ゴルフ上達に必須!パターの打ち方の基本を知ろう
ゴルフを始めると、ドライバーでボールを遠くに飛ばすことに快感を覚えて猛練習に取り組む初心者は多いと思います。確かにコースに出て、ドライバーショットで同伴競技者より10ヤードでも5ヤードでもアウトドライブすれば、誰でもかすかな優越感を感じ、気分よくプレー出来ます。
しかしそんなゴルファーには、ホールアウトしてスコアを比べた時、自分よりドライバーが飛ばない先輩のスコアが90で自分は100以上叩いてるという結果で、「パットがもう少し入っていたら…」と反省することがしばしばあるのではないでしょうか。
ドライバーの能力も重要ですが、パッティングの成績こそスコアメイクには重要です。パー72のコースでパーの半分の36打はパットに充てられているのです。
しかし、パットは、かなりいい加減に打ってもボールは一応それらしく転がりますし、少々経験を積めば、たまに大きくミスすることはあっても、だいたいはカップの近くまでボールを運べます。自分のパットのどこが悪くてカップインしないのか、先輩のパッティングのどこが優れているのか、初心者にはなかなか解りにくく、どのように改善すべきなのかも迷うことが多いのです。
もう一度パッティングの基礎を整理して頭に叩き込んで自分のパッティングを見直し、十分な練習に時間を割いて、スコアアップにつなげてみてはいかがですか。
パッティングスタイルは様々
パッティングスタイルには「こうでなくてはならない」「こうすべき」という一つの型はないと言われています。実際、プロでもアマチュアでもパッティングのフォームは構えからスイングまで人それぞれです。
最近では、米国の女子プロのミシェル・ウィーが、上体が地面と平行になるまでに腰を折り曲げてストロークするようにフォームを変えて話題になりましたし、日本が誇る名プレーヤーだった青木功プロは、パッティングでもストロークというよりヒットする感じでボールを打っているように見えます。
しかし、どんなフォームやスタイルでパッティングしていても、やろうとしていることは共通して、自分がボールを打ち出そうとする方向にパターの芯(ヘッドの重心)を動かし、ボールの芯に正対して当てることです。
パターの芯の運動方向が打ち出そうとする方向とずれれば、当然ボールは思った方向へは転がりません。また、上向きになればボールに不必要な回転が生まれ、いわゆる転がりが悪いボールになります。
パターフェースの芯から外れた場所でボールを打てば、パターヘッドがシャフトを軸に回転するモーメントが生じ、インパクト時にパターのフェースとヘッドの運動方向角度が付き、ボールに横回転が生じ想定外に曲がって転がります。
パッティングでは自分が打ち易いように自由に打って構いませんが、どのようなスタイルでパットする場合でも、パターヘッドの芯でボールの芯を正しい方向に打ち抜く感覚を感じることが重要です。
いわゆる「球カン」のよい人は、多少個性的なパッティングフォームでも状況に応じてストロークを調整し、クラブの芯でボールの芯を捉えるコツを体得しているのだと思いますが、普通のプレーヤーは基本に従ったパッティングスタイルを身につけることによって、状況に影響されずいつでも同じようにボールの芯を捉えるストロークが出来るようになるのです。
パッティングの基礎
構え(ポスチャーとスタンス)パター
パッティングする時の足場の決め方と姿勢の選び方は、下半身が最も安定する形を作ることが基本です。体の向きはボールを打ち出そうとする方向に、足、腰、肩と両眼を平行にします。
パッティングではドライバーやアイアンクラブのショットと異なり、腰、膝、足下の動きは極力抑えて上体の動きでストロークすることで、パターヘッドの動きを安定させることが重要です。したがって、肩幅かややそれより狭めにスタンスをとり、膝はやや角度を付け余裕をもたせ自然に立ち、上体の動きや、風、足場の傾斜などの環境の影響で体勢を崩すことのないようします。
スタンスが広すぎると上体の動きを阻害し、狭すぎると体勢のバランスが崩れ易くなります。上体は股関節の位置で前傾します。前傾する角度を深くすると、ストローク中に円運動するパターヘッドの軌跡とボールを打ち出そうとする方向とが作る角度が小さくなり、打ち出し方向のばらつきを小さくできる反面、前傾が深すぎると体勢のバランスを崩しやすくなりそのために却って打ち出し方向がばらつくという結果になりかねません。
