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2015女子ゴルフ賞金ランキングが確定。好調な女子ゴルフ界の今後の課題とは?

今年も男女とも国内ツアーの全日程が終了しました。

TV中継やニュースでプロの活躍を見られないトーナメントオフ期になりますので、来シーズンの開幕までゴルファーにとって寂しい期間となります。

そんな来シーズン開幕を心待ちにしながら、まずは、今年度のツアーを振り返ってみましょう。

女子の話題はなんといってもイ・ボミ選手の活躍です。

今季7勝、年間獲得賞金がLPGAツアー初の2億円を突破する2億3049万7057円と、圧倒的な強さをみせました。さらにこの賞金額は、伊澤利光プロが持っている男子ゴルフツアーの歴代1位の年間獲得賞金額(2億1793万4583円)をも上回る快挙となっています。

「スマイルキャンディ」という愛称を持つイ・ボミ選手の笑顔を、今季は何度も目にすることになりましたね。

そうしたイ・ボミ選手をはじめとする、今シーズン活躍した女子ゴルフ選手や関係者の表彰を行う「LPGAアワード2015」が12月17日(木)に都内ホテルで開催されました。

賞金ランキング1位(賞金女王)の他、Mercedes-Benz Player of the Year(ツアーでの順位や出場ラウンド数をポイントに換算し、年間を通じて最も顕著な活躍を見せたプレーヤーに与えられる賞:メルセデスランキング)、平均ストローク1位、新人賞、敢闘賞などが表彰されています。

ここで、イ・ボミ選手はメルセデスランキング1位、賞金ランキング1位、平均ストローク1位の三冠を達成。新人賞は堀琴音選手、敢闘賞は表純子選手が獲得しています。

では、まず賞金ランキングから見ていきましょう。

LPGA 2015年度 年間獲得賞金ランキング一覧表

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※LPGA賞金ランキング対象トーナメント(公式戦、公認競技、特別公認競技)での年間獲得賞金ランキングより、上位抜粋

なんといっても賞金ランキング1位のイ・ボミ選手です。トーナメント全37試合中、32試合に出場。そのうち7回で優勝を飾りました。優勝を含めたトップ10入りが23回、予選落ち無しの素晴らしい成績です。

日本ツアーに参戦してからの賞金ランキングは、2011年の40位、2012年2位、2013年7位、2014年の3位でしたが、今シーズンは念願の賞金女王に輝きました。

さらに、Mercedes-Benz Player of the Year(メルセデスランキング)、平均ストローク(70.1914)でも1位を獲得し、3冠に輝いています。本人にとっても満足のいくシーズンであったことは、間違いのないことでしょう。

来シーズンは日本ツアーに参戦しながら、リオデジャネイロオリンピックを目指して世界ランキングを上げていくことが目標となりそうです。

では、2位以下に目を向けてみます。

2位は台湾出身のテレサ・ルー選手です。

開幕戦の「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」で優勝し、LPGA公式戦「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」で優勝するなど、要所での活躍が目立ちました。

今シーズンの優勝は計5回、トップ10入りが17回と、イ・ボミ選手には及ばないものの、大変素晴らしい活躍をみせました。

2010年から日本ツアーに参戦し、賞金ランキングは2013年3位、2014年2位と続き、今シーズンも2位と、近年は常にトップの常連です。

賞金ランキングに加え、メルセデスランキング、平均ストローク(70.2626)共に2位と大変悔しい結果ですので、来シーズンに期するものがあるでしょう。飛距離も併せ持つ力のある選手ですので、今後も注目です。

3位は元世界ランキング1位の申ジエ選手です。

米国女子ツアー10勝を誇る実力者ですが、2014年からは日本ツアーに本格参戦し、同年度賞金ランキング4位、今シーズンは3位と、さすがの安定感です。

今シーズンの優勝は3回、トップ10入りが18回となっています。

以下、4位は昨年度の賞金女王のアン・ソンジュ選手、5位は李知姫選手です。

このように、1位から5位までに日本人選手が入り込めないランキングとなりました。韓国勢の強さはもう何年も言われていることですが、5位までが日本人選手以外で占めるのは初の事態です。

