用語の意味が分かるとルールが理解しやすい!知って納得のゴルフキーワード
ゴルフ規則書の裏表紙を見ると、こんな言葉が書かれています。
球はあるがままにプレーせよ
コースはあるがままにプレーせよ
それができないときは、最もフェアと思う処置をとる
最もフェアと思う処置をとるためには
ゴルフ規則を知る必要がある
本来のゴルフルールは単純明快で、「ティーショットしたらグリーンに上がるまで一切ボールに触らず、球もコースもあるがままにプレーする」。これだけです。
ですが実際にコースをプレーすると、プレー続行が難しい状況が発生するので、救済とペナルティに関する条項が適用されるのです。
救済は、ボールが何らかの理由で紛失したような場合、競技を続行できるようにするため。ペナルティは、あるがままの状態を維持せず、競技者に有利になるように状況を変えてしまった場合に科せられる罰として、定められています。
ゴルフルールは、自身が審判であるプレーヤーが公正にプレーするため、そしてプレーヤーが遭遇するさまざまなトラブルからの救済のために、存在します。
最もフェアとされる処置をとってプレーを続けるために、プレーヤーはルールを理解しておく必要があるのですね。
ルールの理解を深めるために知っておきたいワード
複雑で膨大なゴルフルールではありますが、用語の意味を正しく理解することで、状況に応じた適切な判断をすることが可能といえます。
知っておくと重宝するワードをいくつかご紹介します。
アウトオブバウンズ(OB)
アウトオブバウンズとは、プレー禁止区域という意味で、いわゆるOBの正式名称です。通常、白杭または白線で標示されており、ここに入ったボールはプレーできません。1打のペナルティを加えて、前位置に戻って打ち直し、次打は3打目となります。
白杭の場合は、隣り合った杭のコース側の辺に、少しでもボールがかかっていればセーフ、かからなければOBとなります。白線の場合も、コース側のラインにボールが一部でもかかっていればセーフです。
ちなみに、OBや紛失球の可能性が高そうだと判断した場合は、打ち直しに戻る時間を短縮するため、宣言してから暫定球を打っておきます。
アンプレヤブル
プレーが不可能と判断したときに行う宣言のことを、アンプレヤブルといいます。
ボールがウォーターハザード以外の場所にあるときならいつでも、プレーヤー自身の判断で宣言することができ、1打のペナルティを加えて、次の3つの処理のいずれかを選択します。
(1)最後にプレーした位置のできるだけ近い地点に戻って再プレーする。
(2)ボールの止まっている地点とホールを結んだライン上で、そのボールの後方延長線上にドロップしてプレーする。
(3)ボールが止まっている地点から2クラブレングス以内で、ホールに近づかない地点にボールをドロップしてプレーする。
ただし、バンカー内からのアンプレヤブルで(2)(3)の処置を選ぶ場合は、必ずそのバンカー内にドロップしなければならないので、要注意です。
2014年の中京ブリヂストンでは、バンカーのアゴに捕まったためアンプレヤブル宣言したプロが、この処置を勘違いしてバンカー外にドロップしてしまったことで、誤所からのプレーとなり失格となってしまいました。
同伴競技者もこの間違いに気づかずプレーが続行されたのですが、ギャラリーからの指摘で発覚したという椿事が起きましたね。
異常なグラウンド状態
カジュアルウォーター、修理地、穴掘り動物が作ったコース上の穴、盛り上げられた土や通り道のことを、異常なグラウンド状態といいます。これらがプレーの妨げとなる場合、罰なしにボールをドロップすることが許されます。
処置としては、ニアレストポイントを決めて、そこから1クラブレングス以内でホールに近づかずに障害を避けられる地点にドロップします。
カジュアルウォーターとは、雨などによってできた一時的な水たまりなどのこと。一見して水が見えなくても、スタンスをとった時に水がしみだしてくる場合も、カジュアルウォーターとして認められます。
