすることができます。
これもコースの流れと、プレーヤーに配慮したお情けルールです。
実際はワングリップぐらいの距離でもプレッシャーがかかると外してしまう事もありますので、救済措置と言ってもいいでしょう。
ただし、OKといっても、きちんと打ったつもり(入ったつもり)で1打足すのをお忘れなく。
※ゴルフコンペにおいての対義語
ワングリップOK ⇔ グリーン上OK無し
になります。
OBの場合、プレイング4使用可
これは、OBを打った場合の処置として、プレイング4(前進4打)が定められているホールは、プレイング4を使用しても良いという、ローカルルールをそのまま適用したコンペルールです。
※ゴルフコンペにおいての対義語
プレイング4使用可 ⇔ OBは打ち直し
になります。
この4つを理解できれば、基本的なコンペルールはOKです。
それでは、このコンペルールとともに、次はコンペの真剣度別に分けられたルールの設置、及びマナー編を解説いたします。
コンペは本気度によってルールやスタイルが変化する!
ひとくちに「ゴルフコンペ」といっても、その開催の趣旨によって、かなりルールは変化します。
先ほどご説明したように4つの代表的なコンペルールを使用して、コンペスタイルを5つに分類してみたいと思います。
1.ガチ競技
(スクラッチ・ノータッチ・グリーン上OK無し・OB打ち直し)
2.本気度高めコンペ
企業・団体やゴルフ場が主催。予選・決勝大会等もあり、順位が重視されるコンペ。商品も豪華なものが用意されている
(ダブルぺリア・ノータッチ・グリーン上OK無し・OB打ち直し)
3.中級者向けコンペ
企業・団体やゴルフ場が主催。幅広く募集し、ゴルフを楽しみながら、ある程度競技の厳しさを感じるコンペ
(ダブルペリア・ノータッチ・グリーン上OK無し・プレイング4使用可)
4.イベントコンペ
開会式や表彰式が華やかで、始球式もあり。ゴルフは交流を深めるためのツール。腕に覚えがなくても参加できるエンジョイコンペ
(ダブルペリア・6インチOK・グリーン上OK無し・プレイング4使用可)
5.社内・同窓コンペ
友人・知人で構成されたお気楽・リラックスコンペ。みんなで集まって楽しむことがメインテーマ
(ダブルペリア・6インチOK・グリーン上ワングリップOK・プレイング4使用可)
ざっくりと分類してみましたが、いかがでしょうか?
これ以外のジャンルのコンペもあるかとは思いますが、ここではご容赦ください。
あくまでもルール上ですが、真剣度としては以下の公式になります。
1 > 2 > 3 > 4 > 5
実はゴルフコンペで一番トラブルになるのが、プレーヤーのその時の真剣度と、参加したコンペスタイルに差があるときです。
そこで、空気が読めない行動をとってしまうと、一気に険悪な雰囲気になることさえあります。
つまり、コンペによって、自分自身の立ち居振る舞いも変更することが必要となってきます。
では、実際どうすればいいのか、この分類に沿ってコンペ別にみてみましょう。
1.ガチ競技
いわゆる競技ゴルフと呼ばれるクラスだと思います。ゼネラルルールでプレーするコンペですね。
このレベルにエントリーした場合は、ゼネラルルールに精通している必要があります。逆に言えば、ゼネラルルールを順守していれば、とくに問題ありません。
緊張感ある競技ゴルフをお楽しみください。
また、特別ローカルルールは必ず提示されますので、よくチェックされてください。
2.本気度高めコンペ
順位をダブルべリア方式で算出する以外は、厳しいルールのコンペです。
このレベルのコンペは、混乱が起きないように主催者側が、コンペルールに関して細かく設定していることが多いので、あまり心配はいりません。
競技委員が、スタートホールでルールの実施内容を説明してくれると思います。
ですから、基本的にはガチ競技と変わりません。
ゼネラルルールと当日のコンペルールをよく読み、それに忠実に従ってください。
プレーヤーの本気度が高く、ルールに関しても厳しくチェックされます。参加される方はそれなりに緊張感を持って臨みましょう。
3.中級者向けコンペ
そろそろ仲間内だけではなく、大きめのゴルフコンペに参加したくなった中級者向けのコンペです。
このレベルが一番注意したいコンペです。
なぜかというと、各プレーヤーの本気度レベルにかなり差が出るコンペなのです。
つまり1、2の気分で参加している人もいれば、4、5の気分で参加している人もいるのです。
しかも、コンペルールの設定に不備・不足が出てくるのもこのあたりのコンペからです。
組み合わせ次第では、全員が初対面という事もあり得るコンペです。つまり、相手の性格や考え方の情報がありません。
ここで、ひとつ例を挙げてみます。
ゴルフ場で募集していたオープンコンペにひとりで参加。
当日は初対面の3人と組み合わせ。自己紹介をしてから、まだ打ち解けないままプレー開始。
6ホール目のティーショットが右の林へ行ったが、3人が歩き出してしまったので、そのまま進行。
しかし、林の中をいくら探してもボールは見つからない。
こんな時、あなたならどうしますか?
