PGAツアーが徹底分析!気になるアノ選手の試合前ルーチン③バッバ・ワトソン編!
- 2017.02.23
- トピック
打ち終わった後に両手を頭の上に高々とあげて、クラブのシャフトが頭の上を通過することもある豪快なスイングが魅力のサウスポー。バッバ・ワトソン。
本名ゲーリー・レスター・ワトソン・ジュニア/Gerry Lester Watson Jr.
“Bubba(バッバ)”は“大きくたくましい男”という意味のニックネームです。このニックネームは元NFL(アメリカのプロフットボールリーグ)の名ディフェンスとして活躍し、引退後は映画「ポリスアカデミー」シリーズの“ハイタワー”役で大人気者だった故バッバ・スミス氏(本名:チャールズ・アーロン・スミス氏)も採用していました。
バッバ・ワトソン選手はそのニックネームに恥じない191cmの巨体を活かして、PGAツアーでも屈指の飛ばし屋として知られています。
2016年シーズンは世界ランキングを前年より4つ落として10位でのフィニッシュとなりました。賞金ランキングに反映されるトーナメントでの優勝は1回と、彼の潜在能力からすると“平凡”な1年となってしまったかもしれませんが、その存在感は更に光を増しました。
そこで“気になるアノ選手の試合前ルーチン”のシリーズ第3弾は、バッバ・ワトソン選手をご紹介させていただきます!
目次
ファニー・ガイ!バッバ・ワトソン?!
ワトソン選手と言えば、ゴルフの実力もPGAツアーでトップクラスですが、“ファニー・ガイ”としては間違いなくナンバー1でしょう。他のツアープロに「バッバ・ワトソンってどんな人?」と聞くと、こんな答えが返ってきます。
―ロン毛の左利き
―変わり者
―ピンク靴下のロングヒッター
―面白いヤツ
と、あまりゴルファーとしての話題は取り上げられません。極めつけは“バッバはバッバさ!”と大笑いされる始末。
以前“ゴルフカートの進化が止まらない?!バッバジェットってなんだ?!”でもお伝えいたしましたが、ワトソン選手の発想には遊び心がいっぱい詰め込まれていて、とても愉快な男なのです。
ゴルフに関してもコーチについたことはなく、独自の理論を基に現在のスイングに辿り着いたというかなり変わった経歴の持ち主なのです。たしかに見た目はとてもワイルドでお手本にするには難しいスタイルではありますが、そのスイングが理論的に間違っていないということはワトソン選手の優秀な成績が証明しています。
また、お父様を癌で亡くしたことをきっかけとして、チャリティ活動にも積極的に携わるようになります。そのもっとも代表的なものが、皆さまご存知ワトソン選手の使用している“ピンクドライバー”です。
一見、ゴルフ場にはあまり向いていない派手すぎる色のドライバーに見えます。しかし、あのドライバーは面白好きのワトソン選手が奇をてらって使用しているのではないのです。実はあのピンクドライバー、乳癌撲滅の「ピンクリボンキャンペーン」から発想を得たワトソン選手がクラブ契約を結んでいるピン社に制作を依頼したものなのです。
当初のモデルは全世界5000本限定で発売され、売上1本につき60ドル(約7000円)が、PING社から「バッバ・ワトソン基金」に寄付されました。
PGAが分析しているスタッツの意味とは?
ただ面白いだけではなく、チャリティにも積極的に参加している心優しいバッバ・ワトソン選手ですが、試合となれば話は別です!
ワトソン選手が勝つ為に行なっている試合前ルーチンをご紹介させていただきますが、その前にPGAツアーが詳細に分析している“スタッツ”について調べてみました。このスタッツを理解して見ると試合前ルーチンは一味違ったものとなりますので、一緒にお勉強してみましょう!
