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魔女が棲むオーガスタ。2016マスターズ、ジョーダン・スピースの悲劇。

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誰もがジョーダン・スピースの2連覇を信じていた最終日の12番ショートホールでした。スピースはこの日、前半の6番から4連続バーディーを奪い、一時は7アンダーとしました。

11番が終わって2位に3打差の首位。誰もがスピースが逃げ切り、初日から首位を走る王者のパーフェクト優勝を予感していました。

12番はクリークを越える155ヤードのショートホール。9番アイアンを持ったスピースが打ったボールはグリーンにわずかに届かず、傾斜に沿ってクリークに転がり落ちてしまいます。

しかし、この時点では、優勝者に与えられるグリーンジャケットが遠のいたわけではありません。

The Masters - Final Round

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1打罰を加えた次の3打目で、スピースはピンまで80ヤード地点にドロップします。ここで信じられない光景が。

フルショットしたスピースは、何とクラブがボール手前の地面を叩くダフリ。世界のトッププロでは考えられないショットでした。ボールは無情にも、再びクリークに吸い込まれてしまいました。

周囲からは悲鳴が上がるほど、ありえないシーンでした。2度目の打ち直し、5打目はグリーン奥へ。6打目でやっとグリーンを捉え、1パットで沈めますが、このホールだけで「7」。4つスコアを落とし、首位から陥落してしまいました。

結局、スピースは通算2アンダーと首位ダニー・ウィレットに3打差の2位。表彰式は、前年優勝者がグリーンジャケットを優勝者に着せる役割があります。式の間中、うつむきながら無表情で耐えたスピースは、気丈にもウィレットにジャケットを着せました。

The Masters - Final Round

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「あんなに辛い表彰式を経験した選手は、きっと他にはいないと思う。この負けから立ち直るには、しばらく時間が必要」。スピースは涙ぐみながら、コースを去りました。

今年のオーガスタの魔女は、メジャー通算4勝の実力者、アーニー・エルスにも怪しげなウインクを送ったようです。

大会初日のスタートホール、1番でエルスはカップまで60センチにつけたパーパットを外したばかりか、カップを右往左往し、なんと6パット。初日を81位で終え、予選で姿を消しました。

日本人ファンにとって忘れられないのが、中嶋常幸の「魔の13番」です。1978年、マスターズに初出場した中嶋は2日目13番に臨みました。ティーショットをフェアウェー左のクリークに入れてしまいます。

打ち直しの3打目もグリーンに届かず、再びクリークに捕まります。このボールを中嶋は打ち直しをせず、水中に見えるまま打ちました。この4打目がなんと真上に上がってしまい、落ちてきたボールが自分の足に当たってしまいます。これがゴルフ規則19-2違反で2打罰となります。

中嶋は呆然としたのか、クラブヘッドに付いた泥をハザード内の地面にこすりつけてぬぐいました。これがゴルフ規則13-4b違反となり2打罰。ここのペナルティだけで4打。打ち直しで2打罰となって、11打目でやっとグリーンにのり2パット。トータルで「13」の大叩きとなってしまいました。魔の13番で13打。このエピソードは、今でもアメリカで語り継がれています。

Tommy Nakajima

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しかし中嶋はその後、1986年のマスターズで8位、同年の全英オープン8位、1987年の全米オープン9位、1988年の全米プロゴルフ選手権3位と日本人でただ一人、四大メジャーで10位以内に入っています。この失敗にも、中嶋はめげませんでした。

ちなみに、中嶋は13打を記録したマスターズと同じ年の全英オープン、セント・アンドリュースGCの17番ミドルでバーディーを狙ったパットがオーバーしてバンカーに入り、脱出に4打かかり、このホールで9打叩きました。バーディーパットが決まれば首位タイとなる、大事な場面でした。このバンカーは中嶋の愛称「トミー」をとって、「トミーズ・バンカー」と呼ばれています。

なぜか、オーガスタの魔女に見放された実力者も多くいます。「ホワイト・シャーク」と呼ばれた、グレッグ・ノーマンもその一人でした。

1987年のマスターズでノーマンは3人のプレーオフに臨みます。メンバーは2度のマスターズ優勝経験のあるセベ・バレステロス、地元オーガスタ出身の若手、ラリー・マイズ、そして当時人気、実力ともNo,1だったノーマンでした。

Constellation Senior Players Championship - Round Two

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プレーオフは、10番で早々とバレステロスが脱落。続く11番でマイズはセカンドを右に大きく曲げてしまいます。これを見たノーマンは、セカンドを安全なグリーンエッジまで運びました。マイズはグリーンまで23ヤード、さらにカップまで17ヤード、それも池に向かって下っている難しい位置でした。

高速グリーンに微妙なアンジュレーションの難しい状況に、誰もがノーマンの初優勝を予想しました。ところがマイズのアプローチはグリーンの傾斜をたどるカーブを描き、さらに高速グリーンで加速するかのように滑り、ピンに当たってカップに吸い込まれてしまいました。目の前の奇跡のチップイン・バーディーに、ノーマン初優勝の夢が絶たれます。

1996年のマスターズ最終日、ノーマンは2位に6打差と優位な位置でスタートしますが、なんと逆転負けしてしまいます。

ノーマンがなぜ崩れたか。最終日に突然ショットが良くなったばかりに、バック9で狙い所を変えたノーマン。その修正が悪い方向となり、逆に戻せなくなってしまい自爆したのです。

ノーマンは1986年、1999年にも最終日に崩れて優勝を逃しています。優勝こそできませんでしたが、ノーマンはマスターズの歴史の中で記憶に残る存在です。

さらに、スコア誤記でマスターズ優勝を逃したのが、1968年でのアルゼンチンのロベルト・デ・ビセンゾでした。ビセンゾは最終日に65をマークしてボブ・ゴールビーと首位タイとなり、当時行われていた翌日の18ホールのプレーオフに臨むはずでした。

ところが、同伴競技者のトミー・アーロンは17番ミドルでビセンゾがバーディーを奪ったのにもかかわらず、スコアカードに「3」ではなく、誤って「4」と記入しました。ビセンゾはアーロンからスコアカードを渡されながらその間違いに気づかず、カードにサインをしてしまいます。

ビセンゾの記録「65」は「66」となって翌日のプレーオフもなくなり、ゴールビーが優勝してしまいました。これは“マスターズ史上最大の悲劇”と言われています。

ビセンゾは「2位という結果は受け入れることができないが、ルールは受け入れる」との言葉を残しました。この出来事によって、ビセンゾもまた忘れられないプレーヤーとなったのです。

多くの悲劇、ドラマを生むマスターズは、プレーヤーにとっても観衆にとっても目が離せない大舞台です。早くも来年の大会が待ち遠しくなりますが、来年はオーガスタの魔女が、松山英樹にはいたずらをしないことを祈るばかりです。

 

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