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ОB、ロストボール、前進4打について考えてみよう

「あれ~、この辺りに飛んだはずなんだけどなぁ、ロストボールかなぁ」

「白杭が近いからОBかもしれないぞ」

「もう5分探したからなぁ」

「フェアウェイの適当な場所から第4打を打てよ」

今日も日本のどこかのゴルフコースでこんなやりとりが聞こえてきます。

ОBとロストボールは似ているようでまったく別物、処置の仕方も違います。こんないい加減な処置で、コンペで優勝したり、100を切ったと言われてもね…。

アウト・オブ・バウンズ(Оut of bounds/略してОB)は、プレーできる区域外のことを意味するゴルフ用語で、ОBを打ったときのルールは、1打罰でもう一度打ち直し(実質2打の損失)なのです。公式競技以外では、前進4打といったローカルルールでプレーすることもあるので、当該ルールを正しく知らないゴルファーも多いようですね。

ОBはコースの境界の外側、あるいは競技委員会やゴルフコースの管理者などによってОBと表示されたすべての区域であって、ОBとプレーできる区域の境界は白杭、白線によって示されています。

白杭だけのコースの場合、ボールの前後にある2本の白杭の内側を結んだ仮想のラインがOBラインとなりますが、正確にはそうした杭や線の内側の地表レベルの線と定められています。OBの線上にあるボールは、その一部がほんの少しでも境界線の内側にあれば、イン・プレーのボールとなり、ОBではありません。

白杭は動かせませんよ

なお白杭やOBの境界線として定義されているフェンスなどは、通常それがスイングの妨げになったり、プレーの線上にあっても動かすことはできません。スイングの邪魔になる白杭は、ルール上で定める障害物ではなく、固定物とみなされるので、仮に物理的に動かすことができても、動かしてしまうとルール違反となって、2打罰が課せられます。

ウォーターハザードを示す杭やヤーデージ杭などは、動かせる障害物として、動かせますが、ОB杭はそうではありませんから注意しなければいけません。ただし、通常のスタンスを取ると、足が白杭に当たって動いてしまうようなケースでは、スタンスを取るために最小限必要な範囲で杭が動いてもペナルティの対象にはならないし、インバウンズにあるボールを打つためにアウト・オブ・バウンズにスタンスを取ることもできます。

ゴルフコースによっては、「ОB杭をローカルルールで動かせる障害物とすることもできる」とルールでは定められており、稀に白杭が動かせるルールの下で競技が行われることもあるので、スタート前にはスコアカードをよく読むことも大事なことなのです。

ОBを打った後の正しい処置

これはアマチュアゴルファーといえども、すべての人が当然知っていることと思いますが、ティーショットでОBを打ってしまった場合は再度ティーアップして1打罰で打ち直し。その他のショット(2打目以降)の場合はОBとなったボールを打った場所のできるだけ近くで、ホールに近づかないところにボールをドロップして打ち直します。この場合も1打罰となります。

ロストボールも同様な処置となりますが、それをストロークと距離(stroke and distance)に基づく処置といって、実質2打の非常にダメージの大きいミスになります。

ОBであることが明白の場合はティーショットであれば、他の人が打ち終わった後に再度ティーアップをして、またティーショット以外であればドロップをして打ち直すわけですが、ОBでない可能性がある場合は暫定球(provisional ball)を宣言してから打ち直すべきです。暫定球を宣言すれば、最初のボールがインプレーの状態で見つかった時、そのボールを引き続きノーペナルティでプレーできるからです。

また、暫定球を打っておけば、ボールを探してОBと分かったときに、わざわざティーグラウンドに戻って打ち直す必要もなく、暫定球を打てばいいだけで、無駄な時間と労力の大幅な節約になるのです。ただし、暫定球の宣言をしなかった場合は、最初のボールがセーフであっても、打ち直したボールが既にインプレーのボールとなり、最初のボールでプレーすることは許されないのです。

ですから、ボールが見つかる可能性がほぼありえないという場合でも、その可能性が0パーセントでない限りは、暫定球宣言はするべきでしょう。

日本独自のローカルルール「前進4打」

ティーグラウンドで「ティーショットがОBの場合、前方の特設ティーよりプレーイング4にてプレーしてください」という表示をよく見かけますよね。いわゆる前進4打、通称マエヨンホールです。

このルールは、正式な競技には存在しないローカルルールなのです。このようなホールはOBになりやすく、何球も打ち直しをされたり、ロストボール探しによるコース渋滞をさけるためのゴルフコース側の都合によるルールなのです。

