林の中でもゴルフが楽しくなる秘訣を知っていますか?/ワンランクアップするゴルフの裏技
林の中に向かってボールが飛んでいく……。ゴルフをしている限り、どんなに上手なゴルファーでも経験しますし、これからも逃れられません。
ゴルフが育ったリンクスコースには、林どころか大きな木すらないのに、どうして日本のゴルフコースには林ばかりがあるのでしょうか?
まずは、林の秘密を探ってみましょう。
日本独特の事情が林間コースを増殖させた
ゴルフが育ったスコットランドでは、ゴルフコースを作る用地として海沿いの砂地を選びました。リンクスの元々の意味は、「繋がるもの」とか「間」という意味です。海と大地を繋ぐ砂地がリンクスなのです。強い海風の影響で農作には適さず、傾斜が強い砂地は建物を建てるのにも向きませんでした。ゴルフコースになるべく、そのときを待っていた場所です。
そういうエリアは限られています。ゴルフコースは、内陸にも増えていきました。インランドコースの誕生です。それでも、ゴルファーはリンクスに似ているエリアを探しました。あまり大きな木がないエリアを選ぶようにして、コースは増えていったのです。
世界中にゴルフが広まっていくときもリンクスのような用地を探しましたが、なかなかそういう場所はありません。それでもゴルフをしたいと考えた人たちは、その国の事情にあったエリアにコースを増やしていきます。
20世紀になって、日本でもゴルフ場は増えていきました。国土の多くが山で、かつ面積が狭い日本では海沿いに空き地が少なく、ゴルフコースに向いているような土地は住宅地や農地としてすでに開発されていました。ガスや電気のインフラが整う以前、燃料の主役は薪でした。人が住むエリアには薪を補給する目的もあって、必ず林が必要だったのです。
ガスや電気、石油が燃料として普及していくと、薪は不要になっていきます。広大な林も不要になったのです。しかし重機がまだなかったので、林を切り開くのは大変な作業でした。ゴルフコースなら、全ての木を切り倒さなくとも大丈夫でした。余った林の利用法として、ゴルフコースという選択肢が生まれたのです。
とはいっても、日本のゴルフの黎明期に作られたゴルフコースは、欧米でリンクスコースを見て帰国した人たちの影響が強かったので、リンクスのような木がないコースを作ろうと苦労をしたようです。開場当時の写真などを見ると、多くのゴルフコースが大きな木はあっても、広々として林は見当たらないコースだったのだとわかります。
ここで日本独自の事情が影響します。元々、薪を取るために育てていた林の木は、育ちが良かったのです。そのまま育てると、どんどん大きくなりました。数十年を経て、開場時の様子が嘘のように木が大きくなって、繁ってしまったのです。
ちょうどその頃に高度成長期になったので、日本ではゴルファーが急増しました。重機を使って造成する新しいコースを作る時代の到来です。このときに、古いコースをお手本にするのは当たり前のことです。
古いコースの大きく育った木々を見て、林があるようなコースが一流の良いコースなのだと勘違いして、日本中に“林間コース”と呼ばれる林の中を進んでいくようなコースがたくさん生まれました。今でも、オールドゴルファーは林間コースが一流だと言う人がいますが、それは勘違いが始まりだったのです。
その後、ゴルフコースの開発についての法律や条例が整備されました。バブル期に増えたコースがこの対象となりましたが、緑地を確保するためにホールとホールの間に30メートル以上の林を設置しなければならなかったり、用地の半分を緑地として残さなければならないというエリアもあったのです。
林があるゴルフコースは、益々日本中に広がっていきました。「日本のゴルフコースがどうして林ばかりなのか?」という疑問の答えは、一言で回答するなら、日本独自の事情があったからです。一つの理由だけではなく、色々な要因が重なった結果なのです。
林の中でゴルファーは試される
日本のゴルフコースに林が多い理由を知ったからといって、林の中にボールが入らなくなるわけでも、林から脱出が上手くなるわけでもありません。林の中にボールが入ったときに、どうしたら良いのかを考えましょう。
遠くから見ていてもゴルファーの腕前は見えるもので、そういうシーンはいくつもあります。その一つが、林の中に入っていく立ち振る舞いなのです。
