先日、ツアープロからその日初めてクラブを握るビギナーまで約5000人をレッスンしたというティーチングプロを取材した後、お茶を飲んだ時の話だ。

「もう、アマチュアゴルファーは飛ばし屋ばかりですよ」

「えっ、どういうことですか?」

「平均飛距離を尋ねると、『大体270~280ヤードですかねぇ』っていう人が多くて…なかには当たれば300は行くって人も結構いるんですよ。私は平均飛距離を聞いているのに、おそらく人生で最も飛んだ距離を言うんですよ」

「それにしたって、飛ばし過ぎですよね」

「私の飛距離が大体275~280ヤードです。そんなアマチュアの隣の打席で私が打ったり、ラウンドレッスンすると、そのアマチュアを40~50ヤード、アウトドライブするんですよ。」

「へぇー、自分では相当飛ばしているつもりなんですね。でもホラを吹いているつもりではないんですよね」

「一番の理由は日本のゴルフコースや練習場の距離表示が甘過ぎるってのもありますね。コースで400ヤードのホールのセカンドショットの残りが100ヤードならば、300ヤード飛んだって勘違いしますし、耐久性はあるが飛ばないワンピースボールを使っている練習場の距離表示も1割くらい甘くなっていることもあまり知られていませんからね」

Previews - 2014 Ryder Cup

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「なるほどね。ではアマチュアの本当の飛距離というのは?」

「私はその人の9番アイアンの飛距離を聞きます。9番アイアンの距離の2倍がその人の最大飛距離なんです。例えば、9番アイアンの飛距離がコンスタントに120ヤードならば、その人のマックスは240ヤードです。ですから、その人には240ヤードをコンスタントに打てるようになるレッスンをするようにしています」

「150ヤードを打つ人で、初めて300ヤードを打てるんですね」

「それもマックスの話ですよ。平均飛距離となると、スライスやフックを打って、林に打ち込むこともあるでしょう。チョロだってあります。まして、ОBとなると、飛距離は0ヤードですよ。ですから、平均飛距離にしたら、せいぜい150ヤードくらいですよね。それでもいい数字だと思うんですが…」

「現実の数字は結構悲しいですね。こと飛ばしの話になると、アマチュアには見栄とプライドがありますからね」

どうです?皆さんはこの数字を素直に受け入れられますか?

 

最新のゴルフ用具で平均飛距離は伸びているのだろうか?

Virgin Atlantic PGA National Pro-Am Championship - Regional Qualifier

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毎年、春と秋になると、大手のクラブメーカーは新作を発表するが、もちろん前モデルよりも飛距離アップを謳ったニュードライバーがゴルフショップの店頭に並ぶ。ニュードライバーを手にした契約プロたちのコメントは「10ヤード以上は飛距離は伸びましたね」。

ならばと、思い切って大枚をはたいて購入したドライバーを持って、颯爽といざ練習場へ。新しいドライバーは素晴らしい弾道でネットに突き刺さり、次のラウンドにも気合が満ち溢れる瞬間だ。

しかし、結局はいつものスコアに落ち着き、そのモチベーションも日が経つほどに下がっていくというパターンを何度繰り返しただろうか。しかし、懲りないのがゴルファーである。半年もすれば、このニュードライバーも旧モデルになり、再び新しいクラブに夢をはせるのである。この悲しい性を持った人種、それがゴルファーなのである。

これは今に始まったことではない。ゴルフが生まれた瞬間から、人々は飛ばしにロマンを抱いていたのである。フェザーボールがガッタパーチャボールになったときも、人々は飛んで曲がらないボールに狂喜乱舞しただろう。ヒッコリーシャフトがスチールシャフトになったときもそうだっただろう。

最近ではカーボングラファイトシャフトの第1号である通称ブラックシャフトが発売されたときもそうだった。パーシモンヘッドがステンレス製のメタルヘッドになったときもそうだった。これでゴルフが変わると…。

世界の飛ばし屋たちの平均飛距離はどうなったか?

