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男子ゴルフの賞金ランキングから、国内男子ツアーの衰退の理由を探る

今年もJGTO(日本ゴルフツアー機構)のツアー全日程が終了しました。

注目の賞金ランキングは、最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を待たずして金庚泰(キム・キョンテ)選手が年間5勝を挙げる圧倒的な強さで、2015年度の賞金王(獲得賞金¥165,981,625)に輝きました。



金庚泰(キム・キョンテ)選手は2010年度にも賞金王になっていますので、自身2度目の栄冠になります。

では、まずは確定した今季の賞金ランキングをみてみましょう。

2015年度男子ゴルフ賞金ランキング一覧(海外メジャー含む)

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今年活躍した、まさに男子ツアーの顔ともいうべきメンバーです。それにしても今季の全25試合開催中20試合の出場で、そのうち5つの試合で優勝した金庚泰(キム・キョンテ)選手の強さが際立つ内容です。

今年は、結婚・第一子誕生とプライベートでも充実していました。ここ数年不調に苦しんでいましたが、鮮やかに復活しましたね。来年は、PGAツアー挑戦を含めた海外も視野に置きながらのプレーとなるようです。

さて、2位以下に目を向けてみましょう。

25試合フル出場の宮里優作選手が僅差で池田勇太選手を上回り、賞金ランキング2位に入りました。トータルドライビングポイント(ドライビングディスタンスとフェアウェイキープ率をポイント換算した順位)でも1位となり、トップ10入りが優勝を含め10回、予選落ちはわずかに2回と、安定的な強さで自身初の1億円越えを果たしています。



3位は池田勇太選手です。選手会会長として奔走しながら通算13勝目となる優勝が1回、トップ10入りが9回と活躍しました。



以下、4位藤本佳則選手、5位片山晋呉選手、6位石川遼選手、7位谷原秀人選手と続きます。

金庚泰(キム・キョンテ)選手を除き、この中で複数回優勝しているのは石川選手のみ。出場試合数7試合中2試合で優勝、賞金ランキングに6位と、さすがの存在感を見せつけています。



PGAツアーでは思うように成績が残せていない石川選手ですが、アメリカでの経験が、確実に身になっていることを証明しました。一方で、PGAでは結果が出せない選手が、スポット的参戦でこれだけの上位ランクに名を連ねられることへの違和感もあります。

しかし男子ゴルフは、ツアー後半戦の石川選手の活躍以外、あまり目立ったトピックスがありませんでした。実際、スポーツやニュース番組の情報でも、女子ゴルフのほうが時間を割いて放送していることがたびたびあります。

女子ゴルフツアーと比べても、話題性の乏しい男子ゴルフ界。何故このような状況になってしまっているのでしょう。金庚泰(キム・キョンテ)選手が初めて賞金王になった5年前の2010年度の賞金ランキングと比べてみたいと思います。

2010年度男子ゴルフ賞金ランキング一覧(海外メジャー含む)

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当時24歳だった韓国の金庚泰(キム・キョンテ)選手を、19歳の石川遼選手、24歳の池田勇太選手が追いかけるという大変ドラマチックな展開でした。そこに41歳のベテラン藤田寛之選手が最終戦の「日本シリーズJTカップ」でベテランの貫録を魅せ、2位に食い込んだのです。

2010年度も25試合でしたが、上位4人で12勝していますので、いかに上位でし烈な争いをしていたかがうかがえます。

当時すでに「石川遼選手の人気頼み」の状態になっていたのは確かですが、石川選手のそれに応える年間を通しての活躍と話題があったからこそ、現在のツアーより活気があったことも否めません。

そして、今年の賞金ランキングをもう一度見てみましょう。

1位 金庚泰(29)
2位 宮里優作(35)
3位 池田勇太(29)
4位 藤本佳則(26)
5位 片山晋呉(42)
6位 石川遼(24)
7位 谷原秀人(37)
8位 黄重坤(23)
9位 小平智(26)
10位 小田孔明(37)
※()カッコ内は2015年12月現在での年齢です。

この5年の間に台頭してきた選手は、4位の藤本佳則選手、8位の黄重坤(ハン・ジュンゴン)選手、9位の小平智選手です。



3人とも常に上位にいるイメージですね。年齢も20代半ばと若く、実力も申し分ありません。しかし、トップクラスの実力ではあるものの、賞金王には手が届かないでいます。2009年に18歳の若さで史上最年少賞金王になった石川遼選手や、2013年にプロ転向し、その年に21歳で賞金王になった松山英樹選手のようなインパクトには及ばないのです。

金庚泰(キム・キョンテ)選手を中心に考えると、5年前に比べて追いかける立場に勢いがありません。しかも、今年は金庚泰(キム・キョンテ)選手の独壇場でしたから、賞金ランキング的には面白味のないものでした。このように比較しても、男子ツアーが注目を浴びない理由が見えますね。

では、賞金ランキング争いがし烈なら、もっと男子ゴルフが盛り上がるのでしょうか?

