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アルバトロスは単純にアホウドリではないと知っていますか?/誰かに話したくなるおもしろゴルフ話

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ゴルフ史上で最も有名なアルバトロスの話から始めましょう。それは、その後のゴルフ界を変えるきっかけとなったのです。

1935年、第2回マスターズの最終日(このときは、まだ、マスターズという名称を使っていませんが)の15番パー5でジーン・サラゼンがバフィーで2打目を放ち、見事にグリーンに乗り、ボールはそのままカップの中に入ったのです。このショットで、トップだったC・ウッドにサラゼンは追いつきました。

当時は、翌日にプレーオフのラウンドをして勝敗を決めましていました。一騎打ちを制してサラゼンはマスターズチャンピオンになったのです。

この奇蹟の一打は新聞などで世界中に配信され、ドラマチックなトーナメントとして、マスターズは注目されました。もし、サラゼンのドラマチックな勝利がなければ、マスターズはメジャートーナメントになっていなかったかもしれないのです。

アルバトロスはどこから来たのか?

Gene Sarazen

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マスターズでのサラゼンの奇蹟の1打を伝える新聞記事や雑誌の記事は今でも残されていますが、「アルバトロス」という文字は見当たりません。代わりに使用されているのは、「ダブルイーグル」です。パーより3打少ないスコアのことを、アメリカ国内では現在でも「ダブルイーグル」と呼ぶのが一般的なのです。

日本ではアルバトロスが用語として定着しているので、ダブルイーグルといわれても逆にわかりづらかったりしますが、アメリカ人にとってイーグルは国章にも使われている特別な鳥ですので、そのこだわりもあってダブルイーグルが定着しているのかもしれません。

アルバトロスは、言語学的に溯ると“Albus”というラテン語がベースになった言葉です。意味は「白い」です。“Albatoross”は白い尾がある海鳥という意味です。しかし、現在のように学術的に鳥の分類が明確になっていない時代でしたので、かなり大雑把に大型の海鳥の総称として使用されていました。

一方で、ゴルフが育ったスコットランドでは、太古よりイギリス一帯のことを“Alba”(オールバ:白い大地)と呼んでいましたし、スコットランドも元になった王国の名称でもありました。語源は“Albus”で同じなのです。

アルバトロスという用語がアメリカでは浸透しなかったのに、本場であるスコットランドやイングランドですんなりと受け入れられた背景には、遙か昔のオールバが重なったからだという説もあります。

イーグルという用語が定着する前に、バーディーよりも大きくて強いというジョークも交えて「ビッグバード」という言葉が使われていました。アルバトロスという言葉がどのようにして生まれて、定着していったか?という疑問の答えを探していると、このビックバードという言葉は再び重要な意味を持ってきます。

ビッグバードという曖昧なものではなく、イーグルがハッキリと対象を明らかにした言葉なので、同じようにパーより3打少ないスコアにも相応しい名前をつけようとしたのではないか、と想像できるのです。

19世紀末から20世紀頭のボールの素材の変化と製法の発明で飛距離が増し、クラブにも革新的な変化があり、さらに飛ぶようになりました。現実にトップレベルのゴルフではイーグルが頻繁に出るようになったので用語が必要になり、一気に広まっていったという歴史がありました。

アルバトロスは滅多にありませんが、イーグルが定着していくほど、それよりもさらに上のスコアの呼び方をゴルファーは考え始めたはずなのです。では、誰が、どこで、アルバトロスと言い始めたのか……。

一応、有名なエピソードはあるのですけど、そのエピソード以前から使われていたという説もあり、ゴルフ史のロマンの狭間で確定はされていません。

アホウドリの伝説

2015 Walker Cup - Day Two

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アルバトロスが提案されたという有名なエピソードがあります。紹介しましょう。

1922年、第1回のウォーカー・カップでのこと。(ウォーカー・カップは、イギリス・アイルランド連合対アメリカのアマチュアのマッチプレーの団体戦)

アメリカチームは圧倒的な飛距離を武器に、前半戦で勝利を重ねて盛り上がっていました。イギリス連合チームの飛ばし屋シリル・トレイは悔しさもあって、アメリカのボビー・ジョーンズを挑発しました。

