トーナメントでは、練習ラウンドというものがあります。各選手はキャディと一緒に、入念にコースのチェックをします。

チェックする内容はだいたい次のような内容です。


* 第2打付近、第3打目付近の情況
* 各ハザードまでの距離
* ラフの深さ
* コースのアンジュレーション(でこぼこ)
* グリーン周りの情況

選手達は、これらの情報を元に戦略を考えているのです。

よく選手達がポケットから小さなノートのようなものを取り出して情況を確認しているのを見る事があります。あのノートには練習ラウンドでチェックしたホールごとの情報がびっしりと記入されており、1打ごとにどのように攻めるか、または守るかを選択しているのです。

選手達は練習ラウンドで収集した情報を頼りに、作戦を組み立てているのですね。

コースを逆に下見する人がいる?

SBS Tournament of Champions - Final Round

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さて、練習ラウンドの話が終わったところで、本コラムのテーマ“ちょっと変わったコースの下見~ゴルフ中継のスタッフ編~”に話を移しましょう。コースの下見や練習ラウンドは早い選手ですと日曜日から入ることもあります。そして、コースの下見をするのは選手達だけではないのです。

例えばアナウンサー、解説者、ゲストコメンテーターの方など。コースやグリーンはどの位置から攻めると簡単で、どの位置から攻めると難しいか、などしっかり取材をしてから臨場感溢れる中継を我々テレビの前のゴルフファンへ届けてくれているのです。

そんなスタッフの中に、少し変わったコースの下見をする人がいます。その人の下見はなんと“コースを逆にまわる”のです!つまり18番ホールのグリーンから始まり、1番のティーグラウンドで終わるのです。

さて、ここで問題です。この人はゴルフ中継においていったいどんなお仕事をしている方なのでしょうか?

ヒント:この人の仕事は各ホールの“グリーン側から見た景色”を覚える必要がある。

正解はこの後すぐ!

“グリーン側から見た景色”を覚える必要がある人とは?!

The Senior Open Championship - Day Two

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さて、お答えは分かりましたでしょうか?それでは正解を発表いたします。

その人の仕事は、スイッチャー(画面を切り替える仕事)でした!

このスイッチャーという方のお仕事ですが、いくつものカメラから同時に送られてくる映像を、ディレクターの指示どおりに画面に映し出さなくてはなりません。

「17番の2打目!」

「8番のティーグラウンド!」

「12番のグリーン!」

などなど、似たような景色が映っているいくつもの画像の中から、すぐに指示通りの場面に切り替えなくてはなりません。スイッチャーのお仕事はとても大変なのです。テレビで見ているとあまり気がつきませんが、ティーグランド側から見る景色と、グリーン側から見る景色ではまったく違います。

例えばフェアウェイバンカーですが、ティーグラウンドからみると大きく口を開いているように見えますが、グリーンから見るとまったく見えなくなることがあります。つまり、ホールの個性が消えてしまうのです。

BMW PGA Championship - Day One

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ところが、ゴルフの中継において画面に映し出される映像の多くは“グリーン側”から見ている景色なのです。具体的に説明すると、選手が打つまではティーグランド(選手の後ろ)から映像が流れますが、打った後はグリーン側に設置されたカメラで追っているボールの映像に切り替わります。

つまり、選手が打った直後にグリーン側からの“コースの特徴が分かりにくい”映像を見て、ボールを追っているカメラの画像にスイッチしなくてはなりません。ゴルフ中継では当たり前の映像ですが、実はこれ、かなり高度なテクニックなのです!

こういったスイッチャーさんの“職人技”によって、迫力のあるゴルフ中継が成立しているのですね。

次にゴルフ場でプレーをする時には、グリーンからティーグラウンドを振り返ってみてください。同じホールなのにティーグラウンドで見た意地悪そうな表情は消えて、優しく穏やかな景色が広がっているはずです。

(完)