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バンカーは深く知るほど簡単になる?/誰かに話したくなるおもしろゴルフ話

バンカーに入ったら最後…。本当にバンカーが嫌いという人はたくさんいます。嫌だと思うほど、入ってしまうのがバンカーなのかもしれませんね。

バンカーはその昔、羊と羊飼いが強い風を防ぐために掘った穴だったという話がありますけれど、本当でしょうか?バンカーがたくさんあるコースが名門だという説はどうでしょう?

ゴルフをする限り避けられないバンカーについて、深く掘り下げて、色々調べてみましょう。

“Bunker”はどこで生まれたのか?

St Andrews Old Course

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言語学では、6世紀のゲール人(スコットランド人の祖先)が“Bonker”という言葉を使用し、それが古い英語で“Banker”となって、現在の“Bunker”となったことが明確になっています。

6世紀からバンカーってあったの?と驚くのは早計です。元々バンカーというのは、寒い地方で冬の間に食品が凍って傷んでしまうのを防ぐために穴を掘って作った食料庫のことだったのです。

近代になって、石炭などの燃料を貯蔵しておく場所という意味になって、戦争で使用する塹壕もバンカーと呼ぶようになりました。もちろん、スコットランドでは北海から吹きつける強烈な寒風から放牧の羊を避難させる窪地もバンカーと呼んでいました。

つまりバンカーは、元々は大まかにいえば穴蔵のような意味の言葉だったのです。それがゴルフコース用語として使われるようになりました。

ゴルフコースにバンカーが作られるようになった正確な経緯は諸説あり、正確にはわかっていません。しかし、18世紀から19世紀にかけて書かれた古い絵画を見ると、当時のゴルフコースはほとんどがバンカーだったようにも見えてきます。砂が剥き出しの荒れ地の中で、先人たちはゴルフをしているからです。

現代におけるバンカーの定義はハザードの一つで、地面から芝や土を取り除いて、代わりに砂などを入れて作られた区域ということになっています。そして注釈的に、凹みになっている場合が多い、と追加されています。

さり気ない定義ですが、荒れ地がバンカーになったという名残を感じさせます。バンカーの中に砂がないと大騒ぎするゴルファーは、自らの不勉強を大声で発表しているようなもので、恥ずかしいことなのです。

19世紀末に書かれた文献には、バンカーは芝生が生えていない裸地のマウンド、または窪地で、砂があってもなくともよく、ハザードとして使用する場所と定義されています。注目すべきポイントは、マウンド型のバンカーも当時は普通にあったようだということです。

ゴルフ史を振り返ってみると、バンカーについて考察が始まるのはゴルフコース設計家と呼ばれる職業が生まれた時代とリンクします。バンカーは人が作ったものとして、その存在意義を問われ始めたからです。

どうしてあんな所にバンカーがあるのか?プレーするゴルファーの感情に正当な理屈で対抗するのが、現在まで続くバンカー学なのです。

21世紀になったつい最近のことですが、面白い実験が行われました。バンカーは元々放牧された羊の風除けの場所の芝生が禿げて生まれたという自然発生説を裏付けるために、バンカーがないホールに大量の羊を放牧して、約2年間、どこに裸地ができるかを観察したのです。

この結果、凄いことがわかりました。バンカーは自然にある配置と形状こそが正当なのだと主張していた見識者は、ひっくり返るほど驚いたのです。実験したホールにはバンカーどころか、それに近いものまで、全くできなかったのです。この実験で、“バンカー自然発生説”は完全にお伽噺になりました。

古いリンクスコースには、ボールが低いところに向かって転がっていった結果、入ってしまうバンカーがたくさんあります。正式な文献は残っていませんが、19世紀末に芝刈り機の普及と一緒にグリーンキーパーという職業が生まれ、その彼らがこれらのバンカーを作った形跡があります。当時の彼らの悩みの一つが、転がったボールが集まりやすい窪地は、どんなに芝生を整備しても、打つ人が多いのですぐに芝生がなくなってしまうことだったのです。

グリーンキーパーたちは悩んだ末に、一つの結論に達します。そういう窪地はバンカーにしてしまえば、全ては解決する、と。砂地の上に芝生を広げて作られたリンクスコースは、掘るだけでバンカーになったのです。

今でも、そのようにして生まれたと推測されるバンカーは、全英オープンが行われているリンクスコースでも見ることができます。バンカーは色々な事情で作られていったのです。

