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キャディーはゴルファーの鏡!歴史を通じてマナーを知ろう~ワンランクアップするゴルフの裏技~

キャディーと聞くと女性を連想するものですけど、これは日本独特のゴルフ文化がアジア地域に広まったものです。欧米では、キャディーは力仕事であり、基本的には男性がするものなのです。

とはいっても、アメリカでも主流はセルフプレーですし、イギリスでも基本はセルフプレーで、現在の日本のようにキャディー付きのゴルフをしたことがないというゴルファーもたくさんいるようです。

海外から日本に来たゴルファーは、ほぼ例外なく女性がキャディーをしていることに驚きます。女性を大切にする文化があるエリアから来たゴルファーは、女性にキャディーをしてもらうことに戸惑ったりもしますが、結局は『おもてなし』の精神に触れて感動することもあるのです。

だから良いとか悪いとかではなく、文化の差を認め合うことが世界で全く同じルールで行われている珍しいゲームであるゴルフの面白いところだと考えるのが正解なのだと思います。

日本独自で進化してきた、女性がキャディーをする面白さや良い点も理解した上で、キャディー付きのゴルフをより楽しめるように、キャディーについて学んでみましょう。

そもそもキャディーって何なの?

ゴルフ場

ゴルフが記録されている最も古い公式文章である「ゴルフ禁止令」を出したスコットランド王ジェームス二世、ゴルフ狂としても有名だった孫のジェームス四世、さらに輪をかけたゴルフ狂だったジェームス五世の娘であるメアリー・クイーン・オブ・スコッツがキャディーをゴルフと結びつけたというのは、うんちく本や語源クイズなどにも度々出てきて有名です。

メアリー女王はフランス生まれのパリ育ちですが、スコットランドの女王として、花のパリから当時は僻地の田舎に過ぎなかったスコットランドに移住したのは16世紀の中頃です。やることがなく、退屈したメアリー女王が熱中したのがゴルフだったのです。

女王がゴルフをするときには、いつでもフランスから連れてきたお気に入りの“Cadet”に、ゴルフクラブや身の回りのものを持たせてプレーしていました。これを目撃した人たちから徐々に広がっていって、ゴルフ用具を持って主人についていく係を「カデ」と呼ぶようになっていったのです。

せっかくだから、もう少し深く調べてみましょう。フランス語の“Cadet”(カデ)ですけど、元の意味は、貴族の家に生まれた次男や三男などの若者に与えられた称号でした。称号というくらいですから、かなり立派な肩書きだったのです。

貴族の家に生まれながら家督相続できない若者は、小姓として宮廷に奉仕していました。彼らがカデなのです。“Cadet”は、スコットランド語になって“Caddie”となって、意味も“物を運ぶ人”となりました。

キャディーという言葉は、その後英語となって、ゴルフ用具を運搬する人だけではなく、使いっ走りの若者、軍隊の士官候補生などの意味でも使われるようになり、遠くオーストラリアでは羊飼いの少年を意味するようになります。

話をメアリー女王に戻します。

彼女はその後、イングランド女王のエリザベスを暗殺しようと企てたと疑われて処刑されるという運命を辿る悲劇のヒロインとなりますが、彼女以降は19世紀まで女性がゴルフをしたという記録が残っていません。

メアリー女王がしていたゴルフは、現在だとパットのみに近いものでした。ロングドレスにコルセットでゴルフクラブを振り回すのはかなり難しかったでしょうし、ゴルフそのものが大衆化される前の時代でした。

パットのみではゴルフに非ず。と考えるのは早計です。パットだけでも十分に面白かったから熱中したのです。

現在、ゴルフ振興の一つの策として、パットだけの室内コースなどが注目されています。馬鹿にせずに、腕を磨きに行くのがゴルファーとしての正解なのだと、メアリー女王に諭されているような気がしてなりません。

キャディーはゴルファーを映す鏡

ゴルフ規則では、キャディーを「規則にしたがいプレーヤーを助ける人」と定義しています。プロトーナメントなどを観察すれば、キャディーと二人三脚で戦っている様子が素人目にも明らかに映ります。