上級者は、林に入る前にプレーしているホールの色々なところを確認して、複数のクラブを持って入って行きます。一方、初級者はグリーンまでの距離やグリーン周りだけを確認して、せいぜい2本くらいのクラブを持って林に入って行くのです。
上級者は、林にボールが入ってしまった時点で1打は無駄になってしまうと覚悟しています。安全に脱出させるとしたら、真横、ときにはやや後方を狙う可能性があるから、そこにバンカーがないか、飛びすぎたときにリスクはないかなどを観察してから林に入っているのです。脱出して次に打つのが楽な位置を考えたり、得意な距離が残せないかということまで考えます。
ボールの所に行っても、木々が密集していない開けた方向はどちらなのか、その場合に、次打は何ヤードくらい残るのかを考えてから決断を下します。無理をして林から脱出できないことを最悪の結果として、安全第一で考えるようになるのは、過去にほんの少し欲張った決断をして、大叩きすることになったのを反省したからです。
初級者は、とにかくグリーンに近づけることしか頭にありません。もっと広くて安全な方向があっても、グリーンに近づくほうを優先してしまうのです。打つたびに木に当たったりしてどんどん林の奥に入っていってしまう初心者は、脱出の前の段階で迷路に入ってしまっているのです。
上級者は、最低でも3本のクラブを林の中に持ち込みます。奇跡的にグリーン方向が狙えるときに打つクラブ、高い球で上の空間を狙って打って脱出させるクラブ、低い球を打てるクラブ。これが定石パターンです。
初級者は、グリーンまでの距離前後のクラブしか持たずに林に入ることが多いようです。気持ちはわかりますが、林の中は欲を試される場所なのです。確実性を優先して考えるのが正解です。
ゴルフを楽しみながら上達したければ、上手いゴルファーやベテランのゴルファーを観察して、良い所をどんどん真似ることです。階段を一つ一つ踏み締めるようにして上達するのも素敵ですけれど、段飛ばしで駆け上がるなら先輩の経験を吸収するのが近道で、上手くいけば快感です。
林の中から横に確実に出しても、そこから大叩きしてしまうのが現実じゃないか、という反論もあります。それは実力ではなく、考え方で一気に解決します。
ゴルフが上手くならない人の思考は、すぐに見返りや結果を求めすぎるのです。横に出したり、遠回りしたときに、それを取り戻そうと無理をするから大叩きしてしまうのです。上級者は、横に出したりして1打を失ったときに「この1打で済むように」と考えるのです。
普段通りの実力しか出せないのがゴルフですから、奇蹟のスーパーショットを望むのではなく、1打多いスコアでそのホールを終えればパーと同じだと考えて冷静にプレーしましょう。
最後に、林の中から確実に出すための秘訣を紹介しましょう。
林の中は頭を打って怪我をしないように、低い枝は落とされているものです。難しくしているのは、狙った方向に打ってもボールが上がりすぎて、枝に当たってしまうことが多いからです。
低い球は練習をしてもなかなか難しいのに、練習していなければさらに難易度は上がります。上級者は、低い球を打つために、8番とか、6番とかを短く握って小さなスイングで横に出したりしますが、練習と経験が必要です。
オススメしているのは、パターも持って林に入ることです。パターは転がす用具ですので、低い球しかでませんし、アプローチ程度のスイングで楽々50ヤードくらいは打てます。さらに、練習をしなくとも簡単です。
見た目が悪いと気にする人もいますけど、林の中からキンコンカンの音だけでなかなか出てこないよりは、何倍もスマートです。百聞は一見にしかず。やってみてください。
林についても色々書きましたが、現在の日本のゴルファーは春には桜を楽しみ、夏には木陰で涼んで、秋には紅葉を楽しんだりできるのも事実です。悪いことばかりではないのです。個人的には、里山のような林があるコースが大好きです。そう考えて、木々を愛でる気持ちで林もゴルフコースの一部だと楽しんでしまうのがベストです。
ゴルフでは、冷静な判断と、柔軟な発想が最大の武器になることが多々あります。そういうゴルフを楽しもうと開き直れば、林の中でさえ、ゴルフは十分に楽しいのです。