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1流プロのマッチプレーで実際にあった不思議な「OK」の真意は?ゴルファーの「暗黙の了解」について考える

ゴルフにはルールに書いていない暗黙の了解みたいなものがあって、勝手が分からずマゴマゴすることがありますよね。
「マナーやエチケットに照らし、良心に従ってプレイをする」って言い方をしますが、実際にはみんながジェントルマンとは限らないので「他人に厳しく自分に甘い」って人もいるんじゃないでしょうか。

と言うことで、今回はルールに書いてないルール、つまり暗黙の了解についてのお話です。

審判のいない競技ってのが曲者なんです

スポーツと名のつくものには必ずルールがあります。
もともと審判が行うジャッジは絶対的なものでしたが、いまはビデオ判定みたいなものでジャッジの裏付けを求めるようになってきました。
たしかにスローモーションビデオやコマ送りみたいな機能があるんだから使った方が正確なジャッジができます。

最初にそんな機能を使ったのは競艇の写真判定だったようです。早いスピードに対応できる写真判定は確実性を増して、みんなが納得できるものになりました。
そしてビデオ判定は伝統ある大相撲が最初に導入したそう。それまでは微妙な判定の時には「死に体」という決まり技があったのに、それを無くして先に土俵を割ったり土がついた方が負けにしたわけです。

しかし、ゴルフだけは相変わらずビデオ判定どころか審判のいないスポーツのままとなっています。
大相撲のようなビデオ判定やテニスのようなコンピューター判定ができるようになると、もっとスポーツらしいスポーツになると思うのですが、今のところは「良心」によって自らがジャッジしているわけです。

ゴルフ界は「伝統的」を誇りにしているので、当面はジェントルマンスタイルを変えるつもりはないようです。
ただ微妙な判定に対して厳しい目が向けられるようになってきているので徐々に改善しようとはしています。例えばフォアーキャディだけではなく競技委員と呼ばれる人たちが池の周りに配置され、進入口の確認をして写真判定の代わりをしています。

プレイヤー同士の暗黙の了解で「後方線上」を決めている

ボールが池に入ったら「ピンを結ぶ後方線上にドロップできる」のと、「進入口から2クラブレングス以内にドロップできる」の2つのルールがあります。前者がウォーターハザード(黄杭)で、後者はラテラルウォーターハザード(赤杭)です。

でもドロップ位置は規則通りにはできません。後方線上にドロップと言っても測量しているわけじゃないから、ザッとした位置にドロップ位置を決めて、同伴者に了解をもらっているわけです。
もしもドッグレックのブラインドコースだったらピンの位置さえもよくわからずに決めているってこともあり得ます。

「ここに落とします」ってポイントにマークしても、それが本当に合っているとは限らないのにドロップには変なルールが付随しています。ようはアバウトに決めた落下地点なのにドロップしたボールが規定以上に転がるとやり直しをすることになります。

もともとドロップする位置が適当なんですから、多めに転がっても不問にしてもいいような気がしますし、どうしてもサイドロップさせたいのであれば機械の力を借りジャッジすればいいわけです。
プレイヤー同士の暗黙の了解できめた「後方線上」ではなく「後方と思われる線上」というのが正解なのであれば無駄なルールじゃないかなって思うわけです。

徐々にエスカレートする「オーケーです」の距離

似たようなケースにグリーン上のプレイがあります。
普段はあまり馴染みのないマッチプレイですが、ストロークプレイのときでもよく使うルールに「コンシード」があります。
日本では「OK!」として使いますが、海外では「ギミー(gimme)」と伝えることが多く、本来は自分の負けを認めて「相手の勝ち」を宣言するときに使います。

「OK」はプライベートゴルフでよく使われています。ワンクラブくらいの距離があってもOKを貰うと、お返しの意味も込めてワンクラブ以上の距離でも「オーケーです」っていうことになり、徐々にエスカレートして、本来の楽しさであるパットの緊張感無しでホールアウトする羽目になることもあります。

どのくらいの距離が適正なOKなのでしょう?
ワングリップくらいの距離をOKしなければ「ちいせいヤツ」と思われるかもしれませんし、ワンクラブ以上をOKしたら「まぬけなヤツ」と思われるかもしれません。

下りラインやアンジュレーションがキツイと短くても難しいですし、上りのストレートラインだとワンクラブでも簡単って思える時もあります。またテクニックというか技量や人によっては社会的地位だってOKを出すときに重要な要素となります。そう考えると、「この距離が適正」ということはないのかもしれません。

一流プロゴルファーの「不思議なOK」に答えがあった

2014年2月の世界的なマッチプレイ大会にOKのヒントが隠されていました。
有名なプロゴルファーのガルシア(スペイン)とファウラー(USA)が「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」で対戦した時のことです。ガルシアは2オンして2Mのパッティング、ファウラーは3オンでピンまで5Mのパッティングです。明らかにガルシアが有利の状況だったのですが、なんとガルシアから「引き分けにしよう」とファウラーの5Mのパッティングをコンシードしたのです。

見ている人もテレビの解説者も「ぽっかーん!」状態だったのですが、結果この試合は2ダウンだったファウラーが勝ち、圧倒的に有利だったガルシアが負けました。当然あの時の「あれ」について気になっていたのですが、あとからファウラーが「なぜガルシアはOKしたのか?」を解説してくれました。

OKする前のホールでガルシアは蜂に襲われプレイに入るまでに時間がかかり、結果的にファウラーのタイミングを崩させてしまったそうです。そこで次のホールで「お返し」にOK出して引き分けにし「前のホールで時間をかけたから」って謝ったそうです。

僕たちは紳士的でありたい」という名言とともにこの不思議なOKが生まれたそうです。適切な距離とは、ボールからピンまでの距離ではなく、ジェントルマンとしての距離感がその適度な長さだったようです。

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