ゴルファーに多い「背中の痛み」の原因とは?ストレッチ&筋トレで予防しよう
前回は、ゴルファーにとって他人ごとではない、腰痛の予防や改善点についてお話ししました。今回は、腰と並んで痛めることの多い部位、背中についてお話ししたいと思います。
練習を頑張っている人ほど、ちょっとした拍子に身体の要所を痛めてしまいがちですよね。日ごろの運動不足を解消したいと思って、気が付いたら何百球も打ってしまっていたり、隣の打席の飛ばし屋さんと張り合ってついリキんでしまったり。ゴルフに慣れていない初心者も、キャリアのある方でも違わず、その可能性はあるかもしれません。
冬の間は練習もコースも少しお休み、という方も少なくないかもしれませんが、寒風吹きすさぶ中、久しぶりに行ったゴルフで身体を痛めてしまった…!となると、シーズン目前にしてゴルフを思う存分楽しむことが困難になってしまう、なんてこともあり得ます。
そうならないためにも、ほんの少しの注意と努力で、今のうちに痛みの予防や改善をしておきたいものです。
背中の痛みの多くは○○から?
ゴルフのスイングは、前傾姿勢、捻転、回旋など、人体の自然な姿勢と相反した、複雑で左右非対称の運動です。この運動を繰り返すことが姿勢の歪みの元になり、スイングが安定せず技術上飛距離が伸びないことに繋がったり、身体の痛みを覚えたりする問題が出てきます。
そうした中で背中を痛める原因は、インパクト時の衝撃や、フォローにかけてクラブを引き上げる動作による負荷から起こります。背骨に沿った筋肉で姿勢を保ったり体を起こす役割をする「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」、肩甲骨を内側(背骨側)に引き寄せる役割をする「菱形筋(りょうけいきん)」の左側を痛める場合が多いようです。
ゴルフのスイングのように腕を大きく動かすときは、肩甲骨が動くのと同時に、背骨と肋骨、背中の筋肉も動きます。しかし普段の疲れや身体の左右の動きの偏りなどで、それらの筋肉が硬くなったりゆがんだりして、肩甲骨の動きが悪くなっている場合、背中のけがを起こしやすくします。
特に、普段猫背の人は背中の筋肉が常に左右に引っ張られていて、背中、主に肩甲骨の動きが悪くなりやすいため、要注意です。
人のカラダは丸くなろうとする力があるので、背中を丸めた方が楽に感じるかもしれません。
実際に、食事の時やデスクワークなどの座り姿勢が続くと、はじめのうちは背もたれに背中を預けずお腹に力を入れて良い姿勢を保っていたとしても、いつの間にか背中が丸まっていることがありませんか?
電車を待っている間の立ち姿勢や歩いている時も、背筋を伸ばした姿勢をキープすることも、意識していないとなかなか難しいものですよね。
生活の中ではほとんどの作業を身体の前側で行い、後ろ側で何かを行うことはほとんどありません。
前側で作業をするときに使われているのは、大胸筋という胸の筋肉ですが、日常生活の中で前かがみに丸くなる状態=「猫背」になるために、大胸筋が凝り固まってしまうのです。そして、対となる僧帽筋(そうぼうきん。後頭部から肩甲骨までの広い筋肉で、肩甲骨を動かす大きな役割)が引っ張られて、負荷がかかってしまいます。
まずは柔軟性チェック
ストレッチが大事、とはわかっていてもなかなか毎日続けられないもの。一度、背中側の柔らかさを確認してみましょう。
肩(肩甲骨)の柔軟性
最初に右腕を上から、左腕を下から背中に回します。背中側で両手が握手できますか?
次に左右を逆にして、同じことをしてみてください。
以下のどれに当てはまりますか?
※やりやすい、やりにくいなど、左右で違いがある場合は、やりにくい方を基準にしてください。
A.両指が組める
B.指先を触れることができる
C.あと5センチで届く
D.あと10センチ以内で届きそう
E.10センチ以上離れている
背中の柔軟性
うつぶせの状態で両手のひらを胸の下に置きます。足は揃えて伸ばしておき、ひじを伸ばしながら上半身を上に反らせて、目線を後ろに持って行きます。
以下のどれに当てはまりますか?
※決して無理せず、動かせる範囲で行ってください。
A.30秒以上、無理なく目線を後方にキープできる
B.20秒、目線を後方にキープできる
C.10秒までなら目線を後方にキープできる
D.上体をキープして、目線は真上にできる
E.せいぜい目線を上にするだけ
結果
どちらもC~Eだった場合、硬いまたは上肢の筋肉の緊張が左右偏っている場合があるといえます。
背中の動きをスムーズにするためのストレッチ&筋トレ
背中の痛み予防には、肩甲骨をスムーズに動かせることが大事です。肩甲骨が滑らかに動くと猫背解消と同時に肩こりも軽減するので、頭までスッキリしてきますよ。
同時に負荷に強くなる筋トレも行って、背中のケガを予防しましょう。
菱形筋ストレッチ:猫背(肩こりも)解消
(1)手の甲を合わせて、肩の高さで両腕を前に伸ばします。
(2)高さをキープしたまま、両腕を後方へ外旋します。
(3)止まったところでこぶしを握り締め、ひじを曲げて腕を身体へ引き寄せます。
※上体が前後にふらふらしないように注意します。
肩甲骨ストレッチ:肩甲骨の可動域を広げる
(1)身体をまっすぐ背筋を伸ばして立ちます。
(2)両手を頭の後ろで組み、手は組んだまま右ひじをゆっくり下げていき5秒キープ。
(3)両手を頭の後ろに戻し、左ひじも同様にゆっくり下げて5秒キープ。
※ひじを下げる時、上体が左右に傾かないように、身体をまっすぐ上に伸ばして立つことに注意します。
バックアーチ:脊柱起立筋を鍛える
(1)手はひじを曲げて前方向に、脚は肩幅程度に広げ、視線をやや上げて前方を見て、うつぶせの状態で寝転がります
(2)手足をゆっくり持ち上げて身体を反り、背中を中心としたアーチを全身でつくり、2~3秒体勢をキープします。
(3)ブレーキをかけながら手足をゆっくり下ろし、床にぎりぎりつく前にまた持ち上げて、アーチを作ります。
(4)この動作を10回×2セット。
※ポイントは、勢いで行うのでなく、背中の筋肉を使ってゆっくり上げ下げすることです。最初は床から少し浮かすだけでOK。徐々にならしていきましょう。
手ぶらでローイング:菱形筋を鍛える
(1)足を肩幅に開き、腰を少し下げ膝を軽く曲げて前傾姿勢を取ります。手の甲は前に向けて腕を真下にたらします。
(2)脇を開かずにひじを後ろに引き寄せながら、手のひらを回転させて前に向けます。
(3)この動作を10回×2セット。
※腕を引き寄せる時は、肩甲骨の内側を意識します。手のひらを回転させて前に向けることで、より胸が開いて肩甲骨が寄ることが感じられると思います。
背筋を痛めたまま練習を続けたために、痛みが治まらないので病院に行ってみたら、疲労骨折だったと診断される場合もあります。少し休んでも痛みが続く場合は、専門医で診てもらうことも大切ですよ。
けがに用心して、長ーくゴルフを楽しみたいものですね。