イ・ボミV3を阻むのは同じ韓国勢!?女刺客5人①アン・ソンジュ
「ワタシはまだ死んでない」
開幕戦のダイキンオーキッドレディスを逆転で優勝したアン・ソンジュの言葉です。最終18番ホールをバーディーで優勝後、涙ぐんでいました。
昨季はヘルニアによる首痛に悩まされ、4試合で棄権。「ゴルフが嫌になる時期があった」と苦しみました。オフではトレーニングと休息を交え、体をいたわりました。今季のアイアンは硬いスチールシャフトと柔らかいカーボンシャフトを用意し、首の状態と気候によって使い分けることにしています。
風が強い沖縄での開幕戦はカーボンシャフトで臨み、72ホール中、実に49ホールでパーオンとアイアンの確実性でタイトルをもぎ取っています。昨季も、首痛に苦しみながらも24試合に出場し2勝。2010年から参戦した日本ツアーで、最低の賞金ランクとはいえ9位はその実力の高さを示しています。
相性のいい日本で賞金女王3回
アンは韓国ツアーを7勝した後の2010年、やはり開幕戦のダイキンオーキッドレディスで日本ツアー初出場初優勝。結局4勝を挙げ、1年目にして賞金女王に輝きます。日本での試合環境があったせいか、翌年も4勝し2年連続賞金女王となります。2014年も5勝し、3回目の賞金女王となっています。
パワーと方向性がいいベタ足スイング
スイングの大きな特徴は、バックスイングからボールをとらえ、フィニッシュでヘッドが頭の後ろにくるまで、右足のかかとが浮かないベタ足スイングです。
ゆっくりバックスイングを始動し、しっかり右足に体重を乗せながらクラブヘッドが高く遠い位置で溜めを作ります。このトップで溜めたエネルギーを、右足から左足へ、スムーズに低重心でベタ足のまま振り抜きます。
このスイングのメリットはヘッドの加速力にすぐれ、低く真っ直ぐ方向性のいいショットが打てることです。バックスイングでのトップが高いことも、加速力のアップにつながっています。
昨季は、首痛からかバックスイングのトップで頭の位置が少しだけ浮き上がるような動きがあり、ショットのパワー、正確さを欠くこともありました。今季初戦はその動きも封印され、「強いアンちゃん」の復活を予想させました。
アン・ソンジュのクラブセッティング
ダイキンオーキッドレディスでアンが使ったクラブセッティングです。
<ドライバー>
ヨネックスEZONE XPG ロフト9度(シャフト:ヨネックスレクシスカイザD5SR 45.5インチ
<フェアウェイウッド>
キャロウェイゴルフGBB エピック3番(ロフト13.5度、米国発売モデル)
<ユーティリティ>
ヨネックスEZONE XPG3番(ロフト19度)、ヨネックスEZONE XPG4番(ロフト22度)
<アイアン>
ヨネックスN1-CBフォージド(5番~PW)
<ウェッジ>
ヨネックス N1‐W(ロフト48度、52度、58度)
<パター>
オデッセイVERSA 330M BLACK
<ボール>
ブリヂストンTOUR B330S
試合前にアンは、フェアウェイウッドを急きょキャロウェイゴルフGBB エピック3番にしました。アメリカ仕様で、首に負担がかかりそうでしたが、オフシーズンに矯正したバックスイングのトップで溜める間のタイミングが良くなり、持ち前のパワーが復活していました。
ダイキンオーキッドレディスの最終日、4番と18番ロングホールの第2打でこのフェアウェイウッドを使い、逆転優勝となるバーディーに見事つなげました。
※編集部追記
この時、アン・ソンジュ選手が使用していたヨネックスN1-CBフォージドは池田勇太選手の快進撃の一因ともいわれる注目のアイアン。
そんなヨネックスから2018年に発売された“EZONE CB 301 フォージドアイアン”も要チェックです。
愛されキャラが日本で生きる
韓国でプロデビューし活躍したアンですが、韓国のゴルフ環境には恵まれなかったようです。ポッチャリした体型は彼女のスイングに合っているようですが、とにかく、容姿端麗がもてはやされる韓国女子ゴルフ界で、アンはメディアや周囲から我慢できない言葉を浴びたようです。
当初、不安もあった日本でのトーナメント環境で、彼女は徐々に持ち前の明るさを取り戻したのです。初めての日本ツアーで賞金女王が確定した後に宮崎で開催された最終戦、アンは選手、大会関係者、メディアに、びっくりする差し入れをしました。
その品物は、宮崎名物、人の握りこぶしほどあるフルーツ、クリームチーズ、粒あんが入った大きな「なんじゃこら大福」で、その数なんと450個。アンにとっては、伸び伸びとトーナメントに参加できたお礼の意味が込められていました。
2011年のサントリー・レディースでは優勝の後の関係者パーティーの席上、コメントを求められたアンは「チャンピオンブレザーが小さいんです。ボタンがはめられません。来年も一生懸命頑張りますので、もう少し大きいのをお願いします」と笑顔で話すと、会場は大爆笑に包まれたのです。
再び爆発の予感
2014年末に結婚したアン。夫のキム・ソンホさんは元プロゴルファーで、家庭環境も充実しています。現在23勝、「30歳になったら引退する」とかつて宣言したアン・ソンジュは日本というゴルフ環境の中で、さらに活躍しそうです。
ファンとしてはイ・ボミとのシーズンラストまでのせめぎ合いが見たいものです。