6インチはOK?それともNG?ゴルフルールとしての6インチを考える
- 2016.09.19
- トピック
ゴルフを始めたばかりの頃、「ボールはあるがままに打つ」と覚えた記憶はないでしょうか。
その頃のあなたが練習を重ねて、コースデビューを果たした際には「細かいルールは今後ちゃんと覚える必要があるけれど、とりあえずはそのまま打てば間違いない!」と、ひたすらボールを打っていたと思います。
しかし、まともにボールに当たらないあなたを見かねた先輩から、「6インチ動かしていいから、もっとライの良い所にボールを置いてごらん。」とアドバイスをされ、その後6インチプレースというものを使い始めました。こうした経験をお持ちの方は、きっと多いのではないかと思います。
ライが悪い状態だと、ボールは思っている以上に打ちにくく、ミスショットしてしまうことが多々あります。そんな時に親指と人差し指をL字型に広げて、概ねその範囲でライの良い場所にボールを動かして良いというルールは、初心者ならずとも非常にありがたいルールですよね。
しかし、本来あるがままに打つはずのゴルフルールの中で、『6インチプレースOK』っていったいどういうことなのでしょうか。正式なゴルフルールではなさそうなのですが、コンペやプライベートラウンドなどではごく一般的に使用されているルールでもあります。それでいてプレーヤーによって『6インチ』の処置・方法が異なっていることが多く、曖昧なルールとも言えますね。
6インチプレースの正しい処置・方法はあるのでしょうか?そして、6インチプレースとは、そもそも“正しい”ルールなのでしょうか?
今回は6インチプレースに関するさまざまな疑問点を解決していきたいと思います。なんとなく6インチ動かすことに後ろめたさを感じていた方や、ルールの範囲内で活用するのだから問題ないという方、さらに6インチが大嫌いという方にも是非、読んでいただきたいと思います。
実は日本人らしい奥ゆかしさが6インチルールを誕生させたのかも知れませんね。
6インチルールは存在する?
まず、『ライが悪い状態であれば、ボールを6インチの範囲内で動かしても構わない』というルールが存在するのかを確認してみましょう。
ゼネラルルール(世界共通のゴルフルール)にはもちろんありません。しかし、地域(ゴルフ場)や期間(競技)に限定したローカルルールとして、プリファード・ライやウィンタールールといった“ライが悪い場合の救済措置”が取られることがあります。これは、冬場のコースコンディションが悪い場合などや、限定的にフェアなプレーが実施されにくい環境になってしまった場合に適用されるルールですので、その都度に、規則の内容が決められます。
使い方としては、コースのライが悪い場合に、例えば『6インチ(15cm)の範囲内でボールを動かしても良い』というように定めるもので、6インチだけでなく『1クラブレングスまで動かして良い』と定めるケースや、もしくは『リプレース(ボールを拭くことは可)のみ※いわゆるリフト&クリーン』と定めるケースもあります。プロのトーナメントでもこうした措置が採用されることは珍しくありません。
また、その適用範囲(フェアウェイのみ適用、スルーザグリーン適用など)も同じようにその都度、設定されています。さらに、基本的にローカルルールはゼネラルルールの方針に矛盾しないことが求められますので、「どの方向にプレースしてもOK」と明記されていない限り、ピンに近づくことは許されません。ですから、6インチリプレースのローカルルールが適用されている場合でも、ボールは後方か、横にリプレースしなければならないと考えた方が、間違いがないと思っておいてください。
このようにライが悪い場合に使われるローカルルールのひとつである『プリファード・ライ/ウィンタールール』を適用する場合でも、その定義や処置の設定はさまざまです。つまり一概に“ライが悪い場合のローカルルール=6インチリプレース”とは言えないということですね。
ですから、『ライが悪い状態であれば、ボールを6インチの範囲内で動かしても構わない』というルールは、時と場所を限定して“使われることがある”ルールであり、常時適用されているものではないと解釈いただければと思います。
ゴルフ場によっては常時設定もあり
各ゴルフ場のローカルルールはスコアカードの裏面に記載されていますが、ゴルフ場の中には芝の保護を目的として『6インチプレースOK』を常時設定しているコースもあります。
こうしたコースでは、『6インチプレース』を活用するのが正解です。気後れする必要はありません。「ちょっとライが悪くて、打ちにくいな」と感じたら、ローカルルールを適用して動かすのも立派なコースマネジメントです。
もちろん、ゼネラルルールを選択する権利もプレーヤーにはありますので、自分の判断でノータッチを貫くのも良いでしょう。スコアカードの裏面を丁寧にチェックすることはあまりないかもしれませんが、そのゴルフ場のローカルルールがしっかりと書かれていますので、プレー前に是非確認しておいてください。ローカルルールを把握しておくことで、ゴルファー同士の6インチに関する小さなトラブルを避けられるかもしれません。
コンペの場合の6インチの意味
コンペで6インチプレースOKが設定される場合、その理由は“コース進行をスムーズに行うため”になります。つまり、ライの悪い場所から打って、ミスショットを重ねると時間がかかってしまうので、「打ちにくかったら、ちょっと動かしてもいいよ」的なルールですね。
コンペの場合、どうしても進行が遅くなる傾向にあり、コンペ主催者はゴルファーの実力やコンペの本気度を考えて6インチルールを採用するかを判断します。こちらもコンペの中で決まったルールですから、そのルールの範囲で大いに活用するのもいいですし、ノータッチを貫くのもプレーヤーの自由ですよ。
プライベートラウンドでも6インチが使われる訳は?
