【保存版】クラブを吊して傾斜を読む!プラムボブ徹底解説!
青木功プロのトレードマークにもなっているグリーン上でのポーズ”プラムボブ”ってご存じですか?
片目を閉じてパターを顔の前に吊すようにして持ち、何かを狙っているような、計っているような、そう!あのポーズです!
あのポーズはプラムボブ(Plumb bob、日本語では下げ振り)と呼ばれるラインを読むテクニックの一つで、その行為をプラムボビングと呼ぶこともあります。
語源のプラムボブの定義は「垂直を測定したりする為に、ロープの先につけられた鉛のおもり」となっています。よく、測量士の方が三脚を立て真ん中に糸で錘(おもり)を吊るして何かを計測しているのを見たことがあると思いますが、原理はあれと同じなのです。グリーンの上では垂直を測定しているのではなく、その原理を応用して傾斜を確認しているのです。
しかしながら、このプラムボブという技の認知度が意外と低く、まったくご存知ない方や、「意味がない」と完全否定するゴルファーも大勢存在しているようなのです。グリーン周りでプラムボブをルーチンとしている筆者としては、否定されている方は「もしかしたらプラムボブを正確に理解されていないのではないか?」または「誤解をしているのではないか?」と思い、ご存じない方への布教活動(?)も兼ねて、徹底分析をしてみたいと思います!
まずは準備から
プラムボブの準備は比較的簡単で、次の2点を確認しておくだけです。
① 利き目を知る
目には”利き目”というものがあることはご存じですよね?利き手、利き足のようなものですが、プラムボブは片目(利き目)で行います。利き目の確認の方法はいろいろありますが、一般的なものをご紹介いたします。
・壁に刺さっている画鋲のような目印の正面に立ちます。
・両目を開けたまま、目印と目の真ん中に手を伸ばしたまま指を立てます。
・その状態で右眼だけ、左目だけで目印を見て、指で目印が隠れた方が利き目となります。
※この他にも利き目の調べ方があるので、それぞれ確認してください。
ご自分の利き目は分かりましたか?
②シャフトが垂直に見えるパターヘッドの位置を知る
パターには特殊な形をしたヘッドが装着されています。その為、顔の前でパターを吊してもシャフトが重力に対して垂直に見えない場合があります。
【図1】の②や③だとヘッドの重さの影響でシャフトは垂直にはなりません。平地でシャフトが垂直に見えるヘッドの位置をしっかりと確認しておきましょう。
持つ場所はシャフトとグリップの間くらいを、親指と人差し指の2本に軽くひっかけるように(重力に逆らわず、ヘッドを吊るすように)持つのがコツです。5本の指でしっかり「ぎゅ」っと握ってしまうと、余計な力が影響してクラブが垂直にならないこともあるので注意してください。
準備は以上です。
ここまでは、大丈夫ですよね?
計測に使うシャフトの場所について
プラムボブを否定派の方の主な理由に「シャフトは手元からヘッドに向けて細くなっている(直線ではない)ので、正確な傾斜を計るのは無理」というご意見があります。
確かにその通りなのですが、実際に使用するシャフトの位置は段差でいうと2カ所(約15cm)程度(図2参照)、しかも計測は右側からと左側からの両方で行う為、多少の誤差はある程度経験でカバーすることができますのでご安心ください。
プラムボブの立ち位置
こちらはしゃがんで計測する場合と、立って計測する場合、またボールからカップまでの距離によって調整が必要になりますが、カップに向かってボールの後ろ2m~3mぐらいが適当かと思います。
基本的にボールとカップが【図2】のようにシャフトの段差2カ所以内(約15cm)に入っていれば問題ありません。逆にあまりボールの近くに立つと、シャフトの手元から先端まで使わなくてはならず、精度の誤差が大きくなるのでご注意ください。ご自身のもっとも心地良い距離を探してみてください。
プラムボブ実践!
それではいよいよ計測に入ります。
その前に準備の確認です。
*ボールの後方2m~3mに立つ(またはしゃがむ)
*クラブのシャフトを垂直位置に合わせ顔の前に垂らす
※シャフトの段差2カ所(約15cm)以内にボールとカップが入っていることを確認!
*利き目ではない目を閉じて、片目で計測を開始!
さて、以上の準備は大丈夫でしょうか?大切なところなので、この準備が整っていない方は先に進むのを我慢して、もう一度復習してくださいね!