ちなみに、雪や天然の氷は、任意でカジュアルウォーターかルースインペディメントのどちらかとして扱うことができます。
修理地は、コース上の修理が必要な区域で、通常青杭または白線で標示されています。工事などの目的で積み上げられている木材や石、他に移すつもりで置かれている樹木などは、表示がなくても修理地に含まれており、比較的遭遇することが多いかもしれません。
ウォーターハザード
コース内にある池や川、湖、海、溝などのことをウォーターハザードといいます。通常、黄杭または黄線で標示されていますが、表示がなくてもフタのない用水路や溝など(水の有無は関係ない)も含まれます。
ウォーターハザードに入ってしまった場合(池なら通称「池ポチャ」)の処置は3つ。
(1)打てる場合は、無罰でそのまま打つ(その際、手やクラブで水や地面に触れると2打罰)。
(2)1打罰を加えて、球を最後にプレーした位置のできるだけ近くから打ち直す。
(3)1打罰を加えて、ボールがハザードの境界を最後に横切った地点と、ホールとを結んだラインの後方延長線上にドロップする(後方ならいくら下がっても構わない)。
そのほか、ラテラルウォーターハザードと呼ばれるハザードは、コースに沿って流れる小川などのことをいい、通常赤杭または赤線で標示されています。
上記救済方法の中で、(3)を採用した場合、ボールがハザードの境界を横切った地点とホールを結んだ後方延長線上というドロップエリアが、どこまでいっても水面上となってしまいます。そこで、その不備を補うための追加処置が存在します。
(4)1打罰を加えて、ボールがラテラルウォーターハザードの境界を横切った地点から、ホールに近づかない2クラブレングス以内にドロップする。
(5)1打罰を加えて、(4)の境界と等距離にある対岸の地点から、同様にホールに近づかない2クラブレングス以内にドロップする。
動いたボール
動いたボールとは、ストローク以外の原因で、止まっていたボールがその場所から別の位置に移動した場合のことをいいます。
風などの自然現象などによってボールが動かされた場合は、そのボールが止まった地点から。風に飛ばされてきた局外者(小枝や空き缶など)によって動かされた場合は、元の場所にボールをリプレースしてから、無罰でプレーします。
この処置を間違えると、2打のペナルティとなるので要注意です。
ちなみに、プレーヤーがボールを動かしてしまうと1打罰、元の場所にリプレースせずプレーしてしまうと誤所からのプレーで2打罰が加算され、合計3打罰になる…のではなく、大きい方の2打のペナルティだけが科せられます。
救済のニアレストポイント
障害物やカジュアルウォーター、修理地などから救済を受ける場合、ボールをドロップするエリアを決める基点のことを、ニアレストポイントといいます。
以下の3つの条件を満たす地点でなければなりません。
(1)ボールのある位置に最も近い地点であること
(2)ボールのある位置よりホールに近づかない地点
(3)その障害を避けてストロークすることが可能な地点
そこをニアレストポイントと決めて、マークします。そこが基点となり、1クラブレングスのドロップエリアが決まります。
ちなみに、1クラブレングスのエリア内にドロップさえすれば、落下地点から2クラブレングス以内にボールが止まればセーフです(意外と認識していない方が多いかもしれません)。
誤所からのプレー
間違った地点にドロップやリプレースをして、そのままプレーしてしまったケースのことを、誤所からのプレーといいます。
違反は2打のペナルティが科せられ、誤りを訂正して再度正しい位置からプレーしなおさないと、競技失格となることもあります。
このミスが起きやすいケースとしては、ニアレストポイントを定めて救済措置が受けられる場合や、ウォーターハザードとラテラルウォーターハザードでの救済措置の勘違いによるものが多いように思われます。また、動いたボールの処置も間違えやすいので、要注意です。