スタッツ(stats)の意味はstatistics(統計)のことで、PGAツアーのスタッツは“部門別の個人成績”をランキング形式で詳細に分析しています。
・平均スコア
・ドライバーの平均飛距離
・パーオン率
・平均パット数
などが、一般的に注目されるスタッツとなります。
ところが、PGAツアーの分析はそんなに甘くはありません。例えば“パット”という部門一つとってみても、そのスタッツは実に細かく分析されています。
・ストロークス・ゲインド・パッティング
・トータル・パッテイング
・パッティング・アベレージ
・オーバーオール・パッティング・アベレージ
・ワンパット・パフォーマンス
・3パット・アボイダンス(3パット回避率)
・パット・パー・ラウンド
・パット・パー・ラウンド:ラウンド1
・パット・パー・ラウンド:ラウンド2
・パット・パー・ラウンド:ラウンド3
・パット・パー・ラウンド:ラウンド4
・パッティング・フロム・3フィート
・パッティング・フロム・4フィート
・パッティング・フロム・5フィート
・パッティング・フロム・6フィート
・パッティング・フロム・7フィート
・パッティング・フロム・8フィート
・パッティング・フロム・9フィート
・パッティング・フロム・10フィート
・パッティング・フロム・10-15フィート
・パッティング・フロム・15-20フィート
・パッティング・フロム・20-25フィート
・パッティング・フロム・25フィート以上
・ロンゲスト・パット
・アプローチ・パット・パフォーマンス
・アベレージ・ディスタンス・オブ・パット・メイド
・バーディー・オア・ベター・コンバージョン・パフォーマンス
※1フィートは約30cm
いかがですか!パターだけでも実に27項目もあるのです!この他に「ティーショット」「アプローチ」「スコア」他などの項目があり、実に詳細なデータを検証することができます。
ところが、データがあまりに詳細すぎて「このデータはいったいどんな意味なの?」と、アマチュアの我々には理解するのが難しいスタッツもたくさんあります。
そこで今回はバッバ・ワトソン選手のスタッツを参考に、パットに関するスタッツの意味を少しだけ勉強してみましょう!
“ストロークス・ゲインド”とは?
まずは“ストロークス・ゲインド”の説明です。
パットスタッツの一番はじめに“ストロークス・ゲインド・パッティング”という項目がありました。この“ストロークス・ゲインド”ですが、ショットやアプローチでもでてくる言葉で“ある試合”において“貢献度”を評価するランキングとなります。
例えば“平均パット数”というデータだと、簡単なセッティングの大会での数字も、メジャー大会のように難しいセッティングでの数字も同じ扱いになってしまいます。難しいコース・セッティングの大会に多く出場しているトッププロの平均パット数が、易しいコース・セッティングの大会にしか出場していないランキングの低い選手より悪くなるという事態が発生してしまいます。
そこで考案されたのが“ストローク・ゲインド(以下SG)”なのです。SGパッティングとは、ある大会で出場した全ての選手の“ある距離”からの平均パット数から、自分の平均パット数を引いた数字となります。つまりその大会に出場した全ての選手の平均パット数が1.8打/ホールで自分の平均パット数が1.2打/ホールだったら「+0.6」となります。
逆に自分の平均パット数が2.4打だった場合「-0.6」となります。つまり、よりプラスが大きいほうが“ある大会において”パットの貢献度が高いという評価となります。SGの考案により、コース・セッティングの違いによる不公平を無くし、パットでどれだけ試合に貢献しているのか分かるようになりました。
ちなみに、ワトソン選手の2016年SGパッティングは‐0.367で165位。残念ながらパットでの貢献度はあまり高くありませんでした。
“パッティング・アベレージ”と“オーバーオール・パッティング・アベレージ”の違いとは?