言わばスロープレー防止などの理由で一般には普及していて、公式競技以外では、そうしたルールの下にОBしたと思われる地点に最も近いフェアウェイ、もしくはОBしたときに使用するように設けられた特設ティーから2打罰でプレーする場合もあります。前進4打はR&Aのルールにはありませんが、(簡易ルール的に)ゴルフコースが設定しているもので、それに従ってプレーすることが慣例になっているのです。

尚、この特設ティーからティー・アップして打てるのか否か、疑問を持っているゴルファーも少なくないと思いますが、慣例としては、ティーなのでティー・アップできると考えらています。とはいえ、元々正式なルールに準拠していないのですから、ルール上の正式な見解は存在しませんがね。

ОBやロストボールの前進4打のルールは、通常打ち直したボールがナイスショットだったらと思われる場所からプレーするわけですから、アベレージゴルファーレベルやハイハンデのゴルファーにとっては、正しいルールでプレーした場合よりも間違いなく良いスコアになる傾向があります。もちろん、特設ティーの場所や、ティー・アップの可否などにもよりますが。

少し厳しいことを言わせてもらえば、例えば初めての100切りを前進4打のルールの下で達成した場合など、果たして本当の100切りと言えるかどうか、少し疑問が残りますよね。

ОBはペナルティではなく救済なのです

ОB、ロストボール、前進4打のことを書いてきましたが、共通するのは実際に打っていない打数が加算されるということです。池ポチャもそうですが、アマチュアゴルファーが大叩きをするホールは、大抵打ってはいない打数がプラスされているからです。

「あのОBさえなかったら…」、ゴルファーであれば、誰もが一度は口にしたことはありますよね。そしてОBゾーンがなかったら、思い切って引っ叩けるのに、そう思うゴルファーも多いはずですが、もしОBゾーンがないゴルフコースがあったならというお話をひとつ紹介しましょう。

場所は南アフリカのモウブレイ・ゴルフコースという名門ゴルフ場です。モウブレイGCでは年2回、全メンバーが顔を揃えて意見を述べ合い総会が行われています。

あるときメンバーの1人が「うちのコースは他のゴルフ場に比べてOBゾーンが多過ぎるように思う。おかげで我々は伸び伸びとボールを打つことができない」。実際にモウブレイには24か所のОBエリアがあって、260本の白杭がメンバーたちを委縮させていたといいます。その意見に他のメンバーも「同感だ!」と賛同の声があがったといいます。

この発言に対して、理事たちが集まり、翌月からクラブハウスの壁にこんな張り紙が掲示されたそうです。

「暫定的にゴルフコース内のすべてのОB杭を撤去し、スルー・ザ・グリーンとする」

この告示のあと、コンウェイ理事はこうつぶやいたといいます。

「この処置から、メンバーたちはまたひとつゴルフを学ぶことだろう…」

ОB杭が1本残らずなくなったゴルフコースになった途端、当然のようにメンバーたちは思い切りボールを叩きはじめました。そしてクラブ選手権の予選が始まりました。予選はストロークプレーです。

いつもは2オンを狙わない6番ロングホール。前年度のチャンピオンがスプーンを握ってグリーンを狙った第2打は、捕まり過ぎたか大きくフックしてグリーン左の崖下にボールは消えていきました。そこは亜熱帯のジャングルです。マッチプレーならば当然ギブアップを宣告するところですが、ストロークプレーはカップインしなければホールアウトできません。

嚙まれたら数分で死んでしまうという毒蛇もウジャウジャいるような場所です。しかも打てども打てどもグリーンどころか、フェアウェイにも出せないチャンピオン。やっとの思いでグリーンにたどり着いた時、ボロボロになった男はこう言ったそうです。

「21打…」

ほかにも石ころだらけの沢から打ったら、ダフって手首骨折。崖から転落する者、蜂の大群に襲われた者が続出。そしてその翌日も、次の日もケガ人とダブルスコアに泣くメンバーが後を絶たなかったといいます。

そしてОB杭を撤去してから5日目、ОBエリアを復活してくれという陳情が殺到しました。理事長の予言通り、メンバーたちは学びました。

コンウェイ理事は

「世の中にはОBをペナルティと誤解している人が多くいる。そこで私たち理事会は、あの白杭がいかにありがたい救済処置であるかを黙って教えることにしました。効果はてきめんでした。今ではたった1打加算するだけで、あの悲惨な現場に行かなくて済むことに、全メンバーが喜んでいます。ОBはルール上、最大の救済処置なのです」。

理事長、なるほどでございます。もうОBを恨むのはやめましょう、皆さん。

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