ゴルフは日本で生まれた?/誰かに話したくなるおもしろゴルフ話
- 2016.02.04
- 知識向上
『ゴルフは平安時代の蹴鞠に似た貴族の遊びが発祥であり、我が国が誇る球技である』
こんな風に日本ゴルフ協会が発表したことがありました。太平洋戦争に突入していく頃の話です。
ゴルフ日本発祥説の真相
当時の関係者の話では、誰もそんなことを本気には考えていなかったそうですが、戦争を推し進める軍部によってゴルフが英米の敵国球技だと禁止になりそうになった危機的状況を打破する苦肉の策だったそうです。
他にも色々な手を打ちました。ゴルフをするたびに税金を払うようにして、国に貢献するというゴルフ税も作りました。(これが、今日のゴルフ場利用税の始まりです)
先人たちが必死になって、ゴルフを守ったお陰で、戦争を生き抜いたゴルフコースが日本にはありますし、ゴルフの文化も引き継がれました。
現代では、ゴルフ日本発祥説は影も形もありません。しかし、日本史の中には、ゴルフの発祥について興味深い第一級の資料があるのです。長崎の出島に幕府の役人が招待されて、室内でゴルフというものを披露されたというものです。
詳細はわからないのですが、当時、テニスも室内で現在とはかなり違う形で行われていた記録もあるので、同じようにコンパクトなパットゴルフのようなものだったのだと推測されています。
ここで重要なポイントが、江戸時代の日本は鎖国をしていたので、出島に出入りできたのはオランダの商船と中国の商船だけだったということなのです。
羊飼い説はお伽噺
羊飼いが持っている杖で足元にあった小石を打ったら、偶然にウサギの巣穴に入った。それが遊びとして広まったのがゴルフの始まりである……。真剣にそんな話をする人もいますし、書籍でも書かれていたります。
これは、お伽噺です。ゴルフ史研究者の間では、もはや説としては取り上げられもしません。しかし、日本ではこのお伽噺が広く広まっています。
これには理由があって、大正から昭和初期の日本のゴルフ黎明期に書かれたゴルフ入門の最初が、この話から始まったからなのです。
よく読めば、そんなお伽噺がありますけど、というオチになっていますが、なんとなくロマンチックでありながら現実にありそうなイメージも浮かぶので、修正されないまま伝聞されていったのです。
ゴルフ発祥の地論争
では、ゴルフ発祥の地はどこなのでしょうか?
ゴルフの特徴である「自らが審判」という理念を尊重してのことなのか。
信じるか信じないかは、あなた次第というのが最新の研究でも結論になっています。いわゆる、諸説あり、というやつです。
ハッキリわかっているのは、ゴルフが現在の形に育っていったのはスコットランドの海岸にある砂丘に草が自生したリンクスです。複雑なのは、スコットランドでゴルフは生まれたのではなく、輸入されたという間違いない事実があることです。
先程の日本のような時局的な理由もあって、スコットランド発祥説を定着させようとした時代もありましたけど、そもそも、ゴルフ黎明期にボールとして使用されていた牛革に水鳥の羽根を詰めて作ったフェザーボールは、ほぼ全てをオランダから輸入していました。
オランダでは、アイスホッケーが生まれますが、当初はチーム戦ではなく、個人競技だったようですし、実はゴルフと共通する古い用語もあったりします。根っこは同じだと考えれば、使う用具も含めてなかなか説得力があります。
また、スコットランドでゴルフコースが作られた場所は、全てオランダ商船が行き来する港の近くだったのです。14世紀にはかなり現在のゴルフに近い競技がオランダ国内で行われていた記録もあります。
日本の出島の記録は、このオランダ発祥説を推す記録とされています。オランダ発祥説はかなり有力な説です。これ以外にも、有力な説として、ローマ発祥説もありますし、中国発祥説もあります。
ローマ発祥説は、ローマ軍の侵攻と歴史的な時期が重なることなど世界史との絡みで有力とされています。中国発祥説は、8世紀から12世紀にかけて捶丸というクラブのような用具を使って、目標をクリアしていく形式のゲームが行われた記録や壁画が残っていたことから有名になりました。
シルクロードを伝わって、ヨーロッパに伝わり、それが海を越えてというストーリーはロマンチックでもあります。それ以外にも、フランス発祥説などは論文などの裏付けもあって、結論が出たという人もいます。
古すぎてわからない……。ということで良いのかもしれません。個人的には、色々なところから来た遊びがゴルフの神様のイタズラで融合してゴルフをどんどん魅力的にしたと考えています。
どの球技よりボールを飛ばすことができる豪快さ。
とんでもなく遠くにある穴をゴールとする正確さ。
整数の打数の少なさを競う明確さ。
多岐に渡る用具の性能を発揮させる巧みさ。
コースを攻略する賢さ。
ゴルフの魅力を語り出せば止まりません。
色々な発祥説を学んだ上で、自説をさり気なく語れるゴルファーになりたいものです。スコアだけでなく、ランクアップできることもゴルフの大きな魅力なのです。