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岩田寛「美しいスイング」が今年活躍の予感

最終日、首位に2打差の2位からスタートした岩田。PGAツアー「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」は日本中のゴルフファンの注目を浴びました。

1週前の「フェニックス・オープン」で松山英樹がツアー2勝目を達成。岩田が優勝すれば、史上初の日本人による2週連続優勝の快挙が迫っていました。

最終日、人気のミケルソンと回った岩田は11番でバーディーを奪い、この時点で首位タイ。ところがここから苦しみました。

コースではアゲインストの風が続き、12番からパーオンができません。寄せで粘ってパーを拾いましたが、16番ミドルでフェアウェイからの2打目がラフにつかまり、アプローチも寄らず。ボギーをたたいて優勝が遠のきました。

結局、終盤バーディー攻勢を見せたボーン・テイラーが優勝し、岩田は3打差の4位に終わりました。

岩田と言えば、代名詞となっているのが「美しいスイング」です。

ドライバー、アイアンでスッと構えたアドレスは、前にあるボールとの位置の取り方に懐の深さを感じさせ、両足のバランスも良く、上半身が安定しています。グリップも柔らかさを感じさせます。

「シンプルなスイング」と絶賛されるのは、テイクバックの軌跡をなぞるようにクラブが降りてくるタイミングです。トップの位置でタメを作らずダウンスイングが始まります。それでもシャフトのしなりが最大限生かされてヘッドが走ります。

スイングの真後ろから見ると、スイングの開始からフォローの途中まで前傾角度がまったく変わらず、崩れません。左股関節の壁もまったく動きません。鍛えた体幹を感じさせます。

頭の位置も不動、視線はインパクト後もボールの位置を見つめフォロースルー後半でやっと頭が上がっていきます。簡単に見えますが、最後までまさに自然なスイングです。

まさにクラブシャフトを上げたスイング軌道通りに降りてくるダウンスイング。上げて下ろす。まさしくシンプルなゴルフスイングが、飛んで曲がらない秘訣です。

高い身体能力を生かしたスイングで、ドライバー平均飛距離は2016年データでは289.6ヤード(2月21日現在、PGAツアー公式HP調べ)。PGAでは平均的ですが、日本のプロの中では飛ばし屋に入ります。

最近の世界プロゴルフ界ではジュニアの時代から、パーフェクトスイング理論をたたきこまれ、世界に飛び出してきます。我流でゴルフを覚えてある程度の選手になっても、世界の舞台では結局スイングの基本に差が出ます。いくら修正しても、ジュニアからたたきこまれたスイングにはかないません。

この「ワールドクラスのスイング」と評価されるのが岩田です。もちろん、アマチュアゴルファーのレッスン、練習の手本として十分参考になります。

岩田のプロフィールによると、ゴルフを始めたのは、ゴルフ練習場を経営していた父親の影響で14歳からと遅い年齢でした。東北福祉大では、同期に宮里優作がいました。

2004年にプロ転向、11年目となる2014年にフジサンケイクラシックで初優勝を飾ります。2015年7月の「長嶋茂雄Invitationalセガサミーカップゴルフトーナメント」でツアー2勝目。遅咲きながら自分で「ワールドクラスのスイング」を手にしたのは、まさしく稀有の存在、すごいことと言えます。

ワールドクラスの記録も手にしました。昨年8月のメジャー「全米プロゴルフ選手権」の2日目、1イーグル、8バーディー、1ボギーの「63」をマーク。これは、マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロの4大メジャーの中で、1ラウンド最少ストロークのタイ記録です。日本人では1980年の全英オープンでマークした青木功に次いで2人目、世界では25人目となります。

ところが、岩田自身は「自分のスイングが嫌い」と言ってはばかりません。過去、自分のブログでも、こう書いています。

「よくしなやかとかやわらかいとか言われるけど、自分がイメージしてるのとは全然違う。僕からみたらふにゃふにゃで軸がまったくない。ビデオを撮ってたまに見るけど、ガッカリすることが多々あります」

さらに、こんなことも。

「が、しかしたまに自分でも好きなスイングの時があるのが、またゴルフの面白いところ。結局僕はゴルフを愛しているのです。だからゴルフで僕を表現していきたいと思います」

こうして、自分のスイングを磨いてきて、美しいスイングを身に付けたのでした。

岩田は小技にもこだわりを持っています。「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」最終日でも見せました。

苦しんだ後半、12番、14番ともガードバンカーに入れましたが、バンカーショットで90センチ、50センチに寄せてパーを拾って踏みとどまりました。

サンドウェッジのロフトは58度。他のウェッジのシャフトにはダイナミックゴールドのX100を使っていますが、サンドウェッジだけはS200と柔らかめを使い、シャフトのしなりを感じる繊細なフィーリングを大事にしています。また、リーディングエッジが直線になるストレートネックになっています。

(注)プロは頻繁にクラブ調整を行うため、実際使用するギアセッティングとは異なる場合があります。

ほとんどの選手はサンドウェッジのリーディングエッジに丸みを作り、フェースを開いて球をつかまえる打ち方を好みます。岩田は「ストレートネックのほうがボールをクリーンにコンタクトするイメージを出しやすい」と、こだわっています。

サンドウェッジに限らず、岩田のクラブにはほとんどヘッドに鉛が貼り付けてあり、クラブセッティングには繊細なフィーリングを大事にしていることが伝わります。

優勝争いを演じた翌週のノーザントラスト・オープンでは予選落ちに終わったものの、35歳遅咲きの岩田には今年の期待が高まります。PGAツアーの出場優先順位を付け直す現在のランキングでさらに出場権を得ました。

岩田自身も「美しいスイング」と言われることより、「ツアー優勝者」と呼ばれることが、未来への大きなステップと信じているでしょう。

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