タイトリストは飛ばすことで王者の地位を証明する!
タイトリストが2017年12月22日に発売する“VG3 ドライバー(10.5度)”、秋に発売された“718 AP3 アイアン”と“818H1 ユーティリティ”と“818H2 ユーティリティ”は、どれも『カッコイイ』クラブです。見た目は大人のゴルファーがゴルフを嗜むためのツールというイメージですが、中身は最先端の技術を目一杯に詰め込んだ挑戦的な新人のようなクラブなのです。
コースに持ち込んで打って思ったのです。プロ並みの上級者がお見事と感心する要素と飛距離アップに命をかけるマン振りゴルファーを納得させる要素と易しくスコアアップしたいゴルファーを助ける要素が融合するのは理想ですが夢の話で、決して現実にはならないと諦めているゴルファーは、これらのクラブを使ったらどう思うのだろうか? と。
タイトリストの意地と底力を見せられて、感動すらしてしまったテストラウンドをレポートします。
羊の皮を被った猛獣のようなドライバーがVG3
“VG3 ドライバー”は、日本市場用に開発されたモデルで、今回で五代目になります。過去の“VG3”シリーズの印象は、スライスに悩むゴルファーを助ける易しいドライバーでした。そして、フック打ちのゴルファーの中にピッタリとマッチする例があって飛距離性能が発揮される、というものでした。
新しい“VG3 ドライバー”は、特別なお披露目があったわけではなく、さり気なくリリースが発表されただけで、当初は順番でモデルチェンジしただけで、以前とあまり変わらないドライバーなんだろうと期待をしていませんでした。
ところが、試打をしたメディア関係者から「これは凄い」「歴代最高」「理由はわからないけど良いぞ」と次々に情報が入ってきました。慌てて、お借りして試打することになりました。
“VG3 ドライバー”には、9.5度のロフトと10.5度のロフトがあります。今回、テストしたのは10.5度です。
ロフト別に設計をしたとタイトリストも説明していますが、9.5度と10.5度のヘッドは、別のブランドといえるほど違うそうです。9.5度は改めて紹介しようと思っています。
ネックに調整機能がある以外は、特別に見た目で最先端は確認できません。ネックの調整機能を使えば、三代目(2014年)と四代目(2016年)の“VG3”と、タイトリストの“917”、“915”、“913”、“910”と互換性があるので、シャフトを使うことが可能です。
上から軽量のカーボン繊維を被せているので見えないのですが、クラウン全体に楕円形の穴をたくさん開けて、重量を落とすことができたそうです。その重量はソール内部で使用して、より低重心化になったと聞きました。楕円形の穴を開けた様子が、チーターの毛皮の模様に似ているので『チーターテクノロジー』という名称になっています。
構えたフォルムの第一印象は「デカイなぁ」でした。
それでいて構えやすいのは、細部にわたって玄人受けする工夫が詰まっているからです。丸型の大きなヘッドは、好みはあるにしても、上級者から初級者まで安心して構えられます。
これも視認できませんが、流行しているカップフェース構造ではなく、フェース部分はチタン合金をはめ込んで圧着しています。
フェースも大きめです。構えたときにフェースがハッキリと見えるのは、ロフトだけではなく、フェースの大きさも影響しています。
お借りした“VG3 ドライバー”に装着されたシャフトは、専用に開発された標準シャフトの『VG50』のSです。50gのシャフトは、それを感じさせないしっかりした感触です。軽いシャフトは柔らかいというセオリーは、過去のものになりつつあります。
ドライバーの長さは46インチです。
最初は軽めに打ってみました。気温は1℃。かなり厚着をしていたので優しく振りました。ヘッドスピードは40m/秒ぐらいです。
気持ちの良い高音の打音は、短音で長い余韻がないことも好感触です。
打ち応えは、ちょっと独特です。フェースに一旦ボールがくっついてから飛んでいく感じです。これも個人的には良かったです。
弾道は高めです。強い初速感があるのに、ボールの浮力もあるのです。
軽くドローをしながらフェアウェイの真ん中に飛んでいきました。
軽く振っているし、高く上がったので、飛んでいないだろうと思ったのですけど、220ヤードは飛びました。これは衝撃でした。同じように打ったら、普通のドライバーなら200ヤードを越えれば御の字という感触だったからです。
次のホールでは、少し気合を入れて打ちました。ちょっと力が入って、ヒール目に当たって、左にボールが行きました。左は林だったのでヤバイと思ったのですけど、ボールはフェードしてフェアウェイに着弾しました。
ヒール目に当たっても、強弾道です。ボールは220ヤード飛びました。
次のホールは、ややトウ目に当たって、少しドローしました。これも芯に当たっていないのに220ヤード。
