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ゴルファーの最大の敵、それはローリング・サンダー

あなたにとって、最大の敵はなんですか?

「いつもプレーするライバル」
「自分自身、プレッシャー」

などなど、答えは人それぞれかと思います。

しかし、ゴルファーにとっての最大の恐怖は、雷かもしれません。年間、数名のゴルファーが国内のゴルフコースで実際に亡くなっている事実をご存知でしょう。自分たちだけは大丈夫なんて思ってはいませんか?

雷シーズン、それは6月~8月がピーク

気象庁の雷監視システムの検知データによると、対地放電と雲放電ともに、放電数は8月が最も多くなっており、12月~2月の約100倍となっています。

雷監視システムにより夏(6月~8月)の雷と冬(12月~2月)の雷の地域的の特徴を見ると、雷は夏、冬に関係なく発生しますが、夏は関東や中部、近畿地方を中心とした広い範囲で多数の検知結果が見られ、年間の総検知数の大部分を占めています。一方、冬は日本海沿岸で相対的に検知数が多くなっています。

また、夏の雷と冬の日本海側の雷について時刻ごとの検知数を比較すると、夏は午後から夕方にかけて明確なピークを持つのに対して、冬は昼夜を問わずに雷が発生し、時刻による特徴がはっきりしていません。これは、夏の雷と冬の日本海側の雷とでは、発生する仕組みが異なるからだそうです。

夏は日中の強い日差しによって暖められた地面付近の空気が上昇し、背の高い積乱雲となって雷を発生させます。夏の雷は広範囲に発生し、長時間継続する特徴があります。一方、冬に日本海側で多く発生する雷は、大陸から吹き出してきた寒気が日本海で暖められて発生する積乱雲によるものです。

日本海沿岸での冬の雷は、夏の雷に比べて放電数は少ないものの、1回あたりの雷の電気量が多く、落雷すると、被害が大きくなるという特徴があるといわれています。

ゴルフをプレー中に雷、どうしたらいい?

さて、これから雷シーズンのピークであることがご理解してもらえたと思います。

ゴルフコースでの落雷事故で記憶に残っているのは、1997年に茨城県で起きた事故です。5人が病院に搬送され、3人のゴルファーが亡くなっています。これ以外でもゴルフコースで数多くの落雷による事故があります。

特に雷銀座と呼ばれている栃木、群馬辺りの事故は多く聞きます。プレー中に雷が近づいてきたら、問答無用でプレーを中断して速やかに対処することを考えましょう。

落雷から我が身を守る対処法

人間の身体の内部は電気の導体です。それを皮膚という絶縁体が覆っていますが、それほど強力な絶縁体でないので、人間そのものが、絶好の落雷の対象物になっています。そうしたことを念頭に置いて予防を考えなくてはいけません。

対処1 クラブハウスか最寄りのコース売店、避雷小屋に逃げ込みましょう。

スタート前には、どこに避雷小屋があるのか確認しておくことです。

対処2 ゴルフカートで待機するのは非常に危険です。ゴロゴロという音が近づいてきたら、すぐに避雷小屋に移動しましょう。

対処3 避雷小屋や売店などが遠くにあり、落雷の危険が迫ってきている場合は、バンカーのような低い場所で身を伏せるなどして、できるだけ低い姿勢をとりましょう。ゴルファーがフェアウェイの真ん中で金属を持って立っていることは、最も被害を受けやすい状態だということになります。

対処4 近くに安全な場所がない場合、電柱、鉄塔、建築物などの高いてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4メートル以上離れたところ(保護範囲)に退避します。ゴルフコースの高い木の近くは危険ですので、最低でも木のすべての幹、枝、葉から2メートル以上離れてください。姿勢を低くして、持ち物は体より高く突き出さないようにします。

雷によるプレーの中断と再開の合図

日本ゴルフ協会でも、ゴルフコース内での落雷による死傷事故が多くなってきていることから、全国のゴルフ場、ゴルフ競技の主催者に対して、避雷対策を万全を期すように強く勧告しています。

日本ゴルフ協会では、険悪な状況によるプレー中断の信号(サイレン)は「1回の長いサイレン」としており、すべてのゴルフコースで統一されることを勧めており、多くのゴルフ場で、このサイレンに則っていますので、是非覚えておいてください。

