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だから面白い!歴史に残る個性派ゴルファー達①左方向にしか打たないリー・トレビノ編

トレビノが生まれたのはテキサス州ダラスでした。メキシコからの移民の家庭でしたが、幼くして父は家を飛び出し、トレビノは5歳から家計を助けるために農場で働きました。

叔父からもらった数個の汚れたゴルフボールと古いゴルフクラブが、トレビノの少ない自由時間の相手でした。近くのゴルフ場に忍び込んでは、プレーに夢中になります。キャディの仕事を得ると、キャディ小屋の裏のショートホールで自由にボールを打てるようになりました。
17歳で海兵隊に入隊すると、ゴルフが上手かったトレビノは士官からゴルフの相手に指名されました。後日、トレビノは「上官とゴルフをしたおかげで、上等兵に昇進できたのさ」とジョーク交じりで語っています。

海兵隊を退役するとゴルフ場の専属プロとなりました。収入はもっぱら賭けゴルフで稼いでいました。1967年、PGAツアーに参戦すると全米オープンで5位に入り、6000ドルを手にします。とても、賭けゴルフでは得られない金額です。

トレビノは自分のゴルフを磨くのに必死になりました。生来、フックしがちな球筋でミスしていたのを防ぐため、スイングをアウト・サイド・インに変更したフェードボールです。ボールをソリッドに芯で捕え、スイング軌道で緩やかな右回転を加えます。

重要なのは、常に芯でボールを捕えることです。左方向に飛び出したボールは低い軌道でカーブしながら中央へ戻ります。ランは出ませんが、狙った地点にとどまるので、2打目の計算がしやすいのです。

これが同じスイング軌道でも、わずかに芯を外れると余計に回転がかかってしまい、大きくスライスしてしまうのです。これがトレビノの凄さであり、笑顔に隠された猛練習の成果でした。

1970年代、フェードボールを武器にトレビノは帝王、ジャック・二クラウスに挑みます。1970年に賞金王となり、1971年の全米オープンでは18ホールを終わって二クラウスと首位タイ。プレーオフに向かう二クラウスに向かって、なんとゴム製のヘビを投げつけました。あきれる二クラウスを尻目に、トレビノはちゃっかり優勝してしまうのです。

この全米オープン優勝の2週間後にカナディアン・オープン優勝、翌週の全英オープンで優勝と、連続で各国のナショナル・オープン優勝も成し遂げました。

1975年にはグリーン脇でキャディバッグに寄りかかっていたトレビノを雷が直撃する事故も。椎間板の手術、背中のケガで一時の勢いは無くしましたが、6回のメジャー優勝、PGAツアー29勝を挙げています。

自分のスイングについて、トレビノは「我流なので、私のスイングを真似するプレーヤーは痛い目にあうだろう」と言い続けてきました。そこで、自分の息子のダニエルがゴルフを真剣に取り組もうとしても、自身では教えずティーチング・プロに預けたほどです。
常に周囲を取り巻く記者を笑わせ、下ネタも連発するトレビノもどうもマスターズとは相性が良くありませんでした。メジャー6勝も全米オープン、全米プロ、全英オープンを各2勝していますが、マスターズだけは勝っていないため、グランドスラマーにはなれていません。

当初はトレビノに招待状が届いても出場しなかったこともありました。理由の一つに、メキシコ系のトレビノにとって生まれ育った南部の人種差別に対して嫌な思い出があり、さらに南部のオーガスタで行われる白人上流階級の匂いがプンプンするマスターズを嫌っていたことがあるようです。

さらに、コースがゴルファーに飛距離を求めるレイアウトであり、フェード使いのトレビノにとっては不利だった理由もあります。マスターズについてトレビノは、「飛ばせばいいってもんじゃない。チャレンジングなコースもゴルフの面白み」と言い続け、「メジャー・チャンピオンコースなら、ラフを絶対作るべきだ」と批判めいたことも口にしていました。

常に笑顔を絶やさない男も、自ら築いてきたフェード一筋のゴルフが拒否されるようなコース設計には我慢がならなかったのでしょう。彼の矜持をうかがえる言葉です。
トレビノは、1981年に世界ゴルフ殿堂入りします。「常に左に打ち続けた男」は実績でも、名誉でもまさに世界のトップに上り詰めました。

我流でも世界の一流へ。まさに、トレビノは個性派を代表する存在です。

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