BMW Championship - Round Two

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アマチュアゴルファーの平均飛距離の正確なデータは存在しないので、世界のトッププロのドライバーショットの飛距離、即ちドライビング・ディスタンスを見ていこう。クラブとボールの進化で飛躍的に伸びたが、ここ数年その伸びが止まったという感がある。

アメリカのPGAツアーの場合、パーシモンヘッドのドライバーが使われていた1980年代の平均飛距離は、最も飛ばすプレーヤーでも270ヤード台であったが、2003年以降の記録を見ると、その数値は315~320ヤードになっている。つまりロングヒッターと呼ばれる選手の平均飛距離を比較すると、40ヤード以上伸びている計算になる。

ちなみに、1980年に一番の平均飛距離を誇っていたのがダン・ポールで274.3ヤード、トップ50の選手たちの平均は261.0ヤードであった。1995年、彗星のように現れたロングヒッター、ジョン・デイリーの平均飛距離は289.0ヤードだったという。

2000年に初めて平均飛距離300オーバーを記録したのは、やはりジョン・デイリーで301.4ヤードだった。このとき2位だったのがゴルフ界の新星タイガー・ウッズで294・8ヤードだった。以後、2002年までデイリーがただ一人300ヤードオーバーだったのだが、2003年にはいきなり9名が300ヤードオーバーヒッターが誕生する。

ちなみに昨年の平均飛距離ナンバー1はダスティン・ジョンソンで317.7ヤード、300ヤード以上を記録したのは26人。最大平均飛距離は2006年のバッバ・ワトソンが319.9ヤードだったという記録が残っている。

ゴルフ用具の進化は一段落した?

Johnnie Walker Championship at Gleneagles - Round One

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これらのデータを読み解くと、1995年から2005年までの10年間に、その飛距離は飛躍的に伸びたが、ボールとクラブの進化が一段落した2005年以降は、その伸びが見られなくなったという状況である。

1990年半ばまで、プロゴルファーたちの使用ボールはソフトでフィーリングが抜群に優れていたバラタカバーの糸巻きボールが主流だった。その後ウレタンカバーのボールが登場し、さらにタイトリストProV1で知られるマルチレイヤー・ソリッドコアタイプが普及して状況が大きく変わったのである。

もちろん、理想的な打ち出し角とバックスピン量の組み合わせを可能にした大型ヘッドやカーボングラファイト・シャフトの進化も飛距離アップに拍車をかけた。また、ゴルフスイングの分析用のビデオカメラやソフトウェアの登場、プロゴルファーの筋トレも当たり前の時代にもなったことが大きな要因であることは間違いないだろう。

もちろん、ゴルフは飛距離だけではない。ジム・フューリックやザック・ジョンソンのような平均飛距離が270ヤード台の選手も活躍できるのがゴルフの面白いところである。

日本のプロは世界の平均よりもマイナス15ヤード

Waste Management Phoenix Open - Round Two

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日本のロングヒッターはどうだろう。1995年はジャンボ尾崎の全盛期であるが、その平均飛距離は287.7ヤード、もちろん300ヤードオーバーは一人もいない。初めて平均飛距離300オーバーを記録したのが、2005年の小山内護ら2名。2013~2015年は0名である。

若干古いデータだが、2009年のマスターズ、各選手が思い切ってドライバーを引っぱたくオーガスタ・ナショナルの5番ホールで最も飛ばしたのが、バッバ・ワトソンで349ヤード、次いで、フィル・ミケルソンが337ヤード、タイガー・ウッズが322ヤードだった。

日本人の参加選手、石川遼が306ヤード、片山晋呉300ヤード、今田竜二288ヤードという記録から、大雑把ではあるが、日本のトッププロの飛距離は世界レベルよりもマイナス15ヤードといったところだろうか。ただし、1995年のジャンボ尾崎はナンバー1のジョン・デイリーにわずか1.3ヤード及ばなかったが、遜色のない記録であった。

女子プロたちも負けてはいない。女子で最も飛ばすといわれているミシェル・ウィーやブリタニー・リンシコムは270ヤード以上飛ばすが、これは飛ばない男子プロとほぼ同じだ。かつての賞金女王のアニカ・ソレンスタムやロレーナ・オチョアも260オーバーの飛距離を誇っていた。

日本の女子では全盛期の福嶋晃子がぶっち切りで飛ばしていたが、母となり復帰した最近のショットを見てもまだまだ健在である。渡邉彩香、森田理香子、穴井詩、三塚優子、服部真夕ら260オーバーの世界レベルの日本が誇るロングヒッターたちである。

さて、アマチュアゴルファーの皆さんはこれらのデータをどう感じたのでしょうか?

ボールとクラブの進化が一段落したといえども、そこはゴルフの腕と共に日進月歩。飛距離アップというロマンを求めて、永遠の旅は続けることでしょう。それがゴルファーですものね。