何ホールか使ってわかったことは、“VG3 ドライバー”は、ボールを曲げることもできますが、直進性能が高い、ということです。46インチの長さを感じさせない操作性の高さも実感しました。後からわかったのですけど、シャフト内部にタングステンのシートが入っていて、手元を少し重くしたカウンターバランス気味になっているそうです。
スライスに悩む人を救うほどボールをとらえる動きはしません。その分、スイング通りに飛びますし、優しく振っても、マン振りしてもちゃんと飛距離が出ます。
操作性が高いと評価されるドライバーは、ドローをある程度コントロールできても、フェードを自在に打つのは難しいのが現在の大きな流れになっています。更に、その機能を得る代わりに飛距離が少し劣る傾向があるのです。
“VG3 ドライバー”は、飛距離を犠牲にせずに、ボールを完璧にコントロールできました。これには少し感動しました。
“VG3 ドライバー”で芯に当たったときに、240ヤード飛びました。ヘッドスピード42m/秒で、真冬のコンディションの中、そこまで飛べば十分すぎる結果です。
飛んで曲がらないと書くと、宣伝文句で耳にタコができると信じないゴルファーが多いと思います。しかし、“VG3 ドライバー”は、そういうドライバーです。
もっと書くと、ゴルファーを裸にするドライバーでもあります。スイングがしっかりしてれば、かけ算で良い結果を出してくれます。
弾道で、球筋で楽しみたいゴルファーにとって“VG3 ドライバー”は最高の武器になるはずです。
余談ですが、あまりにも気持ちが良かったので、直ドラ(地面にあるボールをドライバーで打つこと)にも挑戦しました。
見事なストレートボールで中弾道で飛んでいきました。
左右だけではなく、フェースの上下についても、“VG3 ドライバー”の許容範囲は広いのです。
AP3も日本人ゴルファーのために
タイトリストにはたくさんのアイアンがラインアップされています。その中でもアメリカ市場で飛び抜けて売れているのが“AP1”です。常に最先端の技術を詰め込んだアイアンは、飛距離性能でも、易しさでも優位性を保ってきました。ところが、“AP1”は日本では使用率が上がらなかったのです。
理由はフェースの長さにありました。日本市場では、伝統的にフェースが長いアイアンは上手いゴルファーは使わないという不文律があるから、本来のターゲットである中上級者が敬遠した結果でした。
“718 AP3 アイアン”は、2017年秋に新たにラインアップに加わったアイアンです。
フェース長を少し短くして、数字のある番手は中空構造になっている最先端のアイアンは、日本市場への挑戦状だという声も聞こえてきます。
アイアンを分類する際に7番アイアンのロフトを基準にするようになりました。“718 AP3 アイアン”のロフトは、30度です。飛距離重視のアイアンの中ではやや控え目ではありますが、十分に過去の基準ロフトのアイアンよりは1番手飛びます。
お借りした“718 AP3 アイアン”のシャフトは、『N.S.PRO MODUS3 TOUR 105』のSです。
打ってみると、飛距離性能はロフトなりで飛ぶことがわかります。
弾道は中弾道です。これは中空構造のアイアンでよくあることなのですけど、ヘッドスピードが速ければもっと高い球になるのだと思いました。僕のヘッドスピードだと少し高さが出ないと感じるシーンもありました。
そして、直進性の高さも実感できました。曲げられますけど、極端にしなければ弾道はストレートに近くなります。打ち出した方向に真っ直ぐに飛んでいくイメージです。
芯を外したことは手応えでかなり詳細にわかります。少しぐらい芯を外しても距離に影響は出ません。許容範囲が広いというのは曖昧でわかりにくいのですが、芯から1センチ以内なら辛うじて機能は発揮されて、それ以上に大きく外れれば、飛ばないし、曲がってしまうのはしかたがないことです。
ソールはあまり跳ねないような工夫がされています。ややボールが沈んだライからでも、ボールをちゃんとヒットできるようにしてあるのは、アメリカの芝生に合わせたからかもしれません。
ソールの機能を実感していないゴルファーが多いですけど、実はかなりしっかりと機能しているものです。“718 AP3 アイアン”のソールは余計なことをしません。この部分は曲者で、打ち込むにしても、スイープ(水平)に打つにしても、ソールの機能に助けられているゴルファーが使うと、ダフリ過ぎだと感じたり、アイアンの弾道が安定しないと感じる可能性があります。入射角が安定していないと、ソールが薄いアイアンは難しいからです。“718 AP3 アイアン”のソールは薄くはありませんが、注意しないと、それが原因で上手く使いこなせないことがありそうです。
ロフトで面白いのは『48』と刻まれた番手の刻印です。〇〇〇48というようなアイドルグループとは無関係で、ロフト48度という意味です。
