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ヨーロピアン・ツアーの上品な遊び心に触れる番外編~伝説のスターター:アイバー・ロブソン!~

2017年全米プロで大活躍を見せてくれた松山英樹選手。

最終日に一時単独1位となり“日本人初のメジャー制覇”という悲願達成を目の前にしてまさかの失速、残念ながら優勝を逃してしまいました。

日本時間で朝4時ごろにスタートした松山選手のプレーを、眠い目を擦りながら多くのファンがテレビの前で応援していたことでしょう。

テレビ中継を観戦していた人はお気づきと思いますが、テレビコマーシャルも松山選手が出演しているものが多かったですね。当然と言えば当然ですが、そんな中で次のコマーシャルが流れていたのを覚えていますか?

松山選手がグー・タッチをファンや関係者とするという自動車会社のコマーシャルです。テレビの前でワンちゃんもグー・タッチをしているところがとても可愛く印象に残るコマーシャルでした。

ところで、このコマーシャルの中に2015年11月、ヨーロピアン・ツアーの最終戦DPワールドツアーを最後に引退をした、ある有名なゴルフ界のレジェンドが特別出演していたのをご存知でしたでしょうか?ヒントは次のセリフです。

「オン・ザ・ティー。フロム・ジャパン。ヒデキ・マツヤマ!」

どこかで聞き覚えがある声だと思った方も多いことでしょう。1975年のカーヌスティー以来、41年にわたり全英オープンのスターターを務めてきた人物。

彼こそ本コラムの主人公、ヨーロピアン・ツアー伝説のオフィシャル・スターター、アイバー・ロブソン氏です。

アイバー・ロブソンの人物像

144th Open Championship - Round Three

Licensed by gettyimages R

まず、ここでアイバー・ロブソンという人物がゴルファーにどれだけ愛されていたかが良く分かる特集をご覧ください。

内容は、ヨーロピアン・ツアーの選手達がアイバー・ロブソン氏のモノマネを全力でするというもの。“ボイス・オブ・ゴルフ”と呼ばれた男に、トップ・プロがどこまで近づけたかご覧下さい。

モノマネだけではなく、そうそうたるメンバーがロブソン氏へのリスペクトを口にしていました。

“アイバーはレジェンド・オブ・ゴルフだ”

“アイバーの声で送り出されると、いつも温かい気持ちになれた”

“彼はゴルフというスポーツになくてはならない愛すべき存在だ”

“彼が引退するのは、本当にさびしい”

ロブソン氏は彼から見ると孫くらいの年齢のゴルファー達に、心から愛されていたスターターでした。そして、彼へのリスペクトを込めて、トップ・プロ達がアイバーのモノマネを披露しました。

ローリー・マキロイ
ジャスティン・ローズ
ヘンリック・ステンソン
マーティン・カイマー
ダニー・ウィレット
ルーク・ドナルド 他多数

彼らの中にはプロゴルファーになって、トーナメントのスタート時にロブソン氏に名前を呼ばれることに誇りを持っていた選手も大勢いたのです。

ロブソン氏のこだわり

144th Open Championship - Final Round

Licensed by gettyimages R

2015年のセント・アンドリュース・オールド・コースにロブソン氏の最後の美声が響きました。ロブソン氏にとって最後の全英オープンです。

一口に“スターター”と言っても、全英オープンのそれはもっとも過酷と言われています。ロブソン氏が全英オープンのスターターを務めていた時のルーティンは次のようなものでした。

●試合前夜は7時前にサンドイッチと1杯の水を摂り、それ以降は翌日の晩まで一切の食事も水分をとらない。

●試合中、朝6時ごろ最初の組がスタートして、最終組のスタートが終わる夕方4時ごろまでは、水分も食事も摂らず、トイレにもいかず、座ることもしない。

そして、ロブソン氏自身も全英オープンのスターターという仕事の過酷さを次のように語っています。

“全英オープンの度に“a stone(14ポンド=約6kg)”も体重が減った“

143rd Open Championship - Round Four

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また、全英オープンのスターターという仕事についても“この仕事は徹底した集中力が求められる”と鬼気迫るこだわりを見せており、2015年の自身の引退となる全英オープンでさえ“大会をスムースに運営することに集中することが最優先で、センチメンタルになったり感傷に浸っているヒマなどなかった”と語っています。

これはロブソン氏が脇役に徹していることを物語っています。主役はあくまでゴルファー達であり、彼らを最高の状態でスタートさせることが素晴らしいプレーにつながり、それを観てギャラリーが感動し、最終的にはゴルフというスポーツの発展につながるというロブソン氏の哲学が強く伝わってきます。

しかしながら、脇役とはいえロブソン氏の存在が全英オープン、さらにヨーロピアン・ツアーの人気を縁の下で力強く支えてくれていたことは誰もが知るところです。ゴルフという素晴らしいスポーツに対するリスペクトでロブソン氏に勝てる存在は、そう多くはいないでしょう。

まとめ

DP World Tour Championship - Day Four

Licensed by gettyimages R

最後にロブソン氏の正真正銘、最終試合の模様をお届けさせていただきます。

2015年DPワールドツアーの最終日、マキロイ選手とサリバン選手の最終組を送り出した後にロブソン氏の引退セレモニーが行なわれました。

セレモニーには翌年全英オープンを制したヘンリック・ステンソン選手はじめ多くのトップ・プロが駆けつけてくれました。

「あまり良いスコアを出せませんでしたが、そのお陰で僕たちはこのセレモニーに参加することができました」

と、ステンソン選手が会場の笑いを取ってロブソン氏に記念の写真を手渡します。

「あれ?この写真ローリー(マキロイ)がティー・ショットを打っているな。ほんの少し前に同じようなシーンを見たような気がするけど…」

と、ここでも観客を沸かせ笑顔の引退セレモニーとなりました。

このビデオで、とても印象に残ったのはロブソン氏が自分の引退セレモニーなのにスターターの位置からなかなか動こうとしないことでした。

DP World Tour Championship - Day Four

Licensed by gettyimages R

「自分のことなどどうでもいいから、皆さんにはプレーを楽しんで欲しい。早くセレモニーが終わってくれないかなあ」

と言わんばかりのロブソン氏。“自分は脇役である”という信念と、恥ずかしがりやのロブソン氏の性格が滲み出ている微笑ましいシーンとなりました。

ステンソン選手のコメントにもありましたがロブソン氏には“今後は(スターターとしてではなくゴルフ・ファンとして)ロープの外で純粋にゴルフを楽しんでほしい”ものですね。

(完)

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