PGAツアーが徹底分析!気になるアノ選手の試合前ルーチン!~①ジョーダン・スピース編!~
プロのトーナメント会場に足を運ぶと、テレビの中継では見ることのできない様々な光景に出会うことがあります。あるトーナメントで、こんなユニークな出来事に遭遇いたしました。
アメリカ東海岸で行なわれたある大会の最終日。予選は通過したものの、優勝戦線からは離脱してしまった選手達が後半のパー4のホールを迎えていました。あまりテレビでは映りませんがコースには選手専用の簡易トイレが各所に設置してあります。
この出来事は、そんな簡易トイレにまつわる面白エピソードです。優勝争いの緊張感から開放された選手達の集中力は、なぜ“いたずら”へと向かいやすくなるのでしょうか?
2人の選手とそれぞれのキャディさんの計4名がティーグラウンドに立ちました。そして、選手がティーショットを終えると、2打目の位置まで4人が歩き出してすぐ、選手の一人が簡易トイレに駆け込みました。
と、ここまでは良くある風景なのですが、その選手がトイレに入るやいなや、もう一人の選手がゴルフクラブを閂(かんぬき)のようにして相手の選手をトイレに閉じ込めてしまったのです!
まだまだ上位選手が回ってくるまでには時間があり退屈気味だったギャラリーも、この“ドッキリ”敢行で一気に盛り上がります。一人の選手をトイレに置き去りにして、閉じ込められた選手のキャディを含む3人はしのび足で先へ行ってしまいました。その光景を見ていたギャラリーは、声を押し殺してクスクスと笑っています。
さて、用を足した選手がトイレから出ようとするとドアが開きません!トイレの中から叫び声が聞こえます。ドン、ドン、ドン!
「おーい、開けてくれ!」
もちろんギャラリーはここで大爆笑です!結局、中からドアをガタガタ揺すっているうちに閂にしたクラブがポトリと落ちて、閉じ込められた選手は無事に脱出できました。
残念ながらこのホールには1台のテレビカメラも到着しておらず、その時の模様が後世に残ることはありませんでした。残念。でも、こんなことに遭遇できるのも、実際にトーナメント会場に足を運んだ人の特権とも言えるのではないでしょうか。
試合前のルーチンを徹底分析!
そして誰もが見たいのに、なかなかテレビ中継をしてくれないのが選手達の試合前の練習風景です。しかし、この練習をじっくり見る事ができるのもトーナメント観戦の醍醐味の一つなのです。人によっては、試合そのものよりも練習を中心に観戦する方もいるほどなのです。
あなたも、トッププロの選手達がスタートする前にどんな練習をしているのか、気になりませんか?でも、なかなかトーナメント観戦にはいけませんよね。ましてや、海外となるとなおさらです。
そんな我々の“夢”を叶えてくれたのが、アメリカの男子プロゴルフツアーを運営する団体“PGAツアー”なのです!PGAツアーが総力をあげて、トッププロの試合前の練習に密着取材を敢行してくれました!おまけに、その練習内容を徹底的に分析してくれたのです!
PGAツアーがまとめてくれたデータはざっと次のようになります。
・何分前にコースに到着したのか。
・到着してからどのような順番で練習をしているのか。
・また、それぞれの練習場でどのクラブで何球打ったのか。
・パッティンググリーンでは、どれくらいの距離を何球練習しているのか。
・練習に使っているアイテムはなにか。
選手がコースに到着してからファーストティーで第一打を打つまでに、どんな練習をしているのかが大変よく分かるように丁寧にまとめてくれました!