バンカーが多いことが名門というのは間違い

THE PLAYERS Championship - Round Two

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メジャートーナメントで、唯一同じ場所で毎年開催されるのはマスターズだけです。世界一美しいといわれる会場のオーガスタナショナルは、日本でもテレビやゴルフ雑誌などの写真でたくさん紹介されています。特徴的なのは、芝生の緑色と真っ白なバンカーです。

このコースが作られた1930年代は、現在に直結するゴルフコースの設計理論が確立した時代でもあります。

オーガスタナショナルには、開場当時、バンカーは22個しかありませんでした。現在では何度かの改造で増えたとはいえ、40数個しかありません。効率的に配置すれば、最小数のバンカーで十分だと教えてくれているようです。

ゴルフコースはリンクスコースをお手本にして数を増やしていきましたが、オーガスタナショナルも例外ではなく、設計したアリスター・マッケンジーもセントアンドリュースのオールドコースなどのリンクスコースをお手本にしました。ただ、バンカーだけは当初から最小の数にすると決めていたと、マッケンジーは著書などに書いています。

バンカーは目立ちますので、設計家は特色を出そうして色々なところに配置してしまうものです。コースを改造する際も減らすことはしづらいので、増えていく傾向があります。

1930年の時点で、ミスショットを罰する意図のバンカーばかりを増やすのはゴルフの面白さを削ぐことになるので、熟練のゴルファーが挑戦したくなるようなバンカーだけが必要なのだと考えていたマッケンジーには感服します。

日本では、とにかくバンカーの数が多いことや、目立つバンカーが多くあることが良いコースだとか、名門コースなのだという価値観を持っている見識者も少なからずいるのが残念です。そういうことが、バンカーが嫌いになる人が多い原因になっているのかもしれません。

しかし、徐々にそれは改善されつつありますので、将来に期待したいと思います。

バンカーの存在意義を知ろう

Italian Open Golf

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バンカーについて詳細に学ぼうとすれば、膨大な時間がかかります。それだけたくさんの種類がありますし、考え方や意味もあるからです。普通にゴルフを楽しむのであれば、バンカーについてのマニアックな知識やアカデミックな見識は不要です。知っておいて損がない範囲のバンカーについての面白い話を紹介しましょう。

バンカーはミスショットを罰するために配置されると考えるのは、ちょっと短絡的すぎます。バンカーはハザードですが、挽回できる場所でもあります。ゴルファーを助けるために存在するバンカーもあるのです。

具体的な例を紹介しましょう。ゴルフコースを管理する人たちが使う言葉で「球止めのバンカー」というものがあります。OBや谷、池などがあるサイドの手前にあるバンカーが、これに該当することがあります。ボールがそれ以上転がってトラブルにならないように、バンカーで止まるような意図で配置されているわけです。

戦略上は無視しても良いバンカーなので、無駄に配置されたバンカーだと嫌う上級者もいますが、多くのゴルファーはさり気なく助けられているのです。

ドッグレッグして曲がっているホールや、打ち上げていて目標がわかりにくいホールなどで戦略ルートではないのに、手前や遙か彼方の遠方にバンカーがあるケースもあります。これは、目印として利用することを目的として配置されたバンカーです。

「あのバンカーの手前がベストポジションです」
「右のバンカーの横に止めるのが狙いです」

というように、目標として機能させようとしているバンカーもあります。

グリーン周りのバンカーでも、グリーンへの距離感を問う短い距離のホールではバンカーは手前に配置してゴルファーに意図を知らせていますし、長いホールではグリーンの手前ではなく横にバンカーを配置することで、方向性を問うホールなのですよ、と教えてくれることもあります。

米国では、バンカーをサンドトラップと呼ぶこともあります。確かに罠のようなバンカーもありますが、バンカーはそんなに単純ではないのです。色々な存在意義があってこそのバンカーなのです。

バンカーを観察して存在意義を意識できるようになれば、ゴルフは何倍も楽しいものになります。ハザードである以上、ときには苦しめられることもあります。でも、冷静に観察することができれば、苦しめられたのと同じぐらい助けてくれることもあるのです。

ちなみに、バンカーショットが苦手な人の99%は単なる練習不足です。ショットの練習を何百時間もした人でも、バンカーの練習は1時間もしたことがないというケースがたくさんあるのです。練習をしていないのに、本番だけで上手くいくなんていうことは、ゴルフでは滅多にないことです。

思い切って、バンカーの練習をしてみましょう。バンカーを大好きになれなくとも簡単なんだと体験できることは、自分のゴルフにとって確実なプラスになります。