前に取り上げましたが、ミシェル・ウィーが深く前傾しても安定してパッティング出来るのは、体幹を鍛え、大きな負荷がかかる姿勢でストロークしても、体の軸がぶれない体力を作っているからでしょう。したがって、一般には上体は自分が体勢を崩さず楽にストロークできる最大の角度まで前傾するのがおすすめです。
ボールと体の相対位置を常に一定に保つことは、クラブヘッドが描く円弧のどのポイントでボールに当るかということに影響するので重要です。
体格やスタンスの広さなど人によって様々ですから、狙った方向にボールを打ち出せる適切なボールの位置も、人によって感覚的には多少異なると思います。右利きの人なら両足のつま先を結んだ直線から20cm程前方、体の中心からボール1個分左に、感覚的には左眼の真下にボールがあるようにスタンスするのが標準的です。
スタンスを決めた後、両腕を脱力して鉛直方向に下げ、両手を合わせてクラブをグリップします。肘を若干曲げて両腕と胸で五角形を作る様に指導しているレッスン書もありますが、意識的に形を作るより自然にまかせて腕の位置と形を決めた方が、状況に左右されずいつも同じフォームでパット出来ると思います。
パターのフェースをボールのすぐ後ろに合わせて、グリップを体の中心から左太腿の内側前方に納めれば、僅かにハンドファーストの構えとなりアドレスは完了します。
グリップ
パッティングのグリップは、手首の動きを抑えパターのフェース面の動きを安定させることが重要です。パッティングのグリップには「リバースオーバーラッピンググリップ」「クロスハンドグリップ」「クロウグリップ」の3種類があります。
「リバースオーバーラッピング」はパターのフェース面をボールの打ち出し方向へ垂直に向けてグリップを両手で挟み、右利きの場合、右手を下にずらして両手の掌でグリップを包み込む様に持ちます。
この時、左手人指し指を右手の小指、人差し指の上に置くようにして左右の手の一体感が生まれるようにします。さらに両手の親指をパターグリップの前面に乗せるように重ねて握ります。
結局、パター以外のクラブのグリップと両手小指の重なりを逆にしたグリップになりますが、掌で握り親指をグリップ前面に向けることで、リストの不要な動きを抑え易くなります。
「クロスハンドグリップ」は、「リバースオーバーラッピング」とは逆に左手を下に、右手を上にしてグリップしますが、それによって自然とリストの動きは抑えられます。左手の甲がボールの打ち出し方向に正対するようにグリップし、左手でストロークをリードすれば方向性が安定します。
「クロウグリップ」は、右手の握る向きを反対にして手の甲を前方に向け、パターのグリップを摘むように掴みます。右手が左手のリストの動きを抑え、方向性の安定を図ります。
どのグリップでも方向性と距離感のバランスを保つのが重要ですが、私の個人的な感覚では「リバースオーバーラッピング」はロングパットで距離感と方向性のバランスが取り易く、「クロスハンドグリップ」では比較的短いパットで方向性の安定を得やすく感じます。
ストローク
アドレスとグリップが決まれば、あとはボールを打つだけです。前にも述べたようにパッティングではボールを強打して遠くに飛ばす必要はありませんから、下半身は固定し上半身の動きでストロークします。
基本的には、背筋を軸に両肩を回転させてクラブヘッドに円運動をさせる、いわゆるショルダーストロークでボールを打つのですが、背筋の軸を傾むけているので、クラブヘッドは打球線に対して平行に動くのではなく、打球線を接線とした円弧を描くように動きます。
ボールを狙った方向に直線的に打ち出そうとしてクラブヘッドを直線的に動かそうとすると、体勢を崩すかリストを使うことになり、却ってボールを思った方向から外れて打ち出しがちになります。
アドレスで作った姿勢で自然にショルダーストロークをすれば、クラブフェースが打球線に正対するタイミングでボールを打つ感覚が身につき、余計な腕や手首の動きを加えないよう体に覚えさせることができます。
初心者がショルダーストロークを身につけるためにもう一つ重要なことは、ヘッドアップが癖にならないよう気をつけることです。