実は、去年(2014年度)のランキングは選手が大きく異なります。こちらも確認してみましょう。

2014年度男子ゴルフ賞金ランキング一覧(海外メジャー含む)

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小田孔明選手が初の賞金王に輝き、以下、藤田寛之選手、近藤共弘選手、岩田寛選手、宮本勝昌選手と続きます。

ツアー後半は、小田、藤田、近藤、岩田の各選手が賞金王を狙える位置にあり、最終戦まで、この4人が争う展開でした。



2014年度と2015年度の1位から5位までの選手が、すべて入れ替わっていますね。ですから、今年と全く違う顔ぶれでの賞金王争いが行われています。実際、後半戦は緊迫していて、非常に面白い展開でした。

しかし男子ゴルフの世界から離れると、その注目度は決して高いものではありませんでした。華やかさに欠けるといったらそれまでですが、華のある選手が出てこないのが、男子ゴルフの辛いところでしょう。

PGAツアーへの流失

こうした華やかさの無い男子ツアーが、さらに加速する理由があります。

2009年度の石川遼選手、2011年度の裵相文 (ベ・サンムン)選手、2013年度の松山英樹選手と、日本ツアーの賞金王はPGAツアーへ挑戦し、日本ツアーから離れてしまっています。



賞金王に限らず、実力のある選手はさらに飛躍を目指し、海外へ挑戦していくのです。世界で通用する選手が出てくるというのは喜ばしいことなのですが、国内ゴルフに限っていうならば、危機的状況です。

足枷のように日本ツアーへの参加を義務付けるのは本末転倒ですが、実力のある選手が国内の試合で見られないというのは、やはり残念ですし、トップレベルのプロのゴルフを見るという意味でも不満が残ります。

海外メジャーでの活躍を見るのも楽しいですが、その分、国内の大会を見る楽しみが減ってしまっているようにも感じます。

孤立したJGTOツアー

別の角度から、男子ゴルフ停滞の要因を考えてみましょう。

米PGAツアーと双璧をなすヨーロピアンツアーはアジアンツアーとの共同開催を多く設け、現在は世界26か国で開催しています。

そうした輪から外れてしまっている日本ツアーは海外選手の参戦も少なく、国内大会では「アジアパシフィック ダイヤモンドカップ」などの共同開催大会を除いて、海外招待選手がスポット参戦する程度です。

今年度も「日本オープンゴルフ選手権競技」にアダム・スコット選手、「三井住友VISA太平洋マスターズ」にバッバ・ワトソン選手が参戦しましたが、そうした海外のスター選手頼みの開催では、継続した人気はあり得ないのです。

模索する男子ゴルフ

このような危機的状況を何とか打破しようという取組みは、すでに行われています。

今季もワンアジアとの共同主管大会として、タイで「THE SINGHA CORPORATION THAILAND OPEN」が開催されました。こうした共同主管の大会は、2013年度から始まっています。来季もミャンマーでアジアンツアーとの共同主管大会を開催することをすでに発表しています。こうした海外での大会を通して、選手のレベルアップと海外ツアーとの繋がりを強化しているのです。

さらに、その時に調子のいい選手が秋口のトーナメントに出場できるように配慮された新システム「フォールシャッフル」を今季から導入するなど、よりアグレッシブに試合が行われるように工夫がされています。

こうした努力は数年前から積極的に行われるようになり、男子ゴルフ界が危機感を持っているのがうかがえます。しかし、男子ゴルフの衰退のスピードを考えると、これでも遅いのかもしれません。

女子ゴルフとの決定的な差

LPGAのツアーは大会数も37試合と男子より多く、非常に好調です。女子も長い間、不遇の時代が続きましたが、樋口久子元会長の地道な努力が実り、ファンとスポンサーを大切にする姿勢が、現在の成功へと導いています。



何といっても女子ゴルフとの決定的な差は、ファン目線での配慮でしょう。

女子ゴルフを主催するLPGAは、女子プロ達に徹底的にファンサービスの心得えをたたき込みます。随時講習会を行って、ファンとスポンサーありきのプロであることを自覚させるのです。トーナメント会場でのファンサービスのサイン会や写真撮影会なども多く行われ、女子プロ達は、自分たちが見られる立場だという事を肌で感じます。

ですから、そうしたLPGAの思惑に合致した、ファン目線に応える見た目もキュートで、しかも実力のある選手が次々と出てくるのです。決して、そのひとりひとりのプロが別格の強さを持っているわけではありませんが、ファンに好かれるだけの要素を持ち合わせているのです。

圧倒的なスターが誕生するには、その存在を待つしかありませんが、女子ゴルフ界のように全体的な人気を上げていくのは、協会とプロひとりひとりの心構えです。ファンの方向を向いている姿勢は大いに見習うべきでしょう。

男子も試行錯誤しながら努力しています。池田勇太選手会長をはじめとして、選手会が率先してファンサービスに努めている光景をよく目にしますが、それでも女子に比べると、ファンに対する態度や姿勢に物足りなさを感じます。この点も、男子ゴルフの大きな課題でしょう。

おわりに

2015年度の賞金ランキングを見ながら男子ゴルフの行く末を考えてみましたが、いかがでしたでしょうか?

日本人が活躍しないから盛り上がらないという理由ではないと思います。実際女子ゴルフは、今季賞金女王のイ・ボミ選手をはじめ、5位までが韓国・台湾の選手です。女子ゴルフと男子ゴルフでは求める要素も違ってくるとは思いますが、プロゴルフという点では、全く変わりません。

プロらしい振る舞い、ファンへの心配り、スポンサーへの配慮など、現在のプロは大変です。高いレベルのプレーをしながら、いかにゴルファーの憧れとなる存在になるのか、考えなくてはなりません。



しかしやはり男子ゴルフの醍醐味は、その高い技術の披露です。是非、トーナメントに足を運んでみてください。生で見るプロの凄さを実感してもらえれば「やっぱり男子プロは面白い」と感じると思います。

男子プロの今後に期待して、来年のトーナメント開幕を楽しみにしたいと思います。