ゴルフ場の求人広告を見て思う~男がキャディをやってもいいの? | ゴルフ動画マガジン GOLFES
GOLFES

見つかる、楽しむ、あなたのゴルフライフ。

ゴルフ場の求人広告を見て思う~男がキャディをやってもいいの?

男女雇用機会均等法により、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」とされており、特別な理由がない限りは、求人広告で男性限定や女性限定に募集することが禁じられています。

それに伴い、キャディの募集でも「女性のみ希望!」と書くことはできません。しかし、実際はほぼ女性が従事していることは、皆さんよく御存じだと思います。

もちろん男性キャディがいないわけではありません。また、研修生やアルバイト学生など、男性にキャディをしてもらった経験がある方もいらっしゃるでしょう。しかし、その数は圧倒的に少なく、ほぼ女性の職場というイメージではないでしょうか。

なぜ、キャディの仕事は女性が行うのでしょうか。かなりの重労働であり、しかもゴルフというスポーツの男女比率を考えても、ゴルフ経験のある男性の方が向いているような気がします。

そこで今回は、キャディという職業の特性について考えてみたいと思います。女性キャディだからこその良さと苦労、そして男性キャディの難しさをご理解いただければと思います。

キャディはルールで認められた存在

まずはキャディという存在についておさらいしておきましょう。キャディとは「規則に従ってプレーヤーを助ける人」のことで、「助ける」の中にはクラブを運んだり、扱ったりすることも含まれています。

また、キャディの持ち運んでいる携帯品は、そのプレーヤーの携帯品とみなされますので、キャディの行動は、プレーヤーの行動と連動していると言っていいでしょう。

このようにキャディはルールで明記された存在であり、プレーヤーと共に行動する唯一の協力者なのです。

これは複数人でひとりのキャディを共有している時も同じで、キャディがその中のプレーヤーの誰かに関連している行動をしている時は、そのプレーヤーのキャディとして扱われます。キャディはプレーヤーの分身であり、プレーヤーはキャディの行動にも注意を払う必要があるのです。

ルールとしてはこのような存在ですが、この中で、男性もしくは女性に向いていると思われるような表記はありません。もっとも欧米ではキャディは男性が主に行っており、女性がキャディの大半を占めるような地域は、日本をはじめとする主にアジア圏に限られるのです。

また、プロの世界では、日本ツアーでも男性キャディの数が圧倒数を占めています。ではなぜ日本のゴルフ場では、キャディは女性の仕事になっていったのでしょうか?

キャディの仕事とは?

次は、キャディの具体的な仕事内容から考えてみましょう。キャディの仕事は大きく3つの項目に分かれます。

①プレー進行の補助:カート操作やクラブ運搬、受け渡し、バンカー均しの援助や、ボール拭きなど、プレーヤーのプレーの進行をスムーズに行うための補助的作業

②情報提示とアドバイス:コース説明や、残距離計測、風や傾斜の判断、グリーン上のラインアドバイスなど、プレーヤーのコース戦略の助言

③プレーヤーの精神的サポート:プレーヤーがストレスなくゴルフを楽しめるように寄り添い、また応援や声かけなどをし、精神的にサポートするサービス

だいたいこのような内容になりますが、実はこの中で最も重要な項目は③のプレーヤーの精神的サポートになります。意外に思われるかもしれませんが、プレーヤーがストレスを溜めることなくゴルフに集中できる環境を提供することこそ、キャディの最も重要な役割なのです。

もちろん3つのバランスが取れていることが「良いキャディさん」の条件になりますが、目に見えないサポートこそキャディならではのサービスと言えるでしょう。

キャディに向いている人材は?

ゴルフ場

では、キャディの役割が分かったところで、どんな人がキャディに向いているのか考えてみましょう。

まずは体力です。18ホールをプレーヤーと共に行動しなければなりませんので、それなりの体力が必要になります。また、プレーヤーのプレーの進行を補助するためには、キャディの素早い行動が求められます。

カートを動かしながらボールの行方を追い、最適な順番でクラブを受け渡し、プレーヤーを補助しなければなりません。スピードと判断力、そして持久力が求められます。

次にゴルフの知識です。これは、キャディになる前にはなくても構いませんが、いざキャディになった際には、きちんとしたルールやマナーを把握しておく必要があります。

また、プレーヤーの助けになるようなアドバイスを行わなくてはなりませんので、常日頃からコースの勉強をする努力が求められます。

最後に奉仕の精神です。

仕事ですから当然といえば当然なのですが、プレーヤーに対して「いいプレーができるように尽くそう」という気持ちがないとキャディとしては失格です。常に黒子としてプレーヤーに奉仕する気持ちを保ち続ける事こそ、キャディの最大条件でしょう。

いかがでしょうか?キャディって大変ですよね。しかしこれだけでは女性がキャディに向いているという理由にはなりません。

男性の方が体力的には優位ですし、ゴルフ経験のある方も女性より多いでしょう。さらに女性以上にきめ細やかな心配りができる方もたくさんいらっしゃると思います。

しかし、それでもやはりキャディは(日本では)女性がほとんどです。なぜだと思いますか?

