宮里の独特のスイングを解説！石川遼も実践していた練習方法とは

近年の女子プロゴルフ人気のけん引役として、宮里藍の存在を失くしては語れません。

国民的ヒロインとなったデビュー

2003年、高校3年生の時に「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」で優勝。女子高生ではもちろん初、アマチュアでも30年ぶりの快挙でした。大会直後にプロ宣言し、女子高生として史上初めてのプロとなりました。

ツアー挑戦した2004年の開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」で初優勝を飾ると、このシーズン5勝で年間獲得賞金は1億円超え、賞金ランク2位の輝かしい成績を飾ります。翌年も年間6勝と安定し、いよいよ米ツアー挑戦が始まりました。

2006年に米ツアーデビュー。優勝こそありませんでしたが、21試合に出場し7試合でトップ10入り、賞金ランク22位の成績を残します。ついに2009年の「エビアン・マスターズ」で初優勝を飾り、賞金ランクも3位と注目選手に躍り出ました。

圧巻は2010年。いきなり開幕2連勝は44年ぶり、史上5人目の快挙。6月に早くも4勝目を飾ると、ついに世界ランク1位の座をつかみます。こうした宮里藍の後を追うように、宮里美香、野村敏京らの日本選手が米ツアー挑戦を続けています。

突然の不振

2013年の後半、愛用していたパターがゆがんできたことから交換。これが思いもよらぬ自信喪失にまでつながります。「替えた時、最初はフィーリングが良かったけど、使い続けていくうちに自分のフィーリングが分からなくなって、違うなって思った時は遅かった」（宮里）

実は宮里は、パッティングに自信を持っていました。一緒に子供の頃からゴルフを続けていた二人の兄に対しても「私の方がパットは勝ってるかな」（宮里）と言っていたほど。

「パッティングは一番の武器だった。自分のゴルフで一番大事な部分。ゲームで欠かせない部分がおかしくなった。自分はこんなはずじゃないって」（宮里）と引きずってしまいました。

それ以前、こんなことも話していました。「自分の強みはフィーリングとメンタルです。凄く飛ぶわけではなく、パワフルなゴルフって感じではないんですけど、自分の持ち前である粘り強さと正確性と、スイングテンポで戦う選手ですね」その大事なフィーリングにメンタル、スイングテンポまで狂ってしまった。

2014年は結局米ツアー22試合に出場してトップ10に一度も入れず、予選落ちも7試合。年間ランク80位に入れずシード権を失いました。2015年も予選落ち7試合ながら77位と、何とかシード権は確保しました。

宮里独特のスイング

宮里のスイングは、ゆったりとしたリズムが特徴です。正面から見るとスイングが大きく、アークも小柄な体からパワーを弾きだす要因です。

ドライバーショットでは、バックスイングでクラブをインサイドに引いています。この場合、インサイドにクラブを引くとフェースが開いてシャフトが寝てしまいますが、宮里はフェースを閉じながら、シャフトは上を向きながらテークバックしています。従って、トップではシャットフェースの状態です。

トップから左足に体重移動しながらフェース面を変えないで振りぬくために、インサイドからアウトサイドの軌道を描きます。インパクトで力強いドローボールを打つためのようです。

腰の捻転が早く、腕をリードする動きがヘッドスピードを上げています。この場合、ドライバーショットが左右にぶれやすくなる欠点があるのですが、これまで宮里は独特の練習方法でスイングを安定させていました。

名付けて太極拳スイング

宮里のスイングは、独特な練習方法によって習得されたものです。

それは、1回のスイングを、1分以上という長い時間をかけて素振りをする練習方法で、2007年から宮里が取り入れていた「太極拳スイング」です。スローモーションのようにゆっくりとスイングをすることで、ヘッド、シャフトの位置の確認や、悪い癖のある部分はリズムが早くなるので修正しやすくなるという方法です。

プロもアマも、1スイングは約0.8秒前後。この短い時間の中で、自分のフォームがどうなっているかを意識するのはプロでも難しいことです。それをゆっくり素振りをすることで、イメージを固めることができます。

「テークバックや切り返しで力が入って打ち急ぐ傾向があることがわかった。それを意識することで自分のテンポがみつかった」(宮里)

実は2010年にテレビの収録で共演した石川遼も、宮里から教えてもらい取り組んでいました。かつては、尾崎将司が「ゆっくりスイングをする」練習を取り入れていました。

あなたもできる太極拳スイング

ゴルフスイングの中で、手の位置、クラブフェイスの向き、体の重心の位置、どこの筋肉に張りがでるか。これらを確認して素振りするのが太極拳スイングです。重要なのは、宮里の動画にあるようにスイングをコマ送りにするのではなく、まるでスロー再生のように時間をかけて振る方法です。
そのためには、練習場などでちゃんと時計をボールの位置に置いて時間を計りながらスイングしましょう。時間配分もきっちり。バックスイングに20秒、ダウンスイングに20秒、フォロースルーに20秒で計1分間を、合計3スイングほどしてみます。

このスイングにはもう一つの利点があります。実際に試してみるとわかると思いますが、3回もすると汗ばんだり、筋肉への負担がかなり大きいと実感できます。この効果は太極拳と同じなのが、名前の由来です。

意識、呼吸、動作の3つが1つになるのが太極拳です。一見、ゆるやかでなめらかな動作に見える太極拳も、実に筋力が鍛えられる動作です。演武を切れ目なく連続して行い、途中で動き、型がさまざまに変化しても、まるで水の流れのように自然に連続する動き。ゴルフもアドレスからフィニッシュまで、連続した動きを一つの意識の中で行うのが共通しています。

ゆっくり素振りすることでスイングのイメージを自分のものにできれば、上達のポイントになるでしょう。初心者のゴルファーでもできますが、誤ったスイングを覚えてしまっては何もなりません。レッスンプロや、上級者の目でチェックしてもらいながら、良いスイングの練習することが肝心です。

2016年の宮里に期待

「燃え尽きたのでは」とも言われる宮里ですが、成績が悪くても明るい笑顔でポジティブな発言を繰り返す藍ちゃんには、胸の中にふつふつとした情熱が見えます。

今のPGAツアーは、ドライバーで飛距離を出してフェアウェイをとらえ、2打目で高い球でグリーン上で止められる技術が必要です。宮里のパッティング、スイングの改良はまだ続くでしょう。

今季開幕戦「ピュアシルク・バハマLPGAクラシック」では54位タイでした。ツアー最終日、最終組でグリーンに上がってくる藍ちゃんの姿を、今年は見たいものです。