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女性版ライダーカップ!ソルハイムカップとは?!

2016年3月。あるニュースが発表されました。

“2017年のソルハイムカップ(Solheim Cup)のヨーロピアンチームのキャプテンがアニカ・ソレンスタム氏に決定しました”

ソルハイムカップ?!
日本ではあまり耳馴染みのない大会名ですね。

実はこれ、女子ゴルファーによる団体戦で、2年に一度アメリカ対ヨーロッパの対抗戦という形で開催されている“女性版ライダーカップ”とも言える大会なのです。

大会の名前はノルウェーのゴルフクラブ製造メーカー、ピン(Ping)の創業者カーステン・ソルハイム(Karsten Solheim)氏が本大会の創設スポンサーであることが由来となっています。1990年に第1回大会が開催され、2002年の第7回大会までは偶数年開催で行なわれてきました。

ちなみに、それまで男子ゴルフのライダーカップは奇数年開催でした。しかし、2001年アメリカで起こった同時多発テロの影響でその年のライダーカップは開催できず、翌年の2002年にライダーカップとソルヘイムカップが同年開催となってしまいました。

その後、男子ツアーと女子ツアーの話し合いの結果、ソルヘイムカップは奇数年開催、ライダーカップは偶数年開催となり現在に至っています。

試合の形式はライダーカップ同様、マッチプレーとなります。ちなみに“マッチプレー”とは各ホールごとの勝敗を競い合う競技で、最終的に勝利したホール数の多い方が勝ちとなります。

1打差でも5打差でもそのホールの“勝敗”の結果は同じなので、合計打数を競うストロークプレーとは違った視点で、ホールごとの“勝負”を楽しむことができるのが醍醐味となります。

大会のスケジュールは次のようになります。

1日目:フォーサム(8マッチ)
2対2のチーム戦。チームごとにひとつのボールを交互にプレーします。

2日目:フォーボール(8マッチ)
2対2のチーム戦で各自ひとつずつのボールをプレーします。

3日目:シングル(12マッチ)
1対1のマッチプレー。

合計28マッチでポイントの多いチームが勝利となります。点数はマッチで勝利すると1ポイント、引き分けで0.5ポイントとなります。

大会に賞金はありません。アメリカ対ヨーロッパの名誉をかけた戦いとなります。2015年までに開催された過去14回の対戦成績はアメリカチームの9勝、ヨーロッパチームの5勝となっています。

アニカ・ソレンスタム/Annika Sorenstam

スウェーデン出身の元プロゴルファー。女子ゴルフの歴史上もっとも活躍した選手の一人。選手として8回、副キャプテンとしても3回ヨーロピアンチームの一員としてソルハイムカップに出場しています。

すでに現役は引退をしていますが、通算89勝(うちメジャー大会10勝)と圧倒的な強さを見せ、イギリスのローラ・デービース(Laura Davies)選手やオーストラリアのカーリー・ウェブ(Karrie Webb)選手らと、女子プロゴルフの一時代を力強く牽引してきました。

2017年ソルハイムカップのヨーロッパ代表のキャプテンに選ばれたことについて、ソレンスタム氏は次のようにコメントしています。

「2017年のソルハイムカップのキャプテンに選ばれたことをとても光栄に思います。ソルハイムカップは私自身にとっても現役時代からとても重要な大会であったこと、そして過去3大会では副キャプテンとして参加させていただいた経験があり、それを今回活かせればと思います。ソルヘイムカップはこの10年でとても大きな大会へと成長を遂げてきました。ヨーロッパチームの一員としてデモイン(Des Moines、次回開催地。アメリカ・オハイオ州)で戦うことを今からとても楽しみにしています。」

因縁の対決?!

前回の2015年大会は14.5対13.5という僅差で、3大会ぶりにアメリカがソルハイムカップを奪還しました。

大会2日目のフォーボールマッチを終了時点でヨーロッパの10対6のリード。アメリカとしては3日目のシングルで、12マッチのうち8マッチ以上を取らないと勝てないという絶体絶命な情況からの大逆転での勝利でした。

しかし、大会2日目(正確には前日の日没延期の為、最終日)にコンシード(OKパットのこと)を巡って、少し後味の悪い事件が起きました。

日没延期となり最終日の早朝に行なわれたフォーボールマッチの続きでスーザン・ペターセン選手&チャーリー・ハル選手のヨーロッパチームとアリソン・リー選手&ブリタニー・リンシコム選手のアメリカチームがオールスクエア(同点)で迎えた17番ホールのグリーン上でその事件は起きました。

バーディーパットが決まれば、17番ホールはアメリカの勝ちという情況でリー選手が打ったパットはカップをかすめて40cmほどオーバーしてしまいました。それを見たヨーロッパチームは次の18番ホールのティーグランドへと歩き出していました。それを見たリー選手はコンシード(OKパット)されたものと思いボールを拾い上げてしまったのです。

リー選手がボールを拾い上げた後にヨーロッパチームのペターセン選手が「自分達はコンシードなどしていない」とアピール。結局、その主張が認められアメリカチームが17番ホールを落としてしまいました。

そして、最終18番ホールもヨーロッパチームが獲り2アップとなりマッチプレーに勝利し、最終日をヨーロッパチームの10対6という決定的とも言える大差で迎えることとなりました。

ところが、このペターセン選手のとった行動は「対戦相手に対する尊敬がない」「スポーツマン精神に反する」など大きな批判を浴びることとなります。逆に、この事件に奮起したアメリカチームは最終日のシングルで脅威の8.5対3.5という対戦成績で大逆転勝利をおさめ、見事3年ぶりにソルハイムカップに勝利しました。

結果論ではありますが、この事件はアメリカチームを奮起させる起爆剤となり、逆にヨーロピアンチームの士気の低下に繋がったとも言われています。実際ヨーロッパチーム内からもペターセン選手の行為に対して批判的な意見を言う選手もいたのです。

話が少し横道にそれますがこの事件を見て、あるゴルフ漫画を思い出された方はいませんか?