選手ひとりひとりの成績が全てですから、国籍は全く関係がありませんが、日本人選手の不甲斐なさを改めて露呈する結果となってしまいましたね。

では、その日本人選手筆頭をご紹介しましょう。

賞金ランキング6位に入ったのは、渡邉彩香選手です。

172cmの長身から繰り出す豪快なドライバーを武器に、存在感のある活躍を見せてくれました。

「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」2日目にはアルバトロスとイーグルを同日に達成するなど、その飛距離を活かした偉業はインパクトのあるものでした。

参考記録ではありますが、「WORLD LADIES CHAMPIONSHIPサロンパスカップ」では289ヤードを記録するなど、これまでの女子プロにはない魅力で、今後非常に期待される大型選手です。

34試合に出場し、優勝は2回。年間を通しての活躍を表すメルセデスランキングで3位に入るなど素晴らしい成績ですが、今後さらに飛躍を目指すなら、シーズンを通しての安定した成績を残すことが必要です。

今シーズンの予選落ちは6回ですので、このあたりの確率を改善するのが今後の課題となるでしょう。

以下7位は2007年賞金女王の上田桃子選手、8位は菊地絵理香選手。9位は2006年の賞金女王の大山志保選手、10位は成田美寿々選手と続きます。

では、もう一度賞金ランキングをみてみたいと思います。

1位 イ・ボミ(27)
2位 テレサ・ルー(28)
3位 申ジエ(27)
4位 アン・ソンジュ(28)
5位 李知姫(36)
6位 渡邉彩香(22)
7位 上田桃子(29)
8位 菊地絵理香(27)
9位 大山志保(38)
10位 成田 美寿々(23)
11位 酒井美紀(24)
12位 笠りつ子(28)
13位 原江里菜(28)
14位 鈴木愛(21)
15位 飯島茜(32)
16位 吉田弓美子(28)
17位 藤本麻子(25)
18位 藤田光里(21)
19位 穴井詩(28)
20位 森田理香子(25)
※()カッコ内は2015年12月現在での年齢です。

6位から20位まで、日本人選手が占めました。年齢も20代前半の若手から、ベテランまで幅広いです。若手の台頭とともに元賞金女王の名前も見受けられ、非常に興味深いランキングとなっています。大山志保選手の息の長い活躍も見逃せませんね。

また、上位5人の韓国・台湾選手より若い渡邉選手、成田選手、鈴木選手など、成長著しい人材も揃っています。こうしてみると、悲観する材料ばかりではないようです。来年は是非とも、さらに大躍進の選手が出ることを期待したいと思います。

主なLPGAアワード2015受賞者

<LPGA Mercedes-Benz Player of the Year(メルセデスランキング)>
第1位 イ・ボミ選手

<賞金ランキング>
第1位 イ・ボミ選手

<平均ストローク>
第1位 イ・ボミ選手

<新人賞>
堀琴音選手
※2014年にプロ転向し、2015年は33試合に出場。賞金ランキング33位で初シード権を獲得

<敢闘賞>

表純子選手
※2011年の開幕戦からの全175試合に連続出場更新中

来年度のツアー日程発表

さて、LPGAアワード2015が開催された同日には来年度のトーナメント開催日程の発表も行われ、LPGAツアー開催数は「ニッポンハムレディスクラシック」(北海道開催)が増え、計38試合となりました。

また、賞金総額は過去最高額を更新する35億2千万円になり、好調な女子ゴルフ界の勢いは止まりません。新たなスポンサーを獲得し、さらに規模を拡大したLPGAツアーは、それだけ女子プロの活躍の場が広がることになります。

これだけ追い風に乗っている女子プロゴルフ界ですが、その将来には少し疑問もあります。ここではあえて、問題点を見ていきたいと思います。

女子プロの知識不足

長く不遇の時代を過ごしてきた女子プロゴルフの世界は、前LPGA会長の樋口久子氏のもと、ありとあらゆる面の改革を行ってきました。

その中の一つが「プロゴルファーの意識改革」です。スポンサーに対する配慮など、これまであまりプロが重んじてこなかった面の強化を図りました。

スポンサーとプロの直接の交流の場であるプロアマ戦や前夜祭など、その必要性を説き、プロとして誠意をもった対応を教育しました。

また、トーナメント会場を訪れるファンのためにも直接的な交流の場を設けるなど、女子プロならではの戦略も、非常に功を奏したといえます。女子プロツアーの現在の人気は、そうした小さな積み重ねによるところも多分にあるのです。