ボールを打った後、ボールがどう転がるか、カップに入るかどうかが気になるは当然です。しかし、ボールを打った直後にボールを目で追いかける癖がつくと、次第に打つ直前から目をカップ方向に動かし、それにつられて頭が上がるようになります。これではショルダーストロークの軸がぶれ、安定したストロークが出来ません。
ストロークの結果は、ボールがカップに入ってからでも確かめられます。ボールを打った後、ボールを目で追いかけるまでに一呼吸置くようにするリズムを身につけると良いでしょう。
ボールを打つ距離は、肩を回転する角度の大きさで調整するのが一般的です。長い距離を打つ場合には大きく肩を廻しパターヘッドの運動距離が大きくなり、短いパットでは回転角は小さく、運動距離も小さくなります。
ロングパットをする時、肩を大きく回転しパターヘッドを大きく後方に引くとパターヘッドが円運動するのを強く感じ、ヘッドを直線的に動かそうと無意識に手首や腕を不必要に動かし、ボールを右に押し出すミスをすることがあります。あくまでショルダーストロークの背筋の軸のぶれと、手首や腕の余計な動きは抑えなければなりません。
また、パターヘッドが加速する状態でボールを打つことが、ボールの転がりがよいパットにつながります。しかし、ダウンスイングで無理にパットを加速させようとすることは、パターヘッドの動きを乱す原因となります。
バックスイングと同じ大きさ、あるいはそれより若干大きめのフォロースルーを取ることを意識すれば、自然とパターヘッドの加速中にボールを打つことが出来ます。女子プロの横峯さくら選手のパッティングを見ると、小さいバックスイングで大きなフォロースルーを意識していることがよくわかります。
ライン(ボールの軌道)を読む
ここまでパッティングの打ち方についてお話してきましたが、パッティングではボールを打つ前に、打ち出す方向と打つべき距離を決めなくてはなりません。
打ち出されたボールはグリーン面の傾きや芝目に影響され、曲線の軌跡を描いて転がります。その軌跡の延長線上にカップがあるように、打ち出す方向を定めなくてはなりません。
また、ボールがカップの手前で止まってしまってもカップに入らず、カップを超えて転がってしまっても、ホールアウトするためにはさらに1ストローク、あるいはそれ以上のストロークが必要になってしまいます。
したがって、ボールを打つ位置からカップまでボールが転がる軌跡を想定して打ち出す方向を決めることは、ボールを打つこと以上に重要です。グリーン面の傾斜をみてキャディとカップ2個分スライスとか、1カップフックするとか打ち出す方向を確認している場面をよく目にします。
しかし、このように打ち出す方向を決めてもボールの曲がり方は転がるスピードによって異なり、丁度カップに届くジャストタッチの強さで打ち出せば大きく曲がる場合でも、カップの向こう側に当ててカップインさせるつもりで強めに打てば曲がりは小さくなります。
したがって打ち出す方向を決めるだけではなく、ボールが転がりカップインするまでの軌跡をイメージすることが重要です。そのイメージが描けた時は、カップインする確率が高くなります。
私の経験でも、プレーを急ぐあまり集中力を欠いて軌跡のイメージを描くに至らないまま、打ち出す方向だけを考えてパッティングした場合は、カップインしない場合が多いのです。パッティングする前に、グリーン面の傾斜や芝目を見てボールの軌道をイメージする習慣を身につけることが重要です。
まとめ
パッティングのスタイルには、「こうすべき」というきまった形はないと言われます。必ずしも基本から少々外れた個性的なパッティングスタイルが上達の妨げになったり、不調の原因とは限りません。
しかし「3パットや4パットをしてしまうことがよくある」「パットが上手く打てない」などパットが苦手な人や、パットが得意な人でも不調に陥った時、自分のパッティングのどこがおかしいのか、どこが狂ってしまったのかを見つけるためには、基本を確認して自分のパッティングの基本からの乖離を計り、その点がパットの不調の原因になっていないかを検証することが、上達あるいは復調するためには有効です。
基本とは、体調や外的環境の変化があってもプレーの変調を最小限に抑えることが出来る規範と言えます。自分のパッティングをチェックする基準として、常に基本を頭に入れて安定したパッティングをマスターするために、その知識を役立ててください。