若手ゴルフ場経営者(セブンハンドレッド 小林忠広さん)にインタビュー
ゴルフ場経営を行う株式会社セブンハンドレッド 代表取締役社長 小林忠広さんにこれからのゴルフ場についてインタビューをしました。
目次
インタビュー動画
※2019年9月9日撮影
自己紹介
小林 忠広と申します。株式会社セブンハンドレッドの代表取締役社長に今年4月から就任し、このセブンハンドレッドというゴルフ場を栃木県さくら市で運営しています。
セブンハンドレッドを経営される経緯や背景について
セブンハンドレッドクラブは来年2020年で開場40周年を迎えるのですが、もともと僕の祖父と父がこのゴルフ場を作りました。若い感性で運営した方がベターとの父の考えで継ぐということを決意して、現在セブンハンドレッドクラブの運営をしています。
今後チャレンジされていく想い
もともと僕自身は小さいころはゴルフをした経験があるものの、小学生からはラグビーをやっていました。高校での全国大会である花園に行くということを目標にラグビーに熱中していました。自分自身の全国大会にかける思いを仲間が認めてくれ、ラグビーは決してうまくなかったにも関わらず、キャプテンに選ばれた経験から、チームとしてどのようなビジョンを掲げるかが大切だと学びました。
どこにチームとして向かうか、すなわちビジョンが大事だということを考えた時に、僕らのセブンハンドレッドクラブはゴルフ場としてはとても魅力的だが、俯瞰してみるとセブンハンドレッドというチームとしてビジョンをもっていないことに気づきました。また他のゴルフ場でも、ビジョンをもっているところって少ないということが分かりました。
そこでまず、僕たちが会社としてどこを目指していくかを社員とワークショップや1on1を通じて話し合いました。
「お客様に楽しんでいただきたい」や「楽しく働きたい」、「笑顔で仕事をしたい」などの言葉を集めました。お客様に楽しんでいただくのはもちろん、従業員の想いも含め、僕たちとしてどこを目指していけばよいのかを話して決めました。
楽しく働きたいとか笑顔でやりたいとか。そういった従業員の想いだったりとか。お客様に楽しく来て頂きたいというところがあったので僕たちとしてどこを目指していけばよいのかを話して決めました。
2019年よりセブンハンドレッドでは、ビジョンとして「皆が幸せを実感できるゴルフ場」を掲げています。ゴルフ場で皆が幸せっていうと少し遠く感じるかもしれないですが、このビジョンに至るまでに一つのきっかけがありました。
もともとセブンハンドレッドを継ぐか継がないか迷ってた時に、縁あってセブンハンドレッドの地元であるさくら市の教育委員会の方と話す機会がありました。さくら市の教育という観点で話を伺ってみると、子どもの走る場所がないとおっしゃっていました。地域の願いや課題にゴルフ場での活動を通じて貢献できるのではないか、ゴルフ場ってもっと他のことにも使えるんじゃないかと思い始めました。
僕たちが地域や社会に貢献できることは何かなと考えた時に、地域の方やゴルフ場を利用してくださるお客様はもちろんですが、いままでゴルフ場に足を運んだことのない方にもこのゴルフ場の可能性や魅力に触れていただくことで、ゴルフ場を使って新しい取り組みに発展できると考え、これからの社会に求められるカタチのゴルフ場にしていく気持ちを持ちながら事業承継を決めました。
今後のゴルフ場について
前提として、少し前の時代だと自社や一社で物事を行うという時代だったと思います。セブンハンドレッドとして、自分達でこんなことをやりますとか、こんなサービス始めましたっていうのが少し前までのビジネスの潮流だと思うんですけど、これからはコラボレーション、共創(ともにつくること)だと思っています。
僕が続けていたラグビーには「ワン・フォーオール・オール・フォー・ワン」という言葉があります。この考えこそ、まさに今の時代やゴルフ場に求められている考えだと思っています。一緒に創っていくというスタンスに立ち、ゴルフ場の場所を提供したり、ゴルフ場だからできることを色々な人と共に進めていこうと思っています。実際進めている例として、さくら市教育委員会の「課外スクール」においてゴルフ場を利用いただいたり、フットゴルフ協会さんとのフットゴルフワールドカップ2020年の開催や、電動キックボードのLuupさんとの連携などの取り組みがあります。
ゴルフ場という少し規制が厳しい、時に時代錯誤だったりとか、なかなかイノベーションがおきてないといわれる現場だからこそ、新しいことをやることで色々な方に目にふれてもらえたり、新しい風をふかせることができる可能性があるなと思っています。
フットゴルフについて