ここからがプラムボブの計測方法となります。できるだけ分かりやすく解説してまいりますので、しっかりと習得してください。(図3参照)
【図3‐①:左から右へクラブを移動】
①垂直に垂らしたクラブを左から右にゆっくりと移動する
②シャフトがボールのところまできたら移動を止める
③その時にカップの位置を確認する(シャフトの右側か、左側か、それとも、まっすぐか)
【図3‐②:右から左へクラブを移動】
④今度は垂直に垂らしたクラブを右から左にゆっくりと移動する
⑤シャフトがボールのところまできたら移動を止める
⑥その時にカップの位置を確認する(シャフトの右側か、左側か、それとも、まっすぐか)
※イラストはまっすぐとなります。
筆者はこの動きをルーチンで2往復行っています。
プラムボブでなにを見る?
計測結果はカップの位置によって下記のように判断します。
イラストは①左から右、②右から左、③ラインのイメージとなります。
(カップがシャフトの右に見える:スライスラインのイメージ(図4参照))
(カップがシャフトの左に見える:フックラインのイメージ(図5参照))
(カップとボールがまっすぐ:傾斜なし。ストレートラインのイメージ(図3参照))
※カップの位置がシャフトから離れれば離れるほど傾斜はきつくなります。
この時点で誤解されている方の多くは「傾斜があってもボールとカップを一直線にすることはできるでしょ!」と思っている方が多いのですが、傾斜があってシャフトが垂直になっていれば、ボールとカップをシャフトの線で一直線に繋ぐことは物理的にできません。もしできるという人がいたならば、それはシャフトが垂直に垂らされていないか、プラムボブを正確に実行できていない(握力で無理やりまっすぐにしている等)ということなので、疑っている方は是非実践してみてください。
さあ、計測まで終わりましたが、ここまで落ちこぼれている方はいませんか?もし「難しい!」と思っている方は、このページをプリントアウトして実際のグリーンでトライしてみてください!計測までできるようになった人は、あとひと息です!
プラムボブで得た情報をどう使う?
計測まで無事にクリアした方は、いよいよ実践編です。実はこのデータの応用方法は人によって様々なのですが、ここでは筆者がゴルフを始めた時に師匠から伝授されたプラムボブの活用術をお伝えいたします。
ポイントは次の3点。
①シャフトの傾きは打ち出す方向である!(図6参照)
基本はシャフトの示す方向が、そのまま打ち出し方向になります。
②下りの時はラインをふくらませ、上りの時はショートカット!(図7参照)
ボールを打ち出す方向はプラムボブでシャフトが描いたラインが基準となりますが、下りならば強く打ち出せないので、少し膨らませるラインをイメージし、逆に上りの場合は強く打てるのでシャフトが示すラインよりもより直線的にカップを狙う(ショートカット)ラインをイメージすること。イラストはスライスラインのイメージ。
③短いパットほど、傾斜をおろそかにするな!
左右の傾斜は短いと意外と分かりにくいものです。ボール半分スライスして、カップをなめて外れるというようなパッティングを皆さまも何度となく目撃していますよね!プラムボブという技術は、ロングパットだけではなく、短いパットの精度を上げる心強い武器になります。
人の感覚というのは良くも悪くもとても優秀で、2%程度の傾斜(約1度)ならば平地であると感覚的に調整(または錯覚)をしてしまうのです。しかしながら2%程度の傾斜でもラインには大きな影響を及ぼします。短いパットだからといって「まっすぐだな」と錯覚したまま感覚的にパットを打つのではなく、短いパットこそ慎重に傾斜を確認してボールの転がるラインをしっかりイメージすることがとても大切なのです。
まとめ
今回はグリーンの傾斜を確認する方法としてプラムボブという方法をお伝えいたしました。
ただし、この方法だけで完璧にラインが読めるわけではありません。グリーンの外から、ボール側から、カップ側から、横から、と様々な方向からグリーンを眺め、さらに足の裏から伝わる感触なども加味して感覚的にラインを予測していきます。そして最後にその読みを感覚ではなくプラムボブという客観的(または物理的)な方法で確認することが、迷いのないパッティングに繋がると筆者は考えます。
すでにプラムボブを常用されている方にとっては“あるある”エピソードですが「見た目はスライスなのに、プラムボブで見るとフックになる」またはその逆、になることがしばしばあります。「スライスに見える」ことにも理由があり、「プラムボブで見るとフックになる」のにも理由があります。
しっかりと目視で傾斜を予測し、プラムボブで確認をし、予測と確認が違った場合はもう一度あなたのルーチンを反復してみてください。そして、確信を持ってパッティングに臨みましょう!
当然ですが「15mのロングパット、上って、下って、右へ左へのスネークライン」というような複雑なグリーンのラインをプラムボブだけで読むことは難しいでしょう。しかし、しっかりメカニズムを理解することができれば、そんな時にも有効な情報を得ることができるかもしれません。
皆様のパッティングの精度があがることを祈願して。
(完)
※筆者とプラムボブとの付き合いは20年以上になりますが、このコラムを執筆するまで、この技術の名前が“プラムボブ”ということを知りませんでした(笑)