ドロップもゴルフのひとつ!ゴルフルールを極めよう
先日の11月17~20日に開催された男子ツアー「ダンロップフェニックストーナメント」では、世界ランキング21位(出場時時点)のブルックス・ケプカ選手が招待選手として初参戦し、日本ツアー初優勝を遂げました。今季絶好調の池田勇太選手の猛追を振り切る形でしたが、やはり世界の実力を感じさせる内容でしたね。
しかし、池田選手の最終日の追い上げも本当に素晴らしく、最終日のスタート時点では5打差をつけられていたにもかかわらず、14番ホールを終えた時点では1打差にまで縮まっていました。そして、勝負のキーポイントのホールとなったのが実は15番ホールです。
バーディ合戦が続く中、ドライバーがやや不安定になってきたケプカ選手が15番のミドルホールでティーショットを左の林に入れてしまったのです。松林は密集度が高く、大トラブルでした。
一方の池田選手が放ったティーショットはフェアウェイの好位置につけました。しかも池田選手はこのホールを得意としています。この15番ホールの結果次第では首位が入れ替わり、流れが一気に池田選手に傾くことも十分に考えられたシーンでした。
ここでケプカ選手は、前方のカメラ塔の脚組みがプレーの線に介在すると主張しました。実際に、ケプカ選手のボールからピン方向の間には大きな鉄製の足場が組まれており、「臨時の動かせない障害物」として、主張は正当なものです。
これによりケプカ選手は、プレーの線上に介在しない場所までボールの移動が認められ、そのニアレストポイントから(1クラブレングス以内に)ドロップすることができました。その結果、ケプカ選手のボールは当初の位置よりかなり視界が開けた場所にまで移動することができ(まだ林の中ではありましたが)見事そこからグリーンオンし、パーをセーブすることができたのです。
この大トラブルの状況からパーをセーブできたことが、ケプカ選手の大きな勝因のひとつになったことは間違いないでしょう。そして興味深いのは、ケプカ選手が「以前、ドロップの練習をかなり真剣にしたことがあり、今回もそれが活かされた」と述べていることです。
ドロップの練習をするプロの話は聞いたことがなかったので非常に驚きましたが、今回のケースのようにドロップしたボールの位置によっては勝敗を左右してしまうことも考えられます。ケプカ選手のゴルフに対する真摯な姿勢がうかがえる面白いエピソードでしたので、今回はそのドロップそのものについて調べてみることにしました。
そして“ドロップの練習”とは何をすれば良いのかも考えてみましょう。“たかがドロップ、されどドロップ”ですよ。
ドロップをする必要が生じるケースとは?
まず、ゴルフのルールにおいてどのようなケースでドロップが必要になるのかを考えてみましょう。
例えば池ポチャした時や、アンプレアブルを宣言した時、動かせない障害物がスイングの障害になる場合など、そのままプレーを続けることができなくなった時に使いますね。その際には規則に則ってボールを拾い上げたり、新しいボールを使用したりしますが、注意点としてはプレーを中断した状態から、ドロップしてボールが手から離れた瞬間にインプレーとなるということです。
前述のケプカ選手のケースは、ローカルルールを適用した「臨時の動かせない障害物」にあたり、直接はスタンスやスイング区域の障害とならないものの、障害物がボールとホールの間に介在していて、且つプレーの線上にあたるとみなされました。
これにより、①ホールに近づかず、②障害物を避けられる位置に、③ハザードでもグリーンでもない場所の中で最も現在のボールの場所に近い地点決め(ニアレストポイント)、その地点から1クラブレングス以内にドロップしなければなりませんでした。(ゴルフ規則:付属規則Ⅰ4bより)
たとえドロップして落ちた地点が木の根にはまってしまっても、①②③の条件が満たされればインプレーとなり、プレーを再開しなければなりませんので、ドロップは重要なポイントです。この重要性を認識していたケプカ選手は、自分のイメージ通りの場所にドロップできるように練習していたのだと思います。
正しいドロップとは?
ドロップの方法は以下のように定められています。
①プレーヤー自身がドロップすること
②プレーヤーは真っ直ぐに立ち、球を肩の高さに持って腕を伸ばしたままドロップしなければならない
③ドロップした球が落ちる前や落ちた後で球が止まる前に人や携帯品に触れた場合、罰なしに再ドロップしなければならない。その際に回数に制限はありません(※ゴルフ規則第3章規則20より)
何故、このような手順を踏まなければならないかというと、それはプレーヤーの作為が入り込まないようにするためです(故意に回転をつけてドロップしたり、勢いよく落としたりする行為は規則に反する行為です)。
ですから規則に反して意図的に行動することはいけません。しかし、規則の中でプレーヤーができる行動とは何でしょうか。
イメージする場所にボールを落とせる?
腕を伸ばして肩の高さに持ち上げてドロップした場合、ボールはどこに落下するでしょうか。
だいたいの地点は想像がつくと思いますが、自分の予想とは少し異なる場所に落ちてしまうこともありますよね。そのままボールが転がって止まった地点が規定の範囲内であれば、自分の気に入らない状況でも、プレーを続けなければなりません。これを「ドロップだから仕方がない」と思わずに、ちょっとだけ練習して落下地点の精度をあげてみましょう。
例えば、自分が落としたいと思う場所にティーペグを刺しておき、ドロップしてみる練習です。ピッタリとその場所に落ちればOKですが、少しでもズレて落下するのであれば、何度か繰り返して感覚を掴んでみましょう。そのほんの数センチの調整で、あなたのボールが不利になってしまうことを防いでくれるかもしれません。
おわりに
ケプカ選手は木の根にボールが止まってしまわないように、ドロップができる範囲内で、あえて木の根にボールを当てることを心がけ、自分のイメージ通りの地点に止まるように練習していたそうです。ドロップの動作にまで細心の注意を払っていたことに驚きですが、実はスコア1打と同じくらいに重要なものかもしれません。
ケプカ選手のスイングを真似することは難しいかも知れませんが、ドロップの精度はケプカ選手に追いつける可能性は大いにありますので、一度やってみるのはいかがですか?プロ並みのドロップが、あなたを不本意なピンチから救ってくれるかもしれませんよ。