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ゴルフにはいくつもの呪いがかかっているって本当?/誰かに話したくなるおもしろゴルフ話

ゴルフなんて老人の遊びだろうと馬鹿にしていた人ほど、止まったボールを思い通りに打てず四苦八苦するものです。

もうやめたい、と落ち込んでいたら信じられないナイスショットが出て、またやる気が沸き上がるなんて経験を繰り返すのが、ゴルファーとして誰もが通る道です。

どうしてゴルフは、こんなに面白いのでしょうか?単なる球技でもスポーツでもない魅力は、長い時間をかけて先人たちが面白さをゴルフに詰め込んで進化させてきた賜物ですけど、まるで悪い魔法にかかったようだと戸惑う人もいます。

21世紀ですので、さすがにオカルトだと茶化すつもりはありません。しかし、ゴルフには確かに不思議なことがたくさんあるのも事実なのです。今回はそういうテーマでゴルフの魅力を探ってみましょう。

エチケットは英語じゃない

ルールブックは、自らが審判であるゴルフをする際に携帯しなければならないと決められているものです。まあ9割方のゴルファーはルールブックを見たことも、所有したこともないのが現実ですから仕方がないかもしれませんが、ワンコインで買えますので手にとって欲しいと願っております。

日本人のゴルファーは真面目な人が多いので、ルールブックを全て覚えないとダメだと信じているケースがありますが、全くの誤解です。読むのはエチケットや気になったところだけで十分です。巻末の索引から、必要なところを見つけ出せるようにしておけば良いのです。

第一章がエチケットから始まるのは、有名な話です。エチケットは「礼儀作法」と訳されたりもしますが、参加資格というか、最低限必要なことが書かれているだけですぐに読めますし、中身も簡単で当たり前のことばかりです。日本人ゴルファーはここでスルーしてしまうのです。ゴルフルール最大といわれる謎を……。

エチケットの綴りは「etiquette」です。これ、何語でしょうか?フランス語なんです。

スコットランドで現在の形になったゴルフは古い言語の影響を受けてはいますが、基本的には全て英語です。第一章の、それもこんなに大事な部分に、どうして英語ではなく、フランス語をあてているのでしょう。

ちなみに、「エチケット」は英語化されて「チケット」となりました。聞き覚えがある言葉で、意味としても通じます。代わりになる英語を使わない理由について、ルールの総本山であり、ルール作りをしているR&Aは、いつものようにルールが作られる詳細や過程については明らかにしない不文律で『ノーコメント。それぞれの想像のままに』としています。

英語のチケットでは、ニュアンスがエチケットとは違うからだと研究者は解説しています。しかし、これは説得力がない解説なのです。“ルールブックは過去から英語の表現にこだわり、英語ではない用語はできる限り使用しない”という方針で作られてきたからです。また、フランスと英国は歴史的にも仲が良くなかった期間がありますので、不思議さは増すばかりです。

個人的には、強いてフランス語のエチケットを使うことで、注目させる意図があったのではないかと思っています。その部分だけ、そのままフランス語が使われているなんて不思議でしょう?とゴルフの初心者が興味を持つように意図されたとしても、残念ながら日本のゴルファーはピンときません。

威張ってエチケットを振りかざすオールドゴルファーでも、唯一のフランス語であることが謎のままだというのを知らないことが多いのです。なんだか滑稽です。ゴルフの呪いがあるとしたら、そういう残酷な部分は当てはまるかもしれません。

ちなみに、「マナー」というのもよく耳にすると思いますが、こちらは「行儀」と訳されたりしまして、エチケットはマナーが集まったものになります。堂々とゴルフを楽しむために、最低限の参加資格と立ち振る舞いを身につけましょう。やってみれば、簡単すぎて拍子抜けするはずです。

世界最古のゴルフルール

ルールブックを見れば、第一章のエチケットから始まり34のゴルフ規則があることがわかります。多いなぁ、と考えた人は不勉強です。他のメジャースポーツに比べると、ゴルフ規則はかなり少ないのです。

その理由は簡単で、性善説で作られているからです。ゴルフをする人に意図的な不正をする人はいない、というのが前提なのです。自らが審判というのも他の競技ではあり得ないことなのなので、ゴルフが特別であることを誇りに思いたいです。

現存する世界最古のゴルフルールは、1744年にエジンバラで作られました。ゴルフをする人が増えてきて、それまでの組ごとや勝負ごとに決めていた方法では不便になってきたことから明文化されました。

