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イ・ボミV3を阻むのは同じ韓国勢!?女刺客5人⑤申ジエ

申ジエは1月になって原因不明の発熱に悩まされ、開幕から3試合を欠場しました。4戦目、今季初戦となったアクサレディスでは、21位タイに終わりました。

発熱のため練習不足だったばかりか、クラブやキャディも新しくなり、ツアーに臨む調整不足のままの参戦でした。それでも4月2日に終わったヤマハレディースオープン葛城では初日首位タイで発進、2日目に6オーバーと崩れたものの、最終日まで8打スコアを縮めて3位に入ったのはさすがでした。

日本ツアーを主戦場として、今年で4年目。2014年は賞金ランキング4位、2015年は3位、昨季は3勝して賞金ランキングはイ・ボミに次ぐ2位と、確実に1ランクづつアップしています。まさに、世界女王の実力を発揮した今年、目標は賞金女王しかありません。

輝かしいまでの実績

申は2009年米ツアーに挑戦し、新人賞、賞金女王、年間最多勝の3冠女王に輝き周囲を驚かせました。それ以前の韓国では2005年にアマながらプロの大会で優勝、翌年テスト免除でプロに転向すると2006年から2008年に3年連続賞金女王を達成しています。

韓国での活躍をそのままアメリカで発揮した申ジエの存在は、現在のアメリカ、日本女子ツアーで多くの韓国人が活躍する象徴でもあります。それだけの大型選手が日本を主戦場としたのは2014年。

「暖かい人間味を感じる国でやってみたい」

今季、日本で賞金女王となれば、かつて誰も経験のないトリプルクラウンの達成です。

アーチェリー経験がプラスになっていること

小学5年生でゴルフを始める前、申はアーチェリーをやっておりその経験がゴルフに活かされている、と話しています。確かに、アーチェリーとゴルフには共通点があります。

サッカー、野球などの球技は、プレーがすべて「動」の状態で移行しますが、アーチェリー、ゴルフは「静」から「動」へ移る競技です。この場合、精神状態が大きくプレーに影響します。

アーチェリー経験者は、優勝争いや記録更新などの状況で、それまで簡単に的に当たっていた矢が、優勝や記録を意識するとまったく当たらなくなる時があると言います。弓を持った腕が構えた時にピタリと静止できなくなるのです。

ゴルフも同じです。「静」のアドレスから、「動」のバック、ダウンスイングへ移る際に精神的な影響が大きいのです。申もアーチェリーの経験は肩の力を抜くことや、集中力を養うことでゴルフに役にたっている、と感じています。

新しい日韓関係を築く

イ・ボミ、キム・ハヌルら申と同世代の韓国選手が今日本ツアーで活躍しています。「このままでは日本ツアーが韓国勢に乗っ取られる」と陰で危機感を募る人もいます。そうした声を申も敏感に汲み取っています。ゴルフの力で新しい日韓関係ができないかを考えているのです。

申は、東日本大震災から2ヶ月後に行われた「サイバーエージェントレディスゴルフトーナメント2011」に招待出場し2位に入ると、その賞金616万円全額を被災地に寄付しました。さらに、所属先のスリーボンドと協力して、「申ジエ&スリーボンドジュニアトーナメント」を実施しています。

ジュニアゴルファー育成のため、日本と韓国それぞれで予選会を行い、昨年12月に韓国から6名、日本から6名が参加して千葉県で交流戦がありました。申にとって、この大会の大きな目的は、「若い頃から交流していれば、互いに距離感が縮まり大きな財産となる」との考えからです。技術の育成だけでなく、人間性の形成もゴルフによって可能ではないかと期待しているのです。

申ジエのスイング

申ジエのスイングは、ぶれない軸を中心に、バックスイング、ダウンスイング、フィニッシュが展開する安定感がたっぷりした特徴があります。アドレスではボールは左わきの下に置かれてます。スイング軌道の最下点を少し過ぎたところでヒットするので、スイングパワーをしっかりボールに伝えることができます。

バックスイングでは右腕が左腕より上に位置しながら胸を回します。胸の位置が右の股関節の上に乗ってしっかり荷重されるので、右足のパワーをしっかり伝えられます。トップでは上半身がしっかりひねられ、背中が目標方向を向いています。

ダウンスイングからの左への体重移動は少なく、右足にも体重を残すベタ足の回転です。回転軸をしっかりホールドして、胸を回すシンプルなバックスイングから、右足の荷重を残すダウンスイングからのインパクト。まさに、再現性、安定性の高いスイングです。

クラブフェースが胸の向きに常に正対しているのも、ショットの方向性が保たれる要因です。まさに、お手本、教科書のようなスイングです。

申ジエのクラブセッティング

クラブセッティングの中で、申は5番アイアンと23°のユーティリティを交換したり、18°のフェアウェイウッドかユーティリティを選択します。これはコースコンディション、風の強さによって、高い球で攻めるか、コース戦略をたててクラブを変えています。

<ドライバー>
本間ゴルフ TW727 455ドライバー ロフト8°(シャフト:本間ゴルフVIZARD YC55/S/44.75インチ)

<フェアウェイウッド>
キャロウェイ BIGBERTHA ALPHA 816FW(ロフト14°、18°)

<ユーティリティ>
キャロウェイ BIGBERTHA ALPHA 815UT(ロフト20°、23°)

<アイアン>
ミズノ MP-55アイアン(6I~PW)

<ウェッジ>
ミズノ MP-T4ウェッジ(ロフト50°、54°、60°)

<パター>
オデッセイ ワークス5CS

<ボール>
タイトリストProV1

*2016年ニチレイレディス時のセッティング。プロは頻繁にクラブ調整を行うため、実際使用するギアセッティングとは異なる場合があります。

最後に

イ・ボミが序盤戦思うような成績を残していませんが、中盤から終盤にかけて必ず賞金女王争いに顔を出してくるでしょう。さらに、韓国勢5人がその前に立ちはだかります。ヤマハレディースオープン葛城では、韓国から今季日本初参戦のイ・ミニョンが優勝しています。

韓国勢の上位進出が多くなると、日本女子ゴルフ界の将来を危惧する声もあります。しかし、現状では韓国勢の活躍があって、現在日本女子ツアーは大きく発展しており、賞金総額も過去最高、ツアーも多くのファンが見守っています。この人気に韓国勢が貢献していることは事実です。

もちろん、日本勢が優勝、賞金女王争いに加わればさらに人気は高まるでしょう。それは日本選手のレベルアップにつながるのです。それこそ、申ジエが望むように日韓が協力してレベルアップ、女子ゴルフ界の環境が好転することにつながるのです。

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