ストロークス・ゲインド(SG)の時は試合毎の不公平を緩和させる為のデータでしたが、こちらはシチュエーションによる数字の不公平をなくすものとなります。“パッティング・アベレージ”は、パーオンした時のパットのみが対象となります。つまり、グリーン周りからの“寄せ”たパットは対象外となります。
逆に“オーバーオール・パッティング・アベレージ”は“寄せ”からのパットも含めた全てのパッティングが対象となりますので“パッティング・アベレージ”よりは通常数字が良くなります。
ちなみにワトソン選手のスタッツはそれぞれ次のようになります。
2016年パッティング・アベレージ:1.781打(119位)
2016年オーバーオール・パッティング・アベレージ:1.655打(174位)
SGパッティング同様、あまり良い成績ではありませんでした。しかし、苦手としているパター部門ですが、ワトソン選手が好成績を残しているスタッツが2つありました!
・パッティング・フロム・4フィート(約120cm):成功率96.55%(8位)
距離別のパット成功率も前出のようにたくさんありましたが、ワトソン選手は“4フィート(約120cm)”のパットがずば抜けて良く、堂々の8位にランクイン!
ちなみに前後の成績ですが、3フィート(約90cm)は99.33%(121位)、5フィート(約150cm)は80.00%(110位)でした。他の距離もほとんどが100位以上でした。この“4フィート”という距離にワトソン選手の強さの秘密が隠されているのかもしれません。
・アプローチ・パット・パフォーマンス:2フィート0インチ(3位タイ)
この項目は“ある距離”から打ったファースト・パットが平均でどこまで寄ったかというデータです。2フィートは約60cmとなりますのでトッププロにとって安全圏と言える距離でではないでしょうか。
試合前ルーチンでも“LAG PUTTS(ラグパット)”と呼ばれる「ロングパットで3パットを回避する為に寄せに重点を置いたアプローチパット」の練習を入念にしています。
ラグパットの精度を上げて、苦手なパットを攻略しているのでしょう。スタッツもこうやって見て行くと、より深く選手の特徴が見えてきます。
さて、スタッツの勉強はまだまだありますが、今回はここまで。次回は“アプローチ”のスタッツをご紹介予定です。どうぞ、お楽しみに。
バッバ・ワトソン選手の試合前ルーチン
それでは気になるアノ選手の試合前ルーチン第3弾!バッバ・ワトソン編のご紹介です。
まずは、PGAツアーが徹底的に追跡したワトソン選手の試合前ルーチンをご覧ください。
ワトソン選手の試合前ルーチンはいかがでしたでしょうか?今回はパット部門のスタッツをご案内しましたが、ワトソン選手の大きな魅力はなんといってもドライバーです。ドライバー部門にもいくつかのスタッツがありますが、ワトソン選手はそれぞれ上位に食い込んでいます。
例えば下記の2つでは、それぞれ大変優秀な記録を残しています。
2016年ドライバーの平均飛距離:310.6ヤード(4位)
2016年ロンゲストドライブ:411ヤード(2位)
特にロンゲストドライブに関しては、トップ10のうち2位、3位、9位タイとワトソン選手一人で3つもランクインを果たしています。
実はワトソン選手がドライバーの飛距離に執着するのには、大きな理由があります。
それは、ワトソン選手のトレードマークでもあるピンクドライバーで、300ヤード越えるショットをマークする度にピン社から難病に苦しむ子供たちを支援する団体に300ドル(約36000円)が寄付されるからなのです。
ワトソン選手とピン社は100万ドル(約1億2千万円)の寄付を目標に掲げており、これからも彼等の挑戦は続きます!
まとめ
ワトソン選手はドライバーの飛距離と大きく関係する“パー5での平均スコア”というスタッツでも“4.53打”という成績で、2016年シーズンは堂々の3位にランクインしています。ワトソン選手は少しパターが苦手なようですが、得意としているところをピンポイントで究極的に磨きをかけて攻撃的に攻めることによって好成績をおさめているのですね。
それでは最後にワトソン選手の試合前ルーチンが、どのような素晴らしいプレーを生み出しているのかをご紹介いたします。
大会は2015年のトラベラーズ・チャンピオンシップのものをピックアップしました。この大会では、ポール・ケーシー選手とのプレーオフを制して見事優勝を果たしています。
ピンクドライバーをブンブン振り回すワトソン選手の勇姿をご覧下さい。
(完)