アイアンとウッドのスイングは同じでいいのか否かの議論を考える
- 2016.08.27
- 知識向上
コースで18ホールをプレーしている中で、「今日はドライバーも、フェアウェイウッドも、アイアンもアプローチウェッジもすべてが完璧!」という日はなかなかありません。
例えば「ドライバーは調子が良くて飛距離も出るけど、アイアンになると方向性が定まらない…」「アイアンやアプローチはいいけれど、フェアウェイウッドはダフリばっかり」など、その日の悩みを周囲に愚痴ってはいないでしょうか。
そしてコースだけでなく、練習場でもミスをするたびに「今日はアイアンが上手くいかないな」「アイアンはいいけど、ウッドが安定しないな」などと、独り言のようにつぶやいているのかも知れませんね。
このように私たちは、その日のゴルフの調子を「ウッドは…」「アイアンは…」などと別々のもののように捉えています。これは、「クラブの形状が異なるウッドとアイアンは違うものだ」という意識が、多くのゴルファーの中にイメージや感覚としてあるのではないかと推測されます。
そしてアマチュアだけでなく、プロゴルファーでもこのような表現をすることはよくあります。実際にドライバーはスライスばかりだけど、アイアンになると真っ直ぐ飛ぶということはよくありますし、またその逆のパターンもしかりです。
つまり私たちは概ね、その日のゴルフの調子をクラブの形状ごとに
①ドライバー
②フェアウェイウッド・ユーティリティーのウッド系
②アイアンとアプローチウェッジのアイアン系
③パター
この4パターンに分けて「今日の調子が良い/悪い」と無意識に分別しているのです。これは、誰かにこのように分けて考えろ!と言われたではなく、ゴルフ初心者の方でも自然とそうしています。
こうした判断をするということは、パターは当然としても、ウッドとアイアンの打ち方が異なるということでしょうか。打ち方が異なるから、その日によってウッドの調子が良い日があったり、アイアンの調子が悪い日があったりするのでしょうか。
疑問は結局のところ
「そもそもアイアンとウッド(ドライバー)のスイングは同じなの?」
という議論に行きつきます。また、その議論に対してさまざまな立場で、さまざまな見解が述べられています。
そこで今回は「アイアンとウッドのスイングは同じなの?」という議論そのものについて考えてみたいと思います。それぞれの言い分を聞いてみて、自分に近い意見はどちらかを考えてみてください。
ティーチングプロの見解は?
自身の知人であるティーチングプロに「ウッドとアイアンって、打ち方は同じですか?」と率直な疑問を投げかけてみたことがあります。すると、「基本的には同じだけど…」という注釈つきの答えが返ってきました。
「打ち方を変えて打つという意識を持つ必要はないけれど、結果的には全く同じとも言い切れない」というのが、彼の意見です。
なんとも玉虫色の答えだなと思いました。どうもこの問題は白黒の結論が出にくいのかも知れません。さらに続けて考えてみることにしましょう。
ダウンブローのアイアンと、アッパーブローのウッド
ここで簡単に基本的なウッド(ドライバー)とアイアンのショットの、異なるポイントを押さえておきましょう。これはスイング理論ではなく、インパクトを迎える際の相違点です。
まずアイアンショットの場合ですが、一連のスイング動作の中でダウンスイングに入ると、そのクラブヘッドが最も低い地点も迎える前にインパクトを迎えます。いわゆる「ダウンブローで打つ」ということです。
その証拠に理想のショットを行なった際のスイングは、ボールより前方のターフを切り取ってフィニッシュへと続きます。これはボールを打った後に、さらにゴルフクラブのヘッドが、わずかに地面の下にあるスイングプレーンの最下点を迎えているために、ターフをすくい取っているのです。
一方ウッドの場合ですが、ここでは特にドライバーの場合で考えてみましょう。
ドライバーは、ティーアップをすることでボールの下部に空間が生まれます。それによって、クラブが入り込む隙間を作り、ドライバーのヘッドはフェースの真ん中で球をとらえることが可能となります。