プロゴルファーがコースで一緒に戦うキャディーは、区別する意味で「帯同キャディー」と呼んでいます。優秀なキャディーだと、年間の契約料が数千万円という例もあるそうで、優勝などのたびに入ってくるボーナスを含めて、全盛期のタイガー・ウッズの帯同キャディーの年収は2億円を越えていたときもあったといわれています。

帯同キャディーは特別なプロフェッショナルで、一般的なキャディーは「プレーヤーの味方」ではありますが、万能ではないものです。

色々なケースが近年増えてきていて、コースと社員契約をしているキャディー、アルバイト契約のキャディー、派遣されてきたキャディーなどがいます。毎日コースに出て、隅々まで詳しくなる可能性が高い順に紹介しました。

しかし、ゴルフの知識については、派遣されているキャディーのほうが頼りになったり、失敗したら呼ばれなくなってしまうからと必死になっているアルバイト契約のキャディーのほうが社員契約より好感が持てることもあります。マニュアルを作り、しっかりとした研修を受けてキャディーになったとしても、つまりは人間がすることですからケースバイケースなのです。

また、日本のゴルフコースの場合は、キャディーを選ぶシステムがないのが普通です。キャディーマスターという係が、キャディーの配置を決めています。どんなキャディーが担当してくれるのかは、直前までゴルファーにはわからないのです。

オールドゴルファーで、キャディー付きでなければゴルフをしないという人も少数ですがいます。こういう面々の多くは、相性の良いキャディーと相性が合わないキャディーがいることを知っています。

半日一緒に過ごすのですから、互いの本性は隠せずに出てしまうことが多いので、マニュアルだけではどうしようもないのです。例えば、Aさんが高評価したキャディーが、Bさんからは今イチという評価であることもあります。

僕は頼まれてキャディー研修をお手伝いすることがあります。そのときに伝えているのは、「ゴルファーは鏡です」というものです。自分の感情は、相手に伝わってしまうものだという意味です。

逆に、初めてキャディー付きでプレーするという相談や酷いキャディーでゴルフが台無しだったというゴルフ談義のときには、「キャディーは鏡ですよ」と説明します。

人と人ですから、ちょっとしたことでイライラしたり、気にくわないことはお互いにあります。もちろん、ゴルファーは客ですのでサービスされるのは当たり前ですけど、それ以下でも以上でもないのです。

キャディーに文句ばかりいう人は、キャディーを召使いか奴隷だと勘違いしているのです。商売なんだからと反論する人には、確認をさせてもらうようにしています。

「たった数千円を払えば、あなたは召使いを半日してくれるのですか?」

自分がしたくない、またはできないことを強制することが無謀であることは、幼稚園児でも理解できます。

鏡という意味は、相手に伝わった感情は必ず自分に戻ってくるということなのです。特に嫌な感情は、出したら最後、何倍にもなって戻ってくるものです。多少の不満は飲み込み、笑顔で心遣いをしながら接してみるだけで、同じシチュエーションでも雰囲気は全く変わります。

ゴルフ規則で、プレー中にゴルファーはキャディー以外からアドバイスを受けることを、一部の例外を除いて禁止されています。規則上でも、キャディーは唯一の味方なのです。

ゴルファーとキャディーの関係は鏡です。良い関係が築ければ、互いにその期待に応えようとするものです。そのキャディーが持っている最高のおもてなしを受けられることで、味方は何倍も頼もしいものになります。多少の慣れは必要かもしれませんが、それもゴルファーとしての腕前の内だと考えれば楽しいものです。

こちらがどんなに心配りを見せても、人間ですから反応してくれないキャディーもゼロではありません。そういうときは思いだすのです。

「元々は貴族の血筋。高慢ちきで嫌なヤツがいて当然」

修行だと思ってハーフは我慢して、ハーフターンで具体的な言動をキャディーマスターに報告し、キャディーを交換して欲しいと申し出る権利は客として持っています。空いていれば対応してくれますし、対応できないとしても意図は伝わりますから、後半は改善されることもあります。

