PGAツアーが徹底分析!気になるアノ選手の試合前ルーチン②ダスティン・ジョンソン編!
2015年のマスターズ。松山英樹選手が5位に入ったメジャー大会として日本人にとっても、大変印象に残る大会となりました。
優勝は2位タイでフィニッシュしたフィル・ミケルソン選手とジャスティン・ローズ選手や他の競合選手達の追随を許さず、圧倒的な強さでジョーダン・スピース選手がメジャー初制覇となりました。
ニューヒーローの誕生に、ゴルフ界が大いに盛り上がりました。しかし、2015年のマスターズでは特筆すべき記録がもう一つ、秘かに達成されていました。
その記録とは、マスターズが開催されたオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで初めてとなる、1ラウンドで3つのイーグル達成というものでした。
イーグルは通常パー5のロングホールを3打でホールアウトするとういもの。アマチュアの距離でもイーグルの達成は難しいのですが、プロのセッティングとなるとさらに難易度は上がります。
ジョーダン・スピース選手もこの年のマスターズではバーディーこそ4日間で28個も奪っていましたが、イーグルは一つもありませんでした。プロでもイーグルは頻繁に達成できるものではないのです。
さて、この1ラウンドで3つのイーグルという素晴らしい記録を達成したのが、2015年マスターズで6位タイに終わったダスティン・ジョンソン選手だったのです。ドライバーの飛距離はPGAツアーでもトップクラスのジョンソン選手。
試合前ルーチンの前に、まずは2016年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いた、ダスティン・ジョンソン選手の飛距離の秘密に迫ります。
方向性を犠牲にせず飛距離を出す秘密とは?!
ダスティン・ジョンソン選手のスイングにはかなり特殊なテクニックが含まれています。われわれアマチュアが参考にするには高度な技ですが、ここでジョンソン選手のシンプル&ダイナミックスイングを分析してみましょう。
まずは、ローリー・マキロイ選手とダスティン・ジョンソン選手のドライバー・ショットを比較できる面白いビデオをご覧ください。
ここで注目していただきたいのが、次の3点。
・トップ時の左手首の角度
・トップ時のクラブフェイスの向き
・ベルトの位置
それでは、この3点に注目してジョンソン選手のスイングを見てみましょう。
テクニック①:クラブフェイスを開かない!
マキロイ選手の手首の使い方は、トップで左手は手の甲側に少し曲がっています。その時クラブフェイスは約90°開いて、画面でいうところの右側を向いています。
これは、比較的われわれアマチュアゴルファーの打ち方に近いと言えます。
一方、ジョンソン選手の手首の使い方は、トップで左手首が手のひら側に大きく曲がっています。そして、トップのクラブフェイスを見てみるとほぼ真上を向いています。
ここまでフェイスを開かずにスイングするのはとても難しいのですが、その結果クラブヘッドの捻転が少なくなり、方向性をキープしているのですね。分かりやすく言うと、パターの延長線上のようにドライバーを使っているのです。
パターはテイクバックをする時にフェイスは開きません。ジョンソン選手はパターのテイクバック同様クラブフェイスを全く開かずに、そのままトップまで持っていっているのです。
当然、フェイスを開かないようにするには左手首を大きく手のひら側に折る必要があり、その為にはグリップもストロンググリップで握る必要が出てきます。
テクニック②:大胆な腰と肩の回転、そして膝の伸びをダイナミックに使う!
ジョンソン選手はクラブヘッドの動きをパターのように極限までシンプルにすることにより方向性を確保していることがわかりました。次は飛距離の秘密に迫ります。
クラブの動きは極めてシンプルですが、実はそのクラブをコントロールしている身体はというと、実にダイナミックに使っているのです。ビデオでも分かりますが、腰と肩の回転域の大きさ、また膝の使い方などシンプルなゴルフクラブの軌道とは対照的にとても激しい動きを見せています。
“腰は高さを変えないことが重要”といわれることが一般的ではありますが、ジョンソン選手の場合、インパクトの際にベルトの位置が上に跳ね上がっています。腰と肩の捻転で大きなパワーを蓄えて、インパクトの時にそのパワーを最大限に引き出すべく“膝の伸び”を利用しているのです。
つまり、クラブは極限までシンプルに使い、身体は極限までダイナミックに使うのがジョンソン選手のスイングなのです。
ヘッドがヘリコプターのように頭の周りをくるりと回って、顔の横で“ビシッ”と決まる独特のフィニッシュも、このシンプル&ダイナミックの組み合わせから生み出されているのかもしれません。
実際にジョンソン選手のスイングをイメージして素振りをして見ると、かなりぎこちないスイングとなってしまいます。
この打ち方は、強靭な肉体と柔軟性がないと成立し難いのであまりおすすめはできませんが、身体能力に自信のある方がスイング改造を考えているのであれば、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。もしかしたら、正確な方向性ととんでもない飛距離が同時に手に入るかもしれませんよ!
気になる試合前ルーチン!
さて、それでは“気になるアノ選手の試合前ルーチン②ダスティン・ジョンソン編!”のご紹介です。
冒頭にジョンソン選手の飛距離に注目して、独特のスイングフォームを解説いたしましたが、ジョンソン選手の試合前ルーチンは果して“シンプル”なのか?それとも“ダイナミック”なのか?
いかがでしたでしょうか?フルスイングの2倍のチップショットの練習をしていましたね。
さらに特筆すべきは、パットの練習を14球しかしていないというところです。本シリーズ第1回に登場したジョーダン・スピース選手はアライメント・スティックまで使って57球もパットの練習に費やしていたのに対して、とても対照的な試合前ルーチンでしたね。
実は、ジョンソン選手とスピース選手は2016年PGAツアーのホールごとの平均パット数ランキングにおいて1.710打で、同点1位だったのです。パッティングの名手達もウォーミングアップではこんなに違うのですね。
逆に、チップショットに関しては、ジョンソン選手は128球も打っていましたが、スピース選手はたったの17球でした!どちらかというとグリーン周りを得意としているスピース選手と、苦手としているジョンソン選手の調整の差が出たといえるかもしれません。
また、100-250ヤードのショットに関しては、ダスティン・ジョンソン選手は絶対の自信を持っています。そんな自分をよく分析した、合理的な試合前のウォーミングアップなのですね。
まとめ
ジョンソン選手の試合前ルーチンは、とてもダイナミックに見えましたが、皆様はどのように思われましたでしょうか?
正確なロングショットとはいえ、距離を出そうと思えばそれだけリスクも高まります。ジョンソン選手はドライバーのリスクをショットとパッティングでカバーしているという印象が強く残りました。
プロの世界でも、なんでも得意な“オールラウンドプレイヤー”という選手は実はあまり多くないのかもしれません。しかし、ジョンソン選手はショットやパッティングをベースに、ドライバーの飛距離と方向性の両立を貪欲に追求しているのです。
また、グリーン周りのアプローチも入念に調整をしてファーストティーに向かっていました。今回の試合前ルーチンからは、そんなジョンソン選手の戦略というか、性格が垣間見えたような気がします。
最後にジョンソン選手が優勝を果たした2016年の全米オープン選手権、ジョンソン選手のハイライトをご覧ください。
試合前ルーチンが、どのように活かされているのかを、是非その目でお確かめください。
(完)