そういった取り組みの一つに、スピーディーな試合運びがあります。2012年には試験的ながら、スロープレーにはイエローカードを導入するなど、スロープレーに対して厳しく取り組んできました。

ファストプレーはゴルフの基本ですし、テンポよく打っていく様子は実に小気味良いものです。男女両方のトーナメントを観戦すると、違いがよく分かると思います。

女子はボール地点に到達してから、打つまでのテンポが非常に早いのです(逆にボールに到達するまでは男子の方が早いのですが)。しかし、そうしたテンポの良い流れに乗るために、プロの判断が疎かになっている気がします。

多少乱暴な言い方になるかもしれませんが、ルールの知識が不足しているプロが存在するという事です。男子に比べ競技委員を呼んでの判断をする場面も非常に少ないですし、女子プロならではの「流れを止めてはいけない」という周りに遠慮した光景も見受けられます。多少曖昧でも、プレーを続行する傾向があるように思うのです。

今季に限ったことではありませんが、ルールの知識不足が原因でペナルティや失格を言い渡される場面は、女子に多いのです。しかも、その中にはギャラリーやテレビ中継を見たファンからの指摘も含まれます。

高度なプレーで魅了するのがプロですが、プロである限り、ルールを熟知しているのが当然です。ギャラリーに指摘されるのは恥ずべき問題でしょう。今後さらにプロひとりひとりがレベルアップを図るには、こうした問題ももっと真剣に考えるべきだと思います。

世界を見据えたツアー日程

女子のトーナメントに多くスポンサーが付くのは、そのトーナメント規模にもあります。

男子が4日間競技なのに対し女子は3日間競技が多く、4日間競技は来季の2016年度は全38試合中11試合です。それだけ賞金総額も運営資金も少なく済みますので、新規参入や継続がしやすいという利点があるのです。

しかし米LPGAツアーでは、そのほとんどが4日間競技で開催されます。つまり、4日間を戦えるフィジカルやメンタルがないと、世界では通用しないのです。

この点は日本のLPGAツアーも検討していて、4日間競技を増やしたい意向ではあるようです。しかし、実際現存のトーナメントの競技日数を増やすことは、前述の通り賞金総額や運営資金のアップにつながる問題ですので、スポンサーを獲得し、継続させるためには簡単にクリアできる問題ではないでしょう。今後女子プロゴルファーのレベルの底上げを図るためには必要不可欠ですが、現状その計画はなかなか進まないのです。

来年はリオデジャネイロオリンピックも開催され、112年ぶりに行われるゴルフ競技にも注目が集まっています。今後も海外で通用する人材を多く排出するためにも、ツアー日程についても進展してくれることを願っています。

おわりに

マスコミの注目度も高く、華やかな女子ツアー。今年は特にイ・ボミ選手の活躍により、その愛らしいルックスと圧倒的な強さがもてはやされました。イ・ボミ選手だけでなく、日本へ来て日本語を覚え、慣れない日本での生活をもろともせず、ツアーで活躍する外国人選手には感心するばかりです。

その中でも2011年、2012年と韓国の賞金女王に輝き、今シーズンから日本ツアーに本格参戦したキム・ハヌル選手は、今後の注目の存在です。「マンシングウェアレディース東海クラシック」ですでに1勝を挙げ、賞金ランキング23位でシードを確定させています。

170cmの長身で、モデルのようなスタイルの良さと愛らしい顔立ちで、韓国では「スマイルクイーン」と呼ばれることも。2015LPGAアワードの表彰式でも韓国の民族衣装をアレンジしたドレスが美しく、話題を集めました。来年、日本ツアーに慣れた彼女が活躍するのは間違いないでしょう。

こうした台頭してくる外国人選手の存在は、日本人選手にとっては脅威でしょう。しかし、日本人選手の奮起を促す意味では、そうした存在をありがたいと思わなくてはいけません。

国籍に関係なく、たくさんの人材がツアーを盛り上げてくれることでしょう。人気や好感度を高める事に成功した女子ツアーは、今度は質の向上を求める時期に来ています。

日本の女子ツアーを長い間けん引してきた横峯さくら選手は、満を持して米LPGAツアーへ挑戦しました。

現在は日本と同じようにアメリカでも韓国勢が席巻していますが、日本人選手の中にも宮里藍選手や宮里美香選手のように海外でも通用する選手が、今後多く排出されることを願っています。

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