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影で繰り広げられる最も過酷なトーナメント、“QT“

トーナメントシーズンも終盤を迎え、今年は例年以上に賞金王、賞金女王レースも激しく、最後までどうなるか分からない白熱した展開を見せている。特に女子ツアーは1億円プレーヤーが5人もいるというのも前代未聞のシーズンである。

しかし、そんな華やかな舞台の裏では、サバイバルを懸けた戦いが繰り広げられているのだ。来シーズンのツアー出場権を懸けたクオリファイトーナメント、通称「QT」と呼ばれる予選会だ。

今月2日から全国4か所で始まった2次予選会は歴代プロ合格者も参戦している。その後、3次を経て11月下旬~12月の最終QTまで合計10ラウンド、最終QTで40位前後までが来シーズンの出場権を得ることができるのだ。

つまり“QTに通ることで、来年の職場が確保できる”というプロゴルファーの生活を懸けたトーナメントなのだ。

プロゴルファーもトーナメントに出なければ、ただの人。あるシード権を取ったプロは言う。

「2度とQTは受けたくない。あんなにプレッシャーのかかったことはない。だから、優勝はもちろんしたいけど、シーズンの第一目標はまずはシード権を取ること」だと。

毎年QTには大物プロも参戦する。今年はツアー12勝を挙げている有村智恵と日本女子プロ選手権、日本女子オープンなどツアー9勝を挙げている諸見里しのぶなどの名前がある。有村は5月にアメリカツアー撤退後、9試合に出場したが、最高位は10位タイで獲得賞金は約630万円、シード当確ラインの2000万円には届かなかった。

 

諸見里は数年前から肋軟骨痛に悩まされ、今シーズンは治療に専念したいと、主催者推薦など、7試合に限定していたが、全試合で予選落ち、もちろん獲得賞金はゼロ…。

優先的試合出場資格があるシード選手はツアー賞金ランク50位まで。それ以外はスター選手でも例外はない。主催者推薦は8試合に限られている。来シーズンの出場権はQTでしか道はないのである。

2006年の賞金女王で今年のリオ五輪代表の大山志保でさえ、故障に悩まされ、10,12年にはQTを経験した。「普通の試合以上に緊張した。通過する、しないでは天国と地獄ですよ」と語っていた。

国内ゴルフツアーのシード権と出場資格

男子も女子も国内ツアーのトーナメントに出場できるのは、前年度に賞金ランキング上位(男子は75位、女子は50位)に入ってシード権を獲得したプレーヤーと後述するその他の方法でシード権や出場優先権を獲得したプレーヤーの約100~120名である。

一方、シード権や出場優先権のないプレーヤーはマンデートーナメントの上位に入るか、スポンサー推薦を貰うなど、少ないチャンスではあるが、本選出場の機会を得ることができる。

男子賞金シード選手

男子の試合は日本ゴルフ機構(JGTO)が主催しているが、2015年からシード権に関する新たな制度が導入された。

それまでの賞金ランク70位までというシステムから賞金ランク60位までは「第1シード」、61~75位は「第2シード」という制度になり、第2シードの選手は前半戦の多くの試合には出場できるが、リランキングの対象になり、中盤戦までの成績次第では終盤の試合に出られなくなるというもである。

チャレンジ・トーナメントとQT

トーナメントに出場する権利の話をする上で欠かせないのが、男子ツアーの場合もチャレンジ・トーナメントとQTだ。

チャレンジ・トーナメントは、アメリカのウェブ・ドットコム・ツアーに相当するJGTOツアーの下部組織で、年間10試合程度開催されており、その年間賞金王にはレギュラーツアーのシード権が、また上位10名には翌年のリランキングが行われるまでのツアー前半戦の出場優先権が与えられる。

一方QTのファイナルは毎年12月にシード権のない選手が出場資格を獲得するために、6ラウンドのストロークプレーで争う場で、上位35名に翌年のレギュラーツアー、また上位120名に翌年のチャレンジ・トーナメントの出場資格が与えられる。

レギュラーツアーも厳しい世界

上位75位以内に入ればというと、かなりの人数と思う人もいるだろうが、実際には海外から参戦している実力のある外国人選手も多数いるわけだから、国内選手に回ってくる枠は50くらいしかないのだ。

また、ゴルフの場合、選手寿命が長いので、シニアの年齢になっても、レギュラーツアーで優勝するような選手もいるわけで、人によっては20年以上もコンスタントに賞金ランキングの上位にいる選手もいる。

したがって、毎年ツアープロになる選手も何人かいるだろうが、継続してツアープロとして活躍できる選手は、そのなかで2~3人程度の計算になるはずだ。そうした意味では、ツアープロで活躍できる職場の門は限りなく狭いのである。

ちなみに、レギュラーツアー通算25勝以上を挙げると、永久シ-ド権が与えられるが、その権利を持っているのが、青木功、故杉原輝雄、尾崎将司、倉本昌弘、中島常幸、尾崎直道、片山晋呉の6選手である。

また、日本プロ選手権、日本ゴルフツアー選手権、日本オープン、日本シリーズの優勝者には5年間のシード権、それ以外のツアー公式戦で勝てば、2年間のシード権が与えられる。それに加えて、年間2勝した選手はその翌年から3年間、年間3勝で4年間、年間4勝以上で5年間のシード権が与えられる。

女子ツアーのシード権選手

日本女子プロツアーも基本的には同様のシステムを採用している。ただし、賞金シードは上位50位まで(QTは上位35位まで)が、翌年のシード権を獲得できるシステムで、下部ツアーはステップアップ・ツアーと呼ばれている。

ただ女子ツアーは男子とは逆に、近年試合数が増え、賞金総額は男子やアメリカ女子ツアーとほとんど差がなくなってきている。それが1億円プレーヤーが5人もいる理由だ。

このように日本の女子ツアーが世界的に見ても、トップクラスの高額賞金を稼げるツアーになったことで、韓国選手を中心に実力のある外国人選手が多数プレーすることになったことは喜ばしいことである反面、日本人選手にとっては競争激化という厳しい側面も生み出している。

加えて、選手寿命という意味でも、賞金ランキングの上位に入るベテラン選手は少なく、少なくてもこれまでは結婚、子育てなどといった環境の違いもあるだろうが、比較的若い段階で気力、体力の衰えから、引退やツアーからフェードアウトしていく選手が多いというのも男子ツアーとの違いだろう。

男子ツアーの奮起を期待する

このように、国内女子ツアーは男子とは逆に、試合数が増加し、賞金総額がアップしているが、人気のバロメーターとなるテレビの視聴率でも女子に比べて、男子が低いという現象が続いている。

男子ツアーにも大型のスター選手や若手が出現してきているが、人気選手の海外ツアー参戦による国内ツアーの魅力低下という結果にもなっており、今後の男子ツアーには期待するばかりだ。

どうです?見た目は華やかなプロゴルファーではあるけれど、結構厳しい世界ですよね。そして今頃華やかな舞台の裏で来年の出場権のために必死にプレーをしている選手たちも応援しましょうね。

※ここで、こんなニュースが入ってきた。2013年の賞金女王の森田理香子がエリエール女子オープンで予選落ちをして、シード権を失いQT行きが決定した。

「まだまだ26歳、ここで終わるわけにはいかない」と、トーナメント会場を去っていったという。なんとも厳しい世界だ…。

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