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ヨーロピアン・ツアーの上品な遊び心に触れる~⑨バック・トゥ・1930?!ヒッコリー・ゴルフ・チャレンジ!~

ロバート・タイアー・ジョーンズ・ジュニア(Robert Tyre Jones,Jr.)

アメリカ合衆国、ジョージア州、アトランタ出身。
職業:弁護士。
趣味:ゴルフ。

この方、だれだかお分かりになりますか?

実はこの人、1930年に28歳の若さで競技ゴルフから引退するまでに13ものメジャータイトルを獲得した伝説のアマチュアゴルファー、みなさまもご存知のボビー・ジョーンズ選手でした。

彼が伝説となっているのは、高いゴルフ技術を持っていたということだけはなく、素晴らしいフェアプレー精神の持ち主だったことも大きな理由の一つとされています。

例えば1925年の第29回全米オープンでは、初日の11番ホールでジョーンズ選手は「ラフのボールを打つ際、アドレス時にボールが動いてしまった」と自ら申告し、1打罰を課しました。

同伴競技者のウォルター・ヘーゲン選手は「誰も見ていないのだから、ペナルティは必要ないよ」と進言したが、ジョーンズ選手は「銀行でお金を盗まなかったからといって誰も僕を褒めてくれないだろ?それと同じことだよ」とヘーゲン選手の言葉を聞き入れなかったというエピソードは有名なお話。

しかし、この1打が響いてマクファーレン選手とのプレーオフとなり、結局ジョーンズ選手は優勝を逃してしまいました。この試合は1999年全英オープン、“カーヌスティの悲劇”におけるバンデベルデ選手のように“2位”の選手が心に残る数少ない大会の一つとなり、今も大切に語り継がれています。

ジョーンズ選手は1930年にグランドスラム(世界の4大メジャー大会を同じ年に制覇すること。当時のメジャー大会は全英アマチュアゴルフ選手権、全米アマチュアゴルフ選手権、全英オープン選手権、全米オープン選手権でした)を達成しました。スポーツ界において“グランドスラム”という言葉が使われたのは、これが初めてとされています。

そして、ジョーンズ選手が競技ゴルフを引退するまで愛用していたのが本コラムのテーマでもある“ヒッコリーゴルフクラブ”だったのです。

ヒッコリーゴルフクラブ

ヒッコリーゴルフクラブとは、シャフトがヒッコリー(くるみ)、つまり木製のクラブのことなのです。木製のシャフトというと、現在はインテリアとして“飾る物”と思っている方が殆どだと思います。

しかし、ヒッコリーゴルフクラブを侮るなかれ!スチールシャフトがすでに出始めていた1930年代も、軽くて丈夫、そしてシャフトの対応性に優れているヒッコリーゴルフクラブの方が、重くて対応性の低いスチールシャフトに比べて人気があったのです。

理由はシンプル。ヒッコリークラブはシャフトのしなりを利用して距離を打ち分けられ、1本のクラブでカバーできる距離の幅が広かったので、持ち歩く本数も6~7本程度で済む上、スチールシャフトに比べて軽いところが大きな魅力でした。

逆に、スチールシャフトは重くて対応性が低いので残りの距離によってクラブを頻繁に交換しなくてはならず“重い”クラブを“たくさん”持ち歩く必要があり、キャディバッグを担いでラウンドするのが一般的だった当時は不人気だったのです。

現在、主流となっているスチールシャフトは、ボビー・ジョーンズ選手が競技ゴルフから引退した時期と入れ替わるようにして、現代ゴルフの発展とともに普及が進みました。

実はクラブの性能はあまり進化していなかった?!

ゴルフ用品はボビー・ジョーンズ選手が活躍していた1920年代から現在に至るまで、進化し続けています。クラブ、ボール、ウエア、シューズ、グローブなど。なにも知らない人が木製シャフトのゴルフクラブを想像すると“折れてしまいそう”とか“飛ばなさそう”という印象が強いですよね。

ところが“ディスカバリー・チャンネル”の検証によると、ゴルフクラブの性能は1800年代から実はあまり変わっておらず、飛びの違いはボールの進化によるものだというのです!

これだけを聞いても簡単には信じられませんよね?それでは、ヒッコリーゴルフクラブの魅力が120%詰まったこの番組をご覧いただき、ご自身の目でお確かめください。

いかがでしたでしょうか?

460ccの現代のクラブとヒッコリークラブのブラッシー(真鍮のソールプレートをヘッドに埋め込んだフェアウェイウッド)、そして同じくヒッコリーのロングノーズ(“長い鼻”と呼ばれる1880年代のトラディショナルなクラブ)の飛距離検証は面白かったですね!

また、クラブ職人さんの「シャフトを削って(細くして)硬さを調整する」というところも、大変興味深かったです。昔も力の無い人は柔らかいシャフトを使っていたのですね。

ヒッコリー・ゴルフ・チャレンジ!