プロのトーナメントでも、意外に犯しがちなミスといえます。一昨年のマスターズでのタイガー・ウッズの処置は物議が醸されたケースですし、他のトーナメントでの事例も、シーズン中に一度ならず耳にします。
公式試合の場合は競技失格となることもあり得るので、状況により細分化され複雑と思われるルールも、プロにとっては間違えただけでは済まされないので、細心の注意を払う必要があるといえますね。
障害物
障害物とはコース上にある人工物のことをいい、以下の2つに区別されます。
(1)動かせる障害物:鉛筆、空き缶、たばこの吸い殻、バンカーレーキ、表示杭(OBの白杭以外)など
(2)動かせない障害物:ベンチ、排水溝のふた、スプリンクラー、橋、カート道路など
スイングの妨げになる場合、(1)の場合はその物自体、(2)の場合はボールを、無罰で移動させてプレーすることができます。
(2)の場合は、ニアレストポイントを決めて、そこから1クラブレングス以内でホールに近づかずに障害を避けられる地点にボールをドロップします。
テスト(グリーン面、砂)
グリーン面のテストとは、ボールがグリーンにあるとき、芝の状態を知る目的で、手やクラブでグリーン面をこすったりひっかいたりする行為のことをいいます。
砂のテストとは、ボールがバンカー内にあるとき、そのバンカーの砂の状態を知る目的で、ショットの前にクラブや手などで砂に触れることをいいます。
これらのケースの場合、2打のペナルティが科せられます。
ドロップ
ドロップは、ルールに基づいて救済を受ける場合に、直立して持ったボールを地面に落とすことをいいます。
ボールを持った腕を肩の高さにあげてまっすぐに伸ばし、手を放します。
急いでいるからと、ポケットから出して腰の位置でポイッと放り投げ、そのままプレーしてしまうと1打罰となるので、正しい方法で行いましょう。ドロップはあくまでプレーヤー自身が行います。
ドロップしたボールが以下の状態になった場合、再ドロップします。
(1)ハザード内に転がり込んだ場合
(2)ハザード内から転がり出た場合
(3)パッティンググリーン上に転がり込んだ場合
(4)OBエリアに転がり込んだ場合
(5)障害物などからの救済で、再びそこに転がり込んだ場合
(6)ドロップしたボールが2クラブレングス以上転がった場合
(7)ルールで認められた地点よりホールに近づいて止まった場合
再度、同様の状態になった場合は、2度目のドロップで球が落下した地点にプレースしてプレーを続けます。
ちなみに再々ドロップすることは違反となり、上記の訂正をしないと2打罰が科せられます。
ルースインペディメント
ルースインペディメントは、枯れ葉や枯れ枝、小石、動物のフン、虫類などのコース内に落ちている生長していない自然物のことをいいます。グリーン上にある場合に限り、バラバラの土もこれに該当します。
ルースインペディメントは、ハザードを除き無罰で取り除くことが可能。ちなみにハザード内で触れると2打罰となります。
除去する際にボールを動かしてしまった場合は、1打罰が科せられ、元の場所に戻してからプレーします。
公正に、正しい処置をとることが大切
ゴルフをプレーする上で自分に有利になる振る舞いをしないことは、紳士・淑女として素晴らしいこと。
ですが、自分の不利になるように処置すればいいという意味ではありません。
たとえばカート道路にボールが止まった時、フェアウェイ側にドロップすると自分に有利になるから、逆にラフにドロップしておこうという判断は、一見フェアプレー精神あふれた振る舞いと思いがちですが、ルール上は正しい処置ではありません。
この場合、フェアウェイ側にニアレストポイントがあるなら、そちらが正しい処置であり、もしラフ側にドロップしたら誤所からのプレーとなり2打罰が科せられてしまいます。
誰しもにフェアであるように定められたものがルールなので、ルールを守ってプレーすること自体がフェアプレーなのです。
ゴルファーにとって、ルールを意識した誠実なプレーが豊かな経験になり、ゴルファーとしてのレベルを上げるものであるといえます。