ローカルルールで6インチプレースOKが設定されていないコースや、コンペではない場合のプライベートなラウンドでも、6インチプレースを常に使ってプレーしている方がいらっしゃいます。
これは、これまで述べたような『フェアな環境が困難な場合』『芝の保護』『コースの進行』などが主な理由ではありません。「少しでも条件のいいライで打ちたい」けれども、何かボールを動かすことに正当な理由が欲しい!と考えた時に、「今日は6インチOKだよね?」と免罪符のように使っているのです。『6インチプレースOK』というローカルルールで使われる処置をプライベートでも使用することで、ボールを動かしてプレーしているという罪悪感を減らしたいのかも知れません。
では、海外ではこうしたプライベートラウンドで6インチを使うことはあるのでしょうか。これは、私が知る限りでは、親指と人差し指を広げてボールを動かし、プレーされている方は見たことがありません。決してボールにタッチしないということではなく、動かす時はもっと適当に動かしているのです。
ラフや林のボールをポイッとフェアウェイに持ってくることもありますし、少し沈んだボールを同じ地点の芝の上にフワッと置き直すこともあります。つまり、6インチの範囲ではなく、自分のしたいようにボールを動かしているのです。これはプレーヤーのゴルフのレベルの問題ではなく、その日のゴルフのスタイルということでしょう。
もちろん、プライベートラウンドでもゼネラルルールを厳守してプレーを楽しむ方がいらっしゃるのは、日本でも海外でも変わりはありません。しかし、もっと大雑把に気軽にゴルフを楽しもうという時には、ルールに縛られず自由にボールを動かしている印象です。
しかし、日本では初心者ではないプレーヤーがそうした行動をとることは、「勝手にボールを動かしてる!」と、非難されることがあります。そこで、6インチプレースのローカルルールをプライベートでも使うことでプレーの正当性を保ちたいと考えるのが、日本のゴルファーの悲しい性分なのかもしれませんね。
実際にはルールから外れてしまっている行為にもかかわらず、6インチの範囲で一生懸命ボールを置き直している姿は、なんだか可愛らしさを感じます。プレーヤー同士が了解し、納得しているのであれば、6インチはプレーの潤滑油となるでしょう。
おわりに
6インチ程度でも動かすことが出来れば、たいていの場合はライの状態がかなり改善されます。それが良いショットに結びつくかはプレーヤー次第ですが、ナイスショットの確率が上がることは言うまでもありません。ですから、6インチでも動かしたいと思うプレーヤーがいることもある意味、致し方ないのかも知れません。
しかし、ゴルフ場のローカルルールに設定してある場合や、コンペルールに採用されている場合は、その決められたルールを守ることが基本です。フェアウェイのみ適用と明記されているのに、バンカーや林の中でも動かしたり、6インチが60インチになってしまうようなプレーを続けていたりすると、同伴者から冷ややかな視線を浴びてしまう可能性もあるということを覚えておいてください。勝手な過大解釈は、プレーヤーとしての品位を疑われます。
また、プライベートラウンドで「今日は6インチOKにしよう」と決めた場合でも、節度を持ってプレーすることはとても大切です。コンペではなくても、最後にスコアを言い合うのであれば、当然他人のスコアが気になってしまいます。同伴者に「あれだけ動かせばスコアも良いに決まっているよね」と言われてしまわないように、お互いが決めたルールを守りましょう。
気楽なゴルフで、ルールに縛られてプレーする必要はありませんが、同伴者の理解が得られないようなプレースタイルでは、良いスコアでも賞賛されません。一緒にプレーする者同士がお互いに気持ちよくゴルフができる事こそが、なによりのルールですよ。