プレー即時中断→1回の長いサイレン
プレーの中断→短いサイレンの繰り返し
プレーの再開→1回の長いサイレン

落雷に遭ったプロゴルファーたち

1年中プレーをしているプロゴルファーですので、実際に雷が直撃した人も何人かいます。

まず、日本女子ゴルフ界の顔といえば、樋口久子プロ=日本女子プロゴルフ協会相談役。女子プロ一期生で、プロ通算72勝の最多勝ホルダー、男女を通じて日本選手唯一のメジャートーナメント制覇も果たしたレジェンドです。以下は樋口プロのお話です。

「私ね、あまり失敗はしないんです。ゴルフでも、フェアウェイが左右に曲がっているドッグレッグではリスクを避けて、ショートカットはせずに、正規のルートを選ぶタイプですから、生き方も堅実。冬にスキーをしたくても、骨折を心配して諦めるような性格ですからね。そんな私でも、命を落としそうな経験があるんです。プロテストに合格して間もない頃、所属していた川越カントリークラブのお客さんと栃木県の日光カンツリー倶楽部でプレーしていて、雷に打たれたんです」

「ティーグラウンドに立ったら、ポツンポツンと雨が降り始めて、ゴロゴロという音が聞こえてきたんです。栃木は雷が多いところですからね。『避難小屋はどこにありますか?』とキャディーさんに聞いたら、『次のホールに売店があります』といわれました。ティーショットを打った後、傘を差してフェアウエイを歩き始めたのが間違いでした」

「セカンドショット地点に立ったとき、近くにあった大きな木に雷が落ちたんです。その場にパタリと倒れた瞬間、これで死ぬんだなって思いました」

「すぐに目は開いたものの、全身が痺れて動けません。顔の上に雹が降ってきているのに避けられませんでした。下半身が棒のような状態になっている私を、同伴者が木の下まで引きずって運んでくれたそうです」

「救急車で運ばれて入院しましたが、翌日に退院。すぐに東京に戻って、1週間ほど通院しました。雷の電流が通った衝撃で、傘を持っていた左手のグローブはズタズタに裂けていました。左腰には、ズボンのファスナーの金具で負ったやけどの痕が今でも残っています。一歩間違っていれば、死んでいましたね」

「夏の暑さはまったく苦になりませんが、雷だけはいくつになってもダメです。ピカッと光ったり、ゴロゴロという音が聞こえたりするだけで、一目散。賞金も成績もいらないからと、早々に逃げ出したいくらい怖いです。プレー中に黒い雲が近づいてくるだけでイヤな気持ちになるんです」

「危うく命を落としかけたショックは大きかったですけど、こんな風に考えています。雷の電流のおかげで、体内の悪い菌がすべて死んだと。私は生後数か月で百日咳にかかったくらいで、病気らしい病気はしていません。それは雷に打たれたからかもしれないと、自分勝手に解釈しています」

陽気なメキシカン、リー・トレビノも落雷事故に

「陽気なメキシカン」「スーパーメックス」の愛称で、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラウス、ゲーリー・プレーヤーのビッグ3プラス1と呼ばれたリー・トレビノ。軽妙なジョークで知られ、エピソードには事欠かないプロゴルファーですが、彼もまた1975年に落雷事故に遭っています。

トレビノは1971年に全米オープン、カナディアン・オープン、全英オープンと、実に3週間の間に3つの国のナショナルオープンを制するという大記録を達成したもある超一流プレーヤーなのです。

彼が雷事故に遭ったのは、その4年後の1975年6月27日のことです。シカゴのバトラー・ナショナル・クラブでのラウンド中に起こりました。幸い命に別状はありませんでしたが、それ以来腰の曲げ伸ばしが不自由になったそうです。

その後、復帰直後のカナディアン・オープンで優勝するなど、見事にカムバックしました。身体の障害から立ち直ったプレーヤーに与えられるベン・ホーガン賞を1980年に受賞しました。

話はここで終わりません。こんな出来事もジョークにしてしまうのがリー・トレビノです。

「今度雷が鳴り始めたら、頭のてっぺんに1番アイアンを立てておくよ」

皆さん、この意味がわかりますか?

なぜ雷防止が1番アイアン(ドライビングアイアン)なのか?その理由は当たりにくいからなんです。

現在では1番アイアンはユーティリティなどに変わり、使用するゴルファーはほとんどいません。ロフトが少なく、パワーがなければボールは上がらないし、打ちこなすのが超難しいクラブであったからです。

なんともトレビノらしいウィットに富んだコメントですね。

これから夏に向けて、ゴルフする回数が増えていくと思いますが、雷には十分に注意してゴルフを楽しんでください。

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