第1条:ボールはホールから1クラブ以内にティーアップしなければならない。第2条:ティーは地面に盛り上げてセットしなければならない。

第3条:ティーから打ち出されたボールは取り替えてはならない。

第4条:フェアグリーン上でボールから1クラブ以内にあるものは別として、石、骨、あるいは、その他のクラブを壊すことになるようなものを、プレーのために取り除いてはならない。

第5条:もしもボールが水の中、あるいは汚泥に入った場合は、自由に取り出し、そのハザードの後方にティーアップして、任意でプレーしてよい。ただし、ボールを取り出したことに対して、相手に1ストロークを与える。(マッチプレーを前提にしているので、罰を加えるではなく相手に与えると表現されています)

第6条:ボールが接触した状態になった場合には、あとからその場所に行ったボールをプレーする間、先にあったボールを拾い上げる。

第7条:ホールを狙う場合には、ホールに向かってプレーすること。ライン上にない相手のボールを狙ってプレーしてはならない。

第8条:誰かに持ち去られるか、または、いかなる理由にせよ、ボールを紛失した場合には、前にボールを打った位置に戻り、別のボールをドロップする。そして、相手に1ストロークを与える。(5条と同様にマッチプレーを前提に相手に与えるという表現なのです)

第9条:ボールをホールに入れようとする際、クラブあるいは他のもので、ホールへの道筋に印をつけてはならない。

第10条:ボールが人、馬、犬、あるいはその他のものによって止められた場合は、ボールが止まった位置からプレーしなければならない。

第11条:スイング中に、なんらかの理由でクラブが折れた場合には、それを1ストロークとして数える。

第12条:ホールから一番遠い所にボールがある者から先にプレーしなければならない。

第13条:リンクス保全のために造られた堀割、溝や土手、学校のホールや軍事訓練の塹壕跡もハザードとはみなさない。ボールは取り出してティーアップし、任意のアイアンクラブでプレーすることができる。

約300年経っていますけど、基本的なルールは変わっていません。

さて、キリスト教圏では“13”という数字は嫌われて採用しないようにするようですけど……最古のゴルフルールは“13条”なのです。

これが呪いだということで、ゴルフの呪いの噂は始まります。こちらも詳細な経緯は不明となっていますけど、全てのゴルファーが自分の有利に振る舞ったりしなければ明文化しなくとも良いことをしなければならない無念が、強いて不吉な数字を選ばせたのではないでしょうか。

「ゴルフルールの心」という言葉があります。トラブルがなければ、ゴルフルールは最少で済むのです。打って、寄せて、入れるという3つの要素を満たせば、ゴルフは成り立つからです。

ゴルフルールは、悪意がなくとも陥ってしまうトラブルからゴルファーを同じ条件で救うためにあるというのがゴルフルールの心で、ゴルフの精神だと考えてみましょう。

“13条”という数字に込められた無念は、現在のゴルフ規則の簡単な構造からも感じることができるのです。

クラブは14本の意味

最後にもう1つ、数字にまつわるルールの話をしましょう。

コースに持ち込んで使用できるゴルフクラブが14本になったのは比較的最近のことで、1938年です。マスターズを作った球聖B・ジョーンズは、グランドスラムを達成した1930年には16本のクラブを使用していたといわれていますが、残っている写真などで検証すると、別の年には22本のクラブを持ち込んでいるときもあったそうです。

どうして14本になったのかは、諸説あります。アメリカを代表するジョーンズの16本と、英国の代表選手が使用していた12本の間を取ったという米国らしい合理的な説も有名です。

1ダースである12本にパターを加えた13本では縁起が悪いので、もう1本足して14本になったという意外に単純だという説もあります。20世紀の話なのに、正解は関係者がノーコメントを貫いたので不明なのです。これも色々な説があるからゴルフらしいということになっています。

ただ、この14本という本数は、ゴルフをすればするほど感心する本数なのです。100ヤード位を最も飛ばないクラブで打ったとして、10ヤードに1本ずつ使っていくと、パターを除くので13本目にはドライバーの理想的な距離になります。プロゴルファーやトップ選手の場合は15ヤード刻みにしていくと、現在のツアー競技の平均になっていきます。

14本だからクラブの開発者がそのように考え、設計したのだから当たり前だという人もいるかもしれません。10ヤード刻みになるような調整は、1930年頃には既に理論的には完成していました。つまり、後から科学的に計算して作ったのではなく、はじめから現在のゴルフシーンを見越して計算されていたとも推測できるのです。

ゴルフは不思議で溢れています。でも、見過ごしてしまえば一生知らないままです。ただゴルフをするだけなら、なんら問題にはなりません。

それこそが呪いなのではないか、と思うことがあります。知れば何倍も楽しめるのに、その楽しさはチャンスを無駄にしなかったゴルファーのみしか味わえないのです。

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