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だから面白い!歴史に残る個性派ゴルファー達②テレビが生んだスーパー・スター、アーノルド・パーマー編

パーマーのゴルフスタイルを象徴するのに、引退後にライバルだったジャック・ニクラウスとの会話があります。

ニクラウス「刻んだことがあるか?」

パーマー「ない。刻んでいれば、もっと勝てた」

メジャー大会はマスターズ4勝、全英オープン2勝、全米オープン1勝。PGAツアー通算62勝と歴代5位の成績を残しながら、ゴルフ人生を振り返ったパーマーの言葉です。
その象徴とも言えるのが、1961年の全英オープン初優勝でした。

ロイヤルバークデールで行われた試合は2日目嵐に見舞われる最悪の環境でした。パーマーはロングの3打目、ミドルの2打目で樹木、池などのリスクをものともせず、ミラクルなリカバリーショットでグリーンに乗せただ一人好スコアを叩き出しました。

一歩間違えば大叩きに成りかねないギャンブルショットでした。当時、イギリスでは障害物があると手前に刻んでグリーンを狙う戦略が一般的でしたが、あくまでグリーンを狙うパーマーの攻撃的なゴルフはイギリスのゴルフを変えた、とも言われています。まさに、テレビ中継向きのスタイルでした。

当時、アメリカのプロゴルファーにとって全英オープンは、わざわざ長い距離を移動してまでイギリスに渡っても賞金額が少なく、アメリカPGAツアー賞金額にも加算されなかったため、イギリス離れが進んでいました。

しかしパーマーにとっては、ボビー・ジョーンズが達成したグランド・スラムを獲得することに意味があったのです。まさに、チャレンジャーの面目躍如でした。ただし、結局本国の全米プロゴルフ選手権を優勝できず、グランドスラムを達成できなかったのは皮肉な結果でした。

負けっぷりもパーマーらしい潔さでした。1966年の全米オープンでパーマーは最終日の前半ハーフ終了時点で、2位のビリー・キャスパーに7打差の首位で後半を迎えました。ここで、パーマーは当時ベン・ホーガンが記録した全米オープンの最小スコアの更新に挑みます。

障害物があろうと、バーディーを狙うギャンブルショットを連発しますが、うまく行きません。終わってみれば、キャスパーに並ばれてしまいました。翌日の18ホールプレーオフも前半2打リードしながら、同様の展開を繰り返し4打差で敗れました。

テレビ中継の普及でゴルフが大衆化してくるのと同時に、視聴者はこんなパーマーを指示しました。「アーニーズ・アーミー」と呼ばれる熱狂的なファン集団も結成されました。

パーマーの「ハイ・フィニッシュ」も彼の象徴。パーマーは、あまりに強くボールをたたくので強いフックボールも生みやすく、インパクト後に左ヒジを逃がすために生まれたポーズです。独特の仕草がまた人気を呼びました。

「アーノルド・パーマー」といえば、本人よりもアパレル・ブランドを思い浮かべる人も多いでしょう。ブランド「アーノルド・パーマー」は日本のレナウンが作ったブランドです。

1970年代の日本はゴルフブーム最盛期となり、そのアパレル・ブランドの名前に「パーマーおじさん」のイメージがあった本人その人が使われたのです。それだけ日本でも、パーマーは好ましく伝わっていたのでした。
パラソルマークの「パーマー」ブランドは、戦後最大のブランドとしてありとあらゆるジャンルで使われました。あまりに増えすぎたためブランドイメージが低下し衰退してしまいました。しかし、2010年代になって新たなブランドイメージとして、「アーノルドパーマー・タイムレス」として復活しています。

パーマーにはもう一つ、スポーツビジネスの世界を変えたターニングポイントにいた人物だった歴史があります。1960年、アメリカでインターナショナル・マネージメント・グループ(IMG)がマーク・マコーマックによって設立されました。

IMGはスポーツ選手のスポンサー、テレビ、CMのマネージメントを引き受け、ライセンスビジネスを行う会社です。スポーツがテレビを中心に全世界へと発信できるコンテンツに育つと共にIMG自体もメディアを持ち、金融業にも発展。今では、ファッション、エンターテインメントも含む、世界的な巨大企業となりました。
このIMG設立に関わり、最初の契約選手がパーマーなのです。テレビによるパーマー人気の沸騰、拡大するスポーツビジネスを背景に、マコーマックは人気スポーツ選手のマネージメントがビジネスになる、と確信したのでしょう。今では、サッカー、テニス、ゴルフなどのトッププロはほとんど、日本人でも浅田真央、錦織圭、石川佳純など世界で活躍する選手が契約しています。

2015年のマスターズまで、名誉スターターを務めた86歳のパーマー。彼はまさにテレビから生まれたスターであり、近代スポーツ界を育てたビジネスのヒントになった、まさにその人でした。

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