「あした天気になあれ」

ちばてつや先生の作品「あした天気になあれ」は、向太陽(むかいたいよう)という太っちょゴルファーの活躍を描いた青春ゴルフ漫画の傑作です。

中年世代以上のゴルファーの中にはスイングをする時に向太陽のマネをして、心の中で「チャー、シュー、メン!」とリズムを取っている人も大勢いることでしょう。もしかしたら、ゴルフを始めたきっかけがこの漫画という方もいるかもしれません。

全58巻で完結するこの作品の38巻に、2015年のソルハイムカップで起こった“OKパット事件”とよく似たエピソードが出てきます。

舞台は東洋マッチプレー選手権の決勝。そして向太陽選手が戦っている相手は“マッチプレー王”の異名を持つ疋田(ひきた)プロ。

疋田プロはプレー中に取り巻きの手下を使って相手のボールを隠したり、ライを悪くしたりと悪行の数々を繰り返しながら勝ちあがってきました。そんな悪事に対抗すべく向プロはお母さんや兄弟達に協力をしてもらって、疋田プロの悪行をなんとかかわしながらオールスクエア(同点)で最終の18番ホールを迎えます。

そして、疋田プロを追い詰めた18番ホールのグリーン上。向プロがイーグルパットを待つ間に、疋田プロがバーディーパットを外して万事休す。2パットで優勝が決まる向プロはイーグルパットを外して、残り数センチのバーディーパットが残りました。

その時、疋田プロの立っている方向から「OK!」と声が掛かります。そして、向プロはその声を聞いて「どうも、どうも!」とボールを拾おうとします。

しかし、そんな向プロをキャデーのおじいさんが制します。「その前に握手をさせてんか大将!」と向井プロに握手を求めました。そして、その手にはボールマークが…。

向プロがボールを拾うのと同時に疋田プロが叫びます。

「おっと、ちょいまち!わしゃあOKなんぞ一言もいうとらんで!」

さらに疋田プロは競技員に詰め寄ります。

「なあ、競技員さん。たしか相手の許可なしにボールをひろうってことは、そのホールは負けやったはずやな!ということはこのマッチプレー、わしの優勝がきまったってことでっせ!」

自信に満ちた表情で競技員に歩み寄ります。しかし、その後の競技員の一言が疋田プロにトドメを刺します。

「しかし君…、ちゃんとマークしてあれば問題はなかろうが…」

疋田プロが振り返り、向プロの足元にあるボールマークを見たところで勝負あり!見事、向プロは東洋マッチプレー選手権で初優勝を飾ります。

これは漫画の話なので、実際には子分をつれて悪行を駆使してトーナメントで優勝するプロゴルファーは存在しませんが、マッチプレーの面白さはこれでもかというくらいに伝わってきます。その他のエピソードも痛快で、ゴルフの楽しさがたくさん詰まった素晴らしい作品なので機会があれば完読されることをおすすめいたします。

さて、話を元に戻しますが、あなたはソルハイムカップでの“OKパット事件”についてどのように思われましたでしょうか?「あした天気になあれ」の疋田プロのような悪質さはないにしろ、ペターセン選手のとった行動にはスポーツマンシップという大切な要素が掛けていました。

しかしながら、リー選手もコンシードを確認せずにボールを拾ってしまったことは“不注意”以外のなにものでもありません。結局、この事件によりペターセン選手とリー選手の双方がホールアウト後に涙を流すことになってしまいました。

後日、ペターセン選手は次のような謝罪コメントを発表しています。

原文(一部抜粋):
“I am sorry for not thinking about the bigger picture in the heat of the battle and competition. I was trying my hardest for my team and put the single match and the point that could be earned ahead of sportsmanship and the game of golf itself!”

訳:私は戦いの渦中の中で、全体像を見失っていたことを謝罪したい。私はチームのために必死になるあまり、スポーツマンシップの大切さやゴルフという素晴らしいゲームそのものよりも、目の前の勝利やポイントを獲得することを優先してしまった。

まとめ

名誉や威信は、勝負に勝つだけでは得られないことが良く分かるエピソードでしたね。しかし日常の感覚を狂わせるほど、それぞれの国の代表として名誉をかけてプレーする選手達のプレッシャーは計り知れないものがあるのでしょう。

日本ではまだまだマイナーなソルハイムカップですが、こんなにエキサイティングなイベントを見逃す手はありません!

2017年はアメリカチームが連覇をするのか、それともヨーロッパチームが意地を見せるのか?!

絶対に見逃せない戦いがそこにある!

(完)

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