これまで、ありそうでなかった夢の記録です。アマチュアである我々にも大変参考になりますので、じっくりお楽しみください。
試合前ルーチン/ジョーダン・スピース選手編
さて、“PGAツアーが徹底分析!気になるアノ選手の試合前ルーチン”シリーズ第1弾は“ジョーダン・スピース編”です。
ジョーダン・スピース選手/Jordan Spieth
アメリカ合衆国、テキサス州出身の23歳。
2012年にプロ転向。プロ10勝。
2015年にはメジャー大会2勝(マスターズと全米オープン)を含む5勝をあげ、史上最年少のフェデックスカップ(PGAツアーの賞金王レース)で年間チャンピオンとなりました。すでにPGAツアーを代表する選手の一人で人気も急上昇中です。
また、アマチュア時代からその頭角を現しており、全米ジュニア・アマチュア選手権で2009年と2011年に優勝しており、同大会で複数回の優勝をしているのはタイガー・ウッズ選手とスピース選手の二人のみ。
試合前の練習には、そんなスピース選手の真面目さが滲み出ています。アライメントスティック(まっすぐな棒で、身体の向きをチェックする為に使います)を使用してのパッティングやショットの練習は基本がいかに大切かを教えてくれています。
それでは、スピース選手の試合前ルーチンをご覧下さい。
いかがでしたでしょうか。パッティングの練習の時も、しっかり歩測で距離を測って4フィート、7フィートのパットを練習していましたね。また、ショートアイアンの時もアライメントスティックを使って身体の向きをスクエアにキープできるように調整をしていました。
スピース選手のようなトッププロでも標的に向かってスクエアに構えることを確認するのは、感覚ではなくアライメントスティックのような道具を使っているのですね。こんなところは、われわれアマチュアも真似したいところです。
さらに、自分のスイングを動画で録ってもらい確認するという徹底振り。1時間15分の練習時間でしたが、実に内容の濃い試合前ルーチンでした。
練習の成果やいかに?!
さて、スピース選手が試合前にどれだけ入念にスイングやタッチのチェックをしていたかをご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか?パッティングのルーチンだけでも、すぐに取り入れてみたいですね。
次に、この試合前ルーチンが、どのような形でスピース選手のプレーに影響を与えているかをご覧いただきます。試合前の練習を見てから選手達のプレーを観戦してみると、そのプレーが腑に落ちる、つまり納得できるようになるから不思議です。
それでは、スピース選手の試合前ルーチンがどれだけ素晴らしいプレーを生み出しているかをご覧ください。尚、試合前ルーチンと実際の試合のハイライトは、別のトーナメントとなりますのであらかじめご了承ください。
このハイライトは2015年のジョンディアクラッシック、大会3日目のものとなります。61打というロースコアを叩き出した、“ゾーン”に入った時のスピース選手のプレーは圧巻です!
しかし、フェアウェイウッド、パター、チッピング、どの素晴らしいショットを見ても“あの時の練習の成果だ!”と納得できませんでしたか?スピース選手は、想像できる様々なシチュエーションに備えて、感覚に頼らず客観的に方向やスイングをチェックしていたのは、このような素晴らしいプレーを生み出す為の“ルーチン”だったのですね。
まとめ
さて“PGAツアーが徹底分析!気になるアノ選手の試合前ルーチン”の第1弾ジョーダン・スピース編はいかがでしたでしょうか?普段テレビで見ている選手の素晴らしいプレーは偶然ではなく、入念な準備に裏づけされた、いわば必然だったのですね。
最後に、入念な準備に裏づけされているかどうかは分かりませんが、アナウンサーも絶賛のスピース選手の珍プレーをご覧下さい。
2015年のファーマーズ・インシュランス・オープンの2日目、13番ホールでこのショットは生まれました。“フェイダウェイ・ジャンプショット(去り際ジャンプ打法?)”と呼ばれるようになったスーパーショット!こんな打ち方、見たことありますか?
バンカーまわりの急な傾斜に止まったボールを、なんと身体を後ろに倒しながら打つという、どんな教科書にも出ていないスーパーショットでしたね!
どんなイメージからあんなショットが生まれてくるのか?その答えはスピース選手の頭の中にしかありません。
(完)