ヒッコリーゴルフの魅力は伝わりましたでしょうか。

それでは、ヨーロピアン・ツアーの上品な遊び心に触れるシリーズ第9弾!“バック・トゥ・1930?!ヒッコリー・ゴルフ・チャレンジ!”のスタートです。

今回のイベントは、オメガ・ヨーロピアン・マスターズが70回連続で開催されているスイスの名門コース、クランスシュルシエレ・ゴルフクラブ(Crans-sur-Sierre GC)が会場となりました。

クランスシェルシエレ・ゴルフクラブは標高1500mに位置しており、スイスの大自然が織りなす絶景はヨーロピアン・ツアーでも他に類がなく、プレイヤーとファンを気持ちよく迎えてくれます。

オメガ・ヨーロピアン・マスターズは、レース・トゥ・ドバイ(ヨーロピアン・ツアーの賞金レース)の後半戦において、重要な大会の一つとされています。

創設は1923年。当時はスイス・オープンと呼ばれていました。途中、日本のキャノンが冠スポンサーとなり、2001年からオメガが冠スポンサーとなり現在に至っています。

さて、レース・トゥ・ドバイの賞金レースが熾烈になり始めるこの時期、興奮気味の選手とファンを少しクールダウンさせようと、のんびりとした雰囲気の中でヨーロピアン・ツアーのトッププロ3人が、ヒッコリーゴルフの世界チャンピオンに挑みました!

まずは恒例の選手紹介です。

今回もヨーロピアン・ツアーの豪華なメンバーが揃いましたよ!

エントリーNo.1:パオロ・クイリッチ選手/Paolo Quirici

国籍:スイス。2013年ワールド・ヒッコリー・オープンのチャンピオン。スイスのプロゴルファー。

ツアープロは引退しており、現在は母国スイスで“クイリッチ・ゴルフ・スクール”を主宰。ゴルフ・スクールではヒッコリーゴルフも積極的に推奨しています。ヨーロピアン・ツアーのトッププロは、クイリッチ選手にどこまで食い下がることができるのか?!

エントリーNo.2:ダニー・ウィレット選手/Danny Willett

国籍:イングランド。ツアー:5勝。ヨーロピアン・ツアーのニューヒーロー。

2015年に大ブレイクを果たし、勢いそのままに2016年ではメジャー大会のマスターズを制覇。イングランド勢のマスターズ制覇は1996年のニック・ファルド以来20年ぶりの快挙!ヒッコリーゴルフでも、ショットの切れを見せる事ができるか?!

リー・ウエストウッド選手/Lee Westwood

国籍:イングランド。ツアー:30勝。主戦場はヨーロピアン・ツアーですが、アメリカやアジアでも活躍しているベテラン。

日本でも「三井住友VISA太平洋マスターズ」で1996年から3年連続優勝を果たしているので、ご存知の方も多いはず。183cmと恵まれた体格に似合わず、繊細なプレーが持ち味のウエストウッド選手。ヒッコリーゴルフの腕前やいかに?!

ミゲル・アンヘル・ヒメネス選手/Miguel Angel Jimenez

国籍:スペイン。ツアー:23勝。長髪と葉巻タバコがトレードマークの大ベテラン。変則なスイングから繰り出される正確なドライバーと、バンカーショットが武器。

ヒッコリーゴルフのラウンド中に「シャンクしましたね?」とインタビューされると、「あれはシャンクじゃない!少しスライスしただけだ!」と負けず嫌いぶりを発揮。年齢的には一番クラッシックゴルフに近い男が、優勝を目指して本気の戦いを魅せる?!

まとめ

今回ご紹介したヒッコリーゴルフは、今世界的に注目を集めています。コンセプトとしては“テクノロジー”や“飛距離重視”といった現代ゴルフから少し距離をおいて、“シンプル”に“自然体”で、1930年代に想いをはせながら“のんびり”とゴルフの本質を楽しむことを目的としているようです。もちろん競技として手を抜く必要はありません。しっかりと、良いスコアを目指してプレーをしましょう。

日本でもヒッコリーゴルフがパッケージになったプランなどを用意しているコースがあり、クラブのレンタルも含めて気軽に1930年代へのタイムスリップを楽しむことができるようになりました。もちろん、ボールもヒッコリーゴルフ専用のクラッシックなボールが用意されています。

せっかくですから、女性はロングスカートでシックに、男性はニッカポッカで“正装”をして、ヒッコリーゴルフを楽しんでみてはいかがでしょうか?

ただし、一度ヒッコリーゴルフにハマると、その“ピュア”な魅力から抜け出せなくなり現代ゴルフに戻れなくなる人が続出しているのでご注意を。

(完)

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