僕自身がゴルフ場の経営者としてこれから取り組んでいくことは、セブンハンドレッドのビジョンに基づき、ゴルフ場に来て下さるお客様や従業員、そして環境にも幸せを実感してもらうことです。中でも、ゴルフ利用のお客様はもちろん、ゴルフ場に足を運んだことがない方に来ていただくためにも、新しいことに取り組むことも大事な挑戦だと思います。会員様や普段来てくださるお客様がいて成り立っている弊社ですが、普段から現場を仕切っているスタッフみんなの支えがあってこそセブンハンドレッドは成り立っています。ゴルフ場はきれいに整った環境があるので、もっと沢山の方々に、魅力に触れていただけたら、また来たいなって思ってもらえると思っています。その中で、サッカーという、人口の多いスポーツとゴルフを掛け合わせたフットゴルフには、可能性があるとも感じています。ゴルフとサッカーのコラボレーションの形がフットゴルフであり、フットゴルフ協会さんと縁あって、取り組みを始めました。
もともと祖父と父は東京在住です。このセブンハンドレッドに縁あってこの地に構えることとなってから、山を切り拓くところから始めました。それだけ聞くと壮大だなと思うんですけども、一方で地域の方の視点に立ってゴルフ場を見てみると、里山を切り拓いて、入山するのを有料化して、一般の人が入りづらい場所にしているとも見えてきます。そのゴルフ場が今や日本全国にある。里山や、地域の新しいフィールドとして色々な方々に使っていただくことになると、日本全国のゴルフ場が、日本にとってもっと良い資産になるんじゃないかなと僕は思っています。特に地方ですと複業施設がありますが、晴れた日はゴルフ場に行って雨の日は複業施設に行くというような存在にゴルフ場がなると、もっと楽しい活動だったりライフスタイルを世の中に提示できると思っています。僕たちはそんな社会の起点になることを目指していきたいなと思っています。
働きやすい環境づくり
ゴルフ場は会員様始め、来場されるプレーヤーの皆様により成り立っています。来場者様のためのサービスはどのゴルフ場も年々充実度を増していると感じますが、一方で、従業員の働き方や、働きやすい環境作りが遅れてるなと感じています。
GoogleのProject Aristotleで提唱された心理的安全のような、安心安全でなんでも話せる環境づくりが大切だと思っています。ゴルフ場のオーナーが1つの判断・独断で物事を進めるのではなくて、現場の従業員の方がお客様から求められるニーズに答えていく、もっと言えばお客様と従業員が一緒に新しいサービスや在るべきゴルフ場の姿を共創していくことが、次の時代のゴルフ場運営で求められていると思っています。
僕は働きやすいゴルフ場の環境作りに、日本で1番取り組んでいきたいなと思ってるし、取り組めている感覚があります。従業員のみなさんの満足度を高める必要があると思います。、やりがいや、働きがいのある会社になるために、少しづつ社内の会話や相互理解のワークショップを増やしていきたいです。1on1のミーティングをやっている中で、従業員の方が少しづつ変わってきたって言ってくださったり、可能性を感じるというふうに言ってくださったりするのは個人的には大きな励みです。衰退産業って言われているようなゴルフ産業ですが、衰退するには理由があります。その理由に一つ一つ向かっていくためにも、従業員がチームとなる必要がある。そのために、働き方を変えていくことで、衰退産業の中でも延びていくことができるとこの頃、感じることができるようになっています。
ゴルフをしないという選択
あまりゴルフがうまくないってのもモチロンあるんですけれども(笑)。少しずつゴルフに打ち込んでいくと、面白いポイントがわかってきました。ちょっとづつ自分の打ち方に拘るようになり、スコアも上がってうまく回れるようになってきています。ただ、皆が皆ゴルフが上手い訳ではありません。ゴルフがうまくなると、逆にゴルフがうまくない方やゴルフから遠い方の気持ちがわからなくなると思っています。ぼく自身も、セブンハンドレッドでの仕事をはじめてから、ゴルフが上手くなる楽しさが少しづつわかってきている身です。自分だからこそ出せる価値を考えると、上手くなる楽しさっていう部分と、まったくゴルフの楽しさを知らない人の気持ちの両方が実感をもって分かるというところです。だからこそ、セブンハンドレッドをゴルフ好きな方以外でも楽しめる場所に出来ると思っています。
僕自身若い経営者というのもありますが、一方でゴルフを知らないでゴルフ場経営することによる自分自身の使い方もあると思っています。うまく組み合わせるために、僕はゴルフをやらないようにしようっていう言い訳をしています(笑)。
NPOなどの活動もやっているので、常に当事者であることが凄く大事だと思っています。ゴルフを盛り上げようとしたときに、ゴルフが上手い人が言っても「あなたは上手いからでしょ」って気持ちになっちゃうと思うんですよね。ゴルフが上手くない人が、ゴルフが面白いとか、逆にゴルフ場に来ることの魅力を伝えられたら、その方も興味を持っていただけるので。僕はそういう存在じゃなきゃいけないな、というように思っています。
僕たちセブンハンドレッドは、ゴルフをする方もしない方も楽しめるゴルフ場になりたいと思っています。