葭葉(よしば)ルミが全米女子オープンで獲得したタイトルは「世界No.1の飛ばし屋」
全米女子オープン3日目を終えて、葭葉ルミは3日間平均255.63ヤードで1位につけていました。
2位のパク・ソンヒョン(韓国)との差はわずか1.01ヤード。最終日に望む葭葉は「記録がデータとして残るのなら、1位を取りたかった」と、最終日の7月16日もフルパワーでかっ飛ばし、4日間平均で256.59ヤードと記録を伸ばし1位を守りました。パクとの差は0.5ヤードでした。
国内ツアーでも現時点(7月24日)で葭葉のドライビングディスタンスは260.36ヤードで1位。日本の飛ばし屋が世界で通用する事を証明しました。大会の結果は51位タイと下位に甘んじたものの、「今飛距離がすごく伸びているので、ショートゲームやパッティングなど細かなところを伸ばして、来年また出たい」と抱負を話していました。
葭葉ルミのプロフィル
●生年月日:1993年3月12日
●出身地:東京都墨田区
●ボディ:身長160cm、体重56kg
●出身校:千葉日大一高
●ゴルフ歴:5歳から始め、小学4年生から競技出場。高校入学後、プロを目指し、2012年プロテスト合格。2014年に賞金ランキング40位でシード権を初獲得。2015年に予選会をクリアし、海外メジャー初の全米女子オープンに出場し14位。2016年のニッポンハムレディスクラシックでツアー初勝利を飾った。
飛距離を伸ばす練習法
今年になってドライバーの飛距離が20ヤード伸びた、と言う葭葉。その秘密はオフでの練習にありました。
「お腹に力を入れて声を出してスイングすると飛距離が5~10ヤードアップします。オフに練習場でやってました。まだ私は試合でやっていない奥の手ですけど(笑)」と葭葉。女子テニスのシャラポワ選手並みの雄叫びが効果があると言います。
ちなみに、ツアーの規則にティーグラウンドの上で声を出してはいけない等の記載はなく、葭葉が雄叫びを上げても問題はなさそうです。
全米女子オープンの練習ラウンドで、飛ばし屋のレクシー・トンプソンと回った際も何回かオーバードライブできました。その自信が本番でのドライビングディスタンス1位につながりました。
さらに、課題を見つけた成果も。葭葉は高弾道で打つタイプですが、レクシーは低スピンの中弾道で飛ばすので、強風のコンディションでも安定性があります。風が強い海外のコースに挑戦するための見本を見せられました。
クラブ一新も契機
ナイキと日本女子初のグローバル契約を結んでいた葭葉でしたが、ナイキがクラブ事業から撤退したため、2017年の今季はクラブを一新しました。選んだドライバーが、ニューアート・クレイジー社のCRZ-435でした。
このクラブヘッドは葭葉が中学生の頃から使っていたもので、プロテストでも使った思い入れのある逸品。オフのスイング改造と筋力アップの時、クレイジーのシャフトとヘッドのバランスまで突き詰めた結果として、飛距離の要因となっています。
実は、葭葉はクレイジーで働いていた時期がありました。高校の時にクレイジーのシャフトをモニターで使っていた縁で、高校卒業後のプロテストを失敗した後に仕事を手伝っていました。電話応対からお客にお茶出しや、在庫管理までこなしていました。そんな縁から、ヘッド、シャフトの加工、調整には全面的な信頼をおいています。
メーカーの復活劇
クレイジーは一度倒産しています。2006年に創業したクレイジーですが、2013年に社長が詐欺容疑で逮捕され、2014年に倒産しています。しかし、スタッフが経営譲渡を受け、同年に再スタート。地道に活動を続け、出入り禁止だった国内女子ツアー会場にも、昨年から入れるようになりました。
今年、葭葉が契約フリーとなったタイミングも合い、再びコンビを組むことになりました。葭葉自身のイメージがマイナスになるリスクも省みませんでした。葭葉にとってそれほどかつての信頼が大きかったのです。
葭葉の全米女子オープン・ドライビングディスタンス1位を何より喜んだのが、クレイジーのスタッフだったことは言うまでもありません。
葭葉ルミのクラブセッティング
ドライバーのヘッド重量が昨年使用していたものから軽くなったため、シャフトは0.5インチ長くしたクレイジーのロイヤルデコレーション(約52g)を使い重量バランスを調整しています。シャフトはXと女子にしては硬めのチョイスです。葭葉は軽くて硬めのシャフトを好んでいます。
アイアンはシーズン当初はPXGの0311アイアンを使用してきましたが、サントリーレディースオープンから変更しています。
<ドライバー>
クレイジーCRZ435 ロフト10度 シャフト;クレイジー・ロイヤルデコレーション 46インチ 硬さX バランスD2 重さ294ℊ
<フェアウェイウッド>
3W: テーラーメイドM2フェアウェイウッド ロフト角15度 シャフト;クレイジー・ロイヤルデコレーション 43インチ 硬さX バランスD3 重さ317g
5W: テーラーメイドM2フェアウェイウッド ロフト角19度 シャフト;クレイジー・ロイヤルデコレーション 42.25インチ 硬さ80・X バランスD2.5 重さ331g
<ユーティリティ>
テーラーメイドSLDRレスキュー(ロフト角19度 シャフト;クレイジー STP UT75 40インチ バランスD1 重さ356g:ロフト角24度 シャフト;クレイジー STP UT95 39インチ バランスD2 重さ394g
<アイアン>
5I~PW:テーラーメイドP770 シャフト;NSPRO MODUS3 SYSTEM3 125・S 37.25インチ バランスD0
<ウェッジ>
テーラーメイドMILLED GRINDウェッジ(50度、54度、58度)シャフト;DGツアーイシュー・S200 クラブ長さは50度から35.5インチ、35.25インチ、35インチ バランスD0
<パター>
テーラーメイドSpider Tourレッド
(注)プロは頻繁にクラブ調整を行うため、実際使用するギアセッティングとは異なる場合があります。
葭葉のドライバースイング
≪アドレスはボールを上目使いで見る≫
上目使いでボールを見ると、背筋が自然に伸びて首と上体がまっすぐになります。首周りが動きやすくなり、スムーズに腕が振り抜けます。前後のスイング軸がぶれにくく、上体が突っ込むのも防げます。
≪前傾を保ったまま思い切り振り抜く≫
上目使いでボールを見ることで首筋が一直線になり、前傾姿勢が保たれます。当てようと、ボールを打ちにいくと体もボール方向か、目標方向に流れてしまいます。そのため、スイング軸がぶれて力強いスイングができません。
上目使い⇒前傾の保持⇒振り抜く、がスムーズな体の回転を生み、飛距離アップにつながります。
趣味がプラス効果に!?
全米女子オープンで大きな自信をつけた葭葉にとって、自分の趣味が今後の成長につながるかもしれません。ドライバー以外のショートゲーム、パッティングを今後の課題とした葭葉の意外な趣味が、ブラックバス釣りです。
バス釣りの魅力は、ゴルフに通じる、という葭葉。「(ルアー・キャスティングは)アプローチ・ショットみたいな感じ」と言います。
魚がいそうなポイントにルアーを投げるのは、グリーンの中でピンの位置にボールを寄せるのと同じ。これまで一番のブラックバスの大物は42センチという葭葉にとって、釣りの感覚を磨くことで、グリーンの上の「2勝目のタイトル」という大物を手にする日も近そうです。