そして、「レベルブロー」で払い打つように、もしくは「アッパーブロー」で打つことによって、ドライバーはその機能を充分に発揮して打つことが出来るのです。これがアイアンとドライバーのインパクト時の相違点になります。
スイングは一緒という考え方
では、アイアンとウッド(ドライバー)のインパクト時のクラブヘッドの入り方の違いを確認したところで、『アイアンとウッドのスイングは同じ』という考え方の意見をみてみたいと思います。
この場合、ドライバーはアッパーブローに打ち、アイアンはダウンブローに打つけれども体の動きそのものは変わらないので、スイング自体は一緒という考え方です。ボールの位置を変える※ことによってスイング軌道をすでに変えているのだから、体の動きまで変える必要はないということですね。
同じタイミングで、同じようにスイングをすることで自分のスイングが安定し、確立します。ですから、上達のコツとしては、スイングはいつも『同じ』であることを意識することが大切という訳です。
しかし、実際はクラブの長さが変わることによって遠心力が変わり、リリースポイント(手首のコックをほどく瞬間)やヘッドスピードも変わってきます。アイアンとウッドでは、インパクトを迎えるまでのプロセスが異なるのです。
しかしこの違いは打ち方の相違ではなく、結果的にそうなるのであって、『変えている』のではないという見解なのが、『同じ』とする意見なのです。
※ドライバーの場合は左足かかと寄りにボールを置き、フェアウェイウッド⇒アイアンと番手が下がるごとに徐々に右足寄りに移動させていくことになります。
※7~9番アイアンでほぼ中央
スイングは違うという考え方
では、今度はウッドとアイアンのスイングは『違う』という見解についてみてみたいと思います。
例えばアドレスからみてみましょう。スタンスをとった時に、左右の体重配分はドライバーの場合、右6割、左4割程度が良いとされています。これはアッパーブローの軌道にするための前準備であり、この状態から正しいスイングを行なうことで、アッパーブローの軌道を描くことが出来ます。
対してアイアンの場合は、体重の配分は半分半分で、重心が中央にあります。さらにクラブの長さが短いですから、それだけ上半身をかがめることになり、前傾姿勢が深くなります。この状態でスイングを行うと、自然と縦に打ち込む姿勢となり、ダウンブローになります。
このようにシャフトの長さが変わり、ボールの位置も違うのですから、同じ動きをすることは困難です。ですから、最初から『違う』スイングをすると捉え、ドライバーの場合はインサイドアウトに、アイアンの場合はアウトサイドインに振るというように意識することを勧めています。
上級者であれば自分のスイングが確立していますので、特に意識する必要はありませんが、初心者やアベレージゴルファーは別ものと考えた方が受け入れやすいという考え方です。これによって、『同じ』にしなければならないという呪縛から溶け、リラックスしてうまく振ることが出来るとしています。
まとめ
ウッド(ドライバー)とアイアンのスイングは同じか、それとも違うのかという議論についてみてみましたがいかがでしたでしょうか。どちらにも、なるほどと思う部分と、いや待てよと言いたくなる部分があると思います。
これは理論のごく一部を抜粋したものですから、これだけでは『ウッドとアイアンのスイング同じか否かの議論』のすべてをお伝えしたわけではありません。しかし結局は、「正しいインパクトを迎えるための手段として、どのように考えたら体がスムーズに導かれるのか?」という違いではないかと思うのです。
正しいインパクト=ゴール地点は同じなのです。
『同じ』と考えた方がシンプルで分かりやすい。自分が悩まずに済むという方は『同じ』と捉えてみましょう。しかし、『同じ』と提唱されている場合でも必ず、ちょっとした注意点がありますので、そこはチェックが必要です。
また、『違う』と考えた方が体と心の違和感が少なくなり、スイングもコントロールできるという方は『違う』と考えてみるのが良いでしょう。
ウッドとアイアン、それぞれのスイングのポイントを押さえて、気分良く振りぬいてください。
すべてのゴルファーに合う、絶対のゴルフ理論はありません。ゴルフ上達の近道は自分が納得して、それを実行することですよ。