はじめに説明した通り、キャディーは万能ではありません。プレーヤーを助けてくれる人のことです。多大な期待をするのは、ゴルファーとしての未熟を晒すようなものですから自重しましょう。

それよりも、一期一会。ゴルフという18ホールの冒険を一緒にする仲間だと考えれば気が楽です。セルフのゴルフでは味わえない二人三脚だからできたナイスなことが一つでもあれば、それだけで十分にキャディ付きのゴルフをした意味があります。

ゴルファーとしての価値

ゴルファーとして最も恥ずかしいのは、スコアが悪いことでも、ゴルフ用具が貧相なことでもありません。プレー後に、

「この人とは、もう一緒にゴルフをしたくない」

と思われてしまうことです。ゴルフ規則の第1章にエチケットがあるのは、そういう悲劇を防ぐために先人が残してくれた工夫です。

たった数名で、広いけど閉ざされた空間の中、何時間も一緒に過ごすのはゴルフの宿命です。過剰なサービスや気遣いをすることなく、互いが気分良くプレーできることは、ゴルファーとしてスイング論より何倍も大切なのです。

昭和の時代の日本のゴルフコースの多くは、キャディー付きでのプレーが決まりでした。セルフプレーを禁止しているゴルフコースのほうが多数だったのです。だから、セルフプレーをしたことがないゴルファーがたくさんいました。

平成の時代になって、日本のゴルフコースは大きく変わりました。しかし、いわゆる名門や一流といわれるゴルフコースでは、キャディー付きでなければプレーできないところが多く残っています。

ゴルファーとして歩み出したのであれば、そういうコースでプレーする可能性は常にあるのです。そういうときになって、慌てふためいて、せっかくの体験が楽しめないのは準備不足で残念なことです。普段から、機会があればキャディー付きのゴルフでも普通に振る舞えるように練習しておきましょう。

プレー後に、全ての同伴競技者から

「また、この人とゴルフを一緒にしたい」

と思われるようなゴルファーになるのは、そんなに難しいことではありません。同じようにキャディーからも、「またこのお客様とご一緒したい」と思われるゴルファーになりましょう。

褒められて伸びるタイプの人が増えている時代です。他者から評価されて、ゴルファーとしても成長できれば一石二鳥です。

さて、文中では「キャディー」と書いていましたが、通常、会話時やコラムなどでは「キャディーさん」を使います。僕は中学生の頃からゴルフをしていましたので、年上の方がキャディーとしてつく時代が長かった名残でもありますが、畏敬の念を込めて、という側面もあります。

大学ゴルフ部時代に、キャディーのアルバイトを何度もしました。嫌な思いはしませんでしたが、大変な仕事だと痛感しました。ちょっと考えればわかると思いますが、千差万別の複数のゴルファーに注意を払いながら、先回りするようにしてクラブを渡したり、アドバイスしたりするのは特別な仕事で、それだけで十分に尊敬できました。

現在、自分の子供でも不思議ではない年頃のキャディーが担当になることも多くなってきました。それでも「キャディーさん」と呼びます。女性だからとか、年が上だとか下だとか関係なく、キャディーさんはキャディーさんだと思うことで、対応が楽になります。

最後に、簡単なコツを紹介しましょう。

笑顔で接することは書きましたが、それにプラスして、ボールを拭いてもらったときやクラブを渡してもらうときや渡すとき、全ての対応に小さな声で良いので「ありがとうね」とか「ありがとうございます」とか一言添えるのです。

コミュニケーションをスムーズにすることは大切で、無言でするより何倍も互いに気持ちが良いものです。したことがないと面倒だと思うかもしれませんが、慣れてしまえば、その努力に見合うだけのプラスがあることは経験が教えてくれます。

こういう余裕が、ゴルファーとしての自らの価値を引き上げます。ショットにも良い影響をしますし、集中力も増します。

キャディーさんという鏡は、使いようなのです。時々は自らを映して、ゴルファーとしての面構えをチェックしましょう。

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