まずゼネラルルール上は、打ち直しに戻る以外の選択肢はありません。
コンペルールで、ロストボールの場合の処置が書かれていなければ、ゼネラルルールに従い、打ち直しに戻る必要があるのです。
ここで、その中の1人が「いいから1打足して適当にそこから打ったら?」と言ったとします。この方の本気度は4~5レベルだと思われます。
しかし、別の方が、不満げな顔をしています。この方の本気度は2レベルです。
こうなると、自分の打ったボールのせいで、パーティの雰囲気が悪くなってしまうという最悪の事態が生じます。
もし、ひとりの方の意見を聞いて「適当に」処置してしまうと、別の方から、主催者にクレームを入れられる可能性だってあるのです。
では、どうすればよかったのでしょうか?
これは、できれば林に打った時点で、「ロストになるかもしれないから暫定球を打ちます」と言うべきでした。
しかし、名前もおぼつかない同伴者に、宣言するのは勇気がいるものです。言えない場合もあるでしょう。
その場合は、ロストが確定しそうな状態になったら、誰よりも早く自分でロストボール宣言をし、何かを言われる前に打ち直しに戻ることです。
そうすれば、ルールを守った行動で、しかも時間ロスも最小限なので、不満はほとんど起こりません。
とにかくコンペで重要なことは、自分で素早く判断することです。
プライベートラウンドでは、ついその組のリーダー的存在の方に判断を任せてしまう事があると思いますが、コンペでは自分で判断し、実行することを心がけてください。
コンペルールは守るべきであり、プレーもスムーズに進行しなければならないからです。
3のコンペの場合は、周りに惑わされずルール順守が望ましいです。その為の素早い行動もお忘れなく。
4.イベントコンペ
ゴルフを堅苦しく考えず、楽しむことを重視したエンジョイ系コンペ。初心者ゴルファーも緑いっぱいの広々空間で、ゴルフの楽しさを実感できます。
このスタイルのコンペは、ルールはそれほど重視されません。ですので、お助け・お情けルールもたくさん用意されていると思います。
それはコンペで決まっていることですから、大いに利用し、活躍しちゃってください。
ゴルフの楽しさを味わえれば、コンペの趣旨に沿っているはずですから。
しかし、このコンペで注意したい存在は、本気度ガチガチのプレーヤーです。「いつも自分はノータッチで、ゼネラルルールでプレーしているから」という方が、まれにいる場合があります。
プレースタイルはもちろん正統派なわけですが、1、2のコンペのようなスタイルで貫いてしまうと『浮いた』存在になってしまいます。
ひとつ例を挙げてみます。
自分がパッティングしたボールが、カップ30cm手前で止まりました。
同伴者は、良かれと思い、「ワングリップ以内だからOKです!」と言っているのに、頑なにマークし、自分の順番を待ったうえで、仕切り直してパッティングをした。
というようなものです。
そのこと自体はルール違反でも何でもありません。コンペルールはほとんどの場合「することができる」なので、「しなければならない」ではありませんし、また、正式なゼネラルルールでプレーすることに意義を唱えるのは、本来はおかしなことです。
しかし、4のコンペの場合、声をかけた同伴者も気まずくなってしまいますし、場が白けてしまう危険性もあります。
では、どうすればよかったのでしょう?
この場合の最善策は、プレーの最初に「自分はカップインまでします」と宣言することです。
実は私もこのタイプで、「カップインまでしないと落ち着かないので」と言って、最後までパッティングをします。
これだけで、声をかけられて生じる、不要な気まずさは避けられます。
もうひとつ重要なアクションがあります。
ワングリップ以内のパッティングが残ったら、「お先に失礼します」と言って、誰かが声をかける前にカップインしてしまうのです。
このコンペでのコンペルールは、円滑なプレー進行を考えて決められたものなのですから、時間がかかる動作は慎むべきなのです。
これでしたら、プレー進行も問題ありませんし、ゼネラルルールに乗っ取ってプレーしたいというあなたの要望も叶えられます。
要するに、その場の空気を読んだプレーをしましょうという事です。
5.社内・同窓コンペ
基本的に友人・知人が集まったコンペです。ゴルフを肴にみんなで楽しめれば最高ですよね。
たいていの場合は、コンペルールは寛大で、あまり神経質にすることなく、普段のプレーを楽しめば問題ないと思います。
多少おおらかな行動・処置をしても、許される事が多いのがこの5だと思います。それは、全員が知り合い・友人だから成り立つことです。
しかし注意点がやはりあります。
それは、幹事さんによってコンペルール内容が厳しくも緩くもなるという事です。
この場合は、幹事さんの趣旨を理解する必要がありますので、「コンペのお知らせ」表のコンペルールをよく読んで、幹事さんが目指しているのはどのスタイルなのかを判断してください。
よく分からない、もしくは書いていないという場合は、コンペ受付時に確認するのもおすすめです。
気心が知れた仲間同士でも、ゴルフに対する向き合い方が、同じ方向を向いているとは限りません。
やはり幹事さんに代表的なコンペルールの確認をして、幹事さんの意向に沿ったスタイルで臨むのがベターでしょう。
まとめ
代表的なコンペルールの説明から、コンペルールから察するコンペのスタイルの確認、さらには、コンペごとの処世術を書き出してみましたがいかがでしたか?
どんなコンペに参加する場合でも、TPO(時間と場所と場合)に沿ったプレーを目指してください。
あなたが参加するコンペは、どれになりますか?