9番、PW(ピッチングウェッジ)。その下は、通常だとAWなのですが、タイトリストでは『48』にしています。
飛ぶアイアンが主流になっていく中で、AWのロフトは50度であるセットが多いので、48度のAWは個性的です。
飛びますし、グリーンでのボールの止まり具合も止まりすぎない感じで合格点です。弾道にかんしても、中空構造のアイアンは棒球な感じになりがちですけど、ある程度の浮力はあります。
ただ、個人的に、打音と打ち応えが物足りないと感じました。結果とはあまり関係がないオマケの要素で、気持ちの範囲ですが、アイアンは使用頻度が高いからこそ、その辺りのチューニングにこだわりがある中上級者のゴルファーは多いのです。もったいない、と思いました。
“718 AP3 アイアン”は、基本性能が高く、中上級者が使うアイアンとしてバランスが良いアイアンです。
例えるなら、日本人が好む繊細な日本刀のような刃物ではなく、アウトドアに特化した多機能な鉈みたいな印象でした。人を切ったり、鑑賞することが目的ではなく、それを使って切る物は同じなので、目的を達成する意味では優れています。
あくまでも機能優先で、感覚的なものにこだわらないゴルファーも増えてきていますし、結果が出るのであればゴルフクラブは全ての感性を凌駕すると個人的には考えています。
タイトリストの最先端を駆使してゴルフを楽しみたいと考えるゴルファーには“718 AP3”はオススメです。
これこそがユーティリティという答えを見た
“818 H1”と“818 H2”は、2017年秋に発売されました。タイトリストの新製品サイクルは2年なので、スタートダッシュで売れるというより、徐々に売れていくのかもしれませんが、このユーティリティは後に名器と賞賛されて売れるのではないかと予感させました。
フェアウェイウッドとアイアンの間を埋めるクラブがユーティリティで、色々な形状があります。元々はロングアイアンの代用クラブとしての役割が多かったのですけど、米ツアーのトッププロが使用するようになって、長い距離を担当するクラブとして独立して重要視するようになりました。
“818 H1”は、フェアウェイウッドに近いタイプの幅があるフォルムです。お借りしたクラブのシャフトは、『Titleist MCI 70』のRシャフトでした。柔らかいのではないかと心配しましたが、全く問題なく、普通の日本市場のシャフトのSの硬さのものと変わらない感じでした。
結論から書くと、打ってみてビックリするほど易しいクラブでした。
まず、構えやすいのです。ユーティリティの中には、方向に合わせにくい形状のクラブもありますが、“818 H1”も“818 H2”も、すっと目標に自然と合うので不安要素がありません。
“818 H1”はロフト21度を打ちました。アイアンだと3番か4番に相当します。打感や打音はフェアウェイウッドのような感じで、カチッとしています。
弾道は高弾道です。21度のロフトが嘘のような高さで飛んでいきます。ユーティリティで高弾道なクラブは過去にもたくさんありますが、高く上がるクラブは飛距離性能が劣るのが普通でした。しかし、“818 H1”は距離が落ちないのです。
高弾道で飛ぶという点で、他に例を見ないと感心しました。
ややボールをとらえる傾向がありますが、ドローも、フェードも打てます。特筆すべきは、ユーティリティのほとんどは飛ぶ球筋があると、それ以外の球筋では飛距離が落ちるのですけど、“818 H1”も“818 H2”も飛距離に大きな差がありません。
特徴的なのは、“818 H1”の直進性能の高さです。曲げようとすれば曲げられますが、オートマチックに同じ弾道と球筋を打つのに向いています。“818 H2”は逆に、弾道も球筋も自由自在です。安定してボールコントロールできないゴルファーであれば、易しいのは“818 H1”だと考えて、“818 H2”は意図しない色々なミスが出やすい難しいクラブだと考えるとわかりやすいと思います。
この時点で、ユーティリティとしてかなり優秀だと感じて、打つのが楽しくなりました。
“818 H2”はやや細いシェイプのユーティリティです。ロフトは17度から用意されています。(“818 H1”は19度から)
トッププロの使用率が、“818 H2”のほうが高いのは、ボールコントロール性能が抜群に良いからだと打っていて思いました。
強い弾道で、前に前に行こうとする感じに飛んでいきます。“818 H2”は、17度と21度を打ちましたが、本当に楽しかったです。ユーティリティは個性があり、似せて作るほどの圧倒的に優れたお手本がない段階のクラブです。だから、感性で使用するクラブで、気に入ったものがなかなか見つからないと悩むクラブでもあります。
“818 H2”は、弾道や球筋をコントロールできるゴルファーにとって、一つの完成型となる可能性を感じました。