「アメリカ生まれの用語であるバーディーやイーグルを君たちがよく出すのはわかったが、流石にパー5を2打であがることは不可能であろう」

そして、もし後半戦でそれが出たら、イギリス人がその命名をすると約束したのです。

後に史上最初のグランドスラムを達成し、マスターズを作るボビー・ジョーンズは、その数時間後、520ヤードのパー5をなんと2打でホールアウトしたのです。夜の晩餐会で、ジョーンズはトレイに約束を守ってくれと迫りました。トレイはやけ酒をあおって、叫ぶように言ったのです。

「アルバトロス!」

この話は、日本のゴルフ黎明期の『ゴルフドム』というゴルフ専門誌の昭和16年(1941年)の4号に掲載されたゴルフエッセイで日本に紹介され、日本中に広まっていきました。

アルバトロスは、日本語訳では“アホウドリ”です。あまりにバカバカしいとんでもないスコアだから、アホウドリが相応しいというジョークでオチになっている見事なエピソードなのですが……。

アルバトロスをアホウドリに限定しているのは日本語だけの事情で、イギリスでも、アメリカでも、「アホウ」なニュアンスの鳥というイメージはないそうです。つまり、ジョークとしての面白さは日本のゴルファーだけにしか通用しないエピソードなのです。

ついでに書きますと、ゴルフ史を研究している人々の間では、このエピソードそのものが作り話だという説もあります。事実は小説よりも奇なり、とも言いますが、出来すぎのお話が伝聞されていく中で、尾ヒレが付いてしまった結果だったと判明することも多いのです。

いずれにしても、イギリスではパーより3打少ないスコアはアルバトロスという用語が定着し、アメリカでは定着しなかったのです。日本では、伝説的なエピソードと一緒になって広まっていきました。

英語圏の文献を見ると、アルバトロスは羽を広げると2メートル近くなるような大型の海鳥で、ゴルフ用語として採用されたのは、雄大に大空を飛ぶ姿が相応しいからだ、ということになっているものがあります。日本でも、そんな風に説明している文献があります。

日本近海では、アホウドリはほぼ絶滅してしまい、現在、繁殖地を再生させるプロジェクトが進行しています。絶滅してしまった理由は、羽毛目当てに乱獲したからです。大きな海鳥は、ほぼ例外なく大きすぎる体のせいで飛び上がるまでが不格好で、すぐに飛ぶことができません。だから、簡単に棒などで襲えば狩れたのです。簡単に捕れるから“アホウドリ”となったのです。

前半で説明した通り、アルバトロスは現実的な海鳥に当てはめたわけではなく、どうやらビッグバードのイメージと白い大地と同じ語源であることから、イギリスでは定着したと考えるほうが、説得力があります。

余談になりますが、パーより4打少ないスコアを「コンコルド」と呼ぶと書かれている文献を見ますが、くだらない冗談を真に受けた間違いに過ぎません。ビッグバードが定着せずに消えていった用語の歴史や、イーグルやアルバトロスの詳細を知っていれば、笑えない冗談に過ぎないことは明白です。

賢明なゴルファーであれば、もしパーより4打少ない少ないスコアに当てる鳥の名前が必要になるときが来たとすれば、数百年にわたってゴルファーが引き継いできたゴルフそのものが廃れるときになる、と静かに語るのが模範解答だとわかるはずです。

ゴルフは残酷で、こういう部分でも未熟を晒す危険な罠があるのです。だからこそ、ゴルフの楽しみ方は底なしに深いのです。練習場でボールを打ってもスコアアップする保証はありませんが、ゴルフについて学ぶことは、決してゴルファーを裏切りません。

4月の第1週目(または2週目)のマスターズトーナメントで、北半球のゴルファーには春が来ます。マスターズの週が来るたびにサラゼンのアルバトロスを思い出したりできれば、それだけでゴルファーとして上級だといえます。時間がどんなに過ぎようとも、アルバトロスの有名なエピソードの表も裏も楽しめるのも、ゴルフの魅力なのです。

僕はアルバトロスに関するゴルフ談義をするたびに、“踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々”と徳島の阿波踊りの歌を思いだします。アルバトロスに挑戦するには、ゴルフコースでプレーしなければ無理なのです。可能性がある限り、挑戦は終わりません。

春はゴルフの季節です。アルバトロスを想いながらゴルフを楽しみましょう!

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