日本でのキャディの普及の時代背景と、現在

日本でゴルフ場が爆発的に増え始めたのは1970年代から1980年代にかけてになりますが、キャディ付きプレーが当たり前だった時代、ゴルフ場はキャディの数を揃えるのに苦労していました。ゴルフ場は丘陵地に造られることが多く、都心から離れた場所にあることが多かったからです。

そこで、地元の農家の女性たちに、繁忙期を除く時期に働いてもらえるように声を掛けました。その頃は、車を買い与えるなどかなりの厚待遇で採用したようです。そうして集まった女性たちがキャディとして働き、現在も(特に地方の)女性の比較的高収入な職業として続いています。

とはいえ、どんどん交通も便利になり、また求人もネットなどで広く告知するようになりましたので、現在は地元の女性ばかりが働く環境でもありません。しかしそれでも男性を採用しないコースはたくさんあります。

実はキャディが女性ばかりになる最大の理由は、キャディの仕事内容ではなく、プレーヤーの心情を考慮したものだと思われます。

前述のようにキャディの仕事の最大のポイントは、精神的サポートです。男性プレーヤーの数が圧倒的なゴルフでは、もちろんお客様の大半が男性です。つまり、男性の気持ちを支えるような行動が求められるのです。

もし、自分がプレーをしていてミスショットをしてしまった場合、女性キャディが、「大丈夫です!次、頑張りましょう!」と笑顔でフォローしてくれたらどうでしょうか?わざわざそれを否定して、拒否する方はいらっしゃらないと思います。「そうだね、頑張るよ!」と答えてくれるでしょう。

しかし、もし男性キャディが同じことをしたとしたら、いかがですか?もちろん「ありがとう」と前向きに受け取る方もいらっしゃると思いますが、なんだかプライドを傷つけられたような、「上から目線」に感じる方もいるでしょう。

このように同性キャディからのアドバイスや応援を素直に受け取れない多くの男性プレーヤーの気持ちが男性キャディを敬遠し、女性キャディを望む理由です。

また、女性キャディの方が、自分が優位に立て命令しやすいと考える気持ちもあるかもしれませんね。実際に「男性キャディだと緊張するからリラックスできる女性キャディの方がいいなぁ」と思っている方は多いのではないでしょうか。

実はキャディの立場からも同じことが言えます。キャディは基本的に女性のお客様が苦手です。これは、そのお客様との相性というより、お互いに気を使ってしまうのです。女性同士、気持ちや行動が分かってしまうからこその感情です。

女性プレーヤー側は、ほぼ女性キャディしかいませんので「そんなものだ」と思っているかも知れませんが、それでも非常に気を使ってくださっているのを感じます。ですから、男性プレーヤーも男性キャディに対して「使いにくい」と感じる部分があるのではないかと察します。

もちろん、これはひとつの考え方でそれ以外にも理由はあると思いますが、日本で女性キャディの文化が定着してしまったのには、こうした背景があると考えます。

それでも、求人広告を見て「キャディをやってみたいなぁ」と思っている男性の方は、プレーヤーの「今日は女性キャディじゃないんだ」という視線を感じることが多々あるかと思いますが、是非トライしてみてください。

おわりに

キャディの仕事は大雨が降っても、炎天下でもコースへ出なければなりません。体力的にも厳しく、膝や腰を痛めてキャディを辞める方はとても多いです。また、プレーの前後に非常に重たいゴルフバッグを2つも3つも抱えて移動しなければならないこともあり、「女性の仕事じゃない」と思うこともしばしばです。

さらに長時間の18ホールをお供するキャディは、時にお客様の理不尽な言い分にも耐えてサポートしなければならず、サービス業としての業務も苛酷です。しかも逃げ場もありません。

さらに女性だからこそ味わう屈辱的な扱いは、キャディさんなら誰もが経験していることだと思います。

男性キャディが各ゴルフ場でもっと増えれば、日本でのキャディの役割や立場が変化してくるかもしれません。みなさん、男性キャディはいかがですか?

関連記事