同じロフトであれば、アイアンよりユーティリティのほうが飛ぶのが理想ですし、シャフトの長さなどの物理的な要因もあって、実際はそうなるべきなのです。それがユーティリティの最低限の合格ラインだと個人的には考えています。
“818 H2”はそういう意味で、気持ち良く飛距離も出るユーティリティで、芯に当てる実力さえあれば、使いこなすのは簡単だと思います。
左が“818 H1”で、右が“818 H2”です。ロフトは両方共21度です。
ヘッドが大きくないと怖い、と感じてしまうゴルファーには“818 H1”が、小さなヘッドでラフからでも抜けが良いショットを打ちたいと考えるゴルファーには“818 H2”というようにオススメできます。
また、あくまでもロングアイアンの代わりにアイアンとフェアウェイウッドの隙間を埋めることが第一優先であれば“818 H1”が良い選択だと思います。“818 H2”は、長い距離から思い通りの弾道でグリーンを狙っていく熟練のゴルファー向きです。ロングアイアンも使えるけど、それより優れているから使うという経緯で選ぶユーティリティです。
長い距離を打つクラブは、フェアウェイウッドもユーティリティも、構えたときの安心感というか、信頼できる雰囲気みたいなものは機能と言えると考えています。だからこそ、クラウンには余計な装飾はせずに、シンプルなのです。
最後になりますが、タイトリストのユーティリティとして、“818 H1”と“818 H2”には初めて『SURE FIT』を搭載しました。
チューブ上のウェイト入れ替えることで、フェードやドローを打ち易くする仕組みです。それに、ネック部分の調整機能を使えばもっと球筋の調整ができます。
今回のラウンドテストでは、調整機能には全く触れずに打ち続けましたので、その効果がどの程度なのかはわかりませんが、ゴルファーにとって、こういうプラス要因があることは支えとなります。あくまでも、プラスアルファとして使いこなすのが正解だと思います。
ユーティリティは大味だからと、繊細さを求めないゴルファーが多くいます。
断言します。その認識は誤解なのです。ユーティリティほど繊細さを求められるクラブはないのです。“818 H1”と“818 H2”は、それを証明してくれるユーティリティです。
自分に合うと思うスペックを一度打ってみてください。ゴルファーによっては、ゴルフそのものを変えてしまうほど衝撃があるがあるはずです。
タイトリストの最新のクラブを次々に打ってみて、感じたことは『飛距離性能』へのこだわりでした。まずは、飛ばなければタイトリストのクラブではないという意地を感じました。
そして、決してそれだけでは終わらないのです。飛距離性能は良くて当たり前であり、タイトリストらしさというプライドは、ゴルファーの心の底を知り尽くした隠し味となってクラブの使い勝手の良さとして機能していると思いました。
2017年はクラブの当たり年で、次々に凄いクラブが出現しました。そういう中で、流れを無視して我が道を進むように見えても、タイトリストはちゃんと流れの先頭に立っているのだと思い知らされる経験となったテストラウンドでした。
スペック
VG3 ドライバー
★発売日 2017年12月22日
★ロフト 9.5° 10.5°
★ヘッド体積 460cc
★価格 Titleist VG50/60 80,000円+税
Tour AD IZ-5 97,000円+税
Speeder 569 EVOLUTION IV 97,000円+税
818 H1 ユーティリティ
★発売日 2017年9月30日
★ロフト 19° 21° 23° 25° 27°
★価格 AMT TOUR WHITE 35,000円+税
N.S.PRO 950GH 35,000円+税
Titleist MCI 70 38,000円+税
818 H2 ユーティリティ
★発売日 2017年9月30日
★ロフト 17° 19° 21° 23°
★価格 AMT TOUR WHITE 35,000円+税
N.S.PRO 950GH 35,000円+税
Titleist MCI 70 38,000円+税
※H2は右打ち用のみ
718 AP3 アイアン
★発売日 2017年9月30日
★番手とロフト #3/19° #4/21° #5/24° #6/27° #7/30° #8/34° #9/38° PW/43° 48/48°
★価格 6本セット(#5-#9、PW)
N.S.PRO 950GH 132,000円+税
N.S.PRO MODUS3 TOUR 105 138,000円+税
Titleist MCI 60 144,000円+税
単品 #3、#4、48 ※右用のみ
N.S.PRO 950GH 22,000円+税
N.S.PRO MODUS3 TOUR 105 23,000円+